魅力的な“神さま”として成長するサクナヒメの姿を見守ってほしい――TVアニメ『天穂のサクナヒメ』サクナヒメ役・大空直美さん×ココロワヒメ役・衣川里佳さんインタビュー

原作を経てチームワークがより強固に

ーーゲームとアニメでは収録環境が大きく異なると思います。違いを実感した部分や、それに合わせて調整した部分はありますか？

衣川：ゲームのときは個別収録だったので、他のキャラクターがどんな声で、どんな喋り方をするのかを知らない状態で収録していました。アニメではすでに相手の声を知っていて、掛け合う人は同じ時間帯に収録させてもらえることが多かったので、とても演じやすかったです。

サクナの声を聞くと安心するというか、ココロワとしての気持ちに“動き”が出るような気がするんですよね。それほど感情を強く押し出すタイプの子ではないんですが、それでも違いはあったと思います。

大空：前に収録したのは随分と前なのに、みんなしっかりとキャラクターを覚えていて、収録自体もかなりスムーズでした。原作を経てキャラクターや作品への解像度が高まっていたからこそ、良いチームワークで収録できたんじゃないかなと。

私自身も久々にサクナを演じたんですけど、当時の役作りや気持ちを鮮明に覚えていたので、スッと入り込めた感覚があります。感情が大きく動くシーンも沢山あって、掛け合いならではの発見や楽しさを感じながら、収録できたのも良かったです。

衣川：ゲームはフルボイスじゃなくて、パートボイスの場面も多かったんですよ。アニメでは新しく声が入っていることもあって、新しい楽しみも多かったですね。「こういうふうに表現するんだ」みたいな発見もありました。

ーー原作に触れたことのないアニメファンの方も多いと思います。おふたりが原作を遊んでみて、魅力を感じた点やアニメへの理解が深まった部分はありますか？

衣川：田んぼの維持の大変さかな……。アニメではみんな整然と田植えをしていたと思うんですけど、ゲームだと綺麗に並べるのすら難しいんですよ。水量の調整とか、雑草取りの数とか、その苦労を一度経験すると、いろいろな部分の見え方が変わると思います。

大空：お米に対する気持ちはハッキリと変わりましたよね。稲作ってこんなに大変なんだって。ゲームでも苦労したのに、現実の稲作はもっともっと難しいんだと思うと、感情移入しちゃいますよね。「田んぼにいたずらされた」というニュースを見て、すごく憤ったりとか……。

ゲームに触れる前は、それがいかに大変なことか分からなかったけど、実感すると「本当になんてことをしてくれたんだ！」って心底から思うようになったんです。ゲームで遊べば、アニメのサクナたちが喜んだり、悲しんだりする気持ちに、もっと深く寄り添えるようになる気がしますね。

ーー普段当たり前のように買える食べ物が、大変なプロセスを経て作られていることが分かると、接し方も変わってきますね。

大空：アニメでも描かれていましたけど、最初の方に出てくる食べ物は本当に貧相なんですよ。どんぐりとか、稗、粟とか……。それを頑張って充実させていって、しっかりとした食卓を作れるようになると達成感がありますね。

衣川：逆に言うと、うまく作れなかったときの絶望感がすごい。植えてからお米になるまで、とんでもない手間がかかるのに、最初の収穫はほんの少し。なんなら、重要な作業で失敗したらすぐ台無しになっちゃう。ゲームで遊んでからは、日頃の農家さんへの感謝の気持ちも大きくなりました。

ーー最後に、アニメから『天穂のサクナヒメ』を知った人、原作から応援し続けている人、それぞれに向けたメッセージをお願いします。

大空：アニメから興味を持ってくださったみなさん、放送中の『天穂のサクナヒメ』をお楽しみいただけているでしょうか。作品のテーマや魅力、お米作りへの愛情が丁寧に描かれていて、その深さがみなさんにも伝わっているかと思います。このぐうたらで生意気なサクナヒメが、どうやって一人前の女神へと成長していくのか、ぜひ楽しみにしていてください。

原作ファンのみなさんにとっても、見どころ盛りだくさんだと思います。制作会社のP.A.WORKS代表の堀川憲司さんは兼業農家で、会社で働く傍ら農業もされているんですね。そのおかげか、耕した後の土のホカホカした感じや水が張られた田んぼの様子など、アニメならではの描写にもリアリティがあるんです。アニメ版を見れば、ストーリーについても、稲作についても、より理解が深まるはずですよ！

衣川：『天穂のサクナヒメ』のキャラクターは個性が強くて、最初は我儘な部分が目についちゃうかもしれません。でも、重要なのはそこからの変化です。物語が進んでいくと、その個性や我の強さが“良さ”に変わっていきます。最低でも第3話までは観てほしいです！

ゲーム原作としては、やりこみ要素たっぷりの作品を全13話にギュッと凝縮した、完成度の高い作品になっています。最後まで観て、原作の印象的な場面がどう描かれるのか、その目で確かめてみてください。

[インタビュー／蒼之スギウラ　撮影／胃の上心臓]

『天穂のサクナヒメ』作品情報

あらすじ

遥か東方の果て、ヤナトの国。
古来よりこの地では神々の住む頂の世と人間の住む麓の世、二つの世があると信じられている――。
頂の世に住まう上級神かつ駄女神のサクナヒメは、
武神と豊穣神の間に産まれながら、両親が蓄えた穀を潰しぐうたらな生活を送っていた…
そんな中ある日、ひょんなことから
神々の都を追放され、鬼たちが巣喰う孤島・ヒノエ島へ！？
明日の食糧もままならない不毛の大地で、土を耕し米を育てて鬼退治へ。
神の世に迷い込んだ人間たちと、ひよっこ豊穣神の、もみ殻舞い散る集団生活が始まる‼