胸を張って言える“自慢のファンたち”。彼らのセンスを信じて一緒に作った新しい音楽活動ーー短期連載「はぐれ妖精の妖精夜行見聞録」第1回:悠木碧さんインタビュー【前編】
純粋なファンの声だけを抽出した貴重な場
――妖精さんたちの会話を見ていると、幅広い世代の人が集まっていますよね。
悠木:若いと10代の方もいるみたいですね。みんな世代の異なる友達と話す機会ってあまりないだろうから、傍から話が盛り上がっているところを見ていると、ついほっこりしちゃいます。
――印象的な切り株(スレッド)を挙げるとしたら?
悠木:やっぱり一番人気のしりとりでしょうか。たまにしりとりガチ勢が現れて、ルール違反があっても上手いことまとめてくれるんです。あと『FF14』でみんなと遊んだときのスクリーンショットを共有する切り株も好きでした。ほかには、バイクとか!
――バイクですか?
悠木:私は免許を持っているわけでも、詳しいわけでもないんですけど、妖精さんたちが自分の興味の外にあるもので盛り上がっている様子を見るのも好きなんですよ。同じように、知らない話題の切り株でも結構覗いていたりします。
――時には「チョモランマ」のスタンプを押すだけの“通りチョモランマ”をされているとか。
悠木:そうなんです(笑)。話の邪魔はしたくないけど、見ている気持ちを残したいときはチョモランマを残したりもしました。ただ、我慢ができなくなってコメントしちゃうときもありましたが(笑)。
――全体を見ていて、悠木さんの出演情報などが逐一リマインドされているから、自然とファンの濃度が高まる空間だなと。
悠木:熱心に追いかけてくださる方のおかげですね。そういう意味でも、「妖精夜行」は純粋なファンの声だけを抽出した貴重な場でもあるなと。
そして、私にとっても楽しい場所なんです。私が出演していない作品であったり、最近観た映画、この前行ったカフェの話といった、妖精たちの日常の何気ない話を見ていると、実際にどんな人たちが応援してくれているのか、その輪郭が浮かび上がってきて。
「〇〇さん、病気治ったんだ、良かったね」とか、「〇〇さん、新しい仕事決まったんだね」みたいな会話を観察して、純粋に楽しんでいたりもします。
――主婦の立ち話みたいですね(笑)。
悠木:そうなんです(笑)。妖精さんたちは私のことを知ってくれているけど、案外、私はみんなのことを知らないから、今回はみんなを知るきっかけにもなりました。応援してくれるみんなが盛り上がっている姿を作り手側が見られるのは貴重ですよね。
――「妖精夜行」での日々は今後の悠木さんの活動にも良い影響がありそうです。
悠木:妖精さんたちは良いことだけではなく、難しいと思ったことも正直に言ってくれたりするので、純粋に良いマーケティングになったと思います。あと、みんなのことがより好きになったおかげで、日々の仕事で「こうすれば、きっとみんなが喜ぶぞ!」と、以前よりも考えるようになりました。改めて「妖精夜行」をやっていて良かったなと実感しましたし、それだけ大きな影響を受けたんだなって。
少し大胆な話も、信頼している妖精さんになら
――悠木さんご自身もゲームや雑談といった配信を積極的に行われていました。
悠木:ゲーム配信は、自分が好きだったり、出演しているゲームをたまにゲストを招いて遊んだりしました。個人的にはお絵かき配信も印象的です。絵が上手な妖精さんにヒントをもらったり、ほかの妖精さんからはリクエストをいただいたりして。でも、なんだかんだで一番喜ばれたのは雑談かな? もちろん私も妖精さんもおしゃべりすることが大好きです。
――ゲリラ形式で、突如、配信が始まることもありましたね。
悠木:タイミング良く出会えた人が聴ける形式でしたね。スケジュール的に告知が難しい場合もありましたが、なにより身構えて聴いてもらうほどの内容ではないので(笑)。
――雑談配信ではプライベートについても赤裸々に話していましたが、それもこの「妖精夜行」ならではなのかなと。
悠木:やっぱり民度によって話せる内容が変わってしまうところではあったんですけど、妖精さんにならプライベートのことをガッツリ話しても大丈夫だし、ラジオや生配信ではなかなか聴けないものをお届けしたほうが喜んでもらえるだろうなって。
私としては個人通話をしている感覚になってもらえたら嬉しいなと思っていました。ただ、かなり大胆な話題もありましたよね。今この瞬間も、こうして仕事関係の人にも聴かれてしまうのか……と冷静になって思いました(笑)。
――(笑)。ただ、妖精のみなさんは内容についてほとんど口外していなくて。まさに先ほどの民度のお話の裏付けになっていますよね。
悠木:そうなんですよ。「ここで話した内容は秘密だよ」って言ったら、本当に内緒にしてくれて驚いちゃいました。みんな思いやりがあって、私以上にルールやマナーに気を使ってくれて。そこは一社会人として背筋が伸びるところですし、そんな方たちとはちゃんと向き合わないと失礼だなと思わされました。
――他に、活動を通して驚いたことはありますか?
悠木:配信中、私が説明するときなどに手間取っていると、すぐに参考のURLを貼ってくれる妖精さんがいて。私もそれに頼っていて、「誰か資料持ってる?」とお願いすることもありました(笑)。他にも、こういう切り株があると良いよねとお話したら、すぐに立ち上げてくれたり。
妖精さんたちって本来はカスタマー側のはずなんですけど、もはや一緒に運営をしているような気分で盛り上げてくれるんですよね。そこに驚かされましたし、愛を感じることができました。
あとはやっぱり誕生日のサプライズですよね。みんなからのコメントがたくさん並んでいるのを見たら、嬉しすぎて全員に返信をしちゃいました。
――悠木さんの誕生日にお祝い用の切り株が作られ、そこで妖精さんたちがたくさんのメッセージを贈っていましたね。このサプライズもそうでしたが、全体を通して近衛妖精(スタッフ)さんも大活躍でした。
悠木:そうですね。どの近衛妖精も、妖精の一員として「妖精夜行」を楽しんでくれていました。業務連絡用のLINEグループがあるんですけど、切り株とかに面白い投稿があると共有し合ったりしていて。私にとっては、仕事ができて「妖精夜行」自体を愛してくれている素敵な妖精さんたちです。
――以前、近衛妖精の主催でゴミ拾いを行ったとか。
悠木:そうなんです! 近衛妖精と、有志で集まった妖精さんが東京のゴミを拾うというリアルイベントを開催していました。参加者の中にゴミの分別に詳しい妖精さんがいたそうで、作業自体、すごく捗ったという報告をいただいています。マイトングを持参していた妖精さんもいたくらいです(笑)。
――(笑)
悠木:あと近衛妖精たちがワイルドで、雨が降ってもカッパを着ていなかったらしいんです。それを妖精さんたちが心配して助けてくれたというエピソードも聞いています(笑)。
――さすが有志の妖精さん、頼りになりますね(笑)。イベントもみなさんで作り上げている感があります。
悠木:インターネットでやり取りしていた人と実際に会うのは怖いところもあるんじゃないかなと思うんですけど、「妖精夜行」を通しているからみんな安心できたんじゃないかなって。正直、こういった運営をするうえで、本来はすべての意見に応えることはできないんですよ。しかも、少し不満が溜まってしまうとサポート側の人たちにヘイトが向いてしまいます。
でも「妖精夜行」に関してはそれがほとんどなくて。むしろ率先して近衛妖精たちを手伝おうとしてくれていて、すごく嬉しかったです。