メロディ、歌詞、衣装、MV……妖精夜行で生まれた数多の魅力を内包し、参加者と共に作り上げた珠玉の表題曲――短期連載「はぐれ妖精の妖精夜行見聞録」第2回：悠木碧さんインタビュー【中編】

実写とアニメーションの融合によって描かれる「妖精夜行」の世界

――『妖精夜行』はMVも制作されていましたが、映像内に世界観が凝縮された内容に仕上がっていますね。

悠木：今回は絵本を読んでいるようなテーマで作らせていただきました。私自身、絵本のような世界観は好きですし、『妖精夜行』との取り合わせもすごく良いと思ったので。

――“森”の姿を見られる貴重な映像でもあります。

悠木：キービジュアルやPOP UP STOREのデザインなどにも描かれていますが、それぞれちょっとずつ違いがあるんですよね。それも「森はひとつの形をしていない」という意図を込めていたりします。

――今回、実写の悠木さんとアニメーションを組み合わせた映像となっています。アニメーション制作にあたってなにかオーダーは伝えましたか？

悠木：「妖精夜行」の森は妖精たちを囲っていて、夜になると妖精たちが盛り上がる。だけど、外側の人間は森を恐れていて……といったストーリーを伝えました。

そこから絵コンテを描いていただくことになりましたが、監督のこれまでの作品を見ただけで超ハイセンスな人だとわかっていたんです。私自身、ワクワクしながら撮影日を迎えることができました。

――撮影自体はどんな環境で？

悠木：実は、ほとんど静止画の写真で、歩いているところや本を開くところのような単発のシーンだけ動画という形なんですよ。だから撮影時の私が見ているのは、普通の白ホリのスタジオです（笑）。どんな映像になるのかは事前に説明いただいているので、それを想像しながらお芝居をしつつ、仕上がりを楽しみに撮影していました。

撮影中は、監督が良かったところを逐一きちんと伝えてくださって。そのうえで、じゃあ次はこういう風にできますね、とか、妖精たちの見せ方についてアドバイスをくれたりして、安心感が半端なかったです。

マッシュトラント氏が手掛ける「妖精夜行」ならではの衣装

――衣装はクラウドファンディングの超過分でグレードアップしたというお話でしたが、具体的にどんなところが？

悠木：今回、ずっと衣装をお願いしてみたかったマッシュトラントさんという衣装製作のアーティストさんに依頼をしました。私が初めてマッシュさんの衣装を拝見したのが『NieR:Automata』の舞台『少年ヨルハ』だったんですけど、そのときの衣装がゲーム内の特徴を捉えつつ、ちゃんと現実に落とし込んだ感じが伝わってくるもので、「この人のセンスはすごい！いつかご一緒してみたい！」と思って。そして今回、それが叶って、私としても大きなモチベーションとなりました。

――「妖精夜行」のイメージを伝えて依頼した形なのでしょうか？

悠木：そうなんです。最初にイメージをお伝えしたら何パターンも提案してくださって。その中からイメージに近いものをセレクトして、そこから生地の取り寄せてくださったり、一からの染色なんかもしてくださいました。

「足が動物だと良いな」なんてお話したら、本当に蹄を付けてくれて！本当にすごいなと思いました。普通の衣装さんではなく、造形までできるファッションアーティストなんですよね。

――森を彷彿とさせる細工が随所に施されていますね。

悠木：「妖精夜行」の中央にある“森”という存在を衣装の至るところに盛り込んでいただいています。色に関しても、夜の森だから緑ではなく、「妖精夜行」のコンセプトカラーでもある紺色に寄せていただいたり。

他にも、くっついているイキモノは徐々に朽ちていくような表現が施されていたり、コルセットは蝶の翅脈（しみゃく）がイメージされていたりして。そして角もすごくて、片方は生命、もう片方は死を象徴しているんですけど、これで生命の循環が表されています。全体的に、非常にストーリー性のある衣装に仕立てていただきました。

――そんな衣装はもちろん、詩や曲、映像、すべてがマッチしていますね。

悠木：おどろおどろしさがありつつも、かわいいという絶妙な世界観を映像で表現していただきました。衣装自体がストーリーに沿っているからこそマッチしているんじゃないかなと思います。

――そして、映像制作や衣装など魅力的な要素が多々ありますが、MVの中には支援してくれた妖精さんの名前が載っているシーンも。ただのクレジットではなく、映像の世界観に沿った載せ方でおしゃれだなと思いました。

悠木：クラウドファンディングならではですよね。みんなと一緒に作り上げたものが手に入ることなんて、そうそうありませんから。誰より私が一番嬉しいんじゃないかなと思っています。