『志方あきこコンサート2010~パンタレア~』レポート

2時間半に及ぶ“リアルな夢物語”!『志方あきこコンサート2010~パンタレア~』レポート

 「森の奥深くに大切に守られた神の花“パンタレア”。年に一度の開花を待ちわびる精霊や鳥獣(とりけもの)たちが集い、音楽の祭典が始まる。やがて満開の“パンタレア”の下(もと)で迎える至福のときを、さあ、ともに祝おう」。

 10月16日にディファ有明にて開催されたコンサートの模様をお届けします。

(会場に一歩踏み入れると、場内にはコンサート用に新たに用意された新曲「森羅」がBGMとして流れる中、ステージ中央に据えられた巨大なスクリーンにはこれから語られる物語の舞台が静かに映し出されている。)

 大きな期待と緊張感のなか始まった第一部では、ブズーキやダブルパーカッションを中心に、極力同期音源を使用しない『ライブ』ならではのアレンジで進行していく。「シャラノワールの森」「朱隠し」「まほろば」「花帰葬」「Sorriso」など、たおやかで幻想的な歌の数々によって音楽の祭典が綴られていく。

 志方あきこの楽曲には欠かせない存在であるブズーキなどの民族楽器と、ダブルパーカッションによる湧き上がるようなリズム、それに加えて「朱隠し」「まほろば」では二十絃箏をフィーチャー。さらに「Sorriso」では志方あきこのボーカルとピアノ伴奏のみで繊細にその世界観を表現していく。“和/オリエンタル/エスニック/中近東”など色々な民族音楽の要素が絡み合った独特な雰囲気のなか、志方あきこの透明な歌声が、美しい声のグラデーションを描きながら情感的な一篇一篇の物語をしたためていた。

 同期音源を加えより躍動感を増した第二部では、「風と羅針盤」「遥かなる旅路」「うみねこのなく頃に」「片翼の鳥」「ロマの娘」「金環蝕」などを軸に、パンタレアの開花に向けて森中の生命が“宴”に興じてゆく姿を描いていく。このコンサートのメインテーマ「Pantalea」で歓喜の瞬間を迎えるまで、様々な物語が紡がれていった。

 民族音楽と麗美な歌声とが織りなす楽曲の数々が、1曲ごとに表情を変えてゆく。とくに第二部では、次第に高揚してゆく感情の揺れも見せながら物語を進めていたのも印象深かった。時には穏やかな調べに包まれ、時には異世界へ感情を誘われ、時には大地を揺さぶる躍動感に思わず手拍子が沸き起こる。そんな風景が、パンタレアという物語を通して展開されていった。

 第一部、二部を通してほとんどMCを入れることなく、“奇跡の花が開花してゆく様”を語り奏でるように、ほぼノンストップのまま歌と演奏のみで物語を綴れ織っていた。それらの物語の心象をより増幅させるように、スクリーンには物語のイメージ映像が映し出され、美しい照明効果と相まって、物語に彩りを加えていた。
 会場中を埋めつくした満員の観客たちは、舞台上で織りなす幻想耽美な物語を受け止めながら、一人一人が、みずからの心のスクリーンの中へ、「パンタレアの花が咲くまでの物語」を、それぞれの解釈を通し映し出していたに違いない。

 奇跡の花、パンタレアの開花で最高潮に達した客席からのアンコールに応え、志方あきこを始めとするメンバーが再びステージに。本編を通して維持された幸せな緊張感とは打って変わって、メンバーとの軽妙なやり取りが繰り広げられる。それを経て披露されたアンコール曲は、これまでの壮麗な組曲的な世界観とは一転して、ダーク&アグレッシブな「EXEC_over.METHOD_SUBLIMATION/.~ee wassa sos yehar」! 本編とは真逆な姿を描き出したことで、志方あきこの異なる表情を伺い知れた気がした。もちろんこちらの姿も、印象深く胸のスクリーンへと、その様が焼き付けられていった。

 2時間半に及ぶ“リアルな夢物語”“ファンタジックな異世界の扉を開放しながら触れていたひととき”は、訪れた人たちの心の中へ、いろんな想像を膨らませてゆける蕾を植えつけていった。きっと誰もが、家路に着くまでの間、それぞれの「パンタレア」を、その胸の中で開花させていたに違いない。

<TEXT:長澤智典>

>>志方あきこOFFICIAL WEBSITE

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