アニメの歴史に新たな1ページが刻まれる――山本寛監督渾身の大作『フラクタル』が放送開始で小林ゆうさん・津田美波さんの対談をお届け「『フラクタル』の世界が夢に出てくるぐらいです」

　毎週木曜24:45から放送されているフジテレビ“ノイタミナ”枠で、2011年1月13日から始まる完全オリジナル大作アニメが『フラクタル』だ。

　『フラクタル』は、アニメ『かんなぎ』や実写映画『私の優しくない先輩』監督として知られる山本寛監督が、脚本・岡田麿里氏、ストーリー原案・東浩紀氏らと共に手がける初のオリジナルアニメ作品だ。『フラクタル』の舞台は、“フラクタルシステム”によって管理され、人々は働く必要もなく、“ドッペル”と呼ばれる存在に囲まれて暮らしている退廃的な楽園のような世界。システムの完成から1000年が過ぎ、崩壊が始まった世界で、少年クレインが少女フリュネに出会うところから物語はスタートする。独特の世界観と豪華な制作チームに加え、山本監督が「失敗すれば引退も辞さない。」とする覚悟の声明文を発表したことでも注目を集める作品だ。

　今回、主人公のクレインを演じる小林ゆうさん、ヒロインの一人・フリュネを演じる津田美波さんにお話を伺ったので紹介しよう。

──演じているキャラクターをご紹介お願いします。

小林ゆうさん（クレイン役／以下小林）：クレイン役を演じさせていただいてます、小林ゆうと申します。クレインは、年齢は14歳で心優しい草食系の少年。"フラクタルシステム"が確立された世界で、孤島でほぼ一人で暮らしています。お友達も家族も"ドッペル"という中で、小さい頃から暮らしている男の子です。

津田美波さん（フリュネ役／以下津田）：ダブルヒロインの一人、フリュネを演じさせていただいております。フリュネは"僧院"に属する巫女で、一言で表すなら謎……という感じですね。クレインにとっても世界にとっても鍵になるキャラクターです。


──5話まで収録されたとのことですが、キャラクターへの印象、また変化があれは教えてください。

小林：ここまで一緒に歩ませていただいて、毎回すごく発見があります。最初は草食系で受身の、どこにでもいる少年と捉えていたんです。でも"意外とそうでもないところをお持ちじゃないんですか？"と感じたりもして。それが元から、内に持っていたのかフリュネたちとの関わりのなかで成長してきたのかは、そのあたりは皆様に感じていただければと思います。毎回、色々な変化や心の動きに私も感動して、一緒に歩ませていただいている感覚が嬉しいです。

津田：フリュネの最初の印象は大人しそうで、巫女として清楚な印象でした。もちろんそういうところもあるんですが、クレインと一緒の時に結構強気な部分や、泣いたり笑ったり感情を表に出す子なので、そこが最初の印象と比べて驚いたところであり、演じるときに大事にしないと……という部分です。


──津田さんはメインヒロインの実感はわいてきましたか？

津田：フリュネって、いかにも"お姫様っぽい"女の子ではないので、"ヒロインらしい"感じはないかもしれません。でもクレインとの関係がどうなっていくかが楽しみです。


──そんな津田さんとフリュネ、小林さんからみていかがですか？

小林：フリュネというのはすごく透明感があって、私から見ると"ヒロイン"という感じがします。その"たたずまい"や"凛"としたところにクレインはドギマギしてしまうんです。そういう目線で見てると私もドキッとします。ドキドキ要素をすごくくださるフリュネですが、周りの空気をスッと澄んだ空気にしてしまうような、そんな魅力を津田さんが出されていて、すごく素敵だと思っています。

津田：（照れ笑いしながら）フリュネはすっと芯が通ってまっすぐ立っているようなところがあると思います。どちらかといえばクレインよりもしっかりしているような。お姉さんとして引っ張っていくような感じですね。ネッサ（花澤香菜さんが演じるドッペルの少女）が妹系でかわいいヒロインだとしたら、フリュネは凛としたヒロインです。

小林：素敵です！美しい清らかな感じがする、そういう方だと思います。


──スタジオの雰囲気や収録中のエピソードを教えてください。

小林：アフレコが始まるとすごくいい緊張感があります。共演者の方とも素敵な緊張感があるねって話していたんです。もちろんコミカルでアットホームなシーンもあるんですが、ずっと通っている空気といいますか、『フラクタル』の世界の空気感みたいなものがずっとスタジオにも漂っていると思うんです。スタジオでは輪になって座って、いつもみんなで話してますね。みんなが笑顔になるようなことを言ってくださるのは浅沼さん（スンダ役の浅沼晋太郎さん）でしょうか。

津田：私はまだまだ現場経験が少ないですし、ヒロイン役をいただくのは初めてなので、本当に緊張しています。現場には緊張感があるんですが、ゆうさんや周りの方が本当に暖かい方ばかりで。緊張感だけでなく皆さんが見守って支えてくださって、素敵な現場だと思います。優しい方が多くて、おなかがすいたら誰かがお菓子をさしだすみたいなアットホームな空気です。

──作品の世界観やストーリーで印象に残ったところはありますか？

小林：フラクタルシステムが存在する世界で、ドッペルという存在がいて……という状況が、クレインさんにとっては当たり前の世界なんだなと。私にはすごく新鮮だったんですが、それを"クレインさんにとっての普通"に落としこむのが興味深くて面白かったです。スタッフ様が台詞ひとつひとつにこだわりを持って紡いでくださっているのを、台本からも感じるので、込められたものを大切に読み取って演じさせていただけるように頑張らなければと思っています。

津田：最初は世界観が難しく感じて、"文字がいっぱいでどうしよう"って思ったんですが、だんだん演じながら世界を理解するなかで、現実の世界でもこれからこういうことが起こりうるんだろうなと思いましたなって。クレインのような家庭、状況がこれから生まれたりするのかな……と思うと少し寂しくもあり、印象的でした。


──"フラクタルシステム"で働かなくても暮らせて、まわりにドッペルがいる世界、ご自身ならいかがですか？

津田：いろいろやってほしいなって気持ちはあるんですけど（笑）。うーん……、自分がもう一人いてくれたらって思うことはあります。「私の代わりにやっておいて！」なんて。でも私がドッペルに何をさせてるかとかわからなくなりそうだし、ちょっと怖いです。

小林：『フラクタル』の世界はドッペルがたくさんいて、いくつも家庭が持てるような世界なんです。私は、今の自分のお仕事が"夢"だと思っていて、働けないというのはつらいことなので、今みたいにお仕事させていただけるのが一番うれしいです。クレインはドッペルに囲まれているけど、心の何処かで寂しさのような"わだかまり"を持ってるんです。"どこか、私たちと同じなんだろうな"って考えてます。


──緻密な世界観がある『フラクタル』ですが、山本監督とお話はされたんですか？

小林：世界観をちゃんと理解できたのも、山本監督が最初にちゃんと説明してくれたからなんです。（世界観の）説明のあとに質問タイムを作って、わからないところがわかるまで「なんでも聞いてください」って、丁寧に教えてくださいました。

津田：最初、スーツをバリバリに着こんでいて、怒ると怖い方なのかな？とか思っていたんですが、なんでも質問に答えてくださるのでお話しやすいです。そんな素敵な方なんですけど、時々いじられるというか、ちょっかい出されるというか（笑）。お兄さん的な存在で私は本当に助かっております（笑）。

小林：今回初めてお世話になったのですが、すごくイ知的なとても素敵な方です。並々ならぬ情熱を傾けてくださっているのを感じているので、私も終わらない世界に立ち向かう決意を固めているところです。ありがたいプレッシャーがあって、今は夢に見るぐらい頭の中が『フラクタル』でいっぱいです。


──最後に作品のみどころと読者へのメッセージをお願いします。

小林：『フラクタル』はオリジナルアニメーションということで、どんな作品になるか楽しみに思っていただけていると、ありがたいなと思っています。この作品様はスタッフ・キャストの皆様が情熱を持ってものすごい気合で作っている作品です。その中で私も大役を頂いて本当に身が引き締まる想いです。私もクレインの魅力を伝えられるように頑張っています。ぜひ、一話も見逃さずにご覧になってください。

津田：このお話は世界観がすごくしっかりしていて、スタッフさんも情熱を注いでくださっている作品です。世界観だけでなく、キャラクター一人一人の物語が本当にちゃんと作られているので、そこも見ていただければと思います。私もフリュネの物語をしっかり演じていければと思いますので、1月13日からの放送を本当によろしくお願いします。

（取材・文：中里キリ）

TVアニメ『フラクタル』
＜STAFF＞
監督：山本 寛
原作：マンデルブロ・エンジン
シリーズ構成：岡田麿里
ストーリー原案：東 浩紀
キャラクター原案：左
キャラクターデザイン／総作画監督：田代雅子
セットデザイン：青木智由紀／イノセユキエ
プロップデザイン：田中裕介
メカニックデザイン：林 勇雄
美術監督／イメージデザイン：袈裟丸絵美
色彩設計：中島和子
撮影監督：石黒晴嗣
編集：坪根健太郎
音楽：鹿野草平
音響監督：鶴岡陽太
プロダクション協力： Ordet
アニメーション制作：A-１ Pictures

＜CAST＞
クレイン：小林ゆう
フリュネ：津田美波
ネッサ：花澤香菜
エンリ：井口裕香
スンダ：浅沼晋太郎

>>アニメ『フラクタル』公式サイト