TVアニメ『アイアンマン』ブルーレイ&DVDリリース記念佐藤雄三監督スペシャルインタビュー――「最初のトニーは“似過ぎてNG” 2度目は“アニメっぽすぎてNG”でした」
マッドハウス、ソニー・ピクチャーズ、アニマックスという豪華制作陣が手を組み、マーベル作品アニメ化シリーズ第一弾として制作されたTVアニメ『アイアンマン』。そのブルーレイ&DVDが、2011年6月22日にリリースされることが決定した。
原作の『アイアンマン』は、多くのアメリカン・ヒーローを生み出しているマーベル・コミック刊行のアメコミ誌『Tales of Suspense』に、1963年に初登場。その後現在に至るまで数多のファンを魅了し続け、2008年にはロバート・ダウニー・Jr.を主演に実写映画化もされた超人気キャラクターだ。
そして原作と実写映画を元に制作されたTVアニメ『アイアンマン』では、手に汗握るアクションシーンやアイアンマン・スーツの細かな描写はそのままに、日本版オリジナルストーリーを展開。アニメファンのみならず、アメコミファンや映画ファンまでも唸らせる結果となった。
今回は待望のブルーレイ&DVDの発売を記念し、TVアニメ『アイアンマン』の監督を担当した佐藤雄三氏にインタビューを実行。監督の目線から見た作品の魅力や、制作の裏話などを語ってもらった。
――アニメ版『アイアンマン』の監督をされることが決定したときの、心境をお聞かせください。
佐藤監督(以下佐藤):僕もよく知っている有名なタイトルだったので、そう言った意味でのプレッシャーはすごくありました。マーベル作品アニメ化シリーズのトップバッターだったので、一番スケジュールも短くて、放映まで間もないという中で作業に入ったんです。かといって、ファンも多い作品であり、コンセプト的な作りこみの部分も含めてすごく手間のかかる作品だったので、そこら辺はすごく苦労しました。
――どのくらいの期間で制作されたのですか?
佐藤:一番最初にお話を頂いた時点で、放映の8ヶ月くらい前だったと思います。そこからマーベルさんと密にやりとりをしながら進めたので、実作業に入ったのは半年前くらいでした。
――監督は、原作の『アイアンマン』に対してどんなイメージを持っていましたか?
佐藤:実写のロバート・ダウニー・Jr.が演じるトニー・スタークは、すごく強烈な“男性”というイメージ。資料で何冊かコミック本を頂いたのですが、トニーが戦いに嫌気がさしてアルコールに走ってしまったり、女性とのベッドシーンも多かったりと、かなりダークな内容も多かったんです。そういった部分も少しは拾っていますが、このアニメ版は年齢層が低い子たちにも見て欲しかったので、ダークさは極力抑え目にしました。
――お話を作成される際、日本を舞台にしたのは何故なんでしょうか?
佐藤:もともと、原作者のうちの一人であるウォーレン・エリスさんに頂いたプロットで「新しいエネルギーを作るためにスタークが来日する」というのがあったんです。彼に頂いた12本分のプロットをヒントにして、日本で井上敏樹さんに構成をお願いしました。
――物語はどのように制作されていったのでしょうか?
佐藤:さきほどのプロットをヒントにしつつ、井上さんが新たに出してくださったアイディアで、大きな話の道筋が構成されています。そのため、内容自体はすごく日本的なお話になっていると思います。スターク以外の登場人物はほとんど日本人ですし、周りで起こる出来事も日本的なことが多いですし。
――「日本的」ということですが、どの辺りを意識されたのでしょうか。
佐藤: 3話に出てくる消防隊のガテン系男性とのやりとりの部分なんかは、日本っぽいと思います。当初は横浜の中華街や赤レンガ倉庫のあたりの風景を入れようとしたんですが、それだと世界で流すときに日本の風景だとわかりにくいということで、NGでした(笑)。そういった部分は、ビル街の風景に置き換えたりしています。
――原作コミックや実写の映画がある作品ですが、そこで描かれていた要素を生かした部分はありますか?
佐藤:お話の道筋を辿るときに、重要なキャラクターとして4話で出てくるインセンや、マーベル作品ということでウルヴァリンを出した、という部分でしょうか。とくにインセンが出てくることで物語が動き出して、短い12話という中でラストに向かっていくという構成になっています。
――では逆に、この部分は削ろう、と思った部分はありますか?
佐藤:それはやっぱり、ベッドシーンとかは削りましたよ(笑)。“スタークらしさ”を意識すればそのほうが良いのかもしれませんが。
――TVアニメ『アイアンマン』は、次のお話に尾を引きつつも、一話ごとに歯切れの良いストーリー構成になっていますね。そういったスタイルは最初から決まっていたのですか?
佐藤:そうですね。アメコミらしさとしては、そっちの方が表現しやすいと思ったんです。年齢層的に、幅広い年代の方に楽しんでもらおうとしたら、ダークな話に振りすぎても、話をひっぱりすぎてもダメなのでテンポ良く、まとまった話に持っていくということを目指しました。
――キャラクターデザインの面で、苦労した部分はありますか?
佐藤:主役のトニー・スタークは、とても苦労しました。最初は実写のロバート・ダウニー・Jr.を意識してより近い感じにしたんですが、「似すぎている」ということでNGでした(笑)。そこで次の案として、スタークを少し若くして、ちょっと日本のアニメっぽい作りの、髭のないスタークを出してみたんです。が、これもトニー・スタークの大企業の重役としての重厚感が無い、と言うことでNGでした(笑)。そこから二転三転しつつ、今のキャラクターに落ち着いた感じですね。
――他のキャラクターは、トニーに比べるとスムーズに出来上がっていったのでしょうか?
佐藤:知佳はメインヒロインということで、わりと練りこみました。あとはそこまで苦労することなく決まりましたね。七海というキャラクターも、向こうからもともとのイメージはあったので。ただ彼女は若い女性記者という設定なのに、12話を通してほとんど着替えをさせてあげられなかった(衣装が1パターン)のが残念でした(笑)。
――監督自身、お気に入りのキャラクターはいますか?
佐藤:桜井ですね。信念を持っている、正義感の高い良いキャラだったと思います。
――ここは原作や実写と比べても自信があるぞ、という部分はありますか?
佐藤:日本の中で起きていくドラマの部分は、しっかり作ることができたと思います。桜井やインセン、知佳にまつわるお話もそうですし、12話というなかで盛りだくさんの内容になっているので、見応えも充分だと思いますね。
――ではファンのみなさんに、メッセージをお願いします。
佐藤:12本と言う短い話数ですが、内容も濃いですし、面白いドラマに仕上げることができたと思います。ぜひ楽しんで観ていただきたいです!
2011年7月からは、アメリカでの放映も予定されているというTVアニメ『アイアンマン』。実写版や原作では見ることのできないドラマやキャラクター、そして日本を舞台にしたスーパーヒーローの大活躍を、ぜひその目で確かめて欲しい。
<取材・文:杉山玲菜>
≪作品情報≫
【セル ブルーレイ】
『アイアンマン Blu-ray BOX (2枚組)』
14,800円(税込)
カラー/本編282分(1話約23分/全12話)
【セル DVD】
『アイアンマン DVD-BOX (4枚組)』
12,800円(税込)
カラー/本編282分(1話約23分/全12話)
―映像特典※セルブルーレイBOX のみ―
【Vol.1】★21世紀のヒーロー:「アイアンマン」のテクノロジー
★マーベル・アニメ ユニバース:「アイアンマン」の再創造 ★ノンテロップ・オープニング&エンディング
【Vol.2】★スペシャル対談 ★藤原啓治 インタビュー
【レンタルDVD】
・第1弾5月25日レンタル開始 VOL.1 第1話~第3話 収録 品番:RJD-80040 VOL.2 第4話~第6話 収録
・第2弾6月22日レンタル開始 VOL.3 第7話~第9話 収録 品番:RJD-80042 VOL.4 第10話~第12話 収録
発売・販売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
URL:http://store.sonypictures.jp/item/anime/BP-577.html
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