kzさんが見てきた過去と、これから目指す未来の世界に迫る。『FLAT』＆『DECORATOR EP』を同時リリースしたlivetune連続インタビュー-その3-

　“Google Chrome: Hatsune Miku (初音ミク)” Web CMソング『Tell Your World』のリリースで全世界から注目を集め、現在では『DEVIL SURVIVOR2 the ANIMATION』を始めとする多くのアニメ主題歌を担当するなど、精力的に活動を続ける音楽プロデューサー「kz」によるソロプロジェクト、livetune。

　3月5日（水）に、シングルCD『FLAT』とミニアルバム『DECORATOR EP』の2枚同時リリースし、2014年もさらなる躍進を期待させるクリエイターだ。

　今回、そんなkzさんに独占インタビュー。『FLAT』と『DECORATOR EP』両方のCDについて詳しくお聞きしたので、記事を3回に分けてご紹介していく。

　第1回目ではシングルCD『FLAT』、第2回目では『DECORATOR EP』についてお話を伺い、収録曲に込めた思いを語っていただいた。
>>第1回目インタビューはコチラ
>>第2回目インタビューはコチラ

　最後の記事となる今回は、ボーカロイドシーンと共に歩み、アニメ業界などに活躍の幅を広げ続けるkzさんが、いったいどんな未来へ進もうとしているのか。そのために、今後どういった活動をしていくのか……。彼の中にある世界の形をお聞きした。

【●大勢のライバルから刺激を受けて心境が変化した】

——今回のインタビューを振り返ってみると、次の世代へ贈るメッセージソングの「DECORATOR」から始まり、kzさんの“やりたい”が詰まった曲が並んだあと、バトンを託されたTeddyLoidさんが飾り付けた曲でラストを彩る……まさに“次へ繋げる”アルバムになっていますね。
kz：おぉ……本当ですね。無意識のうちに、ずいぶんと綺麗な流れになりました（笑）。

——『DECORATOR EP』の収録曲は、これまでkzさんが作ってきた曲とは違い、人と人の関わりを連想させる曲が多いと感じたのですが、何か心境の変化があったのでしょうか？
kz：それは……友達が増えたからですかね（笑）。周りを見渡すと、Fukaseくんや、きゃりー（きゃりーぱみゅぱみゅ）、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔くんだったり、デビュー時期や世代が同じ人が、すごく頑張っているんです。そんな姿を見ると、仲間として、ライバルとして刺激を受けますね。そういった気持ちから「DECORATOR」のような“みんなで頑張ろうぜ”という曲が作りたくなったのかもしれません。

——では、次のアルバムは友達がテーマになるかもしれませんね（笑）
kz：友達100人できるかなみたいな感じですかね（笑）。

【●未来に響かせる音を探し続ける】

——これまでのボーカロイドシーンを描いた『Tell Your World EP』、過去を振り返る『Re:Dial』、そして世代交代の意味を込めた『DECORATOR EP』。アルバムのテーマが少しずつ先へ歩んでいることから、次は“未来”という言葉も連想できますよね。
kz：僕自身、今現在はあまりいい状態だと思っていないんです。それはボーカロイドに限った話ではなく、さまざまなシーンが昔に囚われがちで、停滞しているイメージがあるんです。これは、みんなが漠然と思っていることかもしれなくて、今はその解決方法を、がむしゃらに探している時なんじゃないかと思っています。だから、僕も新たな表現方法や音を探し続けて、先へ進むための何かを見つけたいですね。

——自分自身が今後どうなって行くのかも、まだ想像できていないと。
kz：わからないですね。とりあえず、ヴォーカルタイアップの「livetune adding シリーズ」の曲が溜まってきたので、今年はアルバムのリリースを目標にしていこうと思っています。今現在で6曲なので、もう6曲くらいあればできるかな？

——では、今年もアニメソングの制作に大忙しですね（笑）。
kz：同時期に3本をこなすのは辛いことは最近学んだので、タイミングを考えますけどね！　1本のアニメに対して複数の曲を作るならまだしも、別々の作品だとその都度で気持ちを切り替えなければならなくて、本当に大変なんですよ（笑）。

——『FLAT』の時にもチラっとお話がありましたが、今回は『DECORATOR EP』との並行作業で、本当にお忙しかったのでは？（笑）
kz：1年前は『Re:Dial』、その1年前は『Tell Your World EP』でしたし、なぜかこの時期になると毎年バタバタしていますよね。もともと、夏休みの宿題は最終日までやらないタイプだったので、いつも切羽詰まって「もっと前からちゃんとやってないんだ！」と自分を罵っている気がします（笑）。

——1年の活動の集大成という意味でも、忙しくなりがちな時期ですよね（笑）
kz：ただ、僕はある程度の余裕が無いほうが、自分へのプレッシャーになって、いい曲を作れるらしいです。昔、レコード会社の方に「切羽詰まった時のほうがいい曲作れますよね」言われたことがあって「全然嬉しくないです！」て答えた思い出が（笑）。

——あはは（笑）。

【●ryoさんの見た世界と、自分が見た世界の形】

——こうしてお話をしていると、kzさんがニコニコ動画に動画を投稿なさっていたのを、とても懐かしく感じます。
kz：ボーカロイドの曲をもう少し作りたいという気持ちもあるんですが、以前にもまして個人的に使える時間が減っているので、やっぱり難しいですよね。

——この7年間でボーカロイドを取り巻く環境も大きく変わりましたよね。

kz：「DECORATOR」も「7年は長いな……」という思いがスタート地点でしたね。『DIVA』シリーズも5年間続いていますし、自分の中に作品やボーカロイドに対する想がたくさんあったので、作るときも悩まず、スッと曲にできました。

——そんな“ボーカロイドの歴史を描いた曲”という点は、『初音ミク -Project DIVA- F 』の主題歌だったryo(supercell) さんの「ODDS＆ENDS」に共通しますね。
kz：「ODDS＆ENDS」は本当にいい曲ですよね。個人的な想像ですが、ryoさんは「Tell Your World」を聞いたあと、あの曲を作ったんだと思っています。いわば、「ODDS＆ENDS」はryoさんの世界から見た「Tell Your World」なんじゃないかな……と。

——ryoさんなりの「Tell Your World」ですか。
kz：「Tell Your World」はネットカルチャーというか、世界そのものをイメージした曲なんです。そんなテーマに匹敵する物って、国歌とか、オリンピックのテーマくらいですよね。だからこそ逆に、「ODDS＆ENDS」はボーカロイドシーンという限定的な世界をryoさんなりに描いた「Tell Your World」なんだと思います。

——どちらも、お互いの世界におけるボーカロイドをまとめた1曲だったわけですね。
kz：ただ、これを一回やってしまうと、風呂敷を広げすぎて、たたむのがとにかく大変なんですよね（笑）。「ODDS＆ENDS」以降、ryoさんはボーカロイド曲を発表してないので、新曲がどんな作品になるのかすごく楽しみにしています（笑）。

——これは、ryoさんのハードルが上がりましたね（笑）。ちなみに、kzさんはボーカロイドの曲をこれからもリリースしていくお気持ちはありますか？
kz：もちろん、機会があればやっていきたいですね。先ほども話しましたが、個人的につくるのは難しいので、こういったアルバムなど、なんらかの形で作っていきたいと思っています。

——ありがとうございました。では、最後に読者へのメッセージをお願いいたします。
kz：今回は『FLAT』と『DECORATOR EP』の同日発売という、今までに無い形でのリリースとなりました。これまでアニメソングから、ボーカロイドから、といったように僕の曲をどちらか一方で聞いていた方にも、両方を聞いてもらえるいい機会なので、どちらも楽しんで頂ければ嬉しいです！　今年もアルバムを作りつつ、頑張ってアニメソングを作って行きますので、よろしくお願いします！


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