音楽
『月刊少女野崎くん』OP担当オーイシマサヨシさんインタビュー前編

テレビアニメ『月刊少女野崎くん』OPで新たなキャリアをスタートさせたオーイシマサヨシさんインタビュー【前編】

 「気分は新人です」。清々しい表情でフレッシュな気持ちを語ってくれたのは、3ピースバンドSound Scheduleでの活動や、テレビアニメ『ダイヤのA』主題歌などで知られるシンガーソングライターの大石昌良さん。アニメ主題歌セクターでのソロアカウント(=オーイシマサヨシ名義)を設立し、その第一弾となるシングルをリリースする。

 オーイシマサヨシのデビュー作となるのは、現在放送中のテレビアニメ『月刊少女野崎くん』OPテーマ『君じゃなきゃダメみたい』。耳に残るパワフルな歌声に心を射抜かれた視聴者も多いのではないだろうか。今作は、作詞・作曲・アレンジに至るまですべてオーイシさんが担当。楽曲自体はシンプルな構成だが、ファンキーなギターフレーズ、にぎやかなブラスセクションを大胆に導入するなど、オーイシさん独特の視点や感性が大いに発揮されたナンバーとなっている。

 もともと“アニメが大好きで、この世界で本格的に勝負したいとずっと思っていた”というオーイシさん。インタビュー前編では、アニメシーンで本格的に活動するにあたっての心意気や、タイトル曲の構想について教えてもらった。


●「これまでやってきた音楽活動で身につけたものはムダじゃなかった」

──今作はカタカナ名義での初シングルになりますが、アニメ主題歌セクターでのソロアカウントを作った理由を改めてお伺いしてもいいですか?

オーイシマサヨシさん(以下オーイシ、敬称略):バンド時代も含めて14年くらい音楽活動をしているんですけど、アニメの世界はここ最近になって関わらせていただくようになって知れば知るほど特殊な現場だなと。自分の身をそこのステージに置く場合は、リセットした状態でアーティスト活動をしてみたいという気持ちが出てきて、名義を変えてみようかなと。ただ、赤の他人でもなんでもないのでまったく別の名前にするのはどうなんだろと思って、カタカナに変えるくらいのリニューアル感で。

──オーイシさんというとSound Scheduleでのバンド活動をはじめ豊富なキャリアをお持ちですが、今、アニメの世界から声をかけられるようになった理由について、ご自身ではどう分析されていますか。

オーイシ:う~ん……なんでしょうね(笑)。もともとはTom-H@ckくんと一緒に『ダイヤのA』のオープニング(Tom-H@ck featuring 大石昌良『Go EXCEED!!』)を歌わせてもらったことからアニメの話を少しずついただけるようになって……縁としか言いようがないですね。ただひとつ言えることは14年前にこの話がきていたとしたら、当時の自分がしっかりとしたパフォーマンスで応えられたかというとそうじゃなかった気がするんです。なので、これまでやってきた音楽活動で身につけたものはムダじゃなかったなと改めてこの作品で思えましたし、すごくカッコつけた中二的なことを言うと──機が熟したといいますか。「こういう音に落とし込みたい」という要望に、しっかりと自分のポテンシャルを持っていけるという意味で頑張ってきたかいがあったなと。あと僕はもともと漫画、アニメが大好きだったんです。だから趣味が実益を伴うじゃないですけど、すごく光栄に思っています。

──ちなみに、どんなアニメが好きなんですか?

オーイシ:とりあえず、ジブリのDVDが家にたくさんあります。他にも『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』、『時をかける少女』……あとはなんだろうなぁ。どんなアニメが好きっていうのはないんですけど、ラノベ系が好きですね。ラノベ系ってセリフに情報が多いから観ていて楽しいんです。あと、放送中のアニメは大体観ています。アニメ好きの方々と同じプロセスで第一話を観て「今期はこれを観ようかなぁ」とか決めたり……。

──さきほど“特殊な世界”と形容されていましたが、オーイシさんからみたアニメの魅力とは?

オーイシ:アニメを観ているといろいろな気持ちになるんですよね。アニメを観ているときの自分の顔って一番ダメな顔をしていると思うんです(笑)。でもそういうダメな部分を等身大でぶつけられるのがアニメのいいところなのかなって。カッコつけなくても良いじゃないですか。いくらでも自分をさらけ出せる場所なんですよね。

 そういうことを感じるなかで、自分の力をアニメシーンで試してみたいと思っていたんです。好きなモノに対して自分の力がどこまで通用するのか、勝負してみたいなと。それでカタカナ名義にしたんです。新しい自分を見せたい、まっさらな状態で自分のことを評価してもらいたいって。やっぱり名前を変えると不思議なもので、今までしょってきたリュックを下した感じがあって、好き勝手できてる感じですね。もう、気持ち的には“新人”です。間違いないです。これを機に知ってくれるかたもいると思いますけど、その一方で「この声を聴いたことあると思ったら『ダイヤのA』の人か」「このひとSound Scheduleのボーカルじゃないの!?」なんて感想ももらえていて、めちゃくちゃ嬉しいです。


●「いつか“あれってファンクだったんだ”みたいな感じで気づいてくれたら」

──うんうん。話が少し戻るんですけど、最近はロック畑の人がアニメ好きを公言したり、アニメの主題歌に関わったりということも増えましたよね。本当にジャンルの隔たりがなくなってきているように感じます。

オーイシ:むしろなぜ今まで交わらなかったのか不思議なくらい。でも交わることで音楽の世界が変わっていくことはすごくいいなと。ときどきバンド仲間から“自分はソウルしか聴かないから”みたいな話が聞こえてくると、勿体ないなぁって思うんですよね。それはそれでひとつの生き方としてカッコいいとは思うんですけど……。

 今の若い子たちは良い音楽、面白い音楽に対しての飛びつき方と瞬発力がハンパないし、カテゴリーにこだわらず中身を抽出して上手に自分で楽しむ器用なコたちが多いように感じるんです。実際『君じゃなきゃダメみたい』はファンクな音ですけど、そんなの関係なくみんな聴いてくれているし。歳を重ねていって、いつか“あれってファンクだったんだ”みたいな感じで気づいてくれたら嬉しい(笑)。

──そこが重要ではなく、いかに楽しめるかが大事ということですよね。『君じゃなきゃダメみたい』はイントロのギターからしてファンク色は濃い目なので、それに気づく日もそう遠くはなさそうですが。

オーイシ:そうなんです(笑)。原作の楽しくポップな部分を表現したいなと思ったときに、そのフレーズが生まれていって。ギターも僕が弾いているんですけど、これ見よがしにスラップ奏法というのをやっていて……ギターを覚えたての中学生みたいな感じで、イントロが始まるたびに笑っちゃうんですよ。ホント、大人げないなぁと(笑)。

 僕は弾き語りでもいろいろなステージに出させてもらっているんですが、ああいう音を聴いてアコースティックギターに興味を持ってもらえたり、こういう奏法があるんだなって知ってもらう機会になったりしたら嬉しい。でも基本的には“コレ、カッコいいでしょ?”って心構えの元で弾いているので深い考えはないんですけどね(笑)。


<後編へ続く -8/24(日)掲載予定->


[取材&文・逆井マリ]



神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。

この記事をかいた人

逆井マリ
神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。

担当記事

関連記事
絶望系アニソンシンガーの名のもと、孤独や哀しみに寄り添い進化を続けるReoNa TVアニメ『シャドーハウス』のエンディングテーマ「ないない」で未知の扉を開くまで/インタビュー前編
4月からTOKYOMXほかで放送中のTVアニメ『シャドーハウス』(原作:ソウマトウ)は、顔のない一族「シャドー」と、その“顔”としてシャドーに仕える世話係の「生き人形」が織りなすゴシックミステリーだ。物語の最後を飾るのは、ReoNaの「ないない」。ゴシック/クラシックとエレクトロを融合したサウンドで、『シャドーハウス』の妖しげな美しさと世界観を(毒にも近い苦味を忍ばせながら)醸し出した本作は、観るものに深いふかい余韻を残す――。その「ないない」をタイトルとしたシングルが、5月12日(水)に待望のリリース。初回生産限定盤(CD+DVD)、通常盤(CD)、期間生産限定盤(CD+DVD)には、「ないない」の他、多角的に絶望に寄り添った3曲と「ないない」のインストナンバー・TVサイズバージョン(それぞれの盤に新曲2曲ずつ)が収められている。下記インタビューは「ないない」が生まれるまでの軌跡を辿ったもの。後半のインタビューでは、本作のMV、収録曲の制作エピソードについてたっぷりと話を聞いているので、楽しみに待っていてほしい。新しいReoNaらしさが生まれた「ないない」――『シャドーハウス』のミステリアスな世界観に寄り添った「ないない」という素晴らしい曲が届きました。タイトルだ...
関連記事
TVアニメ『ふたりはプリキュア』の声優・本名陽子&ゆかな、西尾大介監督、鷲尾天プロデューサーがクロストーク「子どもたちに嘘はつきたくない」
プリキュアシリーズの原点となるTVアニメ『ふたりはプリキュア』の総集編Blu-ray/DVD『ふたりはプリキュア総集編~ぶっちゃけ、ありえな~い!?2020edition~』が2月26日に発売されます。『ふたりはプリキュア』は今から16年前の2004年2月から放送がスタートしました。その登場は鮮烈でした。「女の子だって暴れたい!」をコンセプトとしたダイナミックな素手でのバトル、女の子といえば“ピンク”という概念を覆す白と黒の衣装、男性ヒーローの不在、“きれいごとだけではない”日常と友情……。プリキュアシリーズの大きなテーマである多様性は、ここから生まれ、そして子どもたちに根付いていきました。レジェンドともいえる作品の主人公2人を演じたのは、本名陽子さん(美墨なぎさ/キュアブラック役)、ゆかなさん(雪城ほのか/キュアホワイト役)。そして、この作品を生み出したのは、当時女児向けアニメに初挑戦であったお二人=シリーズディレクターの西尾大介さん、プロデューサーの鷲尾天さん。総集編の発売に寄せて、4人にお話をうかがう機会をいただきました(さらに飛び入りで、当時キャスティングを担当していた小浜匠さんも参加してくださいました)。にこやかな笑顔でインタビューに答え...
関連記事
「普通のプリキュアと、もう一本アニメを作っているんじゃないかっていう感覚だった」 『スター☆トゥインクルプリキュア』のクライマックスに向けてシリーズ構成・脚本 村山功氏が想いを語る
クライマックスに向け加速しているTVアニメ『スター☆トゥインクルプリキュア』(以下『スタプリ』)。最終回のアフレコが終わった翌週の12月下旬。シリーズ構成・脚本を担当している村山功氏に、クライマックスに向けたお話やプリキュアに対する思いなどを語ってもらいました。村山さんは、『ふたりはプリキュアSplash☆Star』から担当されており、『魔法つかいプリキュア!』では、シリーズ構成・脚本を担当。もちろん、それ以降の『キラキラ☆プリキュアアラモード』『HUGっと!プリキュア』でも、脚本を担当されています。そんな、プリキュアのことを考え続けている村山さんが挑んだ「宇宙✕プリキュア=多様性」のプリキュアとは。ラストに向けて心高ぶるみなさんに、ぜひ読んでほしいインタビューになっています。また、今回のインタビューワーは、お子さんのいらしゃる女性のライターさんです。母子で観るプリキュアという幸せな時間を過ごしていることをイマジネーションして読み進めていただければと思います。最終回の収録を終えた心境──唐突ですが、毎週子どもと一緒に楽しく拝見させてもらっています。今日は宜しくお願いします。村山:ああ、それは嬉しいです。ありがとうございます。──...
もっと見る
関連記事
『キラッとプリ☆チャン』シリーズ構成・脚本 兵頭一歩さんに聞く、やりがいに溢れたプリ☆チャンとの3年間|語っても語りつくせないほどのエピソードがある――【インタビュー】
今年5月、TVアニメ『キラッとプリ☆チャン』の最終話が放映され、約3年、全153話に及んだ歴史に幕を下ろしました。7月23日(金)には、シーズン3の第127話から第138話を収録した『キラッとプリ☆チャンシーズン3Blu-ray&DVDBOX3』が発売!アニメイトタイムズでは『キラッとプリ☆チャン』の楽曲を手掛けられた松井さんに続いて、シリーズ構成・脚本を務めた兵頭一歩さんにオンラインでお話をうかがいました。兵頭さんは『キラッとプリ☆チャン』をはじめ、『トニカクカワイイ』『機動戦士ガンダムAGE』などのシリーズ構成や脚本を手掛けられています。それぞれの作品に並々ならぬ情熱と愛情を注いできた兵頭さんですが、その中でも『キラッとプリ☆チャン』は特別な作品だったと言います。『キラッとプリ☆チャン』での歩みを振り返りながら、自身の仕事観・キャリアについても教えてくれました。アニメイト通販での購入はこちら「いちばんの『プリ☆チャン』マニアであると思ってます」――『プリ☆チャン』が最終回を迎えられ、Twitterに「全てを出し切ったような、やり残したことがまだたくさんあるような、今はそんな気持ちです」と綴られていましたが、改めて今のお気持ちはいかがですか?兵頭一歩さん(以...
関連記事
6枚目のアルバムをリリースしたfripSide 「10周年というものがにじんでいるアルバムになった」その制作を振り返る/インタビュー
fripSide(sat、南條愛乃)の6枚目のアルバム『infinitesynthesis5』が10月30日(水)にリリースされます。今作には、TVアニメ『寄宿学校のジュリエット』オープニングテーマ「LovewithYou」、中国ゲーム『封印者M』主題歌)「LightingofMyHeart」、中国ゲーム『ラグナロクオンライン』新エピソードEP3.5『櫻之花嫁』テーマソング「perpetualwishes」など13曲を収録。南條愛乃さんが加入してから10年という記念すべき年に、最新型のfripSideが凝縮された、新たな名盤が生まれました。アニメイトタイムズではお二人を直撃。“これまで”の話にはじまり、創作現場の赤裸々な話まで、軽やかな雰囲気のなかインタビューが進んでいきました。10年目ならではの二人の空気感や、ユニットとしての充実感がにじんだ会話にも注目です。10年間で増えていったfripSideのチャンネル数──アルバム完成おめでとうございます!一昨昨日にマスタリングが終わったばかりだとうかがいしました。八木沼悟志さん(以下sat):間に合ってよかった……。毎回言ってるけど(笑)。──(笑)。10周年のアルバムということで、10周年を迎えられたお気持ちから教えていただけますか。南條愛乃さん(以下、南條):あっという間でしたね。振り返る...


■『君じゃなきゃダメみたい』/オーイシマサヨシ
テレビアニメ『月刊少女野崎くん』OPテーマ

発売日:2014年8月27日(水)
価格:1,200円(本体)+税
発売・販売元:株式会社KADOKAWA メディアファクトリー

【収録トラック】
Track-1 君じゃなきゃダメみたい
(テレビアニメ『月刊少女野崎くん』オープニングテーマ)
歌手:オーイシマサヨシ
作詞・作編曲:大石昌良

Track-2 純情可憐書店屋ガール
歌手:オーイシマサヨシ
作詞・作編曲:大石昌良

Track-3 君じゃなきゃダメ見たい
(instrumental)

Track-4 純情可憐書店屋ガール
(instrumental)

■テレビアニメ『月刊少女野崎くん』

【放送情報】
テレビ東京:毎週日曜深夜1:05~
テレビ大阪:毎週月曜深夜1:15~
テレビ愛知:毎週火曜深夜2:35~
テレビせとうち:毎週水曜深夜1:40~
テレビ北海道:毎週火曜深夜1:35~
TVQ九州放送:毎週木曜深夜3:00~
AT-X:毎週金曜夜11:00~
[AT-X リピート放送]
毎週日曜朝10:00~/毎週水曜朝5:00~/毎週木曜夕方5:00~

※放送日時は変更になる可能性がございます。

【スタッフ】
原作:椿いづみ(掲載「ガンガンONLINE」スクウェア・エニックス刊)
監督:山﨑みつえ
シリーズ構成・脚本:中村能子
キャラクターデザイン:谷口淳一郎
アニメーション制作:動画工房
製作:月刊少女野崎くん製作委員会

【キャスト】
野崎梅太郎(CV:中村悠一)
佐倉千代(CV:小澤亜李)
御子柴実琴(CV:岡本信彦)
堀 政行(CV:小野友樹)
若松博隆(CV:木村良平)
鹿島 遊(CV:中原麻衣)
瀬尾結月(CV:沢城みゆき)
鈴木(CV:宮野真守)
マミコ(CV:三宅麻理恵)
宮前剣(CV:三宅健太)
前野蜜也(CV:小野大輔)
都ゆかり(CV:川澄綾子)
ほか

【ストーリー】
 無骨な男子高校生の野崎梅太郎に恋をした女子高校生の佐倉千代は、ある日、勇気を振り絞って告白をするのだが、想いは上手く伝わらず、気が付くと彼のとあるお仕事をアシスタントとして手伝うことに……。男子高校生でありながら人気の少女漫画家である野崎くんを中心に、個性豊かなキャラクターたちが織り成す少女漫画家男子コメディー!

>>CLUB 014 大石昌良オフィシャルウェブ
>>テレビアニメ『月刊少女野崎くん』公式サイト
>>テレビアニメ『月刊少女野崎くん』公式Twitter
【推奨ハッシュタグ:#nozakikun】

(C)椿いづみ/スクウェアエニックス・「月刊少女野崎くん」製作委員会
おすすめタグ
あわせて読みたい

月刊少女野崎くんの関連画像集

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2025年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2025年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2025冬アニメ何観る
2025冬アニメ最速放送日
2024秋アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング