TVアニメ『ふたりはプリキュア』の声優・本名陽子&ゆかな、西尾大介監督、鷲尾天プロデューサーがクロストーク「子どもたちに嘘はつきたくない」
プリキュアシリーズの原点となるTVアニメ『ふたりはプリキュア』の総集編Blu-ray / DVD『ふたりはプリキュア総集編 ~ぶっちゃけ、ありえな~い!? 2020edition~』が2月26日に発売されます。
『ふたりはプリキュア』は今から16年前の2004年2月から放送がスタートしました。その登場は鮮烈でした。「女の子だって暴れたい!」をコンセプトとしたダイナミックな素手でのバトル、女の子といえば“ピンク”という概念を覆す白と黒の衣装、男性ヒーローの不在、“きれいごとだけではない”日常と友情……。
プリキュアシリーズの大きなテーマである多様性は、ここから生まれ、そして子どもたちに根付いていきました。
レジェンドともいえる作品の主人公2人を演じたのは、本名陽子さん(美墨なぎさ/キュアブラック役)、ゆかなさん(雪城ほのか/キュアホワイト役)。
そして、この作品を生み出したのは、当時女児向けアニメに初挑戦であったお二人=シリーズディレクターの西尾大介さん、プロデューサーの鷲尾天さん。総集編の発売に寄せて、4人にお話をうかがう機会をいただきました(さらに飛び入りで、当時キャスティングを担当していた小浜匠さんも参加してくださいました)。にこやかな笑顔でインタビューに答えてくれた皆さんですが、現場は「戦いのようだった」と語ります。それから16年。“いま”思うことを改めて語っていただきました。
目次
友達? 戦友? 『ふたりはプリキュア』のチーム感
──貴重なお時間をいただきありがとうございます。今日は当時のことも含め、いろいろなお話をうかがえればと思っておりますが、その前に『ふたりはプリキュア総集編 ~ぶっちゃけ、ありえな~い!? 2020edition~』がリリースされることになった経緯についておうかがいしても良いでしょうか。
鷲尾天さん(以下鷲尾): はい。あ、でもこれは今日同席している小浜さんから説明してもらったほうがいいかな?
小浜匠さん(マーベラス):では僕からご説明させていただきます。
これまで『ふたりはプリキュア』のブルーレイ作品は発売されていませんでしたが、DVD-BOXは出ています。そこで、すでに何度も観ている方に、「全話そのまま」ではなく、改めて作品の全体像に触れられるようなものをHDリマスターした映像で出せないかな?ということと、もうひとつ、15周年のときに初代がレジェンド的に受け入れられているなという感触があったんですね。
当時小さいころに観ていた方でも大人になって改めて観たい方や、最近になって興味を持った方もいらっしゃるだろうなと。だったら「じゃあ見てみよう!」と気軽に観られるような、入り口のような作品があったらいいなと思いました。と同時に、長年のファンの方も納得してくれるような形で出したい。ただ49話全部収録してしまうと、どうしてもボリュームが大きくなってしまうので……。
とは言え、話数をかいつまんで収録するのももったいないし、どうしたものか……と考え抜いた結果、1本の長いストーリーとしても観られるように再構成をして総集編という形をとることにしました。
『ふたりはプリキュア総集編 ~ぶっちゃけ、ありえな~い!? 2020edition~』
発売日:2020/02/26/価格:9,680円(税込)
収録内容
● 本編
・Chapter1:なぎさとほのか編
・Chapter2:キリヤ編
・Chapter3:イルクーボ編
・Chapter4:新たな闇の戦士編
・Chapter5:光と闇編
● 映像特典
・キャスト座談会
・「DANZEN!ふたりはプリキュア」フルサイズ名場面ムービー
・変身&技シーン集
──実際私は完成したものを拝見させていただいのですが“ダイジェスト”という感じがなかったことが印象的でした。
小浜:ダイジェスト感がないように意識しました。音楽を細かく張り替えていたり、再構成しなおしていたりして、ブツ切り感のないようにしています。ディレクターと話し合う過程で鷲尾さん、西尾さんにもご相談して。単なる「バトルの繰り返し」みたいなものにはならないよう、長い映画のように作っています。
──小浜さんも当時『ふたりはプリキュア』の制作に関わられていたのでしょうか。
小浜:はい。当時は東映株式会社でキャスティングをしていました。
ゆかなさん(以下ゆかな):小浜さんは私たちと一緒に作品作りに関わってくれていたんです。今こうやって不思議なチーム感(4人)のなかに(小浜さんが)すんなり入っていらしたのは、そういう経緯ゆえです。
──不思議なチーム感、ですか?
小浜:なんていうのかな、友達のような感じです。友達っていうと語弊があるかもしれませんが。
西尾大介さん(以下西尾):はははは。いや、でもそれでいいんじゃないかな?
本名陽子さん(以下本名):収録後の食事会などでいろんな意見をぶつけ合いましたね。そのなかで作品のエピソードが生まれることもありました。
ゆかな:みんなで作っていった感覚がありますね。
鷲尾:(やや厳しい表情をしながら)でも当時はもっと緊張感がありましたよ。めちゃくちゃありました。西尾さんはどうか分かりませんが、私はアフレコに行くのが怖かったですもん。
──プロデューサーが現場に行くのが怖いとは……どういうことなんでしょうか。
鷲尾:シナリオ、コンテを経てこちらが提示した内容に対して、役者さんから「これどう思います?」「これ違うんじゃないですか?」と言われることがものすごく怖かった。しかもそういう意見って(演者側が)ほぼ正しいんです。
そうやって現場で生まれた意見を西尾さんは全部を汲み取ってなんとかしようとしていました。私自身は毎回試されている感じもあって、ものすごく緊張していましたね。定番のネタですけど、私はこの番組が始まるころは髪の毛真っ黒でしたから。
ゆかな:みるみる白くなっていったんですよ。本当に。
──えええ……!? それだけ大きなプレッシャーが。
鷲尾:はい。私だけでなくみんな体がボロボロになっていきました(笑)。作品のなかでよく「私たち、これからどうなっちゃうの~?」ってセリフが出てくるんですが、それは我々の心のセリフなんですよ(笑)。
西尾:鷲尾くんは“緊張”と表現したけど、僕は追い詰められてたよ(苦笑)。「なんとかしてくれ~!」って(笑)。この先どうなっていくか分からないままガムシャラにやってた。
ゆかな:西尾さんたちの凄いところはいつも「これが最後かもしれない」と思って、その時できる最善をめいいっぱいやろうとするところなんです。
西尾さんたちがご自身を追い込んでいく姿を見て、私たちも、より追い込んでいきました。カッコよく言うとお互いを高め合っていたといえるのかも。まるで戦いにいくような現場でした。なぎなぎ(本名さん)も胃が痛いと言っていることが多かったよね。
本名:はい(苦笑)。プレッシャーは大きかったですね。しかも原作がない作品なので、そうやってひとつひとつ話し合いながら作っていったんです。それを経ての“友達”なので、決して慣れ合いという感じではないんです。
小浜:あの……僕が“友達”って言いだしてナンなのですが、今の(総集編の)作業も緊張感はあります。西尾さんに何かを見てもらうとき、鷲尾さんに相談するとき、この作品自体を本名さんとゆかなさんにご提案したときも「大丈夫かな」と……。でもその緊張感はみんなも同じなんだろうなと。
ゆかな:そう! たぶん一緒なんですよ。この人たちと会うのはとても怖いし、とても楽しいし、とても嬉しいし、とても……ツラい!
一同:(笑)
──戦友であり、仲間であり、友達であるからこそ。
ゆかな:本当に全部入りっていう感じですね。自分だけぬるくなってないかな、脱落してないかな、この人たちと並んでいいのかなとか……色々な葛藤があるんです。でも一緒に並べたときこの上なく楽しい、嬉しい。
西尾:何言ってるの。そっくりそのまま……って、お返ししてどうするんだ(笑)。僕も同じことを思っています。