子どもたちに笑顔になって欲しいのに役柄的にはダメというのが難しいです――子ども向けバラエティ番組『ワラッチャオ!』中村繪里子さん&ゴー☆ジャスさんにインタビュー
NHK BSプレミアムにて、毎週日曜日10時30分から放送中の子ども向けバラエティ番組『ワラッチャオ!』。同番組は、子供たちをとにかく笑わせるまったく新しい形の子ども番組で、毒舌のドックンたちが住むテコリンハウスの爆笑コントや、 お姉さんや子供とのゲームコーナー、ミニアニメなど盛りだくさんの内容で 子供たちに爆笑を届けるというもの。
そんな同番組に、4月より新たに2代目お姉さんとして寺崎裕香さん、そして地球から笑いを消し去ろうとたくらむスベール星人・ウイルスくんと、スミスちゃんが仲間入りを果たした。
そして今回、ウイルスくんを演じるお笑い芸人・ゴー☆ジャスさんと、スミスちゃんを演じる声優・中村繪里子さんのおふたりに話しを伺い、アフレコとの違いや、収録中の印象深かった出来事、そして番組の魅力などを語っていただいた。こちらでは、そのインタビューの模様をお届けする。
■普段との違いに苦労しつつも、すごく勉強になる番組
――まずはご自身が演じているキャラクターの紹介をお願いできますか。
中村繪里子さん(以下、中村):スミスちゃんは、ウイルスくんと同じスベール星に住んでいる謎の女の子です。この地球から笑顔をなくしてしまおうという目的を持っています。なので、ドックンくんたちからすれば、とんでもない悪事を働こうとしている存在なので、今日もオナライダーに“敵”と言われちゃったりしたんですけど。
ゴー☆ジャスさん(以下、ゴー☆ジャス):「お前たちは敵じゃないのか!」ってね。
中村:そういう悪役的なポジションなんですが、とってもキュートでどんどんやればやるほど、素直に良いことも悪いことも思ったことをストレートに伝えられるような女の子だなというのを感じてます。
ゴー☆ジャス:ウイルスくんは、スミスちゃんに振り回されてるじゃないかなと僕は思っています。スベール星に住んでいて『ワラッチャオ!』という番組でスベるというのは対極的になってますけど、現在の世の中ではスベり笑いというのも生まれていたりしますよね。そっちの方でスベリながら、笑いを取ってしまうという自分の思っていることとは、真逆な感覚があります。ウイルスくんはスミスちゃんに少し恋心もありつつも、純粋に笑顔を消してやろうという純粋悪なキャラクターです。でも、興奮すると頭から煙が出たり、ベロが出たりして、見た目がすごくコミカルで、中身もそこまで悪というわけではない、憎めない存在ですね。
中村:本当にそんな感じですね。
――ありがとうございます。『ワラッチャオ!』の収録は、普段やられているアフレコとは少し違うように思うのですが、実際にやられてみていかがですか。
中村:アニメはアフレコとかアテレコとも呼ばれるように、もともとはアフターレコーディングという言葉と、(声を)当てているという日本語と合わさって、アテレコという呼び名も出てきたんだと思うですけど、基本は何かがあるところに声を入れていくという、後から追いかけていく作業が主流です。でも、『ワラッチャオ!』はその逆のプレスコという状態でやっています。先に声があってそれに合わせて、ほとんど時差がなく、その場で動いてくださるという感覚なので、真逆だなと感じてます。
――先ほど、収録の様子を拝見させていただいたんですけど、声を聞いてから動いているはずなのに、本当にラグがなくて、すごいなと思いました。
中村:そうですよね。私の感覚なんですけど、アニメとかだとキャラクターとして、アドリブを言うまでに、結構時間が掛かるんですよね。そのキャラクターとして決められたセリフを当てていく作業の中から、キャラクターを沁み込ませていって、「このキャラクターだったら、こうしゃべるかな?」と理解するまでに、やっぱりそれだけの時間が掛かるんですけど、ここでは自分が出したものがスミスちゃんなのかどうなのかというのが、すぐに反応としてわかってくるし、自分がスミスちゃんとして喋れば喋るほど、どんどん馴染んでくるという感覚があるので、自分発信でスミスちゃんと一緒になれているという感覚がすごくあります。
――なるほど。
ゴー☆ジャス:僕の場合は、中村さんと違って声の仕事をそんなにやっていないくて、僕が言っていることを向こうでやってくれているので、楽な感じでやらせていただいてます(笑)。非常に自由にやらせていただいて。でも、いちおう中の方とはコンタクトを取って「こういう風にやりたいんです」とネタ合わせみたいなことを、これまでもやっていたんですけど、もっと密にやっていって、より完成されたウイルスくんを出していきたいなと思ってます。
■僕の中でもっとスベらないといけないとちょっと思ってます(笑)。(ゴー☆ジャスさん)
――ちなみに、子ども向け番組ということで、普段と違った意識をしている部分はありますか。
中村:不思議とスタジオの中にいるときは、スミスちゃんモードだなというのは思います。なので、収録の座っている位置的に、ハヤブチャオーをやっている平井さんが1番近くにいらっしゃるので、休憩時間とかに平井さんと絡んでいることが多いですけど、スミスちゃんは、ずけずけ物を言っていたりとか、丁寧に対応するという感じの子ではないので、私自身もそういうモードになっていて、平井さんにもそういう口の利き方をしてるなと思っていて、楽屋に戻ってきて「すみません」みたいな(笑)。でも、スタジオを中にいる時は全然違和感もないですし、撮影の待機中に一緒にやっている子どもたちとコンタクトを取ったりする時も、スミスちゃんとして、いろいろなことを喋ったりというモードに常になっているというのは、他のお仕事ではなかなかないと思います。
ゴー☆ジャス:僕の場合はお笑いというカテゴリでやっていまして、そんなに完璧じゃなくても笑ってくれるというのがありまして。ライブとかでも大声だけ出してれば、「なんで大声なんだ!?」という感じで笑ってくれることもあったりするんですけど、ここに来るとやっぱり別で。子ども番組ということで、しっかり喋らないといけなかったり、わかりやすいイントネーションで話したりということを意識してやらせてもらってます。
――やっぱり難しいですか。
ゴー☆ジャス:そうですね。でも僕の中で子ども番組をやりたいという気持ちがあったので、難しいというより、ワクワクしている感じの方が大きいですね。
中村:寺崎お姉さんもすごいリラックスしてやっているよね。今日もめちゃめちゃ突っ込まれてますもんね。
――それは子どもたちにですか?
ゴー☆ジャス:いや、キャストメンバーにですね。
中村:ちょっと反応が遅いだけで「寝てるのか?」と言われたりして。
ゴー☆ジャス:ダメであればあるほど、いいみたいな風潮がありますね。
中村:愛されている感じですね。
ゴー☆ジャス:僕なんかもオーディションの時にめちゃめちゃスベッたんですよ。
中村:そうなんですか!?
ゴー☆ジャス:でも、それがスベール星に合っていたみたいなんですよ。だから、僕の中でもっとスベらないといけないとちょっと思ってます(笑)。
――(笑)。
中村:えー! 私はオーディションの時、スベるとかスベらないとかなかったよ。
ゴー☆ジャス:本当に? 僕はすごい噛んだりしちゃって、アタフタしていたら、それが良かったみたいな感じになっていて。それをまだ収録で出していないので、複雑ですよね。ミスしなきゃいけないというのがありますから。
中村:狙ってやるとあざとくなっちゃいますしね。
ゴー☆ジャス:そうなんです。それを上手くキレイにスベる感じに持っていけたら、ウイルスくんの役を得たみたいになるのかもしれないですね。
――でも、それを身につけすぎるとそれはそれで大変ですよね。
ゴー☆ジャス:そうですよね。他の現場で大変なことになりますね(笑)。
――意図的にスベりにいくことなんて、普通はないですからね。
ゴー☆ジャス:そうですね。
■この現場では、今一緒にこの瞬間を作っていくという感覚です。(中村さん)
――収録中に思い出深い出来事はあったりしましたか。
ゴー☆ジャス:僕は前の桑子お姉さんの最後の収録を見ていたんですけど、ものすごくドジでおっちょこちょいで。でも、それで番組がすごいおもしろくなっていて、この笑いを僕たちが入ったことによって、越えなきゃいけないというのを感じましたね。
――ハードルが上がりますよね。
ゴー☆ジャス:最初にそこで面喰っちゃったところがありますね。だから、あれを越える以上のおもしろさを追求しないといけないと思っています。
中村:えー!? 私はそんなこと全然考えてないです。
ゴー☆ジャス:本当に?
中村:だって楽しいし。
ゴー☆ジャス:あの最終回は本当に衝撃的だったんですよ。
中村:私はお手紙を読むあたりから拝見していたんですけど、その前ですか。
ゴー☆ジャス:その前ですね。それを見てた瞬間にすごいなと思って。「これが局のアナウンサーなの!?」って。局のアナウンサーにここまでやられたら、僕たちはどうすればいいんだと思っちゃいました。
中村:そうだったんだ。私は楽しいなと思ってやってます。仕事を舐めてる訳じゃないですよ。
ゴー☆ジャス:わかってますよ(笑)。
中村:実は今日も失敗しちゃったんですけど、勝手に「テイク2」とか言ってごまかしました。
ゴー☆ジャス:全然いいですよ。僕に比べるとかわいいもんですよ。
――他業種という訳ではないですけど、いろいろな人が集まって、いろいろな笑いがあるというのは珍しい現場ですよね。
ゴー☆ジャス:そうですね。ありがたいですね。本当に勉強になります。
中村:みんながマッチしている感じがすごくありますよね。
ゴー☆ジャス:そうですね。一体感がすごいので。
中村:あっ、一体感というと、スミスちゃんという女の子を体の部分と声の部分とで作っていくので、キャラクターに対して二人三脚でひとつのキャラクターにしていくという感覚がありますね。その中で今日テストをやっていた時に、スミスちゃんのベロがビヨーンと伸びるんですけど、ずっと伸びたままだったんですよ。ずっとテストをやっていて変だなと思ってたんですけど、どうやら中の人には、ベロが伸びているのかどうかは見えないみたいで、忘れていたらしいんですね。それをスタッフさんからこそっと「スミスちゃん、ベロを戻すの忘れているんで、教えてあげてください」と言われたんですけど、私がしゃべるということはスミスちゃんじゃないですか。だから、「スミスちゃんの中の人、ベロ戻すの忘れてますよ」とは言えなくて、どうしようと思っていた時に、たまたま流れでハプニングみたいなのがあったので、「ビックリして、さっきから、全然ベロが戻らないよー」と言ってたら、ベロが戻ったんです。その時に「通じた!」みたいな気がして、すごくうれしかったです。
――確かに、ふたりでひとつのキャラクターを作り上げるということは、あまりないですよね。
中村:そうなんです。アニメーションの現場とかだと、全く別の場所で作画監督さんがアニメーションを描いてくださってという部分が、この現場では今、生で目の前にいてくださるという感覚です。たぶん、やっていることはキャラクターが動いているという状態なことに変わりはないんですけど、今一緒にこの瞬間を作っていくという。
■笑顔になってほしいという風に私自身は思うんですけど、スミスちゃんやウイルスくんとしてはダメというのが難しいです。(中村さん)
――すごくいいお話をありがとうございます。もうひとつお聞きしたかったのが、子どもたちがいっぱい出演されているということで、収録中や休憩中に子どもたちに驚かされた出来事とかはありますか。
中村:私は最初にスミスちゃんをオーディションの時に紙の絵で見ていて、決まりましたということになって、すごくワクワクして現場に来たら、めちゃめちゃかわいいフォルムで大好きだったんですけど、初めて子どもたちと一緒になった時に「かわいくない」と言われたのが、ショックでショックで……(笑)。
ゴー☆ジャス:言われてたね。
中村:でも、今日は既に何回か放送されているタイミングなので、たぶん放送を見てきてくれた子どもたちもいたみたいで、子どもたちとの馴染み方が違ったんですよね。スミスちゃんが後ろを向いていたりすると、私が大好きな後頭部の部分をポンポンと撫でてくれたり、洋服がかわいいと褒めてもらえたりとかして、すごくうれしかったです。
ゴー☆ジャス:見慣れるということが大事だからね。僕は印象深かったのは、声を出している僕たちのいるところとお芝居をやっている場所が違うじゃないですか。でも、子どもたちも、僕たちのことを声の人だと理解しているみたいで、手を振ってくれたりするんですよ。それを見た時に「あっ、もうそういう撮影のこともわかってるんだな」と驚かされましたね。
中村:不思議だったのが今日の収録で、私たちがカメラの奥の方にいて、スミスちゃんとウイルスくんが両端から子どもたちに質問をしていくんですけど、私たちの喋っているカメラの方ではなく、スミスちゃんとウイルスくんが話しかけた方を必ず見ていたんですよ。だから、むしろ「カメラに顔を映したいから、こっち向いてね」とスタッフさんが言わないといけないくらい、ちゃんとその場にいるというような感じで反応してくれていたんですよね。
ゴー☆ジャス:あれはスピーカーですかね?
『ワラッチャオ!』プロデューサー:スピーカーは真上にあるので、やっぱり動いている方を見てるんじゃないかなと思います。
中村:私たちがいてもスミスちゃんだとは思ってないと思いますよ。「なんか人がいる」としか思ってないんじゃないですかね。
ゴー☆ジャス:中村さんはスミスちゃんすごく合ってるんですけど、僕はまだフワフワしているので、見てくれるのかなという不安感がありますね。
――でも、中村さんのお話しだと、ちゃんと見てくれてたんじゃないですか。
ゴー☆ジャス:そうですね。動きをやってくれているというのがあったので。
中村:本当に子どもっていろいろなことを考えながら生きているんだなというのを、ちょっとしたエピソードだったり、ちょっとしたどころではないエピソードだったりとかで、すごい感じますね。
ゴー☆ジャス:今日もおませちゃんな子もいたし。
中村:ねー。既に人生の壁を感じているのかという男の子もいましたし。
ゴー☆ジャス:10才って言ってましたよ。僕の10才の頃なんて、トンボを捕まえてましたよ。
中村:そう。自分の時のこと考えちゃうよね。でも、そういう子たちに元気になってほしいし、笑顔になってほしいという風に私自身は思うんですけど、スミスちゃんやウイルスくんとしてはダメというのが難しいです。
ゴー☆ジャス:そうなんですよね。
――――自分自身の気持ちとキャラクターの気持ちが真逆というのは、すごく大変そうですね。
ゴー☆ジャス:やっぱり憎まれたくないので。
中村:そうですよね。だってみんなの笑顔とかかわいいんだもん。「いい笑顔ね」って言いそうになって、「ダメだ、もっと怒れ」みたいな。
ゴー☆ジャス:そこが難しいですよ。葛藤ですよね。
――では、最後にこの記事を読んでいる読者の方にメッセージをお願いできますか。
ゴー☆ジャス:お久し振りで。ゴー☆ジャスでございます。この『ワラッチャオ!』という番組で僕の夢であった声優という夢が叶いました。僕は19才の時に声優さんの学校に行っていまして、1回夢を諦めたこともあったんですけど、この宇宙海賊を経たら、やっと声優になれました。なので、みなさんも夢がありましたら、直進ではなく、少し回り道をしても叶えることができるということを覚えながら生きていっていただきたいです。そして『ワラッチャオ!』という作品に、ゴー☆ジャスが参入したことで、いろいろやっていこうと思います。それこそ、笑いの革命すなわち「レボ☆リューション!」を起こしていきたいと思います! 末永く、ゴー☆ジャスをよろしくお願いします。
中村:子ども番組ということで、みなさんが実際に子どもだった時に見ていて、今はちょっと離れてしまっている時期なのかもしれません。でも、みなさんが深夜だったりとかに見てくださっているアニメーションで地域によっては見れなかったり、タイミングによっては、自分の見ている放送局が1番の時間じゃなくて、ネタバレされて「うわー」ってなったりということが、『ワラッチャオ!』では、NHK BSプレミアムさんなのでないので安心して、日曜日の朝10時30分からよーいドンで見ることが出来ますし、そこで見逃したとしても、再放送として木曜日の朝6時、夕方の18時と何度もチャンスがあります。私の個人的な感覚なんですけど、大人がそのままの感覚で見ていても、子どもを笑わせようとか、子どもに何かを教育しようという観点の番組ではなく、「大人が全力で悪ふざけをしてみたら、子どもも楽しいじゃん」みたいな感じで、笑いの根幹は大人とか子どもとか関係ないよというようなものが、この番組には詰まっているじゃないかなとすごく思っています。童心に返れるいい作品なので、みなさん日曜日の朝によーいドンで、イベントに行かれる前に是非、見ていただきたいなと思います。よろしくお願いします。
ゴー☆ジャス:あと最後に私ごとなんですが、4月22日に子どもが生まれまして。
中村:おめでとうございます!
――おめでとうございます!
ゴー☆ジャス:その子どもを3~5才くらいになったときに、『ワラッチャオ!』に出演させたいなという夢があります。
中村:その夢が叶う日まで。
ゴー☆ジャス:そうですね。まずは、その夢が叶う日まで頑張ろうと思います。
――叶う日を楽しみにしています! 本日はありがとうございました。
<番組情報>
『ワラッチャオ!』
放送局:NHK BSプレミアム
放送時間:毎週日曜日10:30~11:00
再放送:毎週木曜日6:00~6:30
毎週木曜日18:00~18:30
>>番組公式サイト