超濃密な戦車トークが炸裂! 『ガールズ&パンツァー 劇場版』ミリタリートークショー付き上映会レポート
2016年2月5日(金)、新宿バルト9にて『ガールズ&パンツァー 劇場版』の興行収入10
億円突破記念イベント、ミリタリートークショー付き上映会が行われました。今回はそのトークショーの様子をお届けします!
2015年11月21日の公開から、既存ファンのみならず、新規ファンをも生み出し爆発的な人気を博している劇場版ですが、今回のトークショーは既存ファンや、ミリタリーファンなど、ちょっとディープなファン向けかも知れません。なにせ登場したメンツが、MCの杉山潔プロデューサーに、考証・スーパーバイザーの鈴木貴昭さん、軍事評論家の岡部いさくさんに、イタリア軍研究家の吉川和篤さん、さらにフィンランド軍研究家の齋木伸生さん。ということで、劇場版から新たに加わった齋木伸生さんもいますが、BD、DVDも購入済みのファンならおなじみ“おっさんコメンタリー”こと、ミリタリーコメンタリーのメンツです!
これは高次元のミリタリー雑談が繰り広げられることは必然! “ガールズ”だけでなく、“パンツァー”にも強く関心のあるファンなら俄然その内容が気になるはず! 実際にその期待に違わず、開幕から岡部さんによる「もしかすると今日は、テレビ局のスタジオにいなきゃいけなかったかもしれない」という、ならではの時事ネタが飛び出す一幕も。というわけで、早速トークショーの内容の紹介に入って行きたいと思います!
■トークショーメンバーから観た、劇場版の感想は?
ミリタリーの専門家かつ、密接に『ガルパン』に関わっている皆さんから観た劇場版の感想ということで、やはり、それぞれ興味深いお話が飛び出しました。
考証・スーパーバイザーとして『ガルパンに』初期から関わっている鈴木さんは「いまだに観て泣きますね。なので、あのシーンどうなってたっけ? って、また劇場に見に行かなきゃいけないっていう。非常に難儀な作品ですね(笑)」という、今回のメンバーの中でも杉山プロデューサーと並び、『ガルパン』に長く、そして深く関わっているからこその思い入れの深さが伺えるコメントでした。
次に、軍事評論家として、主にBD特典のコメンタリーに参加されている、岡部さんは「私は心を真っ白にして、ただひたすら楽しませてもらってます(笑)。全編楽しいですよ。おかげさまでイギリスの新しい戦車が登場しましたしね」と、専門のイギリス軍戦車の活躍を喜ぶ内容の感想でした。
イタリア軍研究家として、主にOVA『これが本当のアンツィオ戦です!』から参加している吉川さんは「初めに試写会で観た時に、これはとんでもない映画が出来たなと。監修などはしてましたけど、全体を通して観るのは全然違いましたね。あとは、戦車の動きひとつ取っても、TVシリーズとは全然レベルが違います。そういう意味でも、質、量共に凌駕したものに出来たなと思いました」と、専門家ならではの細部の完成度へのコメントを頂けました。
そしてフィンランド軍研究家として、今回の劇場版から参加の齋木さんは「私も戦車と付き合って40年以上になるんですけど、戦車の映画が出来るっていうのは感慨深いですね。なんといっても、空と海はね、杉山さんも岡部さんもよくわかってますけど、格好いいんですよね! ずるいんですよね! 戦車は格好悪いんだよね、どうやっても! 泥臭かったりね。それをこれだけ綺麗というか、感動的に描いてくれたっていうところに、変な話ですけど“感謝”してます」と、国内で戦車映画が新しく生まれたことに対する感謝という、ミリタリー、戦車ファンの気持を代弁するような感想でした!
■劇場版の、ここはやり過ぎだと思うポイント!
次にこれもまた、専門家ならではの目線が鋭く光るポイント! 劇場版でこれはやり過ぎだろう! と思うポイントを上げてくれました!
鈴木さんは劇中に使用する資料作成のお話が。「各校の隊長が集まって作戦会議をしている時に出すので、戦車のスペック表を作ってくださいと言われて作ったんですけど、スクリーンで見たら見えないっていう(笑)。ほかにも、1カット1カットにネタが仕込んであって、ここにこんなネタ仕込む? みたいな。遊園地も、監督のこだわりがいっぱい詰まっていて。多分あれ監督の夢の遊園地だと思うんですけど(笑)」
岡部さんからは「この映画ずるいですよね。TVシリーズの時に、アメリカ軍のT28持ちだしたらどうするよ? で、あれは狭い所通れないから大丈夫だよって言うと、でもあれ履帯が外れるから、みたいな話をしていたり。クリスティー式だと履帯が外れても走れるよね? とか、戦車好きな人は語っていたと思うんですよ。それを映画で実際にやっちゃうってずるいですよね!」と、劇場版に散りばめられた、戦車マニアの夢をかなえるような内容に対するコメントが頂けました。
吉川さんは「戦車の動きは見ての通り、素晴らしいの一言なのですが、特に最初のチハの突撃シーンでゴルフ場の坂を行く時に、履帯だけじゃなくて全部の転輪が微妙に動きながら、しかも水平コイルスプリングが移動してるんですよ。家のTVじゃわからないレベルなんですが、スクリーンでそれを見た時に、これは只者じゃないなと(笑)」という、またも専門家らしい細部のこだわりに関するお話と、「あとは言葉遊びと言うか、劇場版のT型定規作戦があって、その前がOVAの分度器作戦。これはコンパス作戦っていう英軍がイタリア軍をコテンパンにやっつけた作戦があるんですね。そのコンパス、分度器、T型定規っていう、文房具で作戦名を付けている点とかね。そういう言葉遊びみたいなのが沢山あったのが面白かったですね」と、イタリア軍研究家という目線からのお話が頂けました!
齋木さんからは「言葉遊びっていう意味ではフィンランド語が採用していただけたので、それだけですね、それだけでもうお腹いっぱい。「トゥータ!」の一言ですけどね。あとはゲーム(スマホゲーム『ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!』)の方でフィンランド語が3つ4つ増えてますので、ぜひご確認いただければと思います(笑) パンツァー・フォーのフィンランド語版とかがありますので。あと、『ガールズ&パンツァー』の事をフィンランド人と話す時に“ティトッテ ヤ パンサリット”って呼んでます。フィンランドではそうなるので。ぜひみなさん覚えて帰ってください(笑)」というフィンランド愛あふれる内容のお話が!
■トークショーは終わっても劇場版はまだまだ続く!
トークショーの最後には、MCの杉山プロデューサーを含めた、登場者全員からのメッセージが。
鈴木さんは「『ガールズ&パンツァー』をやって来て、皆様のおかげで劇場までこぎつけられて。しかも、まだまだ楽しんでいただいているわけで。本当に皆様のおかげ、そして頑張って作ったスタッフの皆様のおかげだと思います。本当に有難うございました!」と、ファン、そしてスタッフへの感謝の言葉を語りました。
岡部さんからは「センチュリオンMk.1が強いし、ダー様は大洗に勝つし、ローズヒップはお馬鹿だし(笑)。すごい楽しい映画でした」と、やはりイギリス戦車や、聖グロリアーナの活躍を喜ぶコメントでした。
吉川さんからは「『ガルパン』に参加させていただいただけでもすごく、ありがたいと思っています。それだけ素晴らしい作品になったので、まだまだスルメのように楽しませていただきます。劇場版はそろそろ30回行きますけど、40回も行くんじゃないかなと思います(笑)」という、当日に集ったファンに勝るとも劣らない『ガルパン』愛を感じるコメントでした。
齋木さんは「ガルパンには人生に大切なモノが詰まっていますので、何度も何度も観ていただければと思います」と、劇場版でのミカの台詞を引用したコメント!
そして、最後に杉山プロデューサーから「本日も遅くまでお付き合いいただきありがとうございます。重ねてみなさんの応援に感謝いたしますし、鈴木さんもおっしゃったように、これだけのお客さんに支持していただける作品を作ってくれた、スタッフの頑張りには改めて感謝したいなと思います。まだ劇場版の上映は続きますのでお楽しみいただければと思います。ありがとうございました!」と、鈴木さんと同じく、ファンとスタッフへの感謝の言葉で締めくくりました。
以上でトークショーは終了となりましたが、劇場版の勢いはまだまだ収まりません! さらに、その後も「まだネタが残っている」という声や、「今回はコメンタリーの前哨戦」というお話も。今回の内容から考えて、いつも以上に、かなり“濃密”な内容になりそうなので、期待して待ちましょう!