藤岡弘、さんが、映画『仮面ライダー1号』で本郷猛に託した「生きて、生き抜くべき」という魂の語り
3月26日より公開される映画『仮面ライダー1号』は、今から45年も昔、第1作『仮面ライダー』で本郷猛を演じられた藤岡弘、さんがふたたび主演を務める作品として、発表以来大きな話題となりました。
近年ではテレビドラマのほか、CMやバラエティ番組でも活躍して子どもから大人まで幅広い年齢層に人気のある藤岡さんですが、仮面ライダーのファンにとっては永遠のヒーロー・本郷猛のイメージが強烈です。今回の映画では「45年間、悪と戦い続けていた本郷猛」という設定のとおり、仮面ライダー1号のスタイルや愛車サイクロン号が超パワーアップし、今まで誰も観たことのないパワフルな仮面ライダー像が表現されているそうです。
ここでは主演の藤岡弘、さんに直撃インタビューを敢行。映画の企画段階から参加され、若い世代に「生命」の大切さを説くメッセージを込めたという藤岡さんの、沸騰しそうに熱きトークをお楽しみください!
■ 仮面ライダー1号の出演に、「まごころ」と「愛」が大きく関わっている
――『仮面ライダー』放送開始45周年の記念すべき年に、ふたたび藤岡さんが本郷猛=仮面ライダー1号として単独主演を務める映画『仮面ライダー1号』が作られるというニュースは、多くの仮面ライダーファンを驚かせました。藤岡さんは映画の企画段階から携わられているとうかがいましたが、主演のお話が来たときは率直にどう思われましたか。
藤岡:最初のときは、少し自分の中でも葛藤がありましたよ。一歩間違えれば、私の後に現れた多くの後輩仮面ライダーたちを裏切ってしまうかもしれませんからね。それほど、今回のお話を引き受けるのは重い責任が伴いました。
「仮面ライダー」や「本郷猛」に夢を求め、追いかけてきてくれる人を裏切り、失望させるわけにはいかない……。悩みはしましたが、でも関係各位の愛ある応援を受け、私のやりたいこと、伝えたい思いを入れていいという東映の励ましを受け、ではやりましょうと返事をしました。
私のところに何度も何度も日参してくれたプロデューサーの真心、愛を感じましたね。やはり、モノを作るっていうのは、どんなモノに対しても「心」が入らないと、映画にも、どれだけ真心を込めて、真剣に命がけで作るかで出来が違ってくるものと思っています。
――映画のためにデザインを一新し、従来よりも武骨かつ戦闘的になった仮面ライダー1号の姿をご覧になったときは、どう思われましたか。
藤岡:たくましくなったな、と思いましたね。1971年に私が初めて演じた『仮面ライダー』から45年の歳月を経て、時代の重みを背負い、より強化された、内実ともに充実した仮面ライダー像だと感じました。
あの当時、私の体重は72kgくらいでしたが、あれから45年が経ち、今では84kgです。この増量部分は私がこれまでの人生で背負ってきた、いろいろな重みなんだと思っています。俳優活動を通じて世界の百ヶ国以上を旅してきて、いろいろな悲しみや苦しみ、痛みなどを経験してきた重みです。こんどのライダーは、そんな私の重みを感じさせるだけのボリューム感あふれるヒーロー像となりました。
――ボリュームアップされた仮面ライダー1号に合わせるかのように、専用バイクのサイクロン号も、大型の「ネオサイクロン号」となりましたね。こちらをご覧になったご感想もお願いします。
藤岡:私自身、前のサイクロン号に乗っていても物足りないというか、放送当時の感覚よりもずっと軽い感じがしましてね。あれ、こんな感覚だったかなあって(笑)。
やはり『仮面ライダー』当時からバイクで危険な撮影にもチャレンジしていましたし、事故で生死をさまよったこともありましたので……(遠い目)、バイクにまたがると感覚が鋭敏になるんです。ネオサイクロン号は1800ccの大型バイクで、重量もそれなりにありましたが、今の私だとこれを操ることができます。練習もそこそこで、いきなり乗りこなす事になりました。
■ 本郷猛は多くの壁を突き破って、生きてきた! そうやって生き抜いてきた
――今回の映画では人間の「生命」がいかに大切か、生きるとはどういうことか、というメッセージが込められていました。これこそ藤岡さんが映画の中で伝えたかったテーマなのですね。
藤岡:そうです。私は「本郷猛=仮面ライダー1号」をふたたび演じるにあたって、「人間とは、どんな状況になっても生きて、生きて、生き抜くべき」だという「生命」のメッセージを作品の中に込めたかったんです。
私自身、何度も命を失いかけ、危険な目に遭ってきました。人生における「壁」を何度も何度も突き破って、生きてきた。これを読まれているみなさんも同じだと思いますよ。愛する者を守るため必死になって、我慢を重ねて頑張ってきた、本郷猛もそうやって生き抜いてきたんです。
――おそらくファンの方々も同じ思いを抱かれるかと思いますが、今回の映画に出てくる本郷猛は、まさに藤岡さんと限りなくイコールに近い存在なんですね。
藤岡:若いときは一生懸命、自分の魅力を感じてもらおうと「役」を演じるんですが、年齢を重ねていくと、これまでどれだけ自分が人生に立ち向かっていったか、心の持ち方、心構えというものが人の背中、顔や目、歩き方に現れてくるんです。「背中」を見たらその人の歴史が見えてくる、と言われます。私も若き日に俳優の大先輩から「背中を撮ってもらえるような俳優になれよ」と言われた事があります。その言葉は今でも耳に焼き付いています。
背負っているものはこれからも続いて背負っていくわけだけれども、過去は消せないわけでね。そういう意味では、今回の映画の本郷猛は藤岡弘、そのもの。「役」を作るくらいなら、自分のそのままを出すしかない、と思っています。たとえ恥ずかしくても、これが今の俺だと表現する。こういった私自身の「俳優道」は変わることがないでしょう。
■ 『仮面ライダー』映画で主演の夢を果たした藤岡弘、は、すでに次の夢を目指している!
――映画では、最新作『仮面ライダーゴースト』の天空寺タケルと本郷猛の交流が見られますね。西銘駿さん演じるタケルと、若き日の本郷猛がオーバーラップしたりする部分なんてありますか。
藤岡:本郷猛は、改造人間にされた苦しみや悲しみを胸に秘めたまま、ショッカーと戦い続ける孤独なヒーローでした。当時ふと思ったのは、大人というものは誰しも孤独をかかえながら、人生を戦っているんじゃないかな、ということでした。
私の父親も戦前、戦中、戦後の厳しい時代を生き抜いて、幼い私に武道を教え、育ててくれた。息子である私には本当の心を話さずに逝ってしまったけれど、今なら親父と向かい合って話ができたんじゃないか。人間は誰もがそういう孤独を背負っているのではないか……25歳のころ、そういうことを考えていました。
――父から子へ、大切な命が受け継がれていく。まさに「生命」のメッセージが今回の映画のテーマですね。さらには原作者の石ノ森章太郎先生が生前おっしゃっていた「仮面ライダーは不滅」というテーマも含まれているように思えました。
藤岡:私がこの映画の企画から参加させていただいたとき、まさにそのテーマを必ず作品の中に入れ込むべきと思っていました。以前、先生に「仮面ライダーはいつ死ぬんでしょうか」と何気なく尋ねたら「何を言っている。仮面ライダーは永遠に死なないんだよ」と言われたんです。
仮面ライダーは永遠に不滅……それは、私の夢であり、ロマンであり、仮面ライダーに夢を見続けてくれたファンに対する感謝を込めたメッセージなんです。
――映画では岡本夏美さん演じる立花麻由(仮面ライダーの育ての親である「おやっさん」こと立花藤兵衛の孫)が、本郷猛からの「生命」のメッセージを直接受け止める立場にいますね。岡本さん、そして西銘さんなどの若い世代と共演されてみて、どのようなご感想を持たれましたか。
藤岡:これからの日本の映像界を背負っていく若い世代にも、「何か」を感じ取ってほしいと思いましたね。彼女たちとは俳優としての考え方や、生きていく上で何が大事なのか、何の為に戦い、生き抜くとはいかなる意味か、などいろいろなお話をしましたが、いい刺激を受けたのではないか、と思っています。
――映画『仮面ライダー1号』がいよいよ公開となります。大河ドラマ『真田丸』での本多忠勝役も大好評な藤岡さんですが、これからさらにチャレンジしてみたいことなんてありますか。
藤岡:『仮面ライダー』の映画で単独主演を務めるという夢は果たしましたが、私の夢はまだまだ終わりがありません。現在、10年がかりでハリウッドと打ち合わせをしている企画が、進展を見せています。まだ詳しい内容を話す段階ではありませんが、決してファンの方々の期待を裏切らないものになると信じています。
今回の映画は大河ドラマと同時進行で、スケジュールもたいへんでしたが、両方にエネルギーを込めて演じることができました。今の私の年齢でもこれほどのパワフルな仕事ができるんだと示すことで、社会でがんばる同年代のオヤジたちに「おい、がんばれよ!」とエールを贈れればと思っています(笑)。
これからも藤岡弘、は戦い続けてまいります。映画『仮面ライダー1号』を是非、多くの若者達に見てもらいたい。
――ありがとうございました!
[取材&文・秋田英夫]
◆公開情報
映画「仮面ライダー1号」
3月26日(土)ロードショー!
<STORY>
命を、愛を、未来へつなげ― 本郷猛、最後の日!! この春、究極のヒーロー「仮面ライダー1号」の勇姿を目撃せよ!
今から45年前、男は悪の秘密結社ショッカーの手によって改造人間にされた。あの日以来、人間の自由を守るため、男は戦い続けている。彼の名は、本郷猛。この世に誕生した、最初の仮面ライダーである。長年にわたり、海外で悪と戦ってきた猛は、ひとりの少女の危機を知り、急遽帰国する。少女の存在が、かつての最高幹部・地獄大使を復活させるために不可欠なのだ。猛は、ショッカーが少女を狙う理由を探っていた仮面ライダーゴースト=天空寺タケルや、その仲間たちと出会う。しかし、あまりにも過酷な日々を過ごしてきた猛の肉体は、すでに限界へと近づいていた。少女の危機、そして新たな組織・ノバショッカーがもたらす日本の最大の危機に、伝説の戦士・本郷猛が「変身」する。闘い続けてきた本郷猛を待つものは安らぎか、それとも――。
<出演>
藤岡弘、 西銘駿 岡本夏美 阿部力 長澤奈央 武田幸三 大沢ひかる 山本涼介 柳喬之 竹中直人/大杉漣
<スタッフ>
原作:石ノ森章太郎
企画:藤岡 弘、
監督:金田 治(ジャパンアクションエンタープライズ)
脚本:井上敏樹
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