『とうらぶ』『艦これ』ファンの熱狂的反響が歴史番組の価値観を変えた!――『歴史秘話ヒストリア』プロデューサーに聞く、アニメファンと歴史番組の共有性
7年間のロングランを続けている『歴史秘話ヒストリア』が、2016年春に放送日時や案内役を変更し、今回大幅リニューアル! 本番組と言えば、アニメファンにとっては、番組中に梶浦(由記)サウンド使用されていることと、彼女のプロデュースする「Kalafina(カラフィナ)」の「storia(ストーリア)」が、使われていることでも有名な番組です。また、2015年は『刀剣乱舞』や『艦隊これくしょん』のファンに向けたとも思えるテーマも放送され、アニメイトTVでも紹介したところ大きく話題になりました。
そんな『歴史秘話ヒストリア』が、2016年春の番組編成で大きく変わるということで、本作品のプロデューサーを務める木道壮司さんにインタビューを実施。「歴史番組とアニメはどう交わるのか?」「アニメが番組づくりにどう影響しているのか?」などを、じっくりと聞いてきました!
■軍艦の歴史的価値を『艦これ』ファンが底上げした!
━━アニメやゲームには、歴史をテーマにした作品も多く、『歴史秘話ヒストリア』のような歴史番組と相性が良いと感じているのですが、制作するうえでアニメファンを意識しているような事はありますか。
木道:現在はむしろ、アニメやゲームの方が、テレビ番組よりも、歴史コンテンツを取り込んでいるように感じています。僕はディレクター時代から歴史番組を制作しているのですが、歴史番組といえば、「おじさんが観るもの」というイメージがあったジャンルでしたが、ゲームやアニメによって間口が広がったと思ってます。しかし、その変わっていく歴史ファンの流れに、テレビ側が追い付いていないのではとも思っています。
『歴史秘話ヒストリア』では、そんな懸念を払拭するべく、またアニメ・ゲームファンにも番組を観てもらいたいと考え、彼ら彼女らを意識したネタの選定や演出をさせていただいてます。
また、『歴史秘話ヒストリア』ではドラマ部分にも力を入れていますが、その演出は「電気紙芝居の進化形」で、アニメにも通じる部分があるかなと考えています。感情表現のわかりやすさや、シーンの切り替え、場面の絵作りなど、番組としてアニメ作品を意識している部分もありますね。
━━『刀剣乱舞』を意識した日本刀特集「あなたのココロを一刀両断 日本刀ものがたり」(2015年7月8日放送)や、『艦これ』にも登場する「間宮」を取り上げた「~海軍のアイドル・給糧艦「間宮」~」(2015年12月2日)の反響はいかがでしたか?
木道:物凄かったです。我々にとってみては、歴史番組をあまり観ないけど興味を持っている層が、アニメ・ゲームのファンには山のようにいるわけです。そういった若い世代の方たちに向けた入り口として、日本刀特集や間宮をきっかけに、「歴史って面白い」と思っていただけて、違う回も観ていただけるようになったと思っています。
また、アニメ・ゲームのファンの人たちの多くはネット世代なので、ネットの口コミで『歴史秘話ヒストリア』はここ数年で知名度が大きく上げ、番組もメジャーになったという手ごたえを凄く感じています。
━━具体的に手ごたえを感じたエピソードなどはありますか。
木道:最初のきっかけは「伊400」(「幻の巨大潜水艦 伊400 日本海軍 極秘プロジェクトの真実」(2015年5月6日放送))でしょうか。あの時いただいた反響の大きさも相当なものでした。『艦これ』の中のキャラクターが好きな人は、知識としてはある程度知っていると思いますが、歴史的な背景まではご存じない方もいますしね。
━━当時の状況までは理解されていないということですか。
木道:ゲームやアニメを作られてる方って、歴史的事実を非常にうまく配置して作品にしているんです。歴史的な知識を持つと、「ここはこういうことだったのか」というのがわかり、相乗効果によってアニメやゲームをより楽しむことができるようになる。
ですから、歴史番組を観れば観るほどゲームが楽しくなるのだと思います。たとえば『艦これ』で、間宮がどうして喫茶店扱いなのかという理由も、実際の歴史に触れることで、「こういうことだったのか」と理解できて、より楽しみが増えていくんですよね。実際にそういった声が非常に多く聞かれました。
━━間宮の企画についてはだいぶ前に立ち上がっていたとお伺いしたのですが、放送を後押ししたのはやはり『艦これ』なのでしょうか。
木道:そうですね。企画自体は番組スタート時の2009年の頃から立ち上がっていました。しかし軍艦というのは「兵器」ですので、多くの方が観られるテレビで取り扱うにあたって、センシティブな側面もあります。
これまでのNHKの番組では、兵器というものが持つ、戦争、殺戮といった負のイメージがピックアップされがちで、「開発を進める技術者たちの苦労や葛藤」だったり、「伊400に関わった人たちそれぞれの人生」だったりといった側面にはあまりスポットが当たっていませんでした。 そういったテーマを表に出す後押しをしてくれたのが、「伊400」の非常に大きな反響でした。「日本刀特集」や「間宮」をテーマにできたのも、「伊400」のステップがあったからですね。
■梶浦ワールドが導く歴史の世界!
━━番組の主題歌を歌っているKalafinaは、アニメファンには、大変な人気を集めています。プロデューサーの視点で、Kalafinaの起用はどんな効果が出ていると感じていますか?
木道:『歴史秘話ヒストリア』の代名詞とまで言われている「storia」ですが、2009年の放送時は、インストゥルメンタルなオープニングだったんです。後にKalafinaがカバーしたもの頂いて、テーマ曲として改めて使わせていただきました。
僕が言うのもおこがましいのですが、Kalafinaがデビュー9年で、『歴史秘話ヒストリア』は始まってから8年と、共に成長してきた部分というのがあるんじゃないかと思ってます。ですので、「storia」は、番組にとっても、Kalafinaにとっても、看板代わり、名刺代わりのような役割を果たしているのではと思っています。
実際、映像を編集するときも、「storia」をイメージしながら編集するんです。BGMとしてではなく、映像と音楽が一体となって、人の感情に直接訴えていくものとしてです。そういう意味では、梶浦さんの楽曲やKalafinaの歌は、番組における強力なツールであり、欠かせないものになっています。
━━視聴者側としては感情を盛り上げるツールですね。
木道:はい。なので、Kalafinaも含め、劇中の曲は全て梶浦さんの手掛けたものになっているのです。梶浦さんの色々な曲が混ざって使われるので、「まどか☆マギカ」などのアニメの曲もよく使います。いい曲をどんどん取り入れて、梶浦ワールドとヒストリアワールドをシンクロさせる感覚で、番組を制作しています。
━━梶浦さんを選んだ理由をお聞かせいただけますか?
木道:曲から感じられる、独特の世界観ですね。梶浦さんの曲って、どこか懐かしいメロディなのですが、エキゾチックな感じなんですよね。これは歴史においても同様かなと思ってます。歴史って、遠いエキゾチックな話と思うけれども、どこか懐かしく、人として共感できる部分がある。そういう部分で、世界観がとてもマッチしていると思います。
時々、「他のNHKの番組と比べて、BGMの音量が非常に大きく、コメントが聞きづらい」という意見も寄せられるのですが、この番組は半分、梶浦由記とKalafinaを聴く番組でもあるんです(笑)。コメントなどがあまり入ってこなくても、音楽で、楽しい気分、悲しい気分などといった雰囲気を積み上げることによって、没入していただくことも狙いのひとつなんです。番組と梶浦サウンドは不可分と思っています。
━━梶浦サウンドを聴く番組、アニメファンとしては最高ですね。今後、アニメ・ゲームファンに向けた次なる企画などがありましたら、お聞かせください。
木道:漫画で、「どこかの若い皇帝がのし上がっていく物語」で人気のある作品があると感じています。そういった漫画ならではのファンタジー要素を取り込みつつ、歴史と重ね合わせて、ファンに楽しんでいただくような企画が動いています。
もちろん、『艦これ』の次なるものも考えておりますので、いいタイミングでできたらいいなと思っています。『歴史秘話ヒストリア』は間口の広い番組ですけど、歴史を軸にしていけば何でもありだと思うんです。世の中の動きに敏感になりつつ、若い人にも観てもらえるような仕掛けを、今後も続けていきたいと思います。
━━楽しみにしています。ちなみに木道さんは、マンガ、及びアニメなどはご覧になるのでしょうか?
木道:それなりにですが、拝見していますね。『艦これ』なんかも仕事抜きで遊ばせていただいています。よくできたゲームですよね。
━━嬉しいですね。本日は、ありがとうございました。
■番組紹介
2009年より放送されている、歴史番組。古代・戦国・幕末から近現代まであらゆる時代から、歴史の転換点となった出来事や、秘められたエピソードなどをドラマ形式で綴る。 『刀剣乱舞』や『艦隊これくしょん』など、歴史をモチーフとしたゲームなども題材として取り上げている。また、梶浦由記の楽曲や、「Kalafina」の歌が劇中を彩っており、若者を中心に高い人気を集める。8年目を向かえる今年は、時間を金曜8時に移し、大幅にリニューアル! より「ポップ」に、「親しみやすく」、「スケールアップ」な番組に。
<キャスト> 案内役 井上あさひ
<今後のラインアップ>
4月22日(金)後8:00~8:45「日本でいちばん怖いパパ信長」
冷徹な行動で知られる織田信長がもし自分の父親だったら? 信長の息子・信忠(のぶただ)の目から見た親子のドラマティックな物語。織田家の嫡男・信忠が父から命じられた初陣の相手は、自分を可愛がってくれた叔母・お市を攻め滅ぼすという非情なものだった。戦のたびに残虐なふるまいを繰り返す父にわだかまりを抱く信忠。しかしやがて息子は父の真意を悟っていく。
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