“養殖ライダー”を通じて向き合った自分とは?『仮面ライダーアマゾンズ』水澤悠/アマゾンオメガ役・藤田富さんインタビュー
オンラインショップの「アマゾン」と、仮面ライダーの「アマゾン」という、まさかの組み合わせで4月より「Amazonプライム・ビデオ」にて配信されている『仮面ライダーアマゾンズ』(以下、アマゾンズ)。BS朝日(7月3日より毎週日曜深夜1:00~)、TOKYO MX(7月6日より毎週水曜22:30~)でのテレビ放送に加え、2017年春の「シーズン2」配信も決定しています!
本作は、シリーズ最大の異色作とも言われる『仮面ライダーアマゾン』(1974年)をモチーフに、「平成ライダー」のスタッフ陣によって完全新生された、仮面ライダー45周年を飾る一作。児童向けの色を残すテレビ放送のライダーとは一線を画したストーリーと演出に、新しいライダーの可能性を見出した作品ともいえます。
そんな『アマゾンズ』より、「引きこもり」という異色の設定の“養殖ライダー”――水澤悠/仮面ライダーアマゾンオメガを演じる、藤田 富(ふじた とむ)さんにインタビュー! モデルとして活躍するなか、昨年より俳優活動をスタートして、今作で連続ドラマ初主演を飾った藤田さん。全13話を撮り終えて、自分の中の”野生“と向き合い続ける悠から感じたこととは?
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オーディション2回連続落選から、どんでん返しで主役に抜擢
――全13話、オールアップお疲れさまでした! 真冬に撮影入りしたということもあり、とても大変だったのではないかと思います。
水澤悠/仮面ライダーアマゾンオメガ役・藤田富さん(以下、藤田):ありがとうございます! 1月から撮影でしたので、寒い時は本当に寒かったですね。最初に石田監督から、「他のキャストとナァナァで仲良くなっても全く意味ねぇから。まわりを気にせず、自分の役だけに向き合え!」というお言葉があって、現場はちょっとピリピリしていたんですけれど、「寒いっすねぇ」ってみんなでストーブを囲むうちに打ち解けちゃっていました(笑)。
――駆除班の部屋のシーンではよくちゃぶ台を囲んでいますが、まさにあんな感じで?
藤田:ですね! 出番が終わった人から手をこすりながら集まってくるんです。マモルくん(演:小林亮太)なんて裸なので、みんなで「大丈夫?」とか言って。マモルくんは裸でがんばってるんだから、服を着てる俺らはもっとがんばろう! と気合いが入ったりもしました(笑)。
一同:(笑)
――それでは、まず改めて『仮面ライダーアマゾンズ』で主演に抜擢された経緯とご感想から聞かせていただけますか?
藤田:オファーをいただいて、まず白倉(伸一郎)プロデューサーと武部(直美)プロデューサーとの面談が1回、後日に石田(秀範)監督も加わった3人の面談が1回ありました。どちらの日もちょっとした演技をやったんですけど、石田監督はタバコを吸いながら「ハァ……」って、すごく渋い顔をしていらっしゃったので、これは受からないだろうと思いました……。
でも結局、「すごい良い役に決まったよ!」と事務所の社長から聞いて、台本を見てみると一番前に名前が書いてあったので……本当にビックリしました。「俺、主役じゃん!」と、そこで初めて知ったんです。もちろんうれしかったんですけど、とにかくビックリでした!
――藤田さんは、過去に「仮面ライダー」のオーディションを受けていたとか。
藤田:過去2回、受けさせていただきました。まだ演技について何もわからない状態で……もちろん落ちて。でもそのオーディションから4ヶ月後くらいして突然、『アマゾンズ』のお話をいただいたんです。
――落ちたものの、きっとスタッフの記憶に爪跡を残していたんですね。
藤田:どうなんでしょうね。とにかく念願が叶った! という感じでした。このために俺は……今までオーディション落ちてきたんだ! って(笑)。
――藤田さんは小さいころに「仮面ライダー」をご覧になったりは……?
藤田:『クウガ』(2000年)、『アギト』(2001年)、『龍騎』(2002年)をリアルタイムで見ていました。あまり内容まで今は覚えてないですけど、特に『アギト』が好きだったと思います。最近になって『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』(2001年)を見たんですけど、やっぱりおもしろかったです。あと、仮面ライダーギルス(演:友井雄亮)ってアマゾンオメガと似てるかも! って再発見しました。野性的な戦い方とか、「自分は怪物なんじゃ……」って悩むところとか、ちょっと近いものがありますよね。
自分の中の"野生"と向き合っていく悠
――藤田さん演じる水澤悠も”引きこもり“だったところから、徐々に自分の中の”野生”と向き合っていきました。初めて台本を読んだ時は、悠にどんな印象を受けましたか?
藤田:”引きこもり"という部分でやっぱり、「こんな仮面ライダーいるんだ!」って驚きました。けど、自分としてはとても共感できるんです。僕もずっと、親から勉強しろ勉強しろと言われて、部活とかも言われるがまま辞めたりしていたので。中学の時はパソコン部に入っていて、まさに引きこもり気味でした。でも大学に入って、そのあと芸能の道を目指すようになり、自分もいろいろと変わっていけたのかもしれません。そういう意味では悠と似ていて、やりやすかったです。
――そこから役作りをしていく中で、どんなことを考えましたか?
藤田:スタッフとキャスト全員で本読みをした時に石田監督から、「仮面ライダーっぽくやるな。ひとりの悩んでいる人間を演じろ」と言われて、それを念頭に置いていました。撮影に入っても、僕としては悩んでいる人間・水澤悠をそのまま演じさせていただいたつもりで、最後まで「仮面ライダー」をやっているという感覚はあまりなかったかもしれません。
石田監督って撮影の時、最初は役者の思うようにやらせてくれるんです。なので撮影の日までとにかく自分でよく考えて、それを現場で出して、ダメな場合は監督から「それは違う」と指摘をいただいて調整していきました。
――今回が連続ドラマ初主演ですが、その点で大変だったことなどは?
藤田:これまで僕は舞台をやらせていただくことが多かったんですけど、台本を読んでスタッフさんと相談して、自分はこう演技しようって決まったら、それを現場でいかに上手くできるか……という感覚だったんです。舞台って、始まったら途中で止まることがないので。
でも今回『アマゾンズ』に出させていただいて、映像と舞台はぜんぜん違うんだなと実感しました。相手の役者さんの演技によって自分の演技が動かされることの連続で、「演技を演技で返す」ことを知ることができた気がします。僕は三浦春馬さんみたいな素直でまっすぐに出す演技が好きで、参考にしたいとも思っているんですけど、現場ではあくまで相手の役者さんの芝居に影響されて自分の演技が変わるし、逆に僕の芝居の影響で変わってくださったりもします。それがすごくおもしろかったです。
――やはり、そこは鷹山仁/仮面ライダーアマゾンアルファ(演:谷口賢志)との絡みが大きかったですか?
藤田:谷口さんの演技にはもう、何度も感化されました。第7話で、人間の姿になった2体目のモズアマゾンを悠が逃がしてしまったあと、仁に頭をガッとつかまれて「そんな甘ちゃんで……できるかって」と言われるシーンとか、すっごく響くんです。頭をつかむのは谷口さんアイデアなんですけど、威圧感がとにかくすごくて、僕も自然に演技が出てきました。悠としては悔しくて自然と涙がたまってきたんですけど、流すのはおかしいと思って我慢したんです。けっきょく涙が流れちゃってNGになって、もう1回撮り直しましたんですけど……自分の中で一番好きなシーンかもしれないですね。谷口さんの演技の熱量がとにかくすごいです。
――仁とは変身後も、仮面ライダーアマゾンオメガ、仮面ライダーアマゾンアルファとして声でのかけあいがあります。アフレコはいかがでしたか?
藤田:基本的に殴る時は常に「ウゥアア!」って叫んでるので、かなり大変でした(笑)。ワンパターンになりやすくて怒られたりもして。野生的な声の中にも、強弱とかテンポ、声色なんかを常に工夫しなきゃいけなくて、本当に苦労しました。
――自分の中の野生と向き合っていった悠は、第6話でいったん「守りたいものは守って、狩りたいものは狩る。そのために戦います」「駆除班でムシを狩ります!」と決意しました。こういった悠の変化に対しても、藤田さんは自然な流れとして共感したのでしょうか?
藤田:悠って常に悩んでいますけど、第1話からずっと自分の中の檻で暴れてるアマゾンがいたじゃないですか。言葉としては出てこなくても、あれは悠の本心としてずっと心の中にあったんですよね。それが決意になって出てきたのが「駆除班でムシを狩りますッ!」っていうセリフだったというか。そのイメージがあったのでやりやすかったです。人間って、内なるものを秘めながら、それを抑えて、常に迷い続けるものなのかな……それを開放したい気持ちは、きっとどんな人にもあるんだろうな……と思いました。
登場人物すべてに共通するのは「生きる」ことへの必死さ
――いちど決意した悠ですが、この先のエピソードでもまだまだ揺れていくのでしょうか?
藤田:まだまだ葛藤が続いてます! やっぱり、答えがないんですよね。答え出してもやっぱりブレたりして……常に迷い続けるのが悠なんだと思います。
あと美月(演:武田玲奈)も、悠がアマゾンであることを知ってから葛藤して葛藤して……自分で動き出していきます。その美月のがんばりを、悠が受け入れるのか受け入れないのか。そこにもまた葛藤が生まれるんです。
七羽さん(演:東亜優)も、仁に対する変化があってこの先おもしろいですよ! 最初のころは七羽さんがちょっと謎で、僕たち役者陣で「七羽さんもアマゾンじゃね?」って話してたんです(笑)。結果どうなのかはお楽しみですけれど、七羽さんってこういう人なんだ! というのが最終話でわかります。心に響く方も多いはずです!
――最終回へ向けて、仁との関係の決着も気になるところです。
藤田:演じる僕と谷口さんの関係でいうと、実は「完全に負けた!」と思うシーンが出てくるんです。最後のバトルの最後の変身のシーンなんですけど、変身する時の「アマゾン」の言い方が、「谷口さん……そうきたか!」と……。最後の最後まで谷口さんはすごいです! 僕もそれに影響されて、それを超えたくて、気合いを入れて演技させていただきました。
――全13話を演じきって、藤田さんは『アマゾンズ』の物語をどう受けとめましたか?
藤田:「生きる」ということを、本当にまっすぐに表現している作品だなって思いました。登場人物も、駆除班は本当に人間味のあるキャラクターがそろってますし、美月みたいな内気な高校生も実際にいますし、……七羽さんはいるのかちょっとわからないですが(笑)。いろんなキャラクターのいろんな色があるんですけど、でも結局「生きる」という軸は共通していると思うんです。生きることはシンプルだけど難しくて、みんな必死なんだ……というのが、登場人物それぞれにあるんですよね。最後の最後には、それが一気に交差しますよ!
――最後に、配信で楽しみに見ている方、テレビでこれから見る方へメッセージをお願いします。
藤田:いまの社会、いろんな場面で我慢することが当たり前になっていると思うんですけど、この作品を見ると、たぶん本当の自分はわがままなんだということに気付くんじゃないかと思います。そのわがままを開放すると、失うものもあるだろうけど、得るものが絶対あるはずなんです。そんなふうに自分の中のものと向き合える作品だと思うので、立ち止まったり悩んだりしている人にぜひ見ていただいて、いろんなことを感じていただけたらうれしいです!
――ありがとうございました!
[取材&文・小林真之輔]
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作品情報『仮面ライダーアマゾンズ』
仮面ライダー45周年記念プロジェクト
『仮面ライダーアマゾンズ』
Amazon プライム・ビデオにて全13話配信中
配信中のオリジナル版を再編集したテレビ版オンエアが7/3(日)よりBS朝日、7/6(水)よりTOKYO MXにて決定!
<イントロダクション>
仮面ライダー45周年記念プロジェクト、最大級の衝撃。
『仮面ライダーアマゾン』(1974)。仮面ライダー第4作にして、シリーズ最大の異色作が、平成ライダーを築きあげたレジェンドスタッフ × 最強アクションチームによって完全新生!
悠(はるか)と仁、養殖と野生。対照的な2人の“アマゾンライダー”を中心に、様々な登場人物の思惑が交差し、謎が謎を呼ぶストーリー。
Amazon プライム・ビデオの日本製作オリジナル作品第1弾として、映画を越える次世代の映像への挑戦。
いま、仮面ライダーと映像の歴史が変わる。
<アマゾンとは>
野座間製薬の研究で生まれたウイルスサイズの人工生命《アマゾン細胞》をヒト型にまで成長させた集合体の総称。
ヒトのタンパク質を好む習性があり、多くのアマゾンは人肉食を行う。2年前、研究所で起きた事故で、約4,000体の実験体が街に解き放たれた。
クモやモグラ等、様々な種類のアマゾンが存在する。
<スタッフ>
原作:石ノ森章太郎
脚本:小林靖子
監督:石田秀範/田﨑竜太/金田 治(ジャパンアクションエンタープライズ)
アクション監督:田渕景也(Gocoo)
音楽:蓜島邦明
撮影:上赤寿一/朝倉義人/岩﨑智之
キャラクターデザイン:田嶋秀樹(石森プロ)
キャラクター&クリーチャーデザイン:小林大祐(PLEX)
プロデュース:白倉伸一郎/武部直美(東映)
佐々木 基/梶 淳(テレビ朝日)
古谷大輔(ADK)
<キャスト>
水澤 悠/仮面ライダーアマゾンオメガ:藤田 富
鷹山 仁/仮面ライダーアマゾンアルファ:谷口賢志
水澤美月:武田玲奈
泉 七羽:東 亜優
志藤真:俊藤光利
マモル/モグラアマゾン:小林亮太
大滝竜介:馬場良馬
高井 望:宮原華音
三崎一也:勝也
福田耕太:田邊和也
前原 淳:朝日奈 寛
水澤令華:加藤貴子
加納省吾:小松利昌
橘 雄悟:神尾 佑
天条隆顕:藤木 孝 ほか
<主題歌>
「Armour Zone」
歌:小林太郎
作詩:マイクスギヤマ
作曲:山田信夫
編曲:高橋哲也
Original Soundtrack
NIPPON COLUMBIA.,LTD.
Taro Kobayashi by the courtesy of KING RECORD Co.,Ltd.