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はるはるはシンデレラになれたか?『Go!プリンセスプリキュア』

朱鷺田祐介の勝手にアニメ三昧 「はるはるはシンデレラになれたか? 『Go!プリンセスプリキュア』」

 初めまして、TRPGデザイナーの朱鷺田祐介(ときた・ゆうすけ)です。代表作はダークファンタジー「深淵」。「クトゥルフ神話TRPG」の戦国サプリメント「比叡山炎上」の方が有名かもしれませんね。

 今回は、編集部より好きなアニメの話をしてくださいとのことで、折々のアニメの話などさせていただきます。少々古い話をしてしまうかもしれませんが、お許しあれ。

■プリキュアの話をしよう
『Go!プリンセスプリキュア』が最終回を迎えた。少し遅くなったが、この機会にプリキュアの話をしよう。私は初代の『ふたりはプリキュア』の格闘少女っぷりに魅せられた口で、縦回転で飛び込んでいく二人の姿や、なぎさとほのかが敵に弾き飛ばされつつも、膝立ちの姿勢から二人揃って、きっと顔を上げるカットを見るたびにしびれる。
 ここから『プリキュア』は始まり、通算12作目となる『Go!プリンセスプリキュア』もまた傑作だった。シリーズ全体を振り返りながら、本作の素晴らしさを語りたい。

■シンデレラ・ストーリーとしての『Go!プリンセスプリキュア』
『Go!プリンセスプリキュア』はシンデレラ・ストーリーである(断言)。OPでもいう。
「つよく、やさしく、美しく。 プリンセスを目指す3人(※)の物語」(※後半は4人)

 和菓子屋の娘、春野はるか(愛称はるはる)は、幼少時に読んだ絵本をきっかけに、プリンセスになることを目指す。何度も、その夢を口にしては馬鹿にされてきたが、くじけずに、自分でプリンセスになるための道を探し、中学にして、全寮制の私立学校ノーブル学園に入学する。

 彼女を支えたのは幼少時に出会った「ホープキングダム」のカナタ王子からもらったドレスアップキーである。彼女はこれをお守りにしてプリンセスの道を邁進する。本来、プリンセスとは、王家や貴族の姫君を指す言葉であり、一般庶民出身のはるかには叶わぬ道であるが、そこをあえて、はるかは押し通す。そして、彼女は伝説のプリンセスプリキュアのひとり、キュアフローラとなり、究極のプリンセス、グランプリンセスとして、ディスダークの絶望の女王ディスピアを倒して、ホープキングダムと世界を救う。

 EDは、前半戦と後半戦の曲コンセプトが素晴らしい。前半のED『ドリーミング☆プリンセスプリキュア』は、序盤、プリンセスをイメージしたスローなワルツでぐいっと掴んだ後、アップテンポになって盛り上げ、終盤、ドレスアップした上で「ごきげんよう」と〆る。今となってはお伽話の中にしか出てこないお姫様や舞踏会といったキーワードを視聴者である低年齢女児に丁寧に教えていく。

 最初は面白いやり方ぐらいに思っていたが、この曲がまた、中毒性が高く、毎回「ごきげんよう」と挨拶する彼女らがどんどん可愛く見えてくる。最後に、夢の扉を鍵で開けて、扉の前に下がっていく彼女らを見ると、娘を送り出す父親のような感動すら感じるようになってしまった。

『Go!プリンセスプリキュア』は12代目ということで新たな挑戦がいくつもあったが、その最大の挑戦は「成長」が描かれたことだ。もちろん、歴代のプリキュアでも、主人公の成長は描かれてきたが、基本的に、1年間という枠組みの中での成長に過ぎなかった。
 そうではなく、今回のプリキュアたちは将来の進路と直接、向き合ってきた。主人公はるかの夢がプリンセスとあまりにも夢見がちに見えるぶん、他の二人がよりリアルな夢と取り組むことになった。

 三人目のプリキュア、天ノ川きららはすでにファッションモデルとしてデビューしており、学校と仕事で忙しいが、将来は、母親のように海外コレクションで活躍することを目標としている。そのため、彼女はドレスアップキーに選ばれながらも、一度はプリキュアとなって戦うことを拒絶する。その後も、海外への招聘とプリキュアの活動の板挟みになって苦悩し、一度はモデル人生を諦めてプリキュアとして戦うことすら選ぶ。実際、仕事に穴をあけたことから干されている期間もきちんと描写され、一からやり直す彼女の姿を描くのはもしかしたら、このような女児向け番組ではタブーではなかったかとも思えるが、夢と取り組むという姿をきちんと描いた。

<b>▲スーパーモデルとして活躍するきらら  プリキュア史上トップクラスに可愛い。</b>

▲スーパーモデルとして活躍するきらら  プリキュア史上トップクラスに可愛い。

 二人目のプリキュアで、はるかよりひとつ年上で生徒会長の海藤みなみ(キュアマーメイド)は逆に、自分の夢に目覚めるタイプだ。彼女は大企業の令嬢であることから、大学進学後、ファミリー企業に入って両親のために役立つのがベストの道だと考えているが、夏の浜辺で出会った海洋学者北風あすかに憧れ、研究者としての道を模索し始める。

■プリンセスへの試練

 さて、もっとも夢の実現性が低そうなのが、主人公はるかのプリンセスであるが、彼女をよきプリンセスに育てるため、さまざまな試練の要素がシリーズに取り込まれた。
 まず、ノーブル学園の貴族っぽいイベントに加えて、ミス・シャムールによるプリンセス・レッスンである。プリンセスになるにはどうしたらいいのか? 序盤、音楽、料理、礼儀などさまざまレッスンが続く。

 さらに、敵として、プリンセス・トワイライトが登場し、生まれながらの貴族令嬢として傲慢な態度を取る。プリンセスという存在の闇の部分を示した後、彼女ははるかに救われ、本来の姿、ホープキングダムのプリンセス・トワに戻る。そして、最後の試練がカナタである。


 カナタは、夢の国の王子として、はるかにプリンセスの夢を与え、ディスピアに国を滅ぼされた後も、闇と戦い続ける。身を呈して女王ディスピアの魔手からプリキュアを救った後、すべての記憶を失って現実世界に流れ着く。バイオリン職人に救われた彼ははるかや妹のトワと再会するも、記憶を取り戻すことはなく、ホープキングダムの滅亡やプリキュアとディスダークの戦いの話を聞いてもぴんと来ない。

 38話で、ディスダークの幹部クローズの罠がはるかを狙う。みなみときららが学校を離れた隙に、クラスメイトを装ったクローズから不安を吹きこまれたはるかは、ディスダークの怪物ゼツボーグとの戦いで傷つく。そこでカナタからも「プリンセスになんてなるな」と否定されてしまう。一番信じていてほしい人から夢を否定されるという厳しい展開だが、はるかの夢の力は強く、続く39話で彼女は過去の思い出を振り返って、自分の原点を確認し、自ら立ち直る。カナタ王子も彼女の原点を知ることでやっと記憶を取り戻し、再び、プリキュアとともに戦い始める。

■最終決戦:絶望は消えない。しかし。

『Go!プリンセスプリキュア』のテーマは夢であり、その結果、物語は常に具現化した「絶望」との戦いとなる。絶望の象徴である敵陣営はディスダークと呼ばれ、それを率いる絶望の女王ディスピアを演じるのは榊原良子。『機動戦士Zガンダム』のハマーン・カーン、『風の谷のナウシカ』のクシャナ、『HELLSING』のインテグラと悪くて強そうな女ボスを演じさせたらトップクラスの名優である。おかげでディスピア様が何か言うたびに、絶望と緊張が広がる。

 それでも、プリキュアたちは激戦の末に、ホープキングダムを奪還、その後、ノーブル学園のある夢ケ浜に顕現したディスピアを倒す。最終回「はるかなる夢へ! Go!プリンセスプリキュア」では滅びたディスピアからすべての力を与えられたクローズが最終形態になり、キュアフローラ(はるか)との一騎打ちとなる。「夢がある限り、絶望は消えない」と言って戦い続けるクローズに対し、キュアフローラは絶望を認め、応える。「絶望は消えない。絶望は消せない。楽しいことと辛いことは背中合わせ。夢も絶望もその両方が私を育ててくれた」

 最終回ならでは、超絶格闘バトルとともに、語り合うフローラとクローズだったが、双手掌の構えでクローズの胸を打ちつつも、希望と絶望を肯定するフローラの答え「夢だって消えないよ」にクローズは呆れて去っていく。

クローズ「またな」
フローラ「ごきげんよう」

この交錯のシーンは絶望と夢の関係を見事に描き出す。

■別れの時

 最終回の後半は後日譚。別れの場面だ。彼女らはプリンセスプリキュアとしての役目を終え、ドレスアップキーはその力を失った。
 トワとカナタはホープキングダムへと帰る。以降は現実世界との行き来も出来ないだろう。カナタとはるかは、最初に出会った丘の上で別れる。

「また会えるよね。会いたいと心から望めば」

 はるかはやはり中学生の少女である。カナタが消え去った後、涙を堪えられないが、それでも、涙を拭い、前に向かって歩き出す。名シーンであるので、実際に見てほしい。

■描かれたプリキュア以降

『Go!プリンセスプリキュア』の最後の挑戦はまだ終らない。最終回のED後、Cパートとして、絵本を読む少女の姿から新たなシーンが始まる。少女が読んでいたのは主人公たちのクラスメイト七瀬ゆいが描き、商業出版された(!)絵本「プリンセスと夢の鍵」(ななせゆい名義)であった。少女はつぶやく。
「こうして、プリンセスたちの夢の旅は続くのでした。プリンセスたちはもう会えないのかな?」
 少女は母親の元に走っていく。それを眺めていたのは成長したはるか(顔は映らないが、声で分かる)で、なぜかその手には、透明なドレスアップキーがある。
 ここで各プリキュアのその後がちらりと描かれ、すでに研究者となっている海藤みなみが映ることから数年が経過したものと思われる。
 彼女はこういう。「夢に向かって走り続ければ、その心の中にまたキーは生まれる。そのキーがあれば、きっと、きっと」

 彼女のシンデレラ・ストーリーがまだ現在進行形であることを匂わせる演出は小学校入学以前の女児には早いかもしれない。だが、たぶん、分かってもらえる。そう、はるはるはきっと夢を実らせて、プリンセスになり、しあわせになる。そう信じることができる。

 それでは、ごきげんよう。

【囲み】非公式プリキュア用語:(物理):読み方「カッコぶつり」
「説得(物理)」「魔法(物理)」などのように使う。プリキュアシリーズの多くが拳や蹴りなどの格闘攻撃を行うこと。最終決戦ですら拳で語り合う展開になることが多い。『真女神転生』などのRPGなどで言えば、行っている行動が主に物理属性の攻撃を伴うため、(物理)とつける。

■朱鷺田祐介
TRPGデザイナー。代表作としては、ダークファンタジー「深淵第二版」、戦国クトゥルフ「比叡山炎上」など。翻訳監修を担当したSF-RPG『エクリプス・フェイズ』が6月30日に発売。。バンタン・ゲーム・アカデミーで非常勤講師として、「ライティング」「幻想世界論」「ゲーム研究」などを担当、ゲーム業界を目指す生徒に小説、コミック、アニメなどの作品解説を行うこともしばしば。

[文/朱鷺田祐介]

【BD情報】
『Go!プリンセスプリキュア』Blu-ray vol.1~vol.4好評発売中!
各巻12話収録/各2disc/各23,000円+税

>>『Go!プリンセスプリキュア』公式サイト
>>朱鷺田祐介Twitter

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