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無名が可愛すぎた劇場版『甲鉄城のカバネリ』(前編)をレビュー!

無名のファンは間違いなく見るべし! 総集編と侮っていたら無名が可愛すぎた劇場版『甲鉄城のカバネリ』(前編)をレビュー

「貴様!人かカバネか!?」「どちらでもない!俺は……カバネリだ!!」

 印象的なオープニングフレーズと共に、2016年の話題を謁見したTVアニメ『甲鉄城のカバネリ』(以下、カバネリ)。荒木哲郎監督(『ギルティクラウン』、『進撃の巨人』)、美樹本晴彦氏(『超時空要塞マクロス』、『機動戦士ガンダム0083 ポケットの中の戦争』)といった日本最候補のスタッフたちが参加しているのは言わずもがな、蒸気機関が発達した極東の島国・日ノ本(ひのもと)が舞台となっていたり、不死の怪物・カバネと人類の戦いが繰り広げられたりと、斬新な世界観も大きな注目を集めました。

 そんな『カバネリ』の劇場版となる『甲鉄城のカバネリ 総集編』が、いよいよ12月31日よりロードショー! 煙を巻き上げ轟音をうならす甲鉄城、飛び散る毒々しいカバネの死肉、そして筆舌に尽くしがたい無名の美しさ……。そのすべてがスクリーンに蘇ります。劇場版の『カバネリ』は一体どこがすごいのか? ここでは前編である『甲鉄城のカバネリ{前編}集う力』のレビューを筆者の私見を交えながらお届けしていきます。

TVシリーズの1~6話が1本の映画として見事にまとまる
 今回の劇場版は、TVシリーズに新規カットを追加した再編集の作品です。『{前編}集う力』は、主にTVシリーズの第1話~第6話に相当するエピソードをまとめたものとなっています。初見の人ならまず違和感を抱くことはないと断言できるほど自然にストーリーが展開され、特にここから『カバネリ』に触れてみようという人にはうってつけの総集編となっています。既に続編の制作も決定している『カバネリ』ですが、後編も含めた2つの劇場版を見るだけで、すんなりとその先の物語を楽しめるようになると思います。

 そしてなにより、序盤からいきなり入ってくる新カットは息をのむほどのクオリティです。まるで鮮血の濃霧が包んでいるような、深紅の背景にたたずむ無名。赤く光る眼と心臓が意図しているものとは……? 激しいアクションと無名の幼くも強い意志の感じられる華麗なシーンは1カット1カットから目が離せません。

和風スチームパンク×ゾンビパニックを組みあせた舞台設定が大きな魅力に
 本作の特徴は、なんといっても「和風スチームパンク」とでも言うべき、独特の世界観にあります。舞台となる日ノ本はまるでパラレルワールドの日本。武士や幕府といった要素を残しつつ、蒸気機関などの西洋文化を取り入れた、戦国・江戸・明治・大正が交わったような歴史的ロマンを感じさせる舞台設定となっています。そこに「カバネ」と呼ばれる、いわゆるゾンビ的な存在が出現することになるわけですが、この「和風×スチームパンク×ゾンビ」という一見相反しそうな要素を混ぜ合わせが、破綻することなく1本の作品にまとめ上げられています。

 そんな魅力的な世界観には、主人公・生駒たち一行の拠点となる装甲機関車「駿城(はやじろ)」、生駒の使う武器である「ツラヌキ筒」など、蒸気を生かした和風のガジェットがたくさん登場するのも見所の一つで、それらが全て映画館の大スクリーンで見られるというのだからたまりません!

 駿城が「ゴオオオォォォォ!」と走り抜けたり、ツラヌキ筒が弾ける「ガァンッ!」という独特の響きだったり、絶望の代名詞とも言えるカバネの大群が「オオオ……」と呻いたり……。様々な映像と音を映画館という最高の環境で楽しめるのは、まさに劇場版ならではです。

 和風ガジェットと言えば、無名が持っている2丁の短銃も素晴らしいの一言に尽きます。巨大なスクリーンでは細かな計器の描写も見ることができ、きゃしゃな体に身に着けた装備にも目が行きます。脇から背中にかけて大きく開いた衣装は、12歳の少女とは思えない色気がチラリと覗かせます……。この大画面で無名の背中と脇が!!

クライマックスのような盛り上がりが怒涛のように押し寄せる!
 TVアニメの一話の中にはいわゆる「起承転結」が盛り込まれているわけですが、それを再編集したものである本作には、物語的な盛り上がりがジェットコースターのように次々と訪れるのも特徴となっています。中盤の頃から映画のクライマックスような流れが何度も起きており、「キリがよさそうだし、前編はこのあたりで終わるのかな?」と2、3回は考えてしまっていたほどでした。しかし、終わらぬクライマックス。ずっと手に汗握りっぱなしで、見終わった後には「ふー、よかったー!」と心地の良い疲労感が残るのは間違いなしです。

 とはいえ最終的には、このクライマックスで終わらせておくのがベストだと感じるだろうと断言できるほど、最高のシーンで後編へバトンを渡す形となりますのでご安心を。さしずめ前編は「対カバネ編」とでも言うべきエピソードがひとつにまとまった形でしっかりと完結しており、前後編の映画にありがちな消化不良感を感じることは一切ありませんでした。

 ジェットコースターのような展開でも花形的存在になるのはやはり、無名の戦闘シーンです! 特に浴衣姿の無名が刃のついた下駄でカバネリの首を一刀両断するシーンでは、メイクアップアニメーターの手によって最高の美しさで表現された最高の姿を「これでもか!」と堪能することができます。首に巻いたリボンをスッ……と解く名シーンを劇場でもお楽しみください。

個性的なキャラクター達も大きな魅力。中でも無名と来栖の活躍にご注目を!
 『カバネリ』といえば、登場するキャラクター達も魅力的です。 男性キャラクターでは、青年侍・来栖がイチオシ。TVシリーズではお馴染みですが、来栖はとにかく強い! そしてカッコイイ! 来栖の武器は武士の魂とも言える刀1本で、それを使ってカバネたちを次々と切り伏せていく様は、本当に映像栄えして見とれてしまいます。

 カバネリである無名や生駒が強いのは分かるのですが、来栖はただの人間であるにも関わらず、彼らと互角(もしくはそれ以上)の活躍を見せるのですから、その実力の凄まじさが伺えます。映画でも、「お前本当に人間なの……?」とツッコミたくなった回数は数え切れないほどでした。

 またドラマ的な見所として、生駒のことを嫌っていた来栖が、次第にその実力を認めるようになっていく……という流れは映画でもバッチリ描かれています。少し前に流行った言葉を使うなら、本作一の「ツンデレ」なキャラクターともいえ、特に女性ファンに注目して欲しいキャラクターです。

 もちろんその他にも、理不尽な価値観に対して意を唱える主人公の生駒、大和撫子という言葉が似合う、正統派お姫様ヒロインの菖蒲、皮肉屋だけどなぜか貧乏クジばかり引かされる巣刈など、メインからサブに至るまで個性的なキャラクター達が満載で、その魅力は映画版でもしっかりと感じ取ることができるようになっていました。

 中でも筆者のイチオシは、メインヒロインともいえる無名。カバネと人の中間的な存在である「カバネリ」の一人であり、大量のカバネ達を相手にしながらも余裕で薙ぎ払う戦闘能力は圧巻。戦闘経験の少ない生駒にとって、戦い方を教えてくれる先生のような存在でありながら、年相応の幼さと弱さも感じさせる妹のような側面も併せ持つという、男心を二度も三度もくすぐるキャラクターです。

 とくに前編では、甲鉄城一行の最強の戦力としてバッタバッタとカバネを倒していく頼もしい姿が中心に描かれており、新カットとして追加された戦闘シーンでも、主に無名のカッコイイアクションシーンが描かれています。冒頭の導入や、クライマックスでの活躍も含めて、まさにもう一人の主人公といっても過言でもない待遇を受けており、筆者のような無名ファンにはたまらない仕上がりとなっていました。

 また、無名役の千本木彩花さんの演技が素晴らしいことを再発見できるのも劇場版ならではだと感じました。大音響で耳元に届く無名の一言一言は、見る者の心を鷲掴みにし、終始「うー!」とうなりたくなるのを我慢させられるほどでした。無邪気で元気な姿を見せたかと思えば、今にも壊れそうなほどの切ない声を出す無名。

 登場の美しさにときめき、マントにくるまって眠る姿にときめき、徐々に心を開いていく姿にときめき、窮地を脱したあとの笑顔にときめく。無名ファンなら無名を見に行くためだけに劇場に足を運ぶのを熱くおすすめします!

お年玉を握りしめて劇場へ!
 少々、無名の話題が多くなってしましましたが、そんな従来のファンも、今まで見ていなかった人も楽しめる作品となっている『甲鉄城のカバネリ総集編』。TVアニメでも評価の高い、澤野弘之氏による楽曲の数々は映画版でも健在で、映画館の音響と相まってTV版にはない感動を与えてくれることも間違いないでしょう。

 さらに公開第一週目の来場者特典として、TVシリーズ最終回の後日談にあたり、DMM GAMESでサービス開始予定のゲームへと繋がるストーリーが描かれる、超豪華書き下ろしドラマCD「話劇 甲鉄城のカバネリ 時雨の夢」の前編・後編という、ファンなら絶対に手に入れておきたいグッズがプレゼントされます。是非お早めのご来場を!

[文/米澤崇史]

作品詳細
<INTRODUCTION>
世界中に産業革命の波が押し寄せ、近世から近代に移り変わろうとした頃、突如として不死の怪物が現れた。
鋼鉄の皮膜に覆われた心臓を撃ち抜かれない限り滅びず、それに噛まれた者も一度死んだ後に蘇り人を襲うという。
後にカバネと呼ばれる事になるそれらは爆発的に増殖し、全世界を覆い尽くしていった。
極東の島国である日ノ本(ひのもと)の人々は、カバネの脅威に対抗すべく各地に「駅」と呼ばれる砦を築き、その中に閉じ籠もることでなんとか生き延びていた。駅を行き来ができるのは分厚い装甲に覆われた蒸気機関車(通称、駿城(はやじろ))のみであり、互いの駅はそれぞれの生産物を融通しあうことでなんとか生活を保っていた。
製鉄と蒸気機関の生産をなりわいとする顕金駅(あらがねえき)に暮らす蒸気鍛冶の少年、生駒(いこま)。
彼はカバネを倒すために独自の武器「ツラヌキ筒(づつ)」を開発しながら、いつか自分の力を発揮できる日が来るのを待ち望んでいた。そんなある日、前線をくぐり抜けて駿城の一つ甲鉄城(こうてつじょう)が顕金駅にやってくる。
車両の清掃整備に駆りだされた生駒は、義務であるカバネ検閲を免除される不思議な少女を目撃する。
その夜、生駒が無名(むめい)と名乗る昼間の少女と再会するなか、顕金駅に駿城が暴走しながら突入してきた。
乗務員は全滅し、全てカバネに変わっていたのだ!顕金駅に溢れ出るカバネたち。パニックに襲われる人々の波に逆らうようにして、生駒は走る。今度こそ逃げない、俺は、俺のツラヌキ筒でカバネを倒す!
―――本当に輝く男になるための生駒の戦いの物語が、今、始まる!

<スタッフ>
監督:荒木哲郎『DEATH NOTE』・『ギルティクラウン』・『進撃の巨人』
シリーズ構成/脚本:大河内一楼『プラネテス』・『コードギアス』
キャラクター原案:美樹本晴彦『機動戦士ガンダム0080』・『超時空要塞マクロス』
アニメーションキャラクターデザイン/総作画監督:江原康之『進撃の巨人』
音楽:澤野弘之『進撃の巨人』・『機動戦士ガンダムUC』
アニメーション制作:WIT STUDIO 『進撃の巨人』・『屍者の帝国』
制作:カバネリ製作委員会

<キャスト>
生駒(いこま):畠中 祐
無名(むめい):千本木彩花
菖蒲(あやめ):内田真礼
来栖(くるす):増田俊樹
逞生(たくみ):梶 裕貴
鰍(かじか):沖 佳苗
侑那(ゆきな):伊瀬茉莉也
巣刈(すかり):逢坂良太
吉備土(きびと):佐藤健輔
美馬(びば):宮野真守

<配信>
Amazonプライム・ビデオで絶賛配信中
http://www.amazon.co.jp/dp/B01DU395HW/ref=dvm_jp_pv_pm_kbntv_001

<『甲鉄城のカバネリ』総集編 劇場公開情報>
前編「集う光」 2016年12月31日(土)より2週間限定全国ロードショー
後編「燃える命」 2017年 1月7日(土)より2週間限定全国ロードショー

配給:松竹メディア事業部

>>『甲鉄城のカバネリ』公式サイト
>>『甲鉄城のカバネリ』公式Twitter

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