構成Tこと構成作家・田原弘毅さんに聞く「ラジオの作り方」第1回

『絶望放送』や『下ラジ』を作った構成Tこと構成作家・田原弘毅さんに聞く「ラジオの作り方」──連載第1回「苦情も来ないようなラジオは誰も聴いてないんですよ!」

 ラジオってどうやって作られているのでしょう? 何気なく「パーソナリティが話しているのを録音して配信、生放送したもの」というイメージがありますが、実際のところ、素人からするとブラックボックスな部分が多いような気がします。どんな仕組みでできているのか、気になりませんか?

 そんな「ラジオの作り方」をお伝えする企画がスタートです。私たちを導いてくれるのは構成Tこと、構成作家・田原弘毅さん。『ぱにらじだっしゅ!』『さよなら絶望放送』『下ネタという概念が存在しない退屈なラジオ』などの伝説的なラジオをアニメイトTV、アニメイトタイムズで数多く制作してきた田原さんと、愉快なゲストをお招きして「ラジオの作り方」についてレクチャーしてもらいます。

 さらに、今回の企画の集大成として、アニメイトタイムズ新米編集者・石橋が田原さんと共にラジオを作ります! しかし、聴くのは好きでも作るのはズブの素人である石橋。果たして、ラジオを作ることはできるのでしょうか?

 連載第1回となる今回は、ラジオのプロデューサーをしているフロンティアワークスの寺田純一さんをお招きし、ラジオ作りの裏側を聞きながら、これから目指すアニメイトタイムズラジオのヒントを探っていきます!

時代を先取りした数々の伝説的番組誕生の秘密とは?
 田原さんと寺田さんの2人から、それぞれ関わってきたラジオ番組の思い出話を聞きながら、これからのラジオ作りへの思いを馳せる石橋。ところが次第にヒートアップする2人の思い出トークが面白すぎたあまり、徐々に口数が減っていってしまいます。話は面白いけど、企画の趣旨が……。第一回から怪しい雲行き嫌な予感。そんな思わず聞き入ってしまう、2人のぶっちゃけラジオトークとは?


──前回インタビュー(※1)をさせて頂きましたが、反響はいかがでしたか?

田原弘毅さん(以下、田原):「誰か読んでくれるのかな?」くらいに思ってたんですけど、佐倉綾音ちゃんとか古川慎くんとか、いっしょにラジオをやってくれている方から「記事、読んだよ」とか「面白かったよ」という連絡が意外と多くて。興味がない人には全然面白くない話なんでしょうけど、業界の裏話を知りたいと思っている人って一定数はいるようで、どこでそういう人の琴線に触れるのかわからないから「知っていることは喋っておいて良いのかな」と感じました。結局、どれくらい読まれたんですか?

※1:以前、アニメイトタイムズで田原さんへインタビューさせていただきました。今回の内容をより楽しみたい方はこちらの記事もぜひご覧ください。
>>構成作家・田原弘毅さんは語る「ラジオは参加するといっそう楽しい」
※かなりの文字量あり。


──デイリーで最高2位でした。僕もここまで反響があるとは思いませんでした(笑)。

田原:よかったですねー。ということで今回はそんな記事の第2期ということらしいです。今度は連続モノになってるんですよね?


──全部で6回を予定しています。最終的にはラジオを作れたらなと……。

田原:なるほどなるほど。今回はアニラジがどういう風に生まれ、どういう流れで納品されるのかを、お伝えできればと思っています。僕のコネを最大限に使って、素晴らしいゲストも呼んでいますよ(笑)。


──なんかラジオみたいに始まりましたね(笑)。

田原:(笑)。僕だけではわからないことを喋ってもらえたらと思っています。そういうわけで今回のゲスト、寺田さんです。

寺田純一さん(以下、寺田):どうもただの身内です(笑)。

一同:(笑)

寺田:『カンださん☆アイぽんの ネギまほラジお(以下、ネギラジ)』(※2)が2004年ですから、12年になりますね。お互いに独身の時代に出会ってるから、ぼくの結婚式にも出てもらっているという(笑)。

※2:2004年12月 ~ 2009年2月まで途中休止期間を挟みながら5期に渡りアニメイトTVで配信されていた、神田朱未さんと野中藍さんがパーソナリティを務めたインターネットラジオ番組シリーズの総称。

田原:そういえば呼んでいただきましたね。12年ですか……。『ネギラジ』はアニメイトTVのかなり初期のアニラジでしたけど、あれはかなり凄い番組でしたね。佐藤利奈さんと小林ゆうさんがよくゲストに来てくれて、しかも女子生徒31人全員ゲストコンプリートしたんですもんね。

寺田:やりましたね……。


──へー。

田原:今思えば奇跡的な番組でしたね。一応知らない人向けに説明しますと、『魔法先生ネギま!』という女子生徒31人プラス担任が登場するアニメのラジオが『ネギラジ』です。

寺田:あの作品って相当時代を先取りしてましたよね。当時だと生徒だけでキャストが31人とか、すごくインパクトあったと思います。その全体の中にさらにユニットがいくつもあって。

田原:いきなりそこからスタートでしたからね。『アイドルマスター』も最初は10人だったのに、それより前なんだもんね。歌だってたくさん出してたし。

寺田:版元様にも多大にご協力頂きまして。

田原:今もその付き合いは続いてますからね。


──当時から進んだことをやってたんですね!

田原:『ネギラジ』は、最初の頃は有料配信してましたね。

寺田:有料会員の方には会員証的なCDや会報をお送りしたりしていました。リスナーの皆様に支えて頂きながら番組を配信していましたね。

田原:確かに、今思えばいろんなことをやってましたね。それで『ネギまほ』が終わった後は、そのまま『レベッカ宮本の世界一ウケたい授業! 『○×△□』略して『ぱにらじだっしゅ!』(以下、ぱにらじ)』(※3)に移っていきました。懐かしいですよね、斎藤千和さんがめちゃくちゃでした(笑)。

※3:2005年~2006年までアニメイトTVで配信された、アニメ『ぱにぽにだっしゅ!』のWEBラジオ。パーソナリティは斎藤千和さん。斎藤さんの自由奔放な姿にゲストが翻弄されることもしばしばでした。

▲『ぱにぽにだっしゅ!』公式サイトより

▲『ぱにぽにだっしゅ!』公式サイトより

──僕がアニラジにハマったのは『ぱにらじ』がきっかけでした。斎藤さんが本当にすごい!

寺田:『ぱにらじ』は話したいことがたくさんあるんですよ。以前の田原さんの記事で「『ぱにらじ』が『さよなら絶望放送(以下、絶望放送)』(※4)の原点」とおっしゃっていたのが嬉しかったです。僕も「ぱにらじ」はある意味「原点」かなと思っているんです。『ネギラジ』は僕が入社2年目くらいに関わっていた番組で、周りの人に聞きながらなんとかやっていて……。『ぱにらじ』は自分で上司に「ラジオをやらせて欲しい」と言って企画させてもらいました。

元々、斎藤千和さんのラジオ番組をやりたいと思っていて、その時『ぱにぽにだっしゅ!』のOA中で、これはチャンスだと思ってお願いしたわけです。なので、実はラジオが始まったのが、アニメ放送期間の終わりの方という、珍しいケースです。

※4:2007年~2011年までアニメイトTVで配信されていた、アニメ『さよなら絶望先生』のWEBラジオ。パーソナリティは神谷浩史さんと新谷良子さん。リスナーを巻き込んだギリギリのネタで、全203回を配信するほどの人気番組に。ちなみに、実際の配信は行っていませんが、絶望放送の配信ページはいまだに存在しています。石橋はPCのブックマークから未だに外さず、たまに眺めているとか……。
>>『さよなら絶望放送』配信ページ

田原:そうなんですよね。アニメが終わっているのにラジオがやっているという前代未聞な番組でした(笑)。

寺田:普通はあまり無いですよね。ラジオって基本的にOA中のアニメの宣伝も担う訳ですから。今、思い出してみると、よくあのタイミングでやらせてもらえましたね……。

田原:『ぱにぽにだっしゅ!』というアニメ自体が当たり番組でしたからね。シャフト初期の大傑作ですよ。アニメは終わってからでしたけど、『ぱにらじ』は半年以上もやりましたよね。

寺田:タイトルにもエピソードがあって……。当時、それについて話したこと覚えてますか?

田原:“~略して『ぱにらじだっしゅ!』”にしたいってやつですよね。

寺田:すごく長いタイトルにしたいと思ってまして、“~略して『ぱにらじだっしゅ!』”の前に何が来るといいか、色々と考えていた時、当時たまたま新聞で『世界一●けたい授業』を見て、「これだ」と(笑)。


──知らなかった!

寺田:色々なことやりましたよね。斎藤さんがかなりアバウトに描いた地図の絵をCDの初回限定特典として付けたり。(※「学校の入学案内」という小冊子をつけた際に、「学校所在地」を斎藤さんに描いて頂いた)

田原:僕が一番印象に残ってるのは脳内公開録音かな。あれはかなり好きだった(笑)。

一同:(笑)。

田原:本当はイベントやってお金集めなきゃいけなかったのに千和さんから「公開録音はやだ!」て言われてしまって、それでリスナーの脳内でやることにしたんですよね。「何月何日の何時から公開録音を脳内やるから実況メール送ってね!」って伝えて。あの頃はTwitterとかなかったけど、確か2ちゃんねるのスレが埋まったんでしたっけ?(笑) 超面白かったですよね。本当に何千というメールが一気に届いたりしたし。しかもみんなの脳内の光景がだいたい同じだったという(笑)。リスナーのみなさんのノリも含めて、よく実現できなって思います。

寺田:僕らの世代って、やっぱり伊集院光さんの番組の影響受けてない人はいないんじゃないかと思うくらいで、『伊集院光の深夜の馬鹿力』(※5)とか聞いていて、その中の「豆知識」コーナーが凄く好きだった。あれをやってみたくて、それをヒントにそういった要素を持ったコーナーに作ってみたり。毎回、冒頭で熟語などを解説するようにしていたんですけど、斎藤さんも凄くて、知らない言葉でも毎回「それ本当なんじゃないか」って思わせるように教えてくれたりする。本当は全く意味が違うんですけど、それっぽく聞こえる(笑)。

※5:1995年よりTBSラジオネットで放送されている「伊集院光 深夜の馬鹿力」。人気を博し、ポッドキャストの配信もされています。長年の歴史があり、数々の珍事でも話題に。

田原:あの番組って千和さんの1人喋りだったんだもんね。未だにアレほど適当に喋れる人を僕は知らない。

寺田:打ち合わせの時もラジオと関係ない雑談とか延々としていて、「じゃあそろそろ録りましょうか」となったらスイッチが入ったみたいに凄い人になる。本当に「このお題に、咄嗟にそんな面白い返しができるのか!?」みたいなのが、ほぼ全てに対してですからね。

田原:あれ面白かったですよね。もう一度全部聞きたいなあ。

寺田:当時はMP3で全部入りみたいなDJCDになってないですもんね。

田原:それこそアニメイトタイムズとかで、過去のラジオ配信とかやれば良いんですよ。それくらい『ぱにらじ』がきけないのは残念ですね。


──なるほど……。その手がありましたか!

寺田:その後も『ぱにらじ』の存在は大きかったです。自分のやりたいことをいろんなスタッフさんと打ち合わせして、そこに斎藤さんも巻き込んで一緒に頑張って。自信がついた……じゃないですが、多少は自分も周囲の人と同等な立ち位置でやれたかなと。
『ネギラジ』の時にはまだ出来てなかったことが、『ぱにらじ』では自分のやりたいことを企画から考えるようになったので、ラジオ制作としてはここが原点かもしれません。だから田原さんが「『ぱにらじ』が原点」と言ってくれたのが、凄く嬉しかったんですよ。

田原:僕にとってもそうで、『ぱにらじ』は『絶望放送』の姉だと思ってますからね。

鬼のように辛いパーソナリティのスケジュール調整
 まだまだ続く思い出話。話に入ろうとしてもコアすぎて相槌しか打てない無能石橋。しかし、興味深い話が続き、いろいろと勉強になっていくのでした……。


──そこからいろいろなラジオ番組に広がっていくんですね。

田原:千和さんとのラジオなら『斎藤千和・無責任編集 ~週刊うらGおふぁんたじー』(※6)もありましたし、制作手伝いとして寺田さんがプロデュースした『みなみけのみなきけ(以下、みなきけ)』(※7)にもぼくは制作手伝いとして。あれも大変だった。佐藤利奈さん、井上麻里奈さん、茅原実里さんのスケジュール取るのが!(笑) プロデューサーとしての最大の仕事ですよね……。

※6:2008年9月~2009年10月までアニメイトTVで配信されていたインターネットラジオ番組。斎藤千和さんが『ぱにらじ』以来にパーソナリティを務めた番組でもある。
※7:2007年9月~2013年3月まで途中休止期間を挟みながら4期にわたってアニメイトTVで配信されていたインターネットラジオ番組シリーズ。佐藤利奈さん、井上麻里奈さん、茅原実里さんがパーソナリティを務め、TVアニメ同様のゆるい雰囲気を再現した一般的なラジオ番組とは異なる構成が話題に。

寺田:仕事の9割くらいがスケジュール管理だと思います(笑)。

田原:「アニメの雰囲気そのままで」ということだったのでクッションを買ったり、靴やブーツを脱いで収録したり、フルーチェを作ったり、本当に家でやれることをリアルやろうといろんなことやりましたよね。ホラー映画を見るだけの回とか。

寺田:ブース内も家の中に見立ててましたので、お菓子など物を取りに行く時はマイクから離れて自由に動き回って頂いて収録していました。三人もその趣旨を汲んで頂き、本当に自由にやってくださいました。

▲『みなみけ』公式サイトより

▲『みなみけ』公式サイトより

田原:麻里奈さんは当時からきっちりさんだったので最初は戸惑ってたと思いますよ(笑)。それでもみなさん超楽しそうにやってくれたので良かったですよね。この前『みなみけ』のイベントをやったときのパンフレットで、「『みなみけ』で一番印象に残っていることは?」という質問に実里さんが「ラジオです」と書いていて、嬉しかったなあ。

寺田:『みなきけ』はスタート直後はメールでも色んな意見が来ましたね。「こんなのはラジオじゃない!」「真面目にやれ」みたいなのが何通も。でもよく考えたら、「じゃあ「ラジオ」ってなに?」って思ったんです。OPトークがあって、Aパートがあって、Bパートがあって、ってなんとなく一般的なフォーマットはありますけど、別にそれがルールではないんですよ。

田原:AMラジオとかは時計代わりになってたりしますよね。

寺田:AMの昼ワイドとか、お仕事しながら聞く人たちもいて、「今このコーナーだから何時くらいか」と思いながら聞いている場合もあると思います。そういう番組は時間が分刻みで、決まった形がありますけど、WEBラジオはいつでも聴けますからね。
『みなきけ』は「日常」がテーマの番組なので、“このまま延々とタイトルコールもしなくてもいいんじゃないかな“と思った回もありました。


──そう言われると確かに……。

田原:ただ、逆に言うと苦情も来ないような番組って誰も聴いてないってことなんですよね。『絶望放送』だってかなり苦情が来ましたよ(笑)。

寺田:「構成T○ね!」的なメール来たでしょ?(笑)

田原:来ました来ました。

寺田:『みなきけ』も、確かにラジオとしてはおかしいですよね。パーソナリティがトークしないんですもん(笑)。たまに無言になったり、お菓子食べてる音だけが聞こえてたり……。リスナーさんからすれば、「せっかくメール送ったのになんで読まないんだよ」というご意見はまさに仰る通りで。でも、番組コンセプトが“3姉妹の家でのリアルな日常”ですから、この回は“いま3姉妹が映画を見ている時で、たまたまそのタイミングがOAされた”という意図なんです。ちなみに、ラジオ配信後に三人が観たホラー映画の『ディセント』がレンタルショップでかなり貸し出し中になったらしいですよ(笑)。


──(笑)。

田原:批判もあるのは当然なんですけど、それと同じ数だけのめり込んでくれる人がいたのも事実なんですよね。僕は『みなきけ』は凄く冒険していたなと思いますよ。あそこまでやる勇気もそうですけど、それをOKした寺田さんも凄い。

寺田:どんなことができるかは考えますよね。『みなみけ』を冠とするわけだから、好き勝手なことは当然できない。それに『みなきけ』のリスナーは、基本的に『みなみけ』が好きで聴きに来てくれてる人が圧倒的に多いはずなので、『みなみけ』の雰囲気をそのままラジオに持ってこれないだろうか、と思いました。

だから、佐藤さん、井上さん、茅原さんが3姉妹として生活してる家を表現しようと考えた訳です。でも、本当に姉妹みたいな雰囲気の番組になりましたよね?

田原:三女が一番フリーダムで、お姉ちゃんはしっかりしてて、次女がそのバランスを取るみたいな感じにね。

寺田:作品のラジオだから、作品ファンに受け入れて頂かないといけない。『みなみけ』が日常系なので、過激な企画をあえてやる必要はないと思います。逆に言えば『下ネタという概念が存在しない退屈なラジオ(以下、下ラジ)』(※8)みたいな作品で、『みなきけ』と同じことをしても合わないと思います。そういう部分は、スタッフ側が「こういう風にしたい」とある程度決めて、それを貫き通すべきだと思います。

※8:2015年7月~2015年10月までアニメイトTVで配信されていた、アニメ『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』のWEBラジオ。パーソナリティは小林裕介さんと石上静香さん。アニメの世界観に沿って、下ネタを正しい表現にして話さなければいけないルールなどもありました。


──貫き通す、ですか……。

田原:『ネギラジ』をやって『ぱにらじ』をやって『みなきけ』と、こう考えると結構頑張ってますね。あとは印象的なのは『アニメ『生徒会役員共』が全部わかるラジオ(以下、全ラ)』(※9)ですかね。これも篠崎(篠崎高志さん)が構成作家の番組ですね。

※9:2010年7月~12月までアニメイトTVで配信されたインターネットラジオ番組。パーソナリティが固定されず、毎回異なる声優陣が登場した。TVアニメ2期放送にあわせ2012年11月から5月まで『アニメ『生徒会役員共』が全部わかるラジオMaxPower、略して全ラ!まっぱ!!』としてリニューアル復活を果たした。

寺田:この時期はずっと篠崎さんと一緒でしたね。田原さんは『絶望放送』で忙しすぎたから(笑)。

田原:前も言ったけど、『絶望放送』をやっていると他のことができないんですよ(笑)。『全ラ』はパーソナリティが出演者全員で、特にメインが決まってなかったんですよね。これはぶっちゃけた話し、篠崎を○したくなるくらい面白かったですよ。デタラメに見えて、凄く入念に考えられてるんです。内容は案の定、下ネタなんですけど、そのバランスが上手くて。これとか苦情凄かったんじゃない?

寺田:実は全然無かったんです。


──えー!

田原:むしろこれはないんだ(笑)。

寺田:『全ラ』ってタイトルからしてエロい番組だと思われるんですが、よく聴くと直接的にエロいことは全然言っていないんです。文脈でそう聴こえるだけで。そこは、篠崎さんの見事な番組演出によるものです。

田原:ただ、女性パーソナリティが多かったからか、みなさん溢れるサービス精神で結構突っ込んだトークをしてくれていただけでね。

寺田:あまりにも過激すぎるとかえって生々しくて引いちゃうんですよね。意外と面白く聞けるバランスにするの難しいと思います、そういうのって。

田原:『生徒会役員共』がそもそも青年誌じゃなくて少年誌の作品ですからね。くだらない下ネタはあるにせよ、本当にやらしいことはしないんですよ。篠崎の構成がその辺の線引をしっかりしてたんだろうなって思います。アニラジの場合、もとになった作品の色も大事ですから。

寺田:『全ラ』のレベルは、中高生が隠れてエロ本を読んでるくらいの感じじゃないですかね。それ以上だと、『変ラボ』(※10)になりますかね(笑)。

※10:2011年3月~10月までアニメイトTVで配信された、アニメ『変ゼミ』のWEBラジオ。パーソナリティは白石稔さん、森訓久さん、松山鷹志さん。毎回、最も変なお便りだったメールが“最高変差値”として採用されていました。

田原:『変ラボ』も僕らでしたね。僕の隠れた名作で、最高傑作なんじゃないかなって思ってます(笑)。アニメイトタイムズで再配信してもらいたい番組の筆頭ですよ。

▲『変ゼミ』公式サイトより

▲『変ゼミ』公式サイトより

近年の大傑作『下ラジ』誕生秘話とは?
 さらに思い出話は続き最近の話へ。さらに影が薄くなる石橋。しかし興味深い話ばかりです。ここからは、田原さんと寺田さんが最近携わった番組を中心にお話を伺っていきます。


田原:あと僕らで最近やったのは、やっぱり『下ラジ』ですかね。

寺田:『下ラジ』は何年かぶりに田原さんとやった番組ですね。田原さんと佐藤さん(ディレクター・佐藤太さん)コンビに私という、『ネギラジ』『ぱにらじ』の座組みでやったのは久しぶりでした。

田原:『下ラジ』は、小林裕介くんと石上静香さんが踏み込んでくれたおかげで面白い番組になりましたね。

寺田:お二人には感謝しかないです。「編集で隠しますから」と、言うのは簡単だけど、本当にスタッフを信頼して頂いて、かなり振り切ったトークをしてくれましたから。『下ラジ』は、第1回目の収録を終えて「この番組は大丈夫だ」と確信しました。

田原:キングレコードさんも事務所さんも「おまかせします」と言ってくれたおかげで、ずいぶんと前のめりになりながらやれましたからね。

寺田:実際、アニメでは結構過激なセリフもありますし、当然ラジオもそういうテイストが入ることになりますが、アニメと違ってラジオはキャラクターじゃなくてキャストさんが本人として喋りますからね。そこは、やってみるまでは「大丈夫かな」って心配はありますよね。せっかくラジオを引き受けてくださったのに、逆にご本人さんにとってマイナスにならないようにしなければ、と。

田原:もう一つあの番組なにが凄かったって、今だから言っちゃうと10代の、それも女の子からのメールが多かったことですよ(笑)。

一同:(笑)。

──ヤバイ!

田原:「1●歳とか1●歳からメールが来てヤバイ!」て寺田さんが言ってて(笑)。だから年齢は伏せてたんですよね。

寺田:……世の中のエロい話好きは女性のほうが絶対に多いと思います(笑)。

田原:「小学生の弟と聴いてます(中2)」とかね(笑)。別に全年齢対応ですからなんの問題もないんですけどね。


──あれだけの人気作になると、そんな年齢層が聴いていてもおかしくない(笑)。

田原:よく「『絶望放送』みたいなラジオをまたやってくれ」と言われるんですけど、多分『下ラジ』は僕がやった中で一番『絶望放送』に近い番組だったと思います。OPからEDまでネタをぎっしり詰め込んで僕自信も楽しめてたのが『下ラジ』なんですよ。もし『絶望放送』が好きでこれを聴き逃してる方がいるのであれば、ぜひ聴いてもらいたい番組です。これはCDも出てますから。

寺田:『下ラジ』開始時からそういう反応はよくありましたね。「『絶望放送』っぽい!」という人もいれば、「『全ラ』みたいな作品がまたやってくれて嬉しい!」みたいなのがあって。『絶望放送』の田原・佐藤コンビと『全ラ』を担当してた僕で番組作ってるんで、そうなったんですかね(笑)。

田原:両方知ってる人はハイブリッドだって喜んでましたね。おかげさまでアニラジアワードもとれて、小林くんと石上さんにも喜んでもらえました。

寺田:でも、あれだけ頑張って頂いていた小林さんと石上さんに「人気だけど終わります」って言わなければいけないときは来て……。「人気ならずっと続ければいいのに」と思われるかもしれませんけど、それは番組毎に色々な状況がありますからね。だから、アニラジアワードを頂いたのは嬉しかったですね。本当に多くのリスナーさんに支持されていたってことが、形として証明されましたから。

田原:アニラジって寿命がありますからね。『下ラジ』は原作も一区切りついたし、僕もやりきった感があったので、満足できましたね。


 といったところで第1回は終了です。思い出話がほとんどでしたが興味深い内容の数々に、ファンとして楽しんでしまった石橋。しかし、よくよく話しを聞いているとラジオ制作のポイントとなることを見つけることができたようです。

“過去のラジオをアニメイトタイムズで配信するのはどうか?”
“キャストのスケジュール調整は超大変”
“AMラジオなどとは違いWEBラジオは自由に作れる”
“アニラジは原作の枠から出ない番組を目指すべき”


 次回は、ラジオ番組の企画が動くまでの流れをお聞きしていきます!

[インタビュー/石橋悠 文/原直輝]

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