「歌うことで光を生み出していけたら」──TVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』OP歌う、Minamiの新境地
第2期が2017年1月より放送中のTVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』。そのOP主題歌を彩っているのは、『君が望む永遠』『レガリア The Three Sacred Stars』などでおなじみのアニソンシンガー、Minamiさんの新曲『illuminate』(2月22日発売)です。
荘厳なサウンドの調べ、『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』の世界観に重ねたメッセージ、ジャケットの写真からは新境地すら感じさせますが、実際の制作方法、曲に挑む気持ちもこれまでとは違ったとのこと。そんな経緯もあって「話したいことがありすぎるんです」とキラキラと輝く笑顔を見せてくれたMinamiさん。昨年のアニバーサリーイヤーについて、そしてニューシングルについて、じっくりとお伺いしました。
――まずは昨年活動15周年を迎えた感想をまずは教えて下さい。
Minamiさん(以下、Minami):あっという間な感じでした。アニマックスさんのイベント(ANIMAX MUSIX)から始まって、アニサマ(Animelo Summer Live 2016 刻 -TOKI-)などの大きなイベントにも出させてもらったり、シングル『Patria』(『レガリア The Three Sacred Stars』ED)リリースイベントで、初めてお店まわりをやらせていただいたり。
店頭のイベントのときには直接ファンの方から言葉をいただいて……久しぶりすぎて、泣いてくれるかたもいたんです。みんなは(休んでいた時期があったことを)心配してくれたみたいで。私としては歌を辞める気なんてないんです。でも発信してる側と受ける側は見えないものがあって、直接会って話すと分かり合える。みんなの気持ちを知れる機会をもらえたのが嬉しかったです。
――それはすごくいいイベントでしたね。
Minami:なんかね、すごかったんですよ。10年前のTシャツやアクセサリーを身に着けてきてくれたり。みんなの写真を撮りたかったです。結婚するかたや妊婦のかたもいらっしゃったりして……。時間が経ったんだなぁって思いました。
――その光景をぜひ見てみたかったですね。でも本当にフレッシュな気持ちで再び活動がスタートしたというか。
Minami:そうですね。改名もあったので、気持ち新たにという感じでした。カラオケとかに行くと、自分の名前の曲がまだ1曲しかなくて。新人さんみたいな気持ちで始まって、いまちょうど1年経ったところですね。名前が変わると、曲を作っていくことに対しても新しいことをやろうかって感じに自然となっていくんです。
去年出したシングルも、今作もそうなんですけど、新しいものをやっていこうって全員同じ意識で進めていけているなって思いました。それは本当に大きなことで。それまで走り続けてきていたので、見えていなかったものも見えるようになって、一回一回のライヴをより大切に感じるようになりました。
――そのあたりは立ち止まらないと見えない景色と気持ちですよね。
Minami:そう思いました。そのつど気合いを入れて歌ってはいたんですけど、それが続くと感覚がおかしくなってくるところがあって。海外の公演に関しても麻痺してるところがあったように思うんです。でも久しぶりに、香港とロスに行ったら、海外のかたがアニメやアニソンを好きでいてくれるってなんですごいことなんだろうって改めて感じて。日本人として、アニソンシンガーとして誇りを持った1年でした。お客さんに対しても……信じられるようになりました。
――Minamiさんの心境の変化を言葉のひとつひとつから感じます。以前は「昔はライヴが得意ではなかった」とおっしゃっていましたもね。
Minami:あ、そうだったんです! そんなことを言ってたのも忘れてたくらいなんですけど(笑)。やるだけでいっぱいいっぱいでした。セットリスト決めるときも、いつも歌っているものを聴いてもらったほうが……と思っていたんですけど「今日はこれを聴いて!」っていう気持ちでステージに立てるようになった。
アニメの主題歌を作ることと、歌うことの責任を改めて感じた
――必然的にシングルに向かう気持ちも強いものになりましたか。
Minami:そうですね。去年の10月くらいから作業は始まっていて。いろいろなひととのやりとりがあって、時間もすごくかかったんです。作品を作るってこういうことなんだなって思いました。
――作品をクリエイトするということに関して?
Minami:クリエイトするということに関しても、ひととのやり取りに関しても。ランティスさんってすごく丁寧なんです。アニソンを作るということに魂を掛けている会社なんだと改めて思いましたね。
――具体的にはどういうやり取りをされたんですか?
Minami:経緯を簡単にお伝えすると、なかなか歌詞のオッケーが出なかったんです。曲が決まるまでも1か月半くらいかかっていて、歌詞も1か月くらいかかって……という状況で。いつもだったら、リテイクがあったとしても大体1回なんですけど、今回は5回書いたんです。スタート地点にいくまでに時間がかかってしまって、ランティスの作品担当の木皿陽平さん(制作本部 チーフプロデューサー)と直接やり取りをさせてもらうことになって。
――へぇ!
Minami:これまで、作品の担当のかたとやりとりまでしたことはなかったんです。でも作品をいちばん理解している木皿さんが「歌詞のここの部分の方向を変えてみたら?」と具体的にアドバイスをくださって。
で、オープニングの絵コンテのムービーも送ってくださったんです。鉛筆書きの絵コンテのムービーなんて、なかなか見られるものではないですし、私自身初めて見るものだったのですごく感動して。
それを見てやる気をいただいて、歌詞を書き直して。だから絵を描く人とも一緒に走り抜けたような感覚があります。絵コンテを観させていただいたのは、制作中でいちばん衝撃的な出来事でした。
――それはすごい経験ですよね。
Minami:はい! 白黒の世界だとキャラクターが動く感動を余計に感じるんです。放送で完成したものを観たときは鳥肌が立ちました。……さっきのライヴの話とも少しかぶるんですが、こうやって色々とやりとりをさせていただいて、ひとつの作品の主題歌を担当するということはそれぐらい責任のあることなんだなって改めて実感しました。アニメの主題歌を作ることと、歌うことの責任を改めて感じたというか。運動は苦手なんですけど、マラソンをしているような気持ちで、どうにか最後まで走りたいなって。
――でも走ってるときはそれこそしんどくなかったですか? 正解が分からない状態で、ゴールを目指しているような状態で。しかもプレッシャーもあるという。
Minami:本当にそう! 正解が最後まで分からないし、いつ終わるんだろうって(笑)。自分としては1回目を出してる段階で「完璧!」って思ってるんです。だからどこを直していいか分からない。自分の物差しじゃない世界の判断になるので、オッケーをいただいたときは、ああ、これでよかったんだって。
――そういう物語があって完成したとなると、一人で歌っているのとは、また違った感覚のレコーディングになりそうですね。
Minami:はい、心は合唱でした! レコーディングにも皆さん見に来てくれて。みんなに見守られながら歌って、これは恵まれてるなぁって。
――歌声がいつも以上に力強くて、それでいて優しいイメージだったんです。特にサビを結ぶ<命尽き果てるまで>という言葉は響くものがあって。命という言葉は、以前の名義の曲にも出てきていたワードですが、これまでとは違う印象があります。
Minami:そう言っていただけると嬉しいですね。痛みを感じるってどういうことなんだろうって考えさせられるテーマだったので、人の感情を深く追求して。向き合った結果がこのサビになるんです。
――<絶望を抱きしめるのは諦めていない証>という部分はまさにそれですよね。
Minami:辛いって感じるのはなんでかな、と考えたときに、自分のなかに希望があるからこそ、絶望や苦しさがあるということに気づいて。それを思うと、絶望があることって決してマイナスではないなって。そういう感情も包めるような曲にしたいなって思ったんです。主人公のスレイが光を与えるような立場にあるキャラクターなので、私もスレイになりきって、作品の世界に入り込むような気持ちで歌いました。
――スレイは本当に太陽のように明るくて、曲がったところのない人で。
Minami:本当に。自分はそんな風にはなれないかもしれないけど、歌うことで光を生み出していけたらいいなぁって。作品のファンのかた、ファンのかたにも、そこから何かを見出してもらえたらいいなぁという気持ちも込めました。
――ところで好きなキャラクターはやはりスレイなのでしょうか?
Minami:難しい~。……ライラかなぁ。控えめなキャラクターが好きですね。エドナも好きです。しゃべり方や服も。
――では『テイルズ オブ』シリーズにはどんな印象がありますか?
Minami:歴史のある作品、誰もが知ってるゲームで。お話をいただいたときはビックリして、その時から責任は感じました。奥井(雅美)さんをはじめ、今までいろいろな方が主題歌を歌われていて……奥井さんが歌ってる!っていうのは最初に思いましたね。
実はファンタジーの作品の主題歌を今まで歌ったことがなかったんです。これまでは運命を背負って戦う!みたいなテンポの速い曲が多かったんですけど、今回はいただいた曲の雰囲気も今までと違うんですよね。
――異国情緒あふれる雰囲気というか、荘厳な調べで。
Minami:そうですね。曲を聴いたときは、ただ戦うのではない、精神的な闘いってどういう感じなんだろう……みたいなものを考えました。日常の中でも精神的な闘いってみんなあるなと思って、遠いものではないなと……自分とも向き合えた、本当にいい時間になりました。
自分のこういう明るい声、久しぶりに聴いた
――そんな雰囲気のタイトル曲から一転、甘く弾けるようなカップリング『そんな感じ♪』はどのように作られていったんでしょうか?
Minami:カップリングは力を抜いた、自然体の曲で。『illuminate』とはまた違った視点で、女の子っぽい歌詞にしようかなと思っていて。電車に乗ってるときに近くにいた女の子が喋っていたことを歌詞にしたんです。電車や車のなか、どこかに行く途中とかに聴いてもらえたら嬉しいですね。この曲はすごく春っぽいというか……。レコーディングで「ああ、自分のこういう明るい声、久しぶりに聴いたなぁ!」って、懐かしい感じがしました(笑)。
ランティス 川島さん(以下、川島):曲がそうさせたのかもしれないんですけど、参加していただいているミュージシャンのかたの年齢が違うんですよ。イルミネートはグッと上がっていて、カップリングはグッと下がってて。
Minami:確かにそうだ! ……でも飯塚さんはどっちにもいます(笑)。
――さすがです!(笑) 歌う気持ちも、作り方も正反対というか。
Minami:そうですね。1曲目とは空の色が違うような感じ。プロデューサーの伊藤さんはめちゃくちゃ丁寧に曲を作られる方なんです。だから、いつも「もっとできることないかな」ってギリギリまで考えているかたで。それでカップリングのレコーディング前日の(『illuminate』の)ミュージックビデオの撮影の日に「増えた分、撮影の合間に言葉を考えて」って連絡があって(笑)。
Bメロが1番と2番で曲の長さが違うんですけど、作家さんにお願いして長くしてもらったんですって。長くしたら言葉が足りないじゃないですか(笑)。だからその言葉を考えてと言われたんですが、撮影の間はほかのこと考えられなくて……。でもなんだかんだ頭に残ってて、家に帰ってすぐ作ってしまいました。それで2番の2行目と3行目(与えられたこのとき 君だけの宝物)を加えました。本当にギリギリまでいいものを追求したというか、モノづくりはこうじゃなきゃなと。
――いまミュージックビデオのお話があがったんですが『illuminate』のミュージックビデオ撮影はいかがでしたか? 雄大な自然をバックにしたスケール感のある映像ですよね。その中には氷を使った演出もあって。
Minami:山での撮影は凍えるつもりで行ったんですけど、天気に恵まれて。みんなが常に温かい飲み物を用意してくれたり、すごく気遣ってくださったので全然大丈夫だったんです。で、移動してスタジオに行ったら「山より寒いね」って(笑)。氷のお水に入るところがちょっと冷たかったですね。ホンモノの氷を使っていて、すごくキレイで。ステキに撮っていただきました。
――ジャケット撮影はどうでしたか?
Minami:フワッとした煙を出したんですけど、それが羽根のような形になる奇跡が起きたりして、楽しかったです。衣装はフィッティグのときにいくつか用意していただいてみんなで決めるんですけど、いつもは(スタッフ全員の)意見が一致するんです。でも今回は「これもいいね、あれもいいよね」ってなかなか決まらなくて。2パターン持っていって両方撮ってみたんですけど、それでも悩んで。
川島:Minamiさんのスタッフはご本人も含めて穏やかな方が多いんです。民主主義というか、「これがいいね」って決めていくんですよ。
Minami:基本的に女の子が多くて、周りもビックリするくらい仲が良いんです。結束力が強いというか。そのなかで意見が分かれたんですよね。で、結局悩んで最後は川島さんに決めてもらいました。アー写と表紙の衣装もちょっと違うので、そこも見てもらえたら。……毎回ミュージックビデオの撮影が終わったころくらいに取材の機会があるんですけど、今回は取材がすごく楽しみだったんです。しゃべることがありすぎて、早くいろいろなかたにお話したい!って。
――とても濃い経緯を(笑)。
Minami:濃いお話しかないという(笑)。
――自分の気持ちを届けたいという気持ちも強くなっていったんでしょうか。
Minami:なりました! 昔とは比べ物にならないくらい。発信したいという想いが前よりも強くなったので、歌も自然に変わってきましたし、これからも変わっていけたらなって。
アニメに関わって感動することが好き
――いろいろな人の協力を経て、表現者としてまたひとつ変わったというか。
Minami:本当に成長させてもらいました。自分のなかで実感がありましたね「新しいことができるようになった!」って自分で実感するのって3年に1回くらいなんですけど……すごく久しぶりに感じられたので、次に対しても新たにいけるなって力になりました。
――今年は16年目になりますが、Minamiさんのなかで挑戦してみたいことはありますか。
Minami:歌以外では体力作りをしたいなと。喉を大事にするためには、体力がないとよくないかなって。去年久しぶりにライヴをやったときに、翌日に体調が悪くなったんですよ(笑)。人に想いを届けて歌うというのは、それぐらいのことなんだなって改めて思って。だからやっぱり体力が必要だなって。それをまずは頑張りたいです。
音楽的なところで言うと、少しずついまも曲を作っていて。基本に返って、自分の曲に対してもちゃんと向き合って、歌を進化させていけたらなって。奥井さんやJAM Projectさんなどの先輩方を見ていると、ずっと追いかけていきたいなと思うので……自分のやり方を追求しながら歌っていきたいなって。
――進化はしつつも、「アニメソング」に対するこだわりは、やはり強いものがありますよね。
Minami:そうですね。アニメに関わって感動することが好きなんでしょうね。自分が書いた曲に絵が付くことも、アニメじゃないとできないことも、好きなんです。作品を楽しみに毎週観ることで初心に返れることもある。これからもいろいろな作品に出会っていくと思うんですけど、いいものを作っていきたいですね。
――わかりました。何か言い残されたことはありますか?
Minami:本当に魂を込めて歌詞を書いたので……みんなが元気になってくれたらいいなって思います。
[文/逆井マリ]
リリース情報
■Minami『illuminate』
TVアニメ『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』第2期OP主題歌
発売中
【初回限定盤(2DISCS / CD+DVD)】1,800円+税
【通常盤(CD Only)】1,200円+税
発売元:株式会社ランティス
販売元:バンダイビジュアル株式会社
【収録曲】
1.illuminate
作詞:Minami 作曲:USK / HIROTOMO 編曲:小高光太郎 / USK
2.そんな感じ♪
作詞:Minami 作曲・編曲:サトウ ユウスケ
3.illuminate (off vocal)
4.そんな感じ♪ (off vocal)
※初回限定盤のみDVD付き:表題曲のMusic Clipを収録
※通常盤は描き下ろしイラストジャケット
>>Minami Official Website
>>Minami (@minamiracle6_6)