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声優
速水奨スペシャルインタビュー〜最前線で走り続ける声優人生と、声優養成所設立に込めた“速水奨ism伝承”への想い〜
1980年にデビューし、今年で声優生活37年目となるベテラン、速水奨さん。
二枚目や美形悪役に始まり、闇の住人、正義のロボット、神様、さらには三枚目、変態、声だけはかっこいいイロモノキャラなど、長いキャリアの中で膨大にして多彩なキャラクターを演じ続け、代表作も挙げ始めたらきりがないほど。
また、アニメイベント、キャラクターソング、声優ユニット、ドラマCD、乙女ゲームのすべてに黎明期から参加され、現在の声優ブームにつながる様々なものを最前線で切り拓いてきた人物のおひとりでもあります。
そんな速水さんが2013年10月に声優&アーティスト事務所「Rush Style」を立ち上げ、さらに2017年4月から事務所付属の養成所となるRSアカデミーを開所。現在、第1期生の募集も行っています。
そこで今回は30年以上もトップで活躍し続ける声優・速水奨さんと、後進の指導に意欲を燃やす速水奨先生に、現在の想いをマニアックな視点も交えつつ、たっぷりと伺いました!
●速水 奨(はやみ しょう)
8月2日生まれ。兵庫県出身。血液型A型。主な出演作『超時空要塞マクロス』マクシミリアン・ジーナス役、『超時空世紀オーガス』桂木桂役、『ドラゴンボールZ』ザーボン役、『勇者エクスカイザー』エクスカイザー役、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』ナイト・シューマッハ役、『無責任艦長タイラー』マコト・ヤマモト大尉役、『トライガン』ニコラス・D・ウルフウッド役、『超重神グラヴィオン』クライン・サンドマン役、『炎の蜃気楼』直江信綱役、『銀魂』星海坊主役、『アンジェリーク』光の守護聖ジュリアス役、『戦国BASARA』明智光秀役、『Fate/Zero』遠坂時臣役ほか。Rush Style代表・所属。
目次
- 主役なのにお茶汲み!? 新人時代の天国と地獄
- 正統派から三枚目、さらには同人界発のBLブームの先駆者に!
- 今や、かっこいい声が笑いの要素になるまでに浸透!
- ゲームが変えた声優の芝居、時代で変わっていく声優の音楽活動
- 養成所の設立と、声優への想い
主役なのにお茶汲み!? 新人時代の天国と地獄
——『超時空要塞マクロス』のマクシミリアン・ジーナス役で注目された後、一大ブームとなる80年代ロボットアニメ作品に二枚目や美形ライバル役で次々と登場し、瞬く間に人気声優になられた印象があります。昨今の声優業界の状況と鑑みると、かなり好調な滑り出しだったのではないかと思うのですが、当時の状況を教えてください。
速水奨さん(以下、速水):時代が違いますからね。今だとインターネットや様々な媒体で日常的に取り上げていただけますけれど、当時は月刊のアニメ誌しかないじゃないですか。取り上げられる機会自体が月に1回しかないわけです。自分が収録したものの反響も、オンエアされた後になるので、人気といわれても実感としてはだいぶ時差がありました。
当時は声優の数も少ないですし、同じ年にデビューした人間だって、男女合わせて10人もいなかったと思うんですよ。だから誰かと比べて自分がすごく順調だとかいうこともなく、みんな同じように苦労していましたね。
なにしろ偉大な先輩方が上にいらしたので、僕たちはただ新人として足掻いていたという印象しかないですね。
——でも速水さんの場合は、すごくいい役が多かったと思うんです。『聖戦士ダンバイン』のバーン・バニングス、『装甲騎兵ボトムズ』のポタリア、『機甲界ガリアン』のハイ・シャルタット、『重戦機エルガイム』のギャブレット・ギャブレーって、ものすごい顔ぶれですよ。
速水:確かにいい役はいただいているんですけれど、1週間で見ると、水曜日の10時から15時に『マクロス』でいい役をやっていても、ほかの日には洋画の吹き替えで「兵士1」をやった時に「お前、なに二枚目の声出してんだ!」って怒られたりしているわけです。業界的にはまだペーペーなので、「このキャラは俺がやってんだぜ!」なんて鼻高々になるようなことはまったくなかったです。『オーガス』の時なんて僕、お茶汲みしてましたし。
——『超時空世紀オーガス』の桂木桂って、主役ですよね!? そんな状況から、声優として自信がついてきた頃の作品というと何になりますか?
速水:やはり「勇者シリーズ」辺りからだと思います。
——そこまで行きますか!?
速水:それまでは「いい役をいただいたな」と思うことがあっても、先程も言いましたけれど“月曜日は天国、火曜日は地獄”みたいな毎日で、「この現場行きたくないぃ〜!」って精神的につらくなって、朝お腹が痛くなったりもしていたんですよ。それだけ厳しい世界だったので、どの現場でも通用する実力をつけないといけないんだなと骨身に沁みていた時期ですね。
——その頃はベテランの方たちからも、相当こてんぱんに言われたのでしょうか?
速水:いや、まったく言われなかったんです。だいぶ経ってから小林清志さんに「速水はどこかの芸能事務所にいて、声優を齧りに来たのかと俺は思っていた。お前には養成所を出たような雰囲気はなかったぞ」みたいなことを言われて、僕は打ち解けていたつもりだったのに、人とコミュニケーションが取れていなかったみたいなんです(笑)。
だから先輩とサシで呑んだり、お説教をされるようなこともなく、ポツンとしていた感じでしたね。
——そうなると、ひたすら先輩の背中を見て業界の作法を憶えたような感じですか?
速水:そうですね。この仕事を始める前は、劇団でミュージカルをやっていたので、マイクの前だとどうやればいいかもわからないし、アニメもまったく観ていなかったんです。『ガンダム』も知らなかったんですよ。
——そこから『ガンダム』シリーズはもちろん、数多の歴代人気ロボットアニメ作品に軒並み出演されるわけですからね。ここまで出られた方は、ほかにはちょっと見当たらないレベルですよ。
速水:ちょうどうまい具合に、隙間産業みたいに入れたのかもね(笑)。
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