「ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリーがついに連載スタート！今回はRigelとRegulusメンバーの微笑ましいワンシーンが……

　2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に、2016年9月に新設されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。2017年4月には初のイベント「劇団アルタイル SPRING FESTIVAL 2017」を成功させた彼らの物語が、ついに始動します！

　まずは「劇団アルタイル SPRING FESTIVAL 2017」で描かれた物語を、別の視点から掘り下げていきます。選抜ユニット「Rigel（リゲル）」と「Regulus（レグルス）」の変化や、選抜から漏れてしまった「Sargas（サルガス）」の成長、そしてメンバーそれぞれが抱く想いに注目です！

　さらに、ツキクラ×アル劇のニューシングルが8月30日に発売決定しました！　こちらも併せてチェックしてください。

劇団アルタイル『仲間でありライバル』
【あらすじ】
『劇団アルタイル』……通称『アル劇』。
それは、ツキノ芸能プロダクション内に新設された、バラエティタレントユニットの名称である。
若手を中心に、様々な分野からタレントが集められており、彼らは歌にダンスに芝居にと、日々切磋琢磨をしている。

メンバーは12人。
その12人の中から、約半年の活動の中で、2つの選抜ユニット『Rigel（リゲル）』と『Regulus（レグルス）』が誕生していた。

Rigelのメンバーは、市ヶ谷リンタロウ、大崎イズモ、渋谷ヨウスケ、辰巳マキ。
Regulusのメンバーは、要タツヒコ、神谷トウマ、永田イツキ。
両ユニットのメンバーたちは、近々行われる音楽番組の公開収録に向けて調整中なのだった。

【ストーリー】
「ふう……」
　タツヒコは大きく息をついて床へ腰を下ろし、壁に背を預けた。
　手にしたペットボトルに口をつけると、ほどほどにぬるくなったミネラルウォーターが喉元を通り抜け、じんわりと身体中に染みてゆく。

　近日行われる『ミュージック・ステージ』公開収録。
　今日は、本番に向けた合同レッスンだ。

（二曲分、初めて通しで動きをさらったが、そこそこ運動量があるな）
　バテるほどでもないが、体力の配分はきちんと意識したほうがよさそうだ。

　元は演劇畑で、ダンスはほぼ未経験。
　最初のうちは「うまく踊る」ことばかりに意識が向かいがちだったが、ここ最近ようやく踊る楽しさが見えてきて、気持ちにも余裕が出てきた。
　ライブのピークを意識し、見せ所を考え、自分だけでなく全体が引き立つように――

「タツヒコさん！」
　弾む息で、トウマが駆けよってきた。
「？　どうかしたのか」
「リゲルの曲、サビのとこのステップなんですけど。見ててもらってもいいですか？」
「もちろん」
　頷くと、トウマがパッと目を輝かせて笑った。
「リン、マキさん！　こっち！」
　手招くと、リンタロウとマキがこちらへやってくる。
「休憩中にすいません。客観的なアドバイスが欲しいんで、お願いします」
「俺に言えることなら」
　純粋にダンスのテクニックは、トウマのほうが上だ――と、思ったことが伝わったのか、トウマがちいさく首を横に振る。
「タツヒコさんに見てもらうのが一番いいんです。いっつも、一番みんなの動き見てるでしょ。
　リンとマキさんがステップに手こずってるから、俺が見本で踊ってみたんですけど……説明難しくて。それに、ステップが良くなっても、ふたりの動きが合わなきゃ意味ないし」
　その後に「俺がひとりで踊るなら完璧なんだけどなぁ」とぼやくところがトウマらしくて、つい、笑ってしまった。

「タツヒコさん、よろしくお願いしますっ！」
「よろしくお願いします」
　リンタロウとマキが頭を下げた。
「俺も勉強になるからありがたいよ。こちらこそよろしく」
「それじゃ、もっかい行くぞー」
　トウマがふたりの前に立ち、機材の再生ボタンを押す。

「タツ～。お疲れ！」
　ステップをチェックしていると、よいしょ、とヨウスケが隣に腰を下ろした。
「休憩中なのに、あいつらがんばるよな～。あ、ヤベ。トウマのやつ、さっすが巧いな！」
「だろう？」
　口をついて出てきた言葉に、内心ビックリした。
　うちのトウマはすごいだろう、なんて、一年前は想像もしなかった言葉がするりと出てくる、いまの自分に。
　すると、
「けど、うちのリンとマキちゃんだって負けてないぞ！」
　心の内を見透かしたように、言われた。
「でもって、俺もタツに負けないし？」
　まっすぐこちらを見て笑うヨウスケに、妙なくすぐったさが込み上げた。

　ユニットメンバーの、いつもの顔。
　長いつきあいの友人が垣間見せる、色鮮やかな自信。
　ダンスを踊る自分。
　なにもかもが目まぐるしくて、新しくて、楽しい。

「簡単には勝たせてやらないぞ」
　笑ってタツヒコが言うと、ヨウスケはほんの少し驚いたようにまばたき、楽しげに笑った。