『あしたのジョー』ちばてつやさん、『巨人の星』川崎のぼるさんらが集った！　「梶原一騎 絶筆30年 SO！一騎集会」レポート

『巨人の星』『あしたのジョー』など数々の名作を生んだ劇画原作者・梶原一騎さんをしのぶファンイベント「梶原一騎 絶筆30年 SO！一騎集会」が、8月6日に都内で開催されました。

「梶原一騎」といえば、最盛期には月刊誌5本、週刊誌8本もの原稿を抱えていた鉄人。

格闘技をはじめスポーツ全般を題材とした、男の生き様を骨太に描く作品群で知られ、当時まだ珍しかった“漫画原作者”の先駆けでもありました。

今回のイベントは、梶原さんの長男・高森 城さんが「人間・梶原一騎を知ってほしい」という思いから主催したもの。

前半では家族・親族から見た梶原一騎像が、後半では梶原さんとタッグを組んだ漫画家・川崎のぼるさん（『巨人の星』）、ちばてつやさん（『あしたのジョー』）らによって、連載当時のエピソードなどが語られました。

　

「贅沢は努力の成果！」　家族から見た梶原一騎
イベント前半には、梶原一騎さんの長男・高森 城さんと、姪・高森 翠さん（三兄弟の次男・真樹 日佐夫=高森真土さんの娘）、そして末の弟・高森 日佐志さんが登壇。
ファンのあいだで「軍艦御殿」と呼ばれる梶原邸の映像も交えながら、終始アットホームな雰囲気で、梶原さんの生前の思い出が語られていきました。

城さんが話す、父としての梶原一騎さんは厳格で、子どもに贅沢をおぼえさせない教育方針を貫いていたそうです。

その徹底ぶりは、自分がコシヒカリを食べる一方で、息子３人には標準米を食べさせるほど。「贅沢をしたければ働いてから。小さい頃から贅沢をすると、そのための努力をしなくなり、結果的にそれを得られない人間になる」という思いがあったことを、後年に母（故・高森篤子さん=梶原一騎夫人）から聞いたそうです。

弟の日佐志さんからは、梶原さんに絵の心得があったという意外な事実が語られました。小さいころから兵隊の絵を好んで描いていたという梶原さん。

文筆業を始めてからも、原稿の裏に、大ファンだった美空ひばりの似顔絵をよく描いていたそうです。絵はいまも日佐志さんの手元にあるとのことで、いつかお披露目されるかもしれません。

またイベント中盤には、サプライズゲストとして、『タイガーマスクW』（16～17年）のプロデューサー、東映アニメーションのギャルマト・ボグダンさんが登壇。

同作は、OP曲『行け！タイガーマスク』の採用ほか、ミスターＸ役・柴田秀勝さんの起用、線を太くした劇画風の処理など、アニメ『タイガーマスク』（69～71年）のDNAを色濃く受け継いだ作品です。

「制作にあたって原作漫画に潜り、そのすごさを改めて感じました」と話したボグダンプロデューサー。

劇中に「みなしごランド」の設定を受け継いだ地下訓練場を登場させていましたが、物語の結末に関しても、原作漫画と初代アニメへのオマージュから発想していったことを明かしていました。


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『巨人の星』と『あしたのジョー』、両者からみた漫画原作者・梶原一騎
イベント後半には、川崎のぼるさんと、ちばてつやさんが登壇。森川ジョージさん（『はじめの一歩』など）によるインタビュー形式で、『巨人の星』と『あしたのジョー』連載当時のエピソードが語られていきました。

まず話題に上ったのは、両氏で正反対ともいえる、連載時の梶原さんとの関わり方。

川崎さんは、梶原さんと会ったのは連載開始前の高校野球観戦と数回のパーティーのみで、いずれも漫画の打ち合わせはしなかったといいます。

一方でちばさんは、原作に分からない部分があると、すぐ会いに行ったそうです。


両氏は原作との距離感も正反対。

川崎さんは、「面白い原作なので、そこから想像力を膨らませて絵にしていった。

梶原さんに負けないようにやろうと思った」と話したように、基本的に原作から変更を加えず、あくまで演出面・絵による面白さをプラスしていくスタイルでした。


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対してちばさんは、ちょうど独自にボクシング漫画を描こうと準備していた時期だったこともあり、「原作から一言一句の変更も許さない」と噂になっていた梶原さんと組むのは難しいと考えていたそうです。

ところが編集者に「梶原さんはボクシングに詳しいから、会って取材だけしませんか」と池袋のバーに呼び出されると、「地下で暗いのにサングラスをかけ、白いマフラーをした大きな梶原さんが立ち上がり、いきなり『よろしく』と握手された」という展開に。

ちばさんが、場合によって改変することを認めるなら引き受ける旨を伝えると、「ものすごい難しい顔をして……しばらく間があったあと、『許す』と言われた」と苦笑していました。


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またスポ根漫画に欠かせない“必殺技”の成り立ちに関しても、両作品それぞれのドラマが語られました。

『巨人の星』の消える魔球「大リーグボール２号」は、登場時、消える原理が決まっていなかったといいます。そこから特訓するエピソードを重ねるなかで、土煙をあげる飛雄馬の投球フォームがヒントになり、土の保護色で消えることが確定。原作と絵が互いに影響しあうなかで、完成に至ったとのことでした。

一方で『あしたのジョー』の「トリプルクロスカウンター」は、描くにあたり、ちばさんは梶原さんに会いに行ったとのこと。

「六本木のバーで、お互いの拳を交えて解説してもらっていたら警察を呼ばれた」と振り返っていました。大柄な梶原さんとの体格差は、「ジョーと力石の試合を描くときに役立った」そうです。

　
イベントも押し迫ると、両作品の余韻ある最終回の話題に。

『巨人の星』の最終回、飛雄馬が左門と京子の結婚式を覗いて去る後ろ姿に教会の十字架が影を落とす演出は、川崎さんが独自に考えたものだったことが語られます。

また連載終了間際には、梶原邸に招かれて、初めてたくさんの話をする機会もあったとか。

『巨人の星』が終わったらこんな作品をやりたいんだと、『愛と誠』や『空手バカ一代』の構想も聞いたそうです。

川崎さんからは、晩年の梶原さんと真樹さんに銀座で出くわし、「川崎君は俺の恩人なんだ」と言われたというエピソードも。

「『巨人の星』で男にしていただいたと思っているが、梶原さんもそう思ったのかもしれない」と当時を懐かしんでいました。


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一方の『あしたのジョー』の真っ白に燃え尽きる最終回は、よく知られているように、原作の段階では全く違ったものでした。

どうしても原作どおりに描けなかったというちばさんが梶原さんに電話すると、別作品の編集者を待たせていたらしく、「いままで好き放題に描いておいて、いまさら何だ。任すよ！」と電話を切られたとか。

「連載終了後に『良いラストだった。ありがとう』と握手されたけど、すごい力がこめられていて手が痛かった」と苦笑いしていました。


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3時間にわたったイベントの最後には、今回のイベントの題字を書いた、漫画家の平松伸二さんも登壇。

『巨人の星』と『あしたのジョー』は中学・高校時代のバイブルだったと振り返りつつ、「このようなイベントに登壇しているよと、当時の自分に教えてあげたい」と話していました。

去年から今年にかけて、劇場版『あしたのジョー2』のBlu-rayリリース、『タイガーマスクW』のオンエア、ANIMAXでの『空手バカ一代』リマスター版オンエア（11月）など、梶原一騎原作作品の存在感は再び高まっています。

氏の没後30年を迎えた今年、改めてその名作たちを楽しんでみてはどうでしょう。

[取材・文／小林真之輔]

　
【Blu-ray】劇場版 あしたのジョー2

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力石の死を乗り越え、ジョーが帰ってきた ! !

出﨑統監督による現在も語り継がれる傑作劇場アニメ !
元祖ボクシングアニメの劇場作品がBlu-ray Discで再登場 ! !

≪ストーリー≫
宿命のライバル ・ 力石徹を試合中に死なせてしまった矢吹丈 ( ジョー ) 。
力石に不思議な友情を感じていたジョーは、その記憶に苛まれ続け、自暴自棄な生活を送っていた。
丹下段平や白木葉子の説得によって再びリングに立つ決心を固めるジョーだったが、
力石の死を忘れることは出来ず、相手の顔面を打つことのできない欠陥ボクサーになっていた。
ある日、テレビで見たカーロス・リベラというボクサーに興味を惹かれたジョーは、
葉子にカーロスとの対戦を申し出る。

≪キャスト≫
矢吹丈 : あおい輝彦
丹下段平 : 藤岡重慶
白木葉子 : 檀ふみ
ホセ・メンドーサ : 岡田眞澄
力石徹 : 細川俊之
マンモス西 : 岸部シロー
カーロス・リベラ : ジョー山中
他

※2008年9月発売Blu-ray ( BCXA-0026 ) と同内容となります。

　

【Blu-ray】TV 空手バカ一代

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あの懐かしの名作アニメがBD-BOXとして初登場 !

原作は空手家 ・ 大山倍達の半生を描いた伝記的作品。
「実話を基にしたノンフィクション作品」 という触れ込みで
1971年から1977年まで週刊少年マガジンで連載された。

≪収録内容≫
全47話収録

　
イベント概要

イベント名： 梶原一騎 絶筆30年～SO！一騎集会～
開催日時： 2017年8月6日(日)　開場：15時　開演：16時
開催場所： 科学技術館 サイエンスホール