『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』破裏拳ポリマーを演じる鈴村健一さんが語る『Infini-T Force』が女性にウケた理由
2018年2月24日から公開が始まるタツノコプロの55周年記念作品『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』。
本作は2017年10月からTV放送されていたガッチャマン、ポリマー、テッカマン、キャシャーンという4人のタツノコヒーローが一同に会す3DCGアニメ『Infini-T Force』の続編にあたる劇場版作品です。
新たなキャラクターとして『科学忍者隊ガッチャマン』からコンドルのジョーや南部博士も登場し、ガッチャマンを主軸においたストーリーが描かれます。
本稿では鎧武士/破裏拳ポリマーを演じた鈴村健一さんのインタビューの模様をお届け! タツノコヒーロー愛溢れる鈴村さんからキャラクターや作品の魅力について語っていただきました。
ポリマーは現代風な“昼行灯”
――まず劇場版のアフレコを終えて、TVアニメ版の収録と雰囲気や心持ちの部分で変化などはありましたか?
鈴村健一さん(以下、鈴村):変わらず、そのままでした。というのも、TVシリーズの第1話の時から「絶対劇場版やりますので」と言われていたので、それで「凄いプロジェクトなんだな」って気合を入れていたんです。なので、繋がっていたという意識が僕らにも高くあったんです。
――アフレコ現場の雰囲気も同じ雰囲気で?
鈴村:そうですね。でも、劇場版は改めて別日で録ったので、全員での収録ではなく、揃わなかった人もいましたけど、個人的には早めの同窓会みたいな感じでした(笑)。実際TVシリーズを録っていたのは1年前くらいなので。
――なるほど。鈴村さんが演じられている破裏拳ポリマーの1番の特徴は格闘中の雄叫びだと思います。
鈴村:ポリマーの代表的な特徴がカンフーアクションなので、TVシリーズの第1話のテストの時にやったんです。
でも、スタッフ含めて結構みんなに笑われて、「ちょっと待ってくれ。ポリマーはあのアクションが大事だっただろ? だから頑張ってやったんだよ」って言ったら、「その心意気は素晴らしいです。でもちょっと間引きましょう」って言われて(笑)。
それで現代風のポリマーにフィットするようにワンポイントでカンフーっぽい掛け声をすることになったんです。
現代風にはなったんですけど、自分としてはこだわって演じたところで、自分から「こういう演出にさせてください」とは言わせてもらいましたね。
――そういう旧作に登場した特徴やセリフを演じられている他のキャストの演技を見られていかがでしたか?
鈴村:関(智一)さんの「バードラン」の言い方とか、完コピしていて凄いなと思いましたね。みんなそれぞれリスペクトして演じているんだなって事がよく分かりましたね。
――そういうのを見ると負けない様に演じなきゃいけない訳ですよね。
鈴村:僕のキャラクターは戦闘が1番特徴的だったので、そこにひとつ力点を置かせてやらせてもらいました。
――カンフーアクションの話もありましたが、キャラクターとしても旧作のポリマーと大きな変化を感じました。鈴村さんは新しいポリマーをどう思いましたか?
鈴村:旧作のポリマーの武士はいわゆる昼行灯で、昼はダメだけどやる時はやるっていう。昔のヒーローはそういうのが多くて、ポリマーもそういうフォーマットだったんですけど、今の武士にもよく見るとそういうテイストが残っていると思います。
ぱっと見とか人と触れ合う瞬間はチャラいじゃないですか。笑と触れ合ったファーストコンタクトも「こいつチャラそうだな」と思われているんですね。
これっていわゆる昼行灯の描き方の今っぽさだと思っていて、今はダメな奴が出てきて変身して戦うっていうのはあまり無いじゃないですか。それって共感性が無いからだと思っていて、でもチャラい奴がたまに見せるカッコ良さっていうのは凄く女性にも分かりやすいし、今の時代にもフィットしている。
そう考えるとそんなにモチーフはズレていないというか、共通点が多いかなという気がします。
僕も時代に合う様にお芝居をなだらかにしていて、武士は凄くヒロイックな事を言いますが、「今から凄く良い事言います。ほら言った!」ってやらないのが現代風だと思うので、チャラ男のまま良い事を言うっていう事を心がけていますね。
劇場版でも昭和らしいヒーロー像に突き動かされて戦う
――劇場版の台本に目を通された時もTVシリーズと同じ印象でしたか?
鈴村:全く同じでしたね。でもストーリーの中でもキャラクターたちが久しぶりに会う感じがあって、キャストもそうでしたけど、キャラクターたちも同窓会っぽいなって思いがありました。
差としては、TVシリーズではタツノコヒーローたちが過去どういう事をやってきたというのはほとんど描かれ無かったんです。でも、劇場版ではガッチャマンの世界を描くということで、台本の中で“南部博士”っていう言葉が出てきて「ヤバイ! 南部博士って出てきたよ!」ってテンションが上がりましたね。
南部博士とジョーが出て来るのはやっぱり『ガッチャマン』を観ていた人間からすると外せないキャラクターですから。
――本作の中でポリマーとして見どころはどこですか?
鈴村:無償の愛というか、「ヒーローとはこうだろう」というヒーロー像に突き動かされて戦っているような昭和のヒーローらしさがTVシリーズのポリマーにはあったと思うんです。
それは劇場版も変わらず「ヒーローとはこうあるべきだ」というのを明確に行動に変えていたかなと思うと、単純に格好良かったというか、あの頃のままで良かったなと思いました。
タツノコヒーローって泥臭いんですよ
――鈴村さんが思うタツノコヒーローの魅力はどんなところだと思いますか?
鈴村:ヒーローは常に逆境に立ち向かうものですが、特に『宇宙の騎士テッカマン』とか『新造人間キャシャーン』。僕も好きだったあのふたりのキャラクターは特にとんでもない逆境に立ち向かっていて、困難からなんとかそれを打開しようとする姿がヒーロー然としているんです。
最近は凄くスタイリッシュなヒーローが増えてきていますが、この頃のタツノコヒーローって泥臭いんですよ。実際僕らの日常においても大変な事とか、どうにもならない事がいっぱい起こると思うんですけど、でも生きていかなきゃいけないし、それをどうやって乗り越えて行くかみんな向き合いながら生きていると思うんです。
でもヒーローも同じように悩み、それを乗り越える姿を見せてくれていたっていうのが、今でも力になっていますし、そういうものを描いているのがヒーローかなと思います。
――鈴村さん的にこんなヒーローを演じてみたいという願望はありますか?
鈴村:今回の『Infini-T Force』はタツノコ55周年の記念なので、色んなヒーローが集結するっていう売りじゃないですか。だからもっと出て欲しいなというのはちょっとあって、アフレコで出てきたのは『樫の木モック』(※1)とか出て欲しいとか言っていて(笑)。
でも個人的に出てきてほしかったのは『ヤットデタマン』(※2)ですね。『ヤットデタマン』はデザイン自体もポリマーがモチーフにされていて、声も曽我部和行さんで同じなんですよね。
実はポリマーのこっそりリメイクキャラクターなので、ポリマーとヤットデタマンが出てきて「お前似ているな」って僕が同じ声でやらせて貰えたら良かったなと思いました(笑)。なので『Infini-T Force』続編では是非!
※1:樫の木モック
1972年に放送されたタツノコプロ制作のTVアニメ。『ピノッキオの冒険』を元に樫の木で作られた人形のモックが、人間になりたいという願いを叶える為に成長していく物語が描かれる。
※2:ヤットデタマン
1981年から1992年まで『タイムボカンシリーズ』の5作目として放送された作品。ナンダーラ王国の王位を手にするべく、王位継承の証となる時空を超える鳥“ジュジャク”を探す。
――個人的には戦闘シーンにもかなり興奮して、フルCGのあのアクションは作品を知らない人が観ても純粋に楽しめると感じました。
鈴村:単純に格好良いですよね。いかに個性的だったかっていうのが普通のドラマシーン以上に分かると思います。
タツノコキャラクターは僕も子供の頃から観ていて凄く好きだったんですけど、一筋縄ではいかないのがタツノコキャラクターで、ただ格好良いっていう事もやろうと思えば出来たのに、ちょっと一癖二癖入れてくるのが魅力的だったと思うんです。まず、「ガッチャマンって名前笑えるじゃん」みたいな。
――確かに良い意味で昔らしいネーミングだなとは思いますが、そういう「名前が面白い」みたいな認識は昔からあったんですか?
鈴村:『ガッチャマン』って子供は格好良いと思って観てましたけど、大人は凄く笑っていたらしいんです。当時のアフレコ現場で森功至さん(大鷲の健役)が「科学忍者隊ガッチャマン!」っていう決め台詞が笑って言えなくなったっていう逸話が残っているくらい。
でもタツノコっていうコメディ要素が強い作品をいっぱい作っていた中でヒーローを作っているんですよね。だから普通の目線では描かれないヒーローを描くのもタツノコの面白さで、ガッチャマンはブーメランを使って直線的に戦うんですけど、テッカマンはランサーを使って戦うとか、ポリマーはカンフーアクションとか、アクション自体に個性がしっかり付いているんですよね。
なのでアクションシーンはより個性が見えますし、旧作知っている人はなるほどと思ってくれるバトルシーンになっています。
おせっかいなおじさんたちが女性にもフィット
――今回の『Infini-T Force』はリメイク作品として、キャラクターデザインも変わり、いわゆる今のアニメに近い作風になりましたが、鈴村さんは本作は若い世代の方々の目にどのように映っていると思いますか?
鈴村:どう映っているのか僕も知りたいぐらいです。でもフルCGっていうのが功を奏しているのかもしれないですね。
僕も第1話をリアルタイムで観たんですけど凄く衝撃で、アフレコでも観ていたにも関わらず、テレビからこれが流れてきたっていう事が凄くインパクトがあったんですよね。だから誰もが衝撃を感じるんじゃないかなと思っています。
実際キャラクターも凄く魅力的で、みんなひとりの女性の為に戦っているんですよね。それって完全なるおせっかいで、実は笑が地球の命運を握っているということはそんなに描かれて無くて、ただ笑が心配だからいるんですよね。
おせっかいなおじさんたちが一生懸命女の子を助けようとしているところが、女性にもフィットしたのかなと思いますね。
――各キャラクターとの会話も面白かったです。
鈴村:ただのおっさんが絡んできて、それをなだめる武士とか、冷静にツッコミを入れる城二と、ちょっと天然ボケの鉄也とか面白かったですよね。
やっぱりキャラクターの立ち位置がしっかりしているのが面白いのかもしれないなと思っていますね。
――では最後に、若い世代の方が映画を楽しむうえで、鈴村さん的に押さえておいた方が良いと思うポイントはありますか?
鈴村:今回の劇場版は『ガッチャマン』がベースの話になっているので、『ガッチャマン』を観たこと無い人が少し抵抗を持つかもしれないですけど、それは全く無いと思います。この劇場版から観ても色んな事が分かる様になっている作りになっているので、そこはご安心いただきたいです。
TVシリーズを観ていた方は絶対観た方が良いと思いますね。わちゃわちゃしていた彼らの日常みたいな部分もちゃんと出てきますし、また彼らが新しい案件に立ち向かうエクストララウンドみたいなものなので、安心して観れる作品だと思います。
構えて観る感じでも無いんですけど、劇場版に相応しい重いテーマだったり、生真面目で時代錯誤の健がどういう人だったかっていうのが少し垣間見えるストーリーになっています。
それを知ってもう一度TVシリーズを見返すと、わちゃわちゃしている健がより愛らしく見えてくると思いますね。あとTVシリーズよりも泣ける話になっているので、是非そこも観て欲しいです。
作品情報
『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』
公開時期:2018年2月24日(土)
配給:松竹
監督:松本 淳(『閃光のナイトレイド』『PERSONA -trinity soul-』監督)
脚本:熊谷 純(『PSYCHO-PASS サイコパス2』脚本、『アクエリオンロゴス』シリーズ構成)
出演:
関 智一(ガッチャマン/鷲尾 健)
櫻井孝宏(テッカマン/南 城二)
鈴村健一(ポリマー/鎧 武士)
斉藤壮馬(キャシャーン/東 鉄也)
茅野愛衣(界堂 笑)
遠藤 綾(佐々岡)
鈴木一真(コンドルのジョー/ジョージ浅倉)
船越 英一郎(南部博士)