『B: The Beginning』平田広明さん&梶裕貴さんインタビュー|まるで海外ドラマのような重厚なストーリーに注目!
2018年3月2日(金)よりオンラインストリーミングサービス「Netflix」にて全世界独占配信されたオリジナルアニメ『B: The Beginning』。
本作は、犯行現場に必ず「B」の文字を刻み込む連続殺人犯【Killer B】を、ある事件をきっかけに現場から遠ざかっていた伝説の捜査官キース・フリックが追う、ノンストップクライムアクション作品です。
様々な事件の連鎖、謎の少年・黒羽、蠢く謎の組織など、観るほどに先が気になる展開に、配信前から注目が集まった話題作です。
全世界同時配信開始に先駆け、2月21日(水)には東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズにてワールドプレミア試写会を開催。トークショーを控えるキース・フリック役の平田広明さん、黒羽役の梶 裕貴さんにお話を伺いました。
収録時は緊張感が漂い、休憩時はチーズパンの取り合い!?
――最初にシナリオを読んだ際の印象を教えてください。
梶 裕貴さん(以下、梶):最初にこの作品に触れたのはオーディションの時で、その設定や資料から骨太な作品だと感じました。
登場人物も幅広い年齢層で様々なキャラクター性があり、外国映画のような雰囲気に日本らしいファンタジー要素も加わっていて、いろんな魅力の詰まった作品だろうなという印象を受けました。
ぜひ参加したいと思っていたので、オーディションで決まった時はとても嬉しかったです。
オリジナル作品ということもあり、先の展開はおそらく意図された上で、その都度台本が渡されてからはじめて知るという形だったんですよ。特に、演じさせていただいた黒羽は謎の多いキャラクターで、僕も毎週新鮮な気持ちでアフレコに臨んでいました。
大先輩から若手まで、いろんな役者さんがいて、みなさんのお芝居を聴くのもとても楽しい収録現場でした。
平田広明さん(以下、平田):収録したのは1年前で、たしか、去年の今頃は5話か6話くらいを録っていたんですよ。お話をいただいた時に、原作やコミックスがないオリジナルアニメということで、展開の想像がつかないことに対する期待感はありました。
自分の役柄について、事前にどこまで説明されたかは憶えていませんが、勝手に捉えていたのは「なんか捻くれたおじさんなのかな」と。
梶:あははっ!
平田:けっこう早い段階でそういう印象は持っていた気がします。そして最初に脚本を読ませていただいた時、「うん、間違っていない」と思いました。
――キースは超人ではなく、あくまでも人間で、人間味に溢れる天才という印象を受けました。
平田:最初の段階では超人か凡人かという答えは出せないですけど、久しぶりに帰ってきた王立警察特殊犯罪捜査課の仲間たちへのキースの接し方を見れば、大体わかりますよね。
紹介されている間に寝ちゃったりとか、適当なヤツなんです。超人的という印象は最初はありませんでした。
梶:かわいらしいところですよね(笑)。憎めない男です。
――お二人はこれまで共演されたことはありますか?
梶:はい。共演させていただいたことはあるのですが、ここまで対になるような立ち位置というのは初めてだったので、僕としてはとても嬉しかったです。
平田:今まで役柄として、会話をした記憶がないですね。なんかあった?
梶:ゼロではないと思います。『新世界より』での共演でおそらく会話はあったはずです。けれど1対1というよりも、同じ場所にいて、そこにいる何人かと会話があったという感じなので、ここまでの――。
平田:がっぷりの四つ相撲は初めてですね。
梶:僕からしたら、アニメでも吹き替えでも、いろんな場所でお声を耳にする大先輩なので、平田さんという役者さんの存在は元から頭の中にばっちりあったわけです。
そしてこの『B: The Beginning』という外国映画のような雰囲気のある作品において、キースはたぶん40代か50代くらいの渋いキャラクター。
なので平田さんや森川智之さん(ギルバート・ロス役)が声を担当されるとお聞きして、参加するのがより楽しみになったのを覚えています。
キースというのが、ゲニ=天才で、その上見た目も渋く格好良いんですけど、中身はちょっとおちゃらけていたり、愛らしくてどこか憎めない面もある人なんです。その雰囲気が絶妙に表現されていて、なんだかちょっと平田さんと通ずるものがあるような気もして……。格好良いけれど、どこかお茶目でいらっしゃるところとか。
平田:天才は入ってないの?
梶:もちろん天才ですよ!(笑) あ、あと差し入れでいただいたいろんな種類のパンの中から、チーズパンの取り合いをしたのがいい思い出です(笑)。
平田:美味いよね、あそこのパンは!
梶:はい! チーズパンがいくつかしかなくて、先に僕が手を出したら「あ、お前取りやがったな!」って(笑)。そんな風にいじってくださって、ありがたかったです。
――平田さんは、梶さんの印象はいかがですか?
平田:もちろん超売れっ子声優さんで、名前もよく見るし、「共演は初めてじゃねぇぞ」というのはわかってましたけど、でもそんなに一緒にやったことはありませんでした。ほかの作品で演じているのを見せてもらった印象は、真面目だなと。
見た目はかわいらしいんですけど、お芝居もしっかりしているし、「彼は演じるのが好きなんだな」というのはすごく感じました。
梶:恐縮です。
平田:「みんなお芝居が好きだからやってるんでしょ!?」って言われればそれまでだけど、「役を演じるのが何よりも好きで楽しいんだな」というのを感じました。
きっと真面目なんでしょうね。すみませんね、僕、不真面目な芝居ばっかりで。
梶:それがカッコイイんです!
――演じ手にも先の展開はその都度明かされる形で演じられたとのことですが、キャスト同士で先の展開について予想し合うようなことはあったのでしょうか?
梶:役者さんによっては、あらかじめ監督から、ある程度説明されている方もいらっしゃったとは思いますが、みんなこの作品が大好きでアフレコに臨んでいたと思うので、それぞれ「どうなっていくのかな!?」と視聴者みたいな気持ちで予想して楽しんでいるような雰囲気はあった気がします。
平田:犯人が誰かという予想をするよりも、話自体の進み方が複雑で、それについていくのが精一杯なんですよ。話が僕らの想像を超えたところに行っているというのは、みんなどこかで自覚していたと思います。
誰か単独の犯人を見つけるというような話でもないですから、あまり先の展開は話題にならなかったですね。
――演じる上で気をつけた部分は?
平田:洋画っぽい、映画っぽいという話を何度もしていますが、すごくリアルな会話を録るんですよ。特に僕の役は声を張らない、ボソボソ言っているようなシーンが多いので、どうしてもマイクのレベルを上げなくてはならない。だから、ノイズだけは立てないように注意しました。
細かなニュアンスを要求され、みなさんがそういうお芝居をなさるので、遠くへ投げるセリフじゃなくなる。梶くんのセリフもそうだもんね。
梶:そうですね。
平田:自分に問うたり、心の中のモノローグとか、緊張感が漂うんです。そういうお芝居をしている人は、緊張感を常に持続させているんだろうなと思うんですよ。なので、ほかの人のシーンでも音を立てないようにしようとは思いました。
梶:僕は黒羽がどんな存在か、ざっくりとは伺っていたんですけど、「どういう人と関係性があるのか」みたいなところまで詳細に把握していたわけではないんです。
そんな中で表向きの彼と本来の彼との差というのは、自分で想像した部分と、アフレコ段階ですでに完成されていた映像から感じ取ったものを合わせて作っていきました。
演じたものが間違っていれば、監督からディレクションをいただけるはず。なので、OKが出たということは「自分が感じ取ったものが合っていたんだな」というような認識で収録は進んでいきました。
基本的には難しいことを考えるというよりも、そこにいる彼の気持ちを汲み取って表現するという形でしたね。
ほかのキャラクターと会話したものが積み上がって人物像が作られていくというよりも、自分の中の思考や想いといったものがセリフの大部分を占めているようなキャラクターだったので、そういったあたりの難しさはあったのかなと思います。
賑やかそうな警察の面々のお芝居を聴いていて、「すごい楽しそうだな、うらやましいな……!」っていうのは正直ありました(笑)。
――緩急が面白い作品ですね。
梶:そうですね。明るい面と暗い面がジェットコースターみたいな感じで。加えて、キャラクターと役者さんのお芝居が本当にぴったりで、完成したものを観て本当に楽しい作品だなと改めて感じました。
平田さんのボケにもツッコミ慣れた梶さん?
――アフレコ段階で映像が完成していたとのことですが、収録は同じように毎週1本ずつ?
梶:そうです。同じペースできちんと録っていった感じですね。
――スタジオの雰囲気は?
平田:明るい現場だったよね。話の内容は別にアフレコ現場には反映されないから。ベテランから若手まで年齢的なバランスもいいですし、僕なんかも場の雰囲気を作らなきゃいけない立場かもしれないですけど、音響監督がとっても楽しく、乗せ上手な方なので、だから朝からパンの取り合いとかも起こるわけですよ。
梶:あははっ! 賑やかというかより、明るい現場でしたね。でもお芝居をする時はピリッと、繊細な空気の中で、絶対にお互いを邪魔してはいけないという意識を持つ。そういった緩急もあったかなと思います。
僕は平田さんの横に座らせていただいたので、お芝居の空気感という意味でも、座標というか、道標みたいに勝手に思っていました。
平田:言ってくれないと、そういうことは!
梶:あっはっはっ!
平田:言ってくれたらもっと座標っぽく、こうやって――(渋いポーズを決める)。
梶:そんなことしても、言葉しか載らないですよ!(笑)
――こんな感じではなかったわけですね?
梶:だってパンの取り合いするくらいですから(笑)。でも、いつも隣にいさせていただいて、発言される言葉の内容が役者として尊敬できるものであったり・・・時にはその一帯がクスッとなるようなことも仰られて、大先輩に対して畏れ多くもそれにツッコませていただいたり。少し前まではとてもじゃないですけどツッコめなかったですもん。会話するのもおこがましいくらいに思っていたので。
平田:なかなかツッコめないかもね。
梶:はい(笑)。でもその後は、別の現場でご一緒した時も話しかけてくださって。「あ、憶えていてくださったんだ! やっと認識してくださったんだ!」という喜びもありました(笑)。
平田:だいたい僕は、いつも不機嫌な顔でボケますから。
梶:確かに、真顔でボケられるので、ツッコミ難さはありました(笑)。もうそれも慣れましたけど!
――本作のテーマソング「The Perfect World」は、元メガデスのマーティ・フリードマン氏を中心とした超豪華アーティストコラボで作られています。こちらはいかがでしたか?
梶:すごくかっこいいですよね! 元々僕が思っていた“外国映画っぽさ”というものが、まさに音楽としても表現されていて。あの曲がかかると作品は1話終わってしまうわけですけど、それでも「何か面白いものが始まった!」という、テンションの上がる楽曲だなと感じています。
――最後に注目ポイントを教えてください。
平田:どこが気に入ったか、どこが怖かったかというのは、ご覧になられた方が判断することなので、特にないんですけど、どこを切ってもとにかくストーリーも映像も、音楽、効果音、登場人物のキャラクター性、そのすべてが重厚に出来ていますから、質の良い映画を観ているような気持ちになると思います。灯りを消して、静かなところでじっくりと観てもらいたいですね。
梶:監督を中心とするスタッフさんの情熱……そして、フェティシズムが詰まっていると感じられる作品だと思います。玄人向けでありつつ、幅広く多くの方に楽しんでいただける作品でもあるかなと思います。ぜひご覧ください。
[取材・文/設楽英一]
作品情報
【ストーリー】
王立警察特殊犯罪捜査課(通称「RIS」)へと戻って来た天才捜査官キース・フリックは、ある事件の犯人を追っていた。凶悪犯罪者ばかりを狙う連続殺人鬼、通称『Killer B』。犯行現場に必ず刻み込まれた『B』の文字は人々の注目を集め憶測を呼んだ。
『B』それは彼女のためのメッセージ。『ぼくはここにいる……』その身を異形に変え、黒羽は届かぬ思いを刻み続ける。
キースと黒羽、互いに見知らぬ二人の運命は、やがて一つの陰謀へと飲み込まれていく――
【作品概要】
タイトル:Netflixオリジナルアニメ「B: The Beginning」(英題 B: The Beginning)
配信:Netflixにて全世界独占配信中
エピソード:各話約23分/全12話
【スタッフ】
原作:中澤一登×Production I.G
監督:中澤一登、山川吉樹
プロデューサー:黒木 類
シリーズ構成・脚本:石田勝也
キャラクターデザイン・総作画監督:中澤一登
美術デザイン:伊井 蔵
メカニックデザイン:常木志伸
プロップデザイン:津坂美織 冨田収子
色彩設計:境 成美
美術監督:田中孝典
3DCGディレクター:磯部兼士
撮影監督:荒井栄児
音響監督:長崎行男
音楽:池 頼広
編集:植松淳一
制作:Production I.G
主題歌:「The Perfect World」アーティスト:マーティ・フリードマン feat. Jean-Ken Johnny, KenKen
プロデューサー:藤本コウジ、マーティ・フリードマン
【キャスト】
キース・風間・フリック:平田広明
黒羽:梶 裕貴
星名リリィ:瀬戸麻沙美
エリック・トガ:東地宏樹
ボリス・マイアー:稲葉 実
吉永カエラ:小清水亜美
ブライアン・ブランドン:豊永利行
マリオ・ルイス・ズリータ:田中進太郎
ジャン・アンリ・リシャール:後藤 敦
ギルバート・ロス:森川智之
皆月:石川界人
ユナ:佐藤聡美
ライカ:喜多田 悠
イザナミ:斎賀みつき
カムイ:中井和哉
タケル:亀田望美
クエン:粟根まこと