『逆襲のシャア』から30年、社会の一員となった今だからこそ受け取れる作品メッセージ
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から今日で30年。公開は、1988年3月12日でした。そして、今朝(2018年3月12日)の新聞に新パッケージの広告が掲載されてネットでも話題になっています。
30年という歳月は、小学生の時に観られた方でも36〜42歳になっている計算になります。『逆襲のシャア』の感動こそ心に残っているものの、多くの方が物語やメッセージを忘れているのではないでしょうか。
公開30年と4Kリマスター発売を記念して、アムロとシャアふたりの観点から、ふたりのシリーズ最終章である『逆襲のシャア』を振り返りたいと思います。
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現実主義と理想主義
『逆襲のシャア』は、アムロ・レイとシャア・アズナブルの最終章になります。『機動戦士ガンダム』(1979年)の公開から約9年、『機動戦士Ζガンダム』(1985年)から約3年。アムロとシャアは時にぶつかり合い、時に協力しガンダムの物語の中で多くのすれ違いを生んできました。
『ガンダム』の時代(一年戦争)は、圧倒的な兵器「ガンダム」がつなげたアムロとシャアの関係が、物語の中心にあります。
ニュータイプとして先に覚醒するアムロと、その才能に嫉妬するシャア。言い換えると、「宇宙に適応した新人類(アムロ)」と「すべて持ってたが先を越された者(シャア)」です。シャアはそんなアムロに「パイロット能力」だけでなく「ララアとの戯言」も含めて嫉妬の炎を燃やします。『ガンダム』でふたりは、終始ライバルとして対峙する関係でした。
一年戦争終戦後の『Zガンダム』の時代(グリプス戦役)になると、アムロとシャアは立場を変えて再開します。
研究の進んでいないニュータイプの恐怖からか、危険分子扱いを受けて監禁されていたアムロ。一方のシャアは「クワトロ・バジーナ」と名前を変え、地球連邦軍内のエゥーゴ(スペースノイド主義的地球連邦軍の事)に席を置き戦います。そんな二人が、同じスペースノイドとして共に戦うことになるのです。
ダカールの演説(『Zガンダム』第37話「ダカールの日」)で、クワトロはシャアであることを明かし、人類によって汚染され続ける地球からの離脱と、すべての人類が「水の星」を守るべくスペースノイドとして共生する理想を掲げます。しかし、シャアの理想は既得権益の詰まった連邦軍には届かず、シャアはグリプス戦役後の失踪してしまうのです。
※スペースノイド:宇宙移民者の事。
そして時代は流れ、組織のキーマンとなった二人は、お互いの確執を激しくぶつけ合います。それが『逆襲のシャア』の物語です。
「29歳のアムロ」と「35歳のシャア」の繰り返す確執
ニュータイプ専用機(ν(ニュー)ガンダム)の開発にも関わるロンド・ベルのエースパイロットである29歳のアムロ。
腐敗の進んだ連邦軍に鉄槌を加えるべく、新生ネオ・ジオンの総帥に自ら立った35歳のシャア。
それぞれが歳と経験を重ね、再び出会います。『逆襲のシャア』では、グリプス戦記までのふたりの想いが爆発するように対峙し、特に強いメッセージとして描かれています。
過去の確執を韻を踏むかのようにリフレイン(繰り返し)するような場面もあり、アムロとシャアのこれまでを知っている方には、たまらない場面も数多くあります。
そして、社会に出た方は、改めて『逆襲のシャア』を観る時は、ぜひ目線を変えてみてほしいと思います。
社会の一員となった今みる『逆襲のシャア』のメッセージ
さまざまな解釈ができますが、大人になった今見ると30年前には気づかなかった、社会と個人との関係性が物語に載せられていることにも気づくのではと思います。
久しぶりに観られた方は、アムロとシャアと自分を重ねて、こんな思いが頭をよぎるはずです。
「組織の中で生きる葛藤は、自分に何を与えるのか」
「父から受け継いだ意思を大事にすることの重要性」
「苦しい青春の思いを抱えて生きる意味」
「理想を求め自分自身を投企する大切さ」
「純粋に生きるということ」
アムロは、自分自身が設計に関与したモビルスーツに乗り「ν(ニュー)ガンダムの力は伊達じゃない!」と信じ、そして組織を巻き込んで絶体絶命の危機に挑みます。また、シャアは「スペースノイドによるスペースノイドのための地球」とも取れる演説を実行します。この両シーン共に、30年前とは違った景色に映るのではと思います。
内容を忘れるくらい前に観た方は、ぜひもう一度『逆襲のシャア』を手にとってみてください。あなた自身を育んだ30年という歳月と共に、以前は気づかなかった作品メッセージに出会えるはずです。
最後に、アムロ役の古谷徹さんのツィートをどうぞ。
もう『逆シャア』から30年ですか!僕も29才の大人なアムロが一番好きです(^o^)/ https://t.co/G5vyXZuWxD
— 古谷 徹 Toru Furuya (@torushome) 2018年3月12日
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パッケージ情報
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』4KリマスターBOX
(4K ULTRA HD Blu-ray&Blu-ray Disc 2枚組)
価格:9,200円(税抜)
品番:BCQA-0005
1988年3月公開作品
[スペック]
UHD BD 約125分(本編120分+映像特典約5分)/リニアPCM(ドルビーサラウンド)・DTS-HD Master Audio(4.1ch)/HEVC/66G/16:9/日本語字幕付(ON・OFF可能)
BD 約125分(本編120分+映像特典約5分)/リニアPCM(ドルビーサラウンド)・DTS-HD Master Audio(4.1ch)/AVC/BD50G/16:9/日本語字幕付(ON・OFF可能)
[特典]
・特製収納BOX
・「逆襲のシャア」ドキュメントコレクション(100P予定、絵コンテやラフスケッチなど秘蔵資料を収録)
・映像特典:劇場予告編/特報①/特報②
・音声特典:4.1ch アドサラウンド音声
(ドルビーサラウンド音声成分を分解・再配置し、低音成分を追加した本編音声)
[スタッフ]
原作・脚本・監督:富野由悠季/キャラクターデザイン:北爪宏幸/モビルスーツデザイン:出渕 裕/メカニカルデザイン:ガイナックス・佐山善則/作画監督:稲野義信・北爪宏幸・南 伸一郎・山田きさらか・大森英敏・小田川幹雄・仙波隆綱/美術監督:池田繁美/撮影監督:古林一太・奥井 敦/音響監督:藤野貞義/音楽:三枝成彰/主題歌「BEYOND THE TIME~メビウスの宇宙(そら)を越えて」:TM NETWORK/企画・製作:サンライズ
[キャスト]
アムロ・レイ:古谷 徹/シャア・アズナブル:池田秀一/ブライト・ノア:鈴置洋孝/ナナイ・ミゲル:榊原良子/ミライ・ヤシマ:白石冬美/クェス・パラヤ:川村万梨阿/チェーン・アギ:弥生みつき/ハサウェイ・ノア:佐々木 望/ギュネイ・ガス:山寺宏一 他
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