【連載】TVアニメ『スロウスタート』プロデューサー・橋本渉インタビュー! ファンとの距離感の近さを大切に
2018年1月よりTOKYO MXほかにて放送中のTVアニメ『スロウスタート』(原作:篤見唯子/「まんがタイムきらら」にて連載中)。アニメイトタイムズでは公式サイトと連動して、メインキャストのみなさんやスタッフの方々を対象にした連載企画「animate Times Presents スロウスタート リレーインタビュー」のロング版を掲載しています。その第11回目に登場いただくのは、プロデューサーの橋本渉さんです。企画の立案からビデオパッケージのコンセプトまで、プロデューサーならではのこだわりについて伺いました。
■■■連載バックナンバー
□【連載1】一之瀬花名 役・近藤玲奈さん
□【連載2】十倉栄依子 役・嶺内ともみさん
□【連載3】千石冠役・長縄まりあさん
□【連載4】百地たまて役・伊藤彩沙さん
□【連載5】原作者・篤見唯子先生
□【連載6】橋本裕之監督
□【連載7】シリーズ構成・井上美緒さん
□【連載8】榎並清瀬役・沼倉愛美さん
□【連載9】京塚志温役 M・A・Oさん
□【連載10】万年大会役・内田真礼さん
ひと味違った「日常系」を届ける
――『スロウスタート』のアニメ化は、どのような経緯ではじまったのでしょうか。
橋本渉プロデューサー(以下、橋本P):はじめは「橋本(裕之)監督と作品を作りたい」という想いからスタートしました。そこから橋本監督と一緒に、どの原作をアニメ化してみたいかを、読書会のような形で、様々なマンガやライトノベルを読みながら話し合いを重ねていきまして。最終的にこの原作なら絶対面白いアニメになると意見が一致したのが、篤見(唯子)先生の『スロウスタート』でした。
――どういった点に魅力を感じられたのでしょうか。
橋本P:僕がまず惹かれたのは、言葉の掛け合いの面白さですね。ちょっと毒のあるところも含めて、女の子同士の会話に篤見先生ならではのエッジが効いていて、そこが魅力的だなと。
また絵柄に関しても、かわいらしいだけでなくフェティッシュな部分も活きていると感じました。コマの枠線にキャラの胸が乗っていたり、スカートのギリギリ感だったり、表紙イラストの裸足だったり……。しかも女性作家さんならではなのか、それが下品に見えてしまうこともなく、むしろアニメへと落とし込むことでより映えるのではないかと。
――実際にアニメのキャラクターデザインを最初に見た際はどう思われました?
橋本P:篤見先生のイラストの魅力と、アニメとしての見映えと動かしやすさを両立させる、安野(将人)さんのデザイン精度の高さに驚かされました。しかもそれだけでなく、わずか1週間ほどの間に、クラスメート全員分の設定画まで次々とあげてくださったんです。それを見たときは、スピードと技術力はもちろんのこと、安野さんの作品へ込める熱量にありがたさとうれしさを感じました。
――完成映像ではキャラクターの動きの細やかさも印象的ですね。
橋本P:かなり早い段階から「これはすごいものができるな」と想像がつきました。例えば第1話のアバンや、冠が廊下を歩く花名を追い越し栄依子に抱きつくシーンなど、原画をつないだ途中段階の映像を観ただけでも、想像を遥かに超えて動いていることがわかりましたから。基となる橋本監督の絵コンテの力に、安野さんをはじめアニメーターのみなさんの熱量が加わることで、ここまで新たな魅力がプラスされるんだという驚きがありました。
――ほか制作現場で印象的だったエピソードを教えてください。
橋本P:篤見先生と橋本監督とシリーズ構成の井上(美緒)さんの間のやり取りは印象的でしたね。3人の仲がとても良くて、シナリオ会議でも終始盛り上がっていました。
また先生は、珍しいストラップやグッズを集めるのがお好きなそうで、監督へもカニのハサミがついたボールペンをプレゼントされていました(笑)。シナリオ打ち合わせ中も、「明太なめたけオムレツサンド」や「栄依子のヘアピン」について、先生からユニークなレクチャーを受けることができて、まるで先生の頭のなかを覗いてるようで楽しかったです。
――キャストさんはいかがでしたか?
橋本P:メインキャストの若手4人は、こちらの想像以上にがんばってくださいました。特にOP主題歌「ne! ne! ne!」のミュージックビデオの撮影をきっかけに、4人の絆が外から見てもはっきりとわかるくらい深まって。まさに同じ時間を共有し、同じ目標に向かっていくことでお互いの力を引き出し合える、そんな理想的な関係性が築けているのではないかとうれしく思っています。
花名の半歩だけの成長を見せる
――これまで放送済みのエピソードのなかで、橋本プロデューサーが個人的にお気に入りのシーンをご紹介いただけるでしょうか。
橋本P:たくさんあるのですが、個人的にグッと来たのは、第3話で花名が両親と再会するシーンですね。3人の何気ない会話から、娘を想う親の気遣いと、家族の絆の深さが伝わってきました。その終盤でも、花名が両親からの誕生祝いのカードとスノードームを見つけるシーンがありますが、セリフではなく手紙とプレゼントで親の気持ち推し量ることができて。どちらもキャラクターの深みが出ている、『スロウスタート』らしい素敵なシーンだと思います。
――TV放送はいよいよクライマックスに差しかかっています。ズバリ見どころは?
橋本P:花名の成長を感じ取っていただけるとうれしく思います。『スロウスタート』の企画時に念頭にあったことの一つに、「これまでの日常系アニメとどう差異化するか」という点がありました。そのときキーワードとしたのが「ゆっくりとした成長」です。1クールという枠のなかで、花名が半歩だけ、ゆっくりと前に進む姿を見せられればいいなと。そこは橋本監督と井上さんが一生懸命考えてくださったポイントでもあるので、注目していただけるとうれしいです。
――3月28日にはBlu-ray&DVDの第1巻が発売されます。こちらの注目ポイントも教えてください。
橋本P:ビデオパッケージの特典には、僕がやりたいと思うことを全部詰め込みました(笑)。例えば第1巻では、作中に登場した花名とたまての架空のユニット「かなえたまえ」のキャラクターソングを収録しています。作曲はキャラクターソングアルバムから引き続き、ROUND TABLEの北川(勝利)さんにお願いしました。アニメ音楽ファンにもたまらない内容だと思います。
またそれと連動して、2人の物語を描いたオーディオドラマと、安野さんが2人を描き下ろしたデジジャケットが付きます。キャラクター同士の掛け合いや関係性の魅力を、何とかビデオパッケージでも伝えられるように努めました。
またブックレットには各巻、1万字のスタッフインタビューを掲載しています。
――すごいボリュームですね。
橋本P:スタッフさんの力あってのアニメなので、視聴者のみなさんに制作現場での熱量をもっと知ってもらいたいと思ったんです。また何より、橋本監督がものすごくお客さん想いで、例えば作品のファンイベントなどでも、積極的にお客さんと触れ合われる、すごく距離感の近い方なんですね。そういう意味で、キャラクターだけではなく、スタッフも身近に感じてもらえる作品にできたらいいなと思っています。
――次にこのインタビュー連載の恒例の質問になりですが、橋本プロデューサーはどのような高校時代を過ごされましたか?
橋本P:高校時代は入学当初は授業についていくだけで精いっぱいで、毎回テストの時期になると苦しんでいましたね(笑)。ただ、付属校だったので、受験がなく部活や趣味に好きなだけ打ち込むことができたのはいい思い出です。アニメはもちろん、様々な本や音楽や映画に触れた時期で、この業界に入る自分を形作った高校時代だったなと思います。
――続いてリレー質問のコーナーです。前回の万年大会役・内田(真礼)さんからは、花名たち4人のユニットがOPEDを歌っていることを受けて、「もし大会、志温、榎並の3人がユニットを組むとしたら、どんな感じにプロデュースしてみたいですか?」という、プロデューサーとしての力を試される質問が届いています。
橋本P:これはおもしろい質問ですね(笑)。この3人はなかなか接点がないので企画していなかったのですが、もしやるとすれば、かわいい感じというよりは、大人の女性としての魅力を出してもらう感じがいいでしょうか。
この3人に関して企画しているものとしては、榎並は栄依子との関係性が原作でも大きな魅力の一つなので、今後のビデオパッケージの特典でもこの2人の組み合わせを出したいなと考えています。志温と大会は、花名とともに浪人経験を持っている3人組なので、「てまりハイツ三姉妹」として展開していくつもりです。
――次回登場されるキャラクターデザイン・総作画監督の安野さんへの質問をお願いします。
橋本P:「どんなキャラクターを描いてみたいですか?」でお願いします。安野さんは何でも描ける方だと思うので、何かトライしてみたいコンセプトやテーマがあれば、今後の企画の参考としても是非知りたいです。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
橋本P:「ここまで観ていただいて本当にありがとうございます」の一言に尽きます。『スロウスタート』を観てくださってきたなかで、きっとみなさんそれぞれのなかに、好きなキャラクターや好きなシーンが育まれていると思いますので、それをこれからも大切にしていただけたらと思います。また、花名たちのゆっくりとした成長を通じてすこしでも元気になったり、明日もがんばろうと思って頂けたらとてもうれしいです。応援してくださっているみなさんの声にいつも励まされていますので、最後まで応援よろしくお願いします。
作品情報
TVアニメ『スロウスタート』
2018年1月6日(火)より好評放送中!
<放送情報>
TOKYO MX、とちぎテレビ、群馬テレビ、BS11:毎週土曜24:30~
関西テレビ:毎週木曜26:25~
テレビ愛知:毎週火曜26:05~
AT-X:毎週月曜20:00~ ※毎週水曜12:00~/毎週金曜28:00~ リピート放送
※放送日時は編成の都合等により変更となる場合がございます。予めご了承ください。
【オープニングテーマ】
STARTails☆(近藤玲奈、伊藤彩沙、嶺内ともみ、長縄まりあ)
「ne! ne! ne!」
2018年1月24日(水)発売!
【STAFF】
原作:篤見唯子(芳文社「まんがタイムきらら」連載)
監督:橋本裕之
シリーズ構成:井上美緒
キャラクターデザイン・総作画監督:安野将人
プロップデザイン:伊藤雅子
メインアニメーター:吉田亘良
美術監督:針生勝文
色彩設計:ホカリカナコ
CGディレクター:那須信司
撮影監督:黒岩悟
編集:高橋歩
音響監督:明田川仁
音響効果:和田俊也
音楽:藤澤慶昌
音楽制作:アニプレックス
制作:A-1 Pictures
【CAST】
一之瀬花名:近藤玲奈
百地たまて:伊藤彩沙
十倉栄依子:嶺内ともみ
千石冠:長縄まりあ
京塚志温:M・A・O
万年大会:内田真礼
榎並清瀬:沼倉愛美