完璧じゃない、だから、良い――『アントマン&ワスプ』“頼りなさすぎる”ヒーロー、アントマンの魅力とは?
『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』を超えた、世界興行収入No.1シリーズのマーベル・スタジオ最新作『アントマン&ワスプ』。この夏、映画史上最小にして最強のヒーロー&ヒロインが贈る、ユーモアあふれるバディ・アクションムービーが日本に上陸!
“アントマン”ことスコットの前に、新型スーツの力を手に入れた完璧ヒロイン”ワスプ”ことホープ・ヴァン・ダインと、”アントマン”スーツの開発者ピム博士が「チカラを借りたい」と現れます。
身長1.5cmのサイズまで小さくなれる”アントマン“の秘密を狙って、謎の敵”ゴースト“がピム博士とホープを追ってきて……、この強敵にアントマンたちはどう立ち向かっていくのか!? いま、人もモノもすべてが大小変幻自在の「アリ」えないバトルが再び勃発します!
ポール・ラッド演じる主人公のスコット・ラングは、アントマンスーツを身に着け、敵と戦うのですが、この男、ある意味“頼りなさすぎる”ヒーローなのです。というのも、彼自身、元泥棒だったり、バツイチだったり、FBIの監視下に置かれていたり……。
「ヒーロー=特殊能力があって、強くて頼りがいがある」というイメージから大きくかけ離れているんです。そんなアントマンの魅力とは何なのか、それを明らかにするために、他の“頼りなさすぎる”ヒーローを振り返ります。
他の“頼りなさすぎる”ヒーローを振り返り!
▼デイヴ・リズースキー(『キックアス』)/2010年公開
とあるコミックオタクの平凡な高校生デイヴが、自らインターネットで注文したコスチュームを着て“キックアス”と名乗り、ヒーローとして活躍するアクション・ムービー。
彼はヒーローへの憧れをもとに、町に蔓延る犯罪や不良たちと戦おうとするのだが、特殊能力がないことはもちろん、運動神経が良いわけではないので、最初はあっけなく倒され、なんの能力も持たないままヒーローとして活動することに苦難を感じていた。
そんな彼の前に、同じくヒーロー活動をする、ビッグ・ダディとヒット・ガールと名乗る最強親子が現れ、事態が一変する―――。今作の主人公デイヴはコミックオタク、見た目もさえない、さらに彼女もいないというヒーローとは程遠い存在なのだが、彼が持つ一番の魅力は「自分を犠牲にしてでも貫く正義感」だ。
彼の戦う姿をみると、ヒーローを応援するというよりも、友達を応援するような親近感を覚えるというところが、主人公デイヴの魅力なのだ。
▼鈴木英雄(『アイアムアヒーロー』)/2016年公開
花沢健吾のベストセラーコミックを題材にした、大泉洋主演の実写映画。主人公は鈴木英雄という、35歳の冴えない漫画家アシスタント。妄想のなかでしか現実と戦えず、そんな自分に付き合ってくれる彼女とも破局寸前だった。
しかし突如、謎の感染によって、人々が「ZQN」と呼ばれるゾンビに変貌し、日本中がパニックになる。主人公の英雄は、夜道を一人で歩くのにも怯え、アパートの玄関には何重ものロックを施し、灯りをつけたままでないと眠れないほどの臆病者だが、一方、趣味でショットガンを所持していたことから、ゾンビ化した人間と戦うことになる。
うだつのあがらない日々から一転、頼りない主人公は趣味の射撃能力だけを頼って、戦おうとする。普段冴えない彼だが、ピンチに陥ったときにショットガンを持ってゾンビと戦うというギャップが魅力的だ。
▼緑谷出久(『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE~2人の英雄~』)/2018年8月3日公開
「週刊少年ジャンプ」連載の堀越耕平による人気漫画をアニメ化した『僕のヒーローアカデミア』初の劇場版。緑谷出久は、ヒーローになることを夢見る少年。生まれつき“無個性”だったが、内に秘めたヒーローとしての素質を見出され、平和の象徴とも称されるNo.1ヒーロー、オールマイトから、“個性”ワン・フォー・オールを受け継ぐ。
普段はビビりだが、人を救おうとする意志は人一倍強い。周りの大部分が“個性”を持ちながら、彼は“個性”を持たないというある意味マイノリティの存在だったが、その人一倍強い正義感と、「オールマイトのようなヒーローになりたい」という強い思いによってどんな努力も惜しまないため、読者は“完璧なヒーローの活躍”ではなく、“ヒーローになるまでの成長物語”として作品をみることができる。
なかなか強くなれなかったり、“無個性”というコンプレックスに悩んだり、日常生活を送る私たちの悩みとリンクするところがあるからこそ、親近感のあるキャラクターとなっている。
▼アントマン/スコット・ラング(『アントマン&ワスプ』)/2018年8月31日公開
映画史上最小にして最強のヒーロー、アントマン。彼がアントマンとして戦うことになったきっかけは、仕事をクビになり、離れて暮らす娘の養育費を払うために犯罪に手を染めたものの、その犯行現場で“アントマン”スーツを手にするというところから始まった。
彼はバツイチ、離れて暮らす娘のキャシーにもなかなか会えず、FBIの監視下に置かれているという“頼りない”ヒーローなのである。そんな空回りばかりの彼だが、一番の魅力は、私たちと何ら変わらない、“普通”の人間だということだ。
特殊能力を持つわけでもなく、大富豪でもない、むしろマイナス要素が多いところが、観客の共感を呼んでいる。その反面、いざというときには「娘のヒーローになること」をモチベーションに、父親としての責任を果たすため、全力で立ち向かう。
アントマン/スコット・ラングは、“ヒーローっぽくない”要素が多い。しかし、普段の私たちの生活は、いわゆるヒーロー映画の主人公のような生活ではなく、仕事で失敗したり、友人や家族、恋人とうまくいかなかったり、完璧じゃないからこそ、充実した時間を送ることができている。
上記で述べたヒーローたち、またアントマンには、そういう私たちと共通する、不完全さがあるからこそ、自身の経験と重ね、ヒーローの行動や考えに共感できるのではないか。アントマンは、『キックアス』のデイヴが持つ親近感、『アイアムアヒーロー』鈴木英雄の普段冴えないけどいざというときには戦うというギャップ、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE~2人の英雄~』緑谷出久の人一倍強い正義感のすべてを持ち合わせているからこそ、“憧れ”ではなく“共感”を抱くことのできる、等身大のヒーローなのだ。
ヒーローっぽくないけれど、いざというときには頼りになる全く新しいヒーロー、アントマンの勇姿は、みる人の心に勇気や激励を与えること間違いなし。ぜひ劇場に足を運んでほしい。
『アントマン&ワスプ』作品情報
原題:Ant-Man and the Wasp
公開日:2018年8月31日
●スタッフ
監督:ペイトン・リード
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ポール・ラッド/エヴァンジェリン・リリー/マイケル・ダグラス/マイケル・ペーニャ/ハンナ・ジョン・カメン/ローレンス・フィッシュバーン
全米公開:7月6日 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン