まさかの“あの曲”から幕開け! 豪華ステージに沸いた、泣いた、喜んだ! フライングドッグ10周年記念LIVE-犬フェス!-詳細レポート
2019年2月2日(土)に開催された「フライングドッグ10周年記念LIVE-犬フェス!-」。株式会社フライングドッグ設立10年という記念すべき節目に、所属アーティストが彩るフェスが開催。また国内40箇所および香港、台湾、韓国の映画館でライブビューイングも同時に行われた。
(※菅野ようこさんはインフルエンザの為急きょ欠席)
犬フェス、開幕 最初のアーティストは……
フライングドッグの前身となるビクター時代も含めてフライングドッグが関わった新旧作品の主題歌の映像がモニターに流れ、作品が変わるたびに客席からは「おぉ!」や「これも!?」といった歓喜と驚きの声が上がる。フライングドッグ、延いてはアニメの歴史をそれぞれがそれぞれの思いで眺めるなか、『トップをねらえ!』の「ガンバスターマーチ」が流れ、ムービーにてアーティスト紹介が始まった。
それぞれのアーティストの名前が上がるたびに大きな歓声が上がる。「犬フェス、開幕」という言葉と共にステージに現われたのは、なんと「ガンバスターマーチ」の生みの親・田中公平氏。「ガンバスターではありません」と挨拶。プレゼンターの一人として登壇することを伝え、ビクター音楽産業時代からの佐々木氏との関わりを振り返る。
「1985年だったんですけど『夢の星のボタンノーズ』(※サンリオ初のテレビアニメーション作品)という作品で佐々木さんがアシスタントディレクターをされていました。私も劇伴としては2作品目でそんなに売れている人ではなくですね、ペーペーの作曲家だったんですけど4日間で76曲書けというオファーがきまして(笑)。でもそれで作ったんですよね。その時に佐々木さんがその様子を見ていて"こいつ面白いなぁ、よくこんなことやるな"と、認めていただいたんですね」
さらに佐々木氏がプロデューサーを務めた『トップをねらえ!』で庵野秀明監督と繋がることができたこと、『天外魔境 自来也おぼろ変』で総監督・原作の広井王子氏を紹介してもらったことで『サクラ大戦』に繋がっていったこと、『サクラ大戦』の「檄!帝国華撃団」、「花咲く乙女」、を佐々木氏がディレクションをしたこと、「(某CMの口調で)『ガオガイガー』の)歌詞にガが多すぎて読めない!」ことなど(笑)、多岐に渡るエピソードを披露。
最後に「佐々木さんのおかげで今の自分がある」と感謝の気持ちを伝えると……「ちょっと1曲やっていい?」とピアノの前へ。先ほどの穏やかな様子とはうって変わって「用意はいいか!」と叫ぶと、<ガガガッ ガガガッ ガオガイガー! ガガガッ ガガガガッ ガオガイガー!!>の声が……ここでサプライズゲストの遠藤正明さんが登壇! 例の"ガ"の多いTVアニメ『勇者王ガオガイガー』の主題歌「勇者王誕生!」を大合唱し、田中氏もピアノを弾きながらシャウト。客席から歓喜の声が沸き起こった。
「盛り上がっていきましょー!」と叫んでステージを後にした2人に続いたのは、May'nさん。ダンサーを引き連れて「Chase the world」を歌唱する。観客から沸き起こるコールとエールを全身に受け止め、拳を高く突き上げた。
「犬フェスにようこそ! みんな一緒に声出していくよ!」と挨拶しTVアニメ『マクロスF』から「射手座☆午後九時Don't be late」をパワフルに熱唱。観客を引っ張っていく姿に歌姫の貫禄を感じる。
「フライングドッグ10周年、おめでとうございます!初めてのレーベルのフェスに仲間たちと共に今日一日を作ること、楽しむことができるということで、私自身もすごく嬉しく思っております。みんな今日は一緒に楽しんでいこうね!」と笑顔で伝え歓声が沸き起こった。
次に歌う曲について「私はこの曲に出会って、たくさんの場所、仲間に出会うことができました。そんなたくさんの出会いを繋げてくれたのがフライングドッグの皆さんです。フライングドッグの皆さん、菅野よう子さんが私を見つけてくれて、この曲に出会って、私、May'nが生まれました。それから大切な曲にたくさん出会うことができています。今日も届けたかった曲もいっぱいあります。でも……この曲は何百回歌っていても、いつも素晴らしい景色、素晴らしい出会いをくれる、特別で大切な曲なんだなって思います。出会うことができたすべてのひとに、感謝の気持ちが届きますように。そして菅野よう子さんに届きますように! 私はこの大切な曲と共にまだまだ音楽の旅を続けていきます」と語り、まっすぐに前を見つめながら、同作の「ダイアモンド クレバス」を情感たっぷりに歌う。銀河を彷彿させる照明の演出がニクい。これまでの軌跡と感謝を噛み締めるかのように、一言ひとことに魂を込めて歌う姿に心を揺さぶられたステージだった。
続いてはバイリンガルシンガー・ナノさん。『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』の「SAVIOR OF SONG」、『BTOOOM!』オープニングテーマ「No pain, No game」の2曲で、灼熱のエモーションを響かせる。思わず"惚れてしまう"鮮烈なステージングだ。
英語と日本語で挨拶を交わしたあと、「こんな大舞台に立たせていただいて、皆さんとお会いできるとは思ってなかったので、ここに来られて朝からずっと泣きそうで……(涙を)こらえて、ここに立っています。本当にありがとうございます」と素直な気持ちを伝える。そして「今日ナノのステージの唄が少しでも皆さんの心に残ってくれるように、フライングドッグの力になれるように、これからも精いっぱい歌っていきますので、どうぞ宜しくお願いします!」と語尾に力を込めて宣言した。
雰囲気をガラリと変えたのは、梶浦由記プロジェクト・FictionJunction YUUKA。明滅する照明のなか、梶浦由記さんと、ボーカリストの二人=KAORIさん、YURIKO KAIDAさん、バイオリニストの城元絢花さんがゆっくりとステージへ。さらにゲストのオペラ歌手・笠原由里さんが美しく「salva nos」を披露。異世界へと惹き込んでいくかのような荘厳さである。
梶浦さんが日付的には"ニャンニャン"ですけど、と笑いつつ「犬フェスようこそいらっしゃいました」と挨拶。
「これは個人的な感覚でしかないんですけど……私たちアーティストとレーベルさんの関係って同じ地平を目指してはいるけど、違う場所で戦っている戦友のようだなと思っています。同じ地平を目指しているとは言え、視点はちょっと違うんですよね。ちょっとズレたりすることがある。でも視点が違うからこそ、お互いに視野を広げ合えるんじゃないかなと思っていて。そんなことをお互いにしあって、音楽を作ってきたのかなという気がしています。今日は素晴らしいアーティストさんが続々と登場されて、いわゆる名曲と言われる数々を……もう皆さん堪能されているとは思いますけど、そういった曲もアーティストとレーベルの方との色々な関係性があって生まれてきたのかなという気がします」と話し「皆さんが聴いてくださることによって曲が育ってきたんです。皆さんには皆さんの10年があって、そのなかで1曲1曲が結びついて、皆さんの中で育てていただいた……そんな名曲たちをたくさん聴いていただけるんじゃないかな。そんな場所に招いていただけて、演奏させていただけて、光栄に思っております」と感謝の気持ちを伝えた。
ここでYUUKAさん がステージに登壇して、FictionJunction YUUKAとして、TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』の挿入歌「暁の車」を届け、客席がオレンジ色に染まる。静かに高まっていく、切なくも感動的なこの楽曲に思わず感極まってしまう。今度はガラリと趣を変えて『MADLAX』挿入歌であり、キャッチーなスキャットが話題を呼んだ「nowhere」で観客をひとつに。三者三様の楽曲で異なる物語を見せてくれた。
「菅野さんも地球人だったということが分かった」
『マクロスシリーズ』『アクエリオンシリーズ』でお馴染みの河森正治氏が2人目のプレゼンターとして登場。今年はプロ生活をスタートさせて40周年ということで「今後も(フライングドッグと)一緒に10年ずつ年を重ねていけるのが嬉しいです」と伝え、話は37年前へと遡る。
「佐々木史朗さんをはじめ、たくさんのディレクターの方たち、アーティストの方たち、スタッフの方たちに数えきれないほどのわがままを聞いてもらってやってきました。本当に感謝に堪えないです」と振り返った。
また大学生だった当時「こんなにアイドルがいるのに、なんでテレビアニメのなかでアイドル歌手がヒロインにならないんだろう?」と疑問を抱いたことがキッカケで、マクロスの歌姫が生まれたことを明かす。
現在、マクロスシリーズの歌だけで約200曲、劇伴を入れると約1000曲。「あのとき魅力的な歌を作っていただけなければ、歌で宇宙戦争を止めるどころか、マクロス自体がそこで止まってました。今こうしてここに立っていられるのも、フライングドッグさん、ビクターさんのおかげです」と感謝の気持ちを伝え、これまでの『マクロス』作品のエピソードを振り返った。
そして「名曲をたくさん生み出していただいた」菅野よう子さんの出会いにも触れる。「今日楽しみにされてきた方もたくさんいると思うんですが……皆さんも奇跡的な体験ですね。菅野さんも地球人だったということが分かったということで」と笑いを起こす。
最後に「AIバーチャロイド、影の存在でもあり、スッと心に沁み込むような彼女の歌声を聴け」と伝え──菅野さんが作った「VOICES」のアカペラが静かに響く。新居昭乃さんが神々しく登壇する。美しい歌声とその世界を絶妙な力加減で表現していく。「キミヘ ムカウ ヒカリ」では一転、花畑に佇む妖精のようにも見えた。
「今日初めて人間だということが証明された菅野よう子さんの曲を歌わせてもらうことができて、河森さんのお話のあとに歌うことができて。今まで頑張ってきてよかったなと思いました。フライングドッグ10周年ということですけど、私はビクターの制作4部って言われていた時代からのお付き合いです(前身となるアニメ専門部署)。こんなに長く続けてこられたのも、フライングドッグの社員の方たちのおかげです」と感謝の気持ちを伝えた。
ALI PROJECTの官能的かつ独創的な世界観が、ステージの雰囲気をまたひとつ変えていく。まずはTVアニメ『.hack//Roots』のEDテーマ「亡國覚醒カタルシス」から。ドラァグクイーンのメンバーと共に軍服姿で熱唱する宝野アリカさんから目が離せない。
「フライングドッグ10周年目にしてようやく初めてお会いできる方も多々いらっしゃると思いますが……ALI PROJECTは一昨年25周年を迎えました。これもひとえに、フライングドッグさんとの出会いがあったからだと思っています。フライングドッグは15周年を、ALI PROJECTは30周年を目指して邁進しているところではありますが……2月9日からはじまる『コードギアス 復活のルルーシュ』の挿入歌で新曲が流れますので、映画と共に楽しんでいただけたらと思います。今日はその曲を……やりません」と断りつつ、TVアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』の初代EDテーマ「勇侠青春謳」を披露。宝野さんが上着を脱いでさらし姿になったり、日本刀を抜いたりと、唯一無二の存在感で魅せた。
前半戦最後、歌姫2人によるサプライズが待つ
「みんな抱きしめて!銀河の果てまで!」という可愛らしい声が響くと大歓声。ランカ・リー=中島 愛として発表した『マクロスF』挿入歌「星間飛行」を歌えば、大合唱と共に「キラッ!」の声が広がった。
「改めましてみなさんこんばんはー!中島 愛です! 私はデビュー日が2回ありまして、去年と今年に私も10周年を迎えました。今歌わせてもらった「星間飛行」で2008年6月にデビューして以来、フライングドッグの皆さんに支えられつつ、無事こうやって唄を歌い続けられていることに、とても感謝しています」
笑顔で感謝の気持ちを語り「犬フェスがせっかく土曜日開催ということで、この曲を歌わせてもらえればと思います」と、フジファブリックとタッグを組んだ「サタデー・ナイト・クエスチョン」(『ネト充のススメ』)を歌唱した。
「どうもありがとう! 犬フェス最後まで盛り上がっていって下さい!」とバックステージに戻ったかと思うと、あの「ライオン」のイントロが響き、客席から大歓声が沸き起こる。ステージにはMay'nさんと中島さん。寄り添いながら、背中を合わせながら、そしてラスサビは向かい合って歌う。ただでさえ号泣もののステージだというのに、2人の表情が「これ以上ない」空間を作り出す。最後は2人が抱き合い、客席から拍手と歓声に包まれた。
休憩タイムとして設けられた時間には、kz(livetune)のDJタイム! 休憩のはずが客席では休まる気配がない。フライングドッグの名曲を繋げていく。モニターには30分のカウントダウン表示があったが、最後はTridentの「Blue Snow」をフルコーラスかけたにも関わらず1秒の狂いもなく時間ぴったりに曲を終わらせ、大きな歓声が沸いた。
後半戦もサプライズアーティストが登場!
後半戦のトップバッターとして登場したのは、"まさかの"福山芳樹さんとチエ・カジウラさんによるユニット・Fire Bomberだ。「PLANET DANCE[Duet Version]」で観客のハートを射抜く。
「ありがとうございました! 25年前のマクロス7の未来のロックバンドです」と福山さん。「私事ですが、本日2月2日は、なんとミレーヌちゃんのお誕生日です! ハッピーバースデイ私!」とカジウラさんが話すと、福山さんが美しい声で「ハッピーバスデートゥーユー♪」と歌い、客席からも祝福の声が上がった。
赤から青へと色彩を変化させたのは、AKINO with bless4の「海色」。AKINOさんのパワフルなボーカルに合わせて、AKASHIさん、KANASAさん、AIKIさんが大きなフラッグを振る。 4人兄弟の絆を感じる、息ぴったりのパフォーマンスである。
MCでは明るいコールアンドレスポンスで濃密なコミュニケーションをはかる4人。感謝の気持ちを伝えることも、もちろん忘れない。AKINOは「フライングドッグの皆さんと出会ったのは私が14歳の時でした。今思うとすごく懐かしくて、フライングドッグの皆さん、菅野よう子さん、サポートしてくれた皆さん、本当に大切な私たちの家族です。本当にありがとうございます!」と元気いっぱいに伝える。
「フライングドッグは10周年ですけど、1億と2千年あとも<末永く~♪>続けてくれたら嬉しいなと思います!それでは次の曲では、今まででいちばん大きい<愛してる~♪>を歌ってください!」と「創聖のアクエリオン」を。ライブで聴く生歌そのものにも、会場全員の<愛してる>にも痺れた。八千年すぎても忘れたくないひと時だ。
スパニッシュなサウンドが流れると、石川智晶さんが登壇。アニメ『神様ドォルズ』OPテーマ「不完全燃焼」を歌唱し、階段を優雅に降りてステージ中央へと歌い進む。歌声の美しさ、独特の世界観に思わず見惚れてしまう。
MCでは「私は最近フェスから離れておりまして久方ぶりにこんなにたくさんの人と関わらせていただいて、負けそうに……ならない(笑)。今日の犬フェスのセットリスト、すごくないですか?」と問いかけ、大歓声。
さらに「私たちはたくさん曲を作ってたくさん歌って本当に星の数ほど曲を作るわけです。そのなかで一握りだけしか地上に出てこないんです。そのなかでもこうやって披露することができるのは、奇跡のようなものだなと思っています。改めてこうやって歌っていると、唄っていいなと思います。みなさんもカラオケや車のなかで歌われたりすると思うんですけど、ぜひ唄を歌ってほしいなと思います。そうすると行き詰ったときマインドが変わりますよね。歌がどれだけいいものなのか、これから私もみなさんにお伝えすることができたらなと思っております」と柔らかい口調で音楽のすばらしさを語った。
次の曲について「当時ニコ生の"歌ってみた"でよく歌っていただいてね。こんな形でありがとうを言うとは思わなかったですけど、ありがとうございました。今日は犬フェスで歌ってみた!」とアナウンスして、"ぼくらの"永遠の名曲「アンインストール」を歌唱した。
石川さんのステージが終わると、穏やかなSEが流れ、キーボードがセッティングされる。ファンが歓喜の悲鳴を上げるなか、あのイントロと<あんなに一緒だったのに>──という石川さんの声で予感が確信に変わる。キーボードを弾いているのはもちろん梶浦さん。See-Sawのサプライズ復活劇である(号泣してメモを取る手が完全にストップしてしまった)。
約10年ぶりのステージだというのに、それを感じさせない奇跡のような瞬間だ。最後に梶浦さんからバンドメンバーの紹介。「そしてSee-Sawボーカル・石川智晶!」と叫んだ梶浦さんに続いて「See-Saw、梶浦由記!」と石川さん。最後は梶浦さんが石川さんにハイタッチ。「楽しんでいって下さい!」とステージを後にした。
3人目のプレゼンターは声優・山寺宏一さん
ここで3人目のプレゼンターであり、オープニングナレーションを担当した山寺宏一さんが登場。ビクター時代からお世話になったと振り返りつつ「今まで数々の名曲が演奏されてきましたが、私ほとんどその作品に出ていません」と前置き。最初はプレゼンターに相応しいのは「僕じゃないんじゃないか」と言ったところ、フライングドッグのスタッフから「これを見てください!」と作品リストが渡されたという。
その作品リストを「思い出せる範囲で」とセリフを添えて作品紹介。山ちゃんのデビュー作1985年のOVA『メガゾーン23』から始まり、中でも「肉の入ってねぇ青椒肉絲は青椒肉絲とは言わねぇんじゃねーのか?」にドッと湧いた。
改めて振り返って「わたくしの節目となる作品、ターニングポイントとなる作品に、ビクターそしてフライングドッグの皆さまに関わっていただきました。ということは声優・山寺宏一は、フライングドッグに育ててもらったといっても過言ではありません!これから素晴らしい作品・音楽を作り続けていって下さい!」と力を込めて感謝の気持ちを伝えた。
さらに「1曲ここで披露したい」とインフルエンザで欠席となってしまった菅野よう子さんへのリスペクトを捧げ、「今日本当は菅野さんが演奏するかもしれなかった」『カウボーイビバップ』のオープニングテーマ 「Tank!」をアカペラで、しかもフライングドッグへの感謝を込めて犬の鳴き声で絶唱した(笑)。
最後に「次に登場するのは、惜しまれながら3年前に解散してしまったユニットが今日の犬フェスの為だけに、一夜限り、一曲限りの再結成でございます! みんなその目に、耳に、しっかり焼き付けて下さい。よろしくーー!」と叫び、Trident(渕上舞さん/イオナ役、沼倉愛美さん/タカオ役、山村響さん/ハルナ役)がステージへ。
驚きが喜びの声に変わっていくなか「私たち、Tridentです!」と声を合わせて、「ブルー・フィールド」(『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』)を伸びやかにパフォームした。嬉しいサプライズだ。
爽やかな余韻が残るところに、TVアニメ『マクロスΔ』から生まれた戦術音楽ユニット・ワルキューレの5人=美雲ΔJUNNAさん、フレイアΔ鈴木みのりさん、カナメΔ安野希世乃さん、レイナΔ東山奈央さん、マキナΔ西田望見さんがステージへ現れ、ひときわ大きな歓声が巻き起こる。5人は「いけないボーダーライン」「一度だけの恋なら」を続けてパフォーマンス。キラキラとしたエネルギッシュなステージでそれぞれの個性を見せる。
MCでは自己紹介を(フライングドッグ愛をそれぞれが語るパートも)。そしてここで「のぞみる(西田)がね!自己紹介と共に言いたいことがあるんだって!」と促されると「私、西田望見は……フライングドッグよりソロデビューをさせていただくことが決定しました!」と発表!
「私自身こうやってソロの活動をできるとは思っていなかったので、お話をいただいた時は本当に嬉しかったです!西田望見として頑張ってソロをお届けしていきたいと思っていますので、皆さん応援していただけると嬉しいです!」と緊張気味に話すと、客席からは期待を込めた拍手が贈られた。また、「おめでとう」と声をかけるワルキューレの4人の表情が自分のことに嬉しそうなのが印象的だった。
安野さんが「次の曲が最後になりますが、私たちワルキューレも、フライングドッグさんもまだまだ止まりません! どうぞ応援よろしくお願いします!」と語り掛け、ラストナンバー「ワルキューレがとまらない」で一つにした。
トリは坂本真綾さん 感謝の気持ちを"うた"で伝える
大トリを務めた坂本真綾さんは最新曲からスタート。タイトルの「逆光」のごとく、眩しい輝きを放つ坂本さん。ダークなオープニングから新しい扉を開いていくかのようなサビの明るさ。魔法のような歌声で観客を魅了する。さらにthe band apartが作曲を手掛けた「Be mine!」を歌唱し、また違った色彩を描いていった。
「今日は長い時間一緒に楽しんでくれてありがとうございます! フライングドッグ10周年ということで、とってもボリュームたっぷりのイベントでしたが、恐れ多くもトリを務めさせていただいております。私がデビューしたのは二十数年前。当時16歳の何モノでもないただの高校生の私が、『天空のエスカフローネ』という作品の主題歌でデビューすることになって。この時の担当ディレクターが、フライングドッグの佐々木さんなんです。だから私にとっては父親のような存在です。何モノでもない私を育て、守り、そして気が付けば20年経っていた……ということで、何事も種を蒔いてから目が出るまでには時間がかかるんだなと。私は最近になって、そうした方々にも恩返しができるようになってきたのかなという風に思っています。今日もそうなればいいなという思いで、ジリジリと出番を待っていました」と、坂本さんならではの視点で穏やかに語る。
ここで声色を変えて「でもね、一言言わせて! 菅野よう子! どう思う!? みんな"えーっ!"って思ったでしょ!?」と観客に問いかけて、会場からはどっと笑いが。
「本当は最後の曲で一緒にやる予定だったんです。なんかごめんね、私は悪くないけど(笑)。菅野さんが今回この曲をやるにあたって──あのひとのライブに行ったことがある人は分かると思うんですけど、お客さんに歌わせるのが大好きなんです。来ているお客さんの声が聴きたいというこだわりがすごく強くて。最後の曲も、犬フェスを楽しみにきてくれた人たちが一緒に歌ってくれたらいいなということで、一生懸命考えていました。どこかにいる菅野よう子さんに届けてあげるような気持ちで、知っていたら口ずさんでいただけたらと思います」と、菅野さんが座るはずだったであろうピアノを背景に、菅野さんが作曲した「プラチナ」を爽やかに歌唱する。
サビの<みつけたいなぁ><かなえたいなぁ>は、菅野さんの思いを引き継ぎ、アレンジしてコールアンドレスポンス。<菅野よう子><お大事にね~>、<今日はとっても><楽しかったよ>、<また会おうね><約束だよ>……みんなの声が温かく染みこむ。思いを繋げ、感動的な景色を見せてくれた坂本さんだった。
レジェンドから次世代を担うアーティストまで個性豊かなアーティストが勢ぞろいした犬フェス。ただただベストな楽曲を楽しませてもらっただけではなく、それぞれのアーティストたちの言葉から、数々の名曲が生まれた舞台裏に、様々な物語や、レーベルとアーティストの信頼関係、絆の深さがしっかりとあったことを感じさせた。アニメと音楽の力を誰よりも信じて、人とひととのつながりを大切にしてきたフライングドッグだからこそ作ることのできた特別な時間であった。また、残念ながら菅野よう子さんは不在ではあったが、楽曲とそれぞれのアーティストの言葉から、その存在の大きさと偉大さを改めて感じさせた。愛で溢れたフェスであった。
さて、ここで終わりかと思いきや──フライングドッグ10周年記念作品であるオリジナル劇場アニメ『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』の主題歌「Precious Piece」をKizuna AI(キズナアイ)さんが歌うことが決定したとのことで、キズナさんからの犬フェスオリジナルのメッセージと、主題歌の一部が届けられた。
そして、「犬フェスはまだ終わらない!」というナレーションと共に秋に『犬フェス2!』が開催されることがアナウンスされる。JUNNAさん、鈴木みのりさん、東山奈央さん、西田望見さん、沼倉愛美さん、安野希世乃さん、そしてRhodanthe*の出演が予定されているとのこと。今から楽しみで仕方がない。
[文・逆井マリ]
SET LIST
01.勇者王誕生! / 遠藤正明 & 田中公平
02.Chase the world / May’n
03.射手座☆午後九時Don’t be late / May’n
04.ダイアモンド クレバス / May’n
05.SAVIOR OF SONG / ナノ
06.No pain, No game / ナノ
07.salva nos / FictionJunction (ゲストVocal:笠原由里)
08.暁の車 / FictionJunction YUUKA
09.nowhere / FictionJunction YUUKA
10.Voices / 新居昭乃
11.キミヘ ムカウ ヒカリ / 新居昭乃
12.亡國覚醒カタルシス / ALI PROJECT
13.勇侠青春謳 / ALI PROJECT
14.星間飛行 / 中島 愛
15.サタデー・ナイト・クエスチョン / 中島 愛
16.ライオン / May’n × 中島 愛
17.※DJ TIME / kz(livetune)
18.PLANET DANCE / FIRE BOMBER(福山芳樹 × チエカジウラ)
19.海色 / AKINO with bless4
20.創聖のアクエリオン / AKINO with bless4
21.不完全燃焼 / 石川智晶
22.アンインストール / 石川智晶
23.あんなに一緒だったのに / See-Saw
24.ブルー・フィールド / Trident
25.いけないボーダーライン / ワルキューレ
26.一度だけの恋なら / ワルキューレ
27.ワルキューレがとまらない / ワルキューレ
28.逆光 / 坂本真綾
29.Be mine! / 坂本真綾
30.プラチナ / 坂本真綾
ライブ概要
フライングドッグ10周年記念LIVE―犬フェス!―
2019年2月2日(土)開場:14:30 開演:16:00
会場:武蔵野の森 総合スポーツプラザ メインアリーナ
出演アーティスト:AKINO with bless4、新居昭乃、ALI PROJECT、石川智晶、
梶浦由記/FictionJunction YUUKA、菅野よう子、坂本真綾、中島 愛、ナノ、May’n、ワルキューレ
「フライングドッグ10周年記念LIVE―犬フェス!―」公式サイト
フライングドッグ公式Twitter(@FlyingDogInc)