今作で見えるコナンとキッドの信頼関係|劇場版『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』高山みなみさん&山口勝平さんインタビュー
劇場版『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』が、2019年4月12日(金)より公開!
原作コミックスの全世界累計発行部数が2億3000万部を突破し、世界中で愛される『名探偵コナン』の劇場版シリーズは、前作『名探偵コナン ゼロの執行人(しっこうにん)』がシリーズ最高興行収入91.8億円を記録し、今や“社会現象”と呼ぶにふさわしい大ヒット作に。
本稿では、劇場版公開を記念して、江戸川コナン役の高山みなみさんと、怪盗キッド役の山口勝平さんにインタビュー。映画の見どころやキャラクターたちの関係性、演技についてなど、いろいろと語っていただきました。
劇場版第23弾の今作はシンガポールを舞台に、世界最大のブルーサファイア“紺青の拳”をめぐって、江戸川コナン、怪盗キッド、最強の空手家・京極真が雌雄を決する三位一体バトルミステリー。インタビュー内には若干ネタバレも含まれていますので、ご注意ください!!
コナンとキッドの特別な関係
――今作では、江戸川コナン(以下、コナン)が、長年の敵でもある怪盗キッド(以下、キッド)に従わざるを得ない状況で、共に戦うストーリーとなっていますが、実際に演じてみていかがでしたか?
山口勝平さん(以下、山口):今回の作品では、コナンとキッドが最初から最後までずっと一緒にいますからね。やっていて、すごく楽しかったですよ。
高山みなみさん(以下、高山):うん。
山口:(コナンとキッドが)一緒に謎解きをしていく部分もあったので、(高山)みなみさんと「どういうふうにやろうか」、「どういうふうにやるのが一番伝わりやすいか」とか、よく話しましたよね。
高山:うんうん。そして、ず~っと(山口さんがアフレコ)スタジオの中にいたね(笑)。
山口:そう!
高山:初めてでしょ(笑)。
山口:劇場版では、だいたい最初と最後しかいないんですけどね。
高山:キッドになったとしても、誰かに変装してるもんね。
山口:そうなんですよ。『業火の向日葵』(2015年の劇場版)の時も、ずっと出ていたんですけど、最初のうちはキッドがしゃべらなかったので……。
一同:(笑)。
山口:今回の映画を観ましたけど、我ながらよくしゃべっているなと……(笑)。
高山:今回は、コナンのモノローグがすごく少なかったんです。というのは、一人で考えていないんですよね。
キッドと情報交換をしながら推理を展開するというのがメインだったので、集中して考えこんでいることが少なかったんです。
――コナンとキッドの距離感も変化していますよね。
山口:最初に比べたら、コナンとキッドの距離感はずいぶん変わっていますけど、みなみさんとは「探偵と怪盗というラインは、近づきすぎないようにはしようね」とよく話しています。
高山:そうだね。
山口:『天空の難破船(ロスト・シップ)』(2010年の劇場版)の時は、(コナンとキッドの距離が)少し近寄りすぎたかなと思ったので、今回の距離感はすごくいいなと感じました。
高山:信頼はしていて、お互いに背中を預けることはできると思うんですけど、でも仲良しではないんです。
同じ目的に向かってなら、信頼も協力もできる。でも、それが達成されたら離れる、という関係だと思いますね。
――信頼できるライバルといえば、服部平次もいますよね。相手がキッドの時と服部の時では、距離感が違うのでしょうか?
高山:キッドはライバルと言っても捕まえたい相手なんです。敵ですよね。平次とは同じ探偵同士で、推理力を競っているライバル。敵ではないので距離感は違います。
組んだ時は……平次の方がライバル感むき出しになるので、ちょっと……面倒くさい?(笑)。
一同:(爆笑)。
高山:キッドとはもともと(怪盗と探偵で)土俵が違うので冷静に対処できますが、ビミョーに卑怯ですよね(笑)。
――今作では、キッドと京極真の再対決というシーンがありますね。
山口:できれば、対峙したくないですよね(笑)。
高山:ハッハッハッハ。
山口:京極さんとやり合うシーンでは、わりとキッドが動いているので、京極さん相手によくあれだけやれるもんだなと思いました。
キッドとしては、京極さんよりも(鈴木)園子に静かにしていてほしいですね(笑)。園子が「キッド様、キッド様」って言わなければ、そんなに京極さんから敵視されることもないんですよ。
高山:確かに(笑)。
山口:できれば、そっとしておいてという気持ちですね。だんだん京極さんが人間離れしていくので、キッドはいつかやられるって思っています(笑)。
――そんなキッドと京極のシーンに、今作ではコナンも介入していきますが、高山さんとしてはどんなお気持ちですか?
高山:サッカーボールを蹴り込んで窮地を救ったシーン。あの時は取り上げた装備を返していてくれていたんですよね。だから、「俺を監視していて、もしもの時はよろしく頼むぜ!」という、キッドのサインなんだと思いました。
後に「助けたくはなかったけどな」と言いましたが、そこはポーズでも言っておかないとね(笑)。
高山さん、山口さんの好きなシーンは?
――今作の中で、お二人が好きなシーンを教えてください。
高山:一番好きなシーンはラスト。エピローグの最後にある(毛利)蘭とのツーショットですね!
山口:あぁ~!
高山:劇場版では、蘭とコナンのツーショットはなかなか見られません。昨年の『ゼロの執行人』(2018年の劇場版)は阿笠博士の家で、蘭はいなかったし。
その前の『から紅の恋歌』(2017年の劇場版)は、新幹線の中で蘭が園子と電話しているところを隠れて見ていて……。
本当に滅多にないツーショットで、今作中一番ホッとしたシーンです。蘭の表情も柔らかくていいんです。
山口:あと、阿笠博士がかわいいよね(笑)。
高山:そうだね。博士のマーライオン姿(今作の阿笠博士のダジャレクイズで登場)、かわいいね(笑)。
山口:博士、大好きなんです。
――今作でも、阿笠博士のダジャレクイズ(劇場版恒例の阿笠博士出題によるダジャレクイズ)はやり切りましたね。
高山:そのシーンでの博士のセリフには、(阿笠博士役の)緒方(賢一)さんによるアドリブもありますよ(笑)。
山口:うん。
――それは貴重なお話です。では、山口さんはいかがですか?
山口:僕は、コナンとキッドが一緒のシーンです。キッドが撃たれた後、コナンが来てしゃべっているところは好きでしたね。
高山:あのシーンは二人とも男っぽくて、かっこいいシーンですね。
山口:弱音は吐かないし、かっこいいなと……。二人のこういうシーンは、あまり見たことがないなと思いました。
高山:お互いに許容できない部分はあるんですけど、あのシーンも含めて、認め合っていることが伝わるんじゃないかな。
山口:キッドが最初に物語に登場した時、「怪盗は芸術家だけど、探偵は批評家だ」って言い放っていたのに、今回の作品では「握った拳の中にまるで何かがあるかの様に思わせるのがマジシャンで、その拳を開く前に中身を言い当てるのが探偵だろ?」というセリフがあるんですけど、そのセリフでキッドが変わった部分を感じましたね。
高山:キッドの行動、セリフや表情で「あぁ、今回は本気で助けが必要なんだな」と思いました。二人で謎解きの心理戦も面白かったですしね。
今作では、最強の空手家・京極真の魅力が満載!
――今作に登場するキャラクターで、気になったキャラクターはいますか?
山口:今回の映画は、京極さんの魅力が満載じゃないですか! 京極さんは、強い部分がフィーチャーされるキャラクターなんですけど、意外と内面が簡単に揺さぶられちゃうんだって……。
高山:だね。
山口:逆にそういうのが見えて、「あぁ、京極さんも高校生なんだな」って……(笑)。
高山:そうそう。「普通に高校生男子なんだな~」って……(笑)。
山口:かわいいというか、「本当に一途だな~」って。ずっと(ホテルの部屋の)外で(園子を)待っているシーンは、何か犬みたいだなって思いました(笑)。
高山:不器用な感じがいいね。
山口:いいですよね。不器用だけど、まっすぐで、本当に園子のことを好きなんだなって。最後はかっこよかったです!
高山:今までで一番強かったですよ!
――高山さんが今作で気になったキャラクターはいますか?
高山:もちろん、京極さんと園子もいつもと違う部分が見えて、すっごくよかったのですが……。気になったと言えばやっぱり、蘭がいつもと違う。
山口:あぁ、そうね! 今回は、いつもと違う人がいっぱいいるんです。
高山:そうなんだよね。舞台も初の海外、シンガポール旅行中というシチュエーションも手伝ってか、それぞれにいつもと雰囲気の違うところがありましたね。特に、ラストにつながっている、蘭の表情のちょっとした変化を見逃さないでください。実は……というのがけっこうあるんですよ。
アフレコ現場は和気あいあい☆
――今作のアフレコ収録時間は、14時間12分とお聞きしました。長丁場お疲れ様です!
山口:アフレコが終わった後は疲れますけど、肉体的、精神的に疲れたというよりも、ちょっといい感じの疲労感みたいなものがあります。
それは毎年なんですけれども、今回の収録で一番違ったのは、ずっとスタジオに入っていたということですね。
高山:(笑)。
山口:今までと大きく違うので……。
高山:そうね(笑)。
山口:だいたい劇場版の収録の時には、(鈴木園子役の)松井菜桜子さんとお弁当の争奪戦というイタズラを毎年やっているんですけど、今年は菜桜子さんもずっとスタジオの中にいたので……。
高山:お昼休憩すらそんな余裕なかったもんね(笑)。
――今作では、警察に捜査協力をする予備警察官のリシ役として、梶裕貴さんも出演していますよね。
高山:梶くんも大変な役だったのに、お昼休憩に写真を撮りまくってたね。
山口:うん、うん。
高山:みんなとツーショットの写真撮ってたでしょ(笑)。
山口:写真撮ってて、情報解禁になった途端にツイッターに上げてた。
高山:そうなんだ(笑)。
山口:スタジオの屋上でご飯も食べられるんですけど、みんなで食べに行ったりして、和気あいあいと過ごしていました。
――これまで数多くの人気キャラクターを演じてきた高山さんと山口さんですが、お二人にとって『名探偵コナン』で演じている自身のキャラクターとは、どのような存在でしょうか?
高山:自分にとって江戸川コナンというのは、自分が江戸川コナンの一部なのか、江戸川コナンが自分の一部なのかというぐらい、切り離して考えることができないキャラクターですね。
山口:僕にとっては、新一もキッドも珍しい役なんです。僕はわりと落ち着きのない役が多いので、(新一やキッドのような役を演じるのは)本当に不思議ですよ。
新一もキッドも出番はそんなにたくさんあるわけではないんですけど、ファンの皆さんが一押ししてくれるキャラクターですからね。本当にありがたいなって思っています。
――以前、高山さんにお話をうかがった時に、『名探偵コナン』のアフレコ収録の時は、コナンらしく、きりっとした感じのシャツを着て行われるとお話されていましたが、やはり今回も?
高山:はい。シャツ着用率が高いですね。
――山口さんはいかがですか?
山口:新一として取材を受ける時なんかは、ジャケットを着たりはしますね。そこで気持ちが変わってきます。
でも、新一にしてもキッドにしても、かっこいいじゃないですか。媒体では、できるだけ声だけにして、写真は出たくないなと思いますね(笑)。
キャラクターが別のキャラクターとして登場する際の演じ分けとは?
――TVアニメ放送15周年記念特別企画として、2011年に配信されたラジオ『CONAN RADIO』では、新一があまり作品に登場しないので、キャラクターがつかみにくく、キッドを演じた対比によって、新一のキャラクターがつかみやすくなったとお話されていましたが、演じ分けについて教えてください。
山口:キッドが出てくるまで、新一のようなクールでキザなキャラクターが、自分の中でMAXだったんです。そこへ、MAX振り切っちゃうようなキッドというキャラクターが出てきて、「これは困ったぞ」と思っていたんですけど。
新一とキッドが対峙する話をやった時に「新一って、実はすごく熱血だな」という考えが浮かんで、そう演じることによって、二つのキャラクターの演じ分けがすごく楽になりましたね。
それこそキッドとコナンが最初に出会ったシーンのように、下から見据えているコナンと、上から見下ろしているキッドというイメージで演じ分けているんです。新一は、言ってることがまわりくどいんですよ。
高山:まわりくどい(苦笑)。よく言われる。
山口:そんな感じにはなるんですけど、あまり新一の方にクールさを感じなくなりました。
――キッドが新一に変装する時は、山口さんとしては、演技に変化はあるのでしょうか?
山口:変化はありますよ。やっぱり新一であって、新一でないわけですから。キッドは自分の中で、新一のモノマネをしているような感覚でやっています。意識として、違うふうにできたらなとは思いながらやっています。
――高山さんも今作では、(コナン扮する)アーサー・ヒライとして登場していますが、コナンとの違いみたいなものはありますか?
高山:それは全くと言っていいほど違いますね。アーサー・ヒライは江戸川コナンが演じている子供ですから、より子供っぽく、たどたどしい感じになっています。とっさに口走った名前からして、ハーフ?という設定にしてしまったし……(笑)。
一同:(笑)。
高山:だから、「日本語はあんまり上手じゃないけど、しゃべれるよ~」っていう。そんなイメージになっています。
――最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
山口:今回は、すごくスケールの大きな作品になったと思います。僕自身、公開が待ち遠しいですし、皆さんがこの映画を観て「どんな感想を持ってくれるのか?」。そこに興味があるので、ぜひぜひいっぱい感想を聞かせてください!
高山:また新たな扉を開いた劇場版第23弾です。キッドが登場することによって生まれるファンタジー感で、突き抜けちゃった『名探偵コナン』を堪能していただきたいと思います!
――ありがとうございました!
[取材・文/宋 莉淑]
『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』作品情報
2019年4月12日(金)より全国東宝系にて公開中!
【ストーリー】
19世紀末に海賊船と共にシンガポール近海に沈んだとされる、世界最大のブルーサファイア“紺青の拳”。現地の富豪が回収を目論み、表舞台にその姿を現した時、マリーナベイ・サンズ近郊にて殺人事件が発生。現場には、怪盗キッドの血塗られた予告状が残されていた―。
一方、シンガポールで開催される空手トーナメントを観戦する為、蘭と園子は現地を訪れていた。パスポートを持っていないので海外渡航できないコナンは留守番のはずだったが、彼を利用しようとするキッドの奇術的な方法により、強制的にシンガポールへ連れてこられてしまう。キッドに従わなければ日本に帰ることすらできないコナンは、メガネ、腕時計、服などすべて奪われ変装することに。その正体に気付いていない蘭に名前を聞かれ、とっさにアーサー・ヒライ(!?)と名乗る。
やがて、キッドはある邸宅の地下金庫にブルーサファイアが眠っているという情報を得る。いとも簡単に侵入成功したと思われたが、危険すぎる罠がキッドを待っていた。立ちはだかったのは、400戦無敗の最強の空手家・京極真。キッドの命運は…!? そして、不吉な何かを予兆するかのようにシンガポールの象徴・マーライオンから真紅に染まった水が放出される!
かつて海底に葬られた【伝説の秘宝】が時を経て、“獅子の国”に蠢く巨大な闇を呼び覚ます!
【スタッフ】
原作:青山剛昌「名探偵コナン」(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:永岡智佳
脚本:大倉崇裕
音楽:大野克夫
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
【キャスト】
江戸川コナン:高山みなみ
毛利蘭:山崎和佳奈
毛利小五郎:小山力也
怪盗キッド:山口勝平 ほか