リスペクトと信頼が生んだ漫画「虫籠の錠前 BUG&BAT」! 成田良悟さん&どーるるさん対談
共感できるキャラクターとは?
――折角のご対談ですので、お二人からそれぞれにお聞きしてみたいことはありますか?
成田:そうですね……。私のネーム面白いですか?
どーるる:本当に面白いです。私が最初に読ませていただいていいのかなってくらいです……!
成田:ありがとうございます(笑)。ドラマの展開もあるので、できるだけネタバレをしないように、漫画版の公開時期をズラしたんですよね。
でも、そうすると漫画の方が遅れがちになってしまうので、そこは困るなぁと思っていたのですが、連載開始と同時に一気に掲載することになったんですよ。
私のワガママでどーるるさんにすごく負担掛けちゃってるんじゃないかなと心配になっていたんです。それがなければ、締切のスケジュールも全然違っていたので。すっごい怒っていたらどうしようって! でも、そう言っていただけて嬉しいです。
どーるる:いえいえ! ちなみに、私の絵を見てどう思いましたか?
成田:すごく柔らかい印象がありながら、アクションシーンやダークなシーンも縦書きの中に魅力的に詰まっている。見やすさと書き込みがすごくいいバランスになっていると思いますね。読者に優しい絵柄だなぁと感心していました。キャラもすごく魅力的ですよね。マスターのひょうひょうとした雰囲気なんて絶妙ですし。
読みながら、「マスターは何考えているのか全然分からないけど、おそらくいい人なんだろうな」って思わせるような表情が出ている。本当に思い描いていた以上の仕上がりになっていると思います。
絵柄を受けて、私も想像力を膨らませることができているので、とてもいい仕事ができているんじゃないかな。
どーるる:ありがとうございます。本当に嬉しいです。私、成田先生の作品ってすごく突出したキャラクターが登場するのが印象的で。それでいて、クスッと笑えちゃうみたいな個性があって。そこが成田先生の作品に引き込まれるポイントだと思ってるんです。
プロットを読んでいても、このセリフがこういった伏線になるんだなというのが、すごく散りばめられていますし。これまでの私の作品は伏線を張るということがあまり無かったんです。
感情の流れを描いていくのが醍醐味だったんです。ですので、今後の作品創りにおいてもご一緒させていただいた経験が活きていくと思っています。
成田:そこまで壮大なことを考えながら書いていないですよ(笑)。これが買いかぶられるということなのか!? って思いました(笑)。
どーるる:(笑)。私からも質問いいですか?
成田:どうぞどうぞ。
どーるる:読者に共感してもらえるキャラクター作りについてどんな考え方を持っていますか?
成田:そうですね。気を使っていることは、本当にこのキャラクターを憎ませると思った悪役キャラ以外には、なるべく自分が見ていて不快だと思う行動はさせないことですね。
読者が見てイラッとしてしまう行動はさせない。実際は人によって価値観が違うので生じてしまうと思うのですが、できるだけさせないようにしています。
例えば、ゾンビ映画でおバカなキャラクターがおバカな行動をして、状況を悪化させるみたいな。折角、隠れていたのに「私の宝石があんなところに落ちてるから取りに行かないと!」ってやって大惨事の引き金に……みたいな展開ってありますよね。
そういったことはなるべくさせないか、実はその行動にも理由があるように考えていますね。状況を悪化させるのであれば、悪化させるなりの明確な理由を考えています。
キャラクターをただの舞台装置にしないこと。エンタメとして、人間のドロドロしたところを徹底的に描くのであれば別だと思いますが、私の場合はハッピーエンドや爽快感を目指すエンタメが多いので……。
もちろん、これも人によって手法は違いますし、そういうキャラクターを敢えて出しつつ面白い作品もたくさんありますから、あくまで私個人のやり方ということですが。
仮に「ご都合主義だったり、リアリティがない」と言われたとしてもしょうがないですよね。私はなるべくスカッとする話が書きたいので。
たまにファンレターで「成田先生は最後がハッピーエンドであれば、途中どんなにキャラクターをひどい目に遭わせてもいいと思っていませんか?」ってメッセージが届いたりもするんですけどね。何度か別々の読者さんから頂きました。
確かに否定はできないんですけど、最後が幸せになればいいかなって(笑)。
どーるる:なるほど……。ありがとうございます!