『ひもてはうす』オール声優出演イベント開催記念、石ダテコー太郎監督に作品の総括と今後の展開についてインタビュー
2018年10月から12月まで放送されたテレビアニメ『ひもてはうす』は、5人の女性と1匹の猫のシェハウス生活を描いたオリジナルギャグアニメ。
『gdgd妖精s』や『てさぐれ! 部活もの』などを手がけてきた石ダテコー太郎監督の作品らしく、アドリブパートが効果的に使われているのが特徴。
アニメと声優両方のファンたちの間で話題になった『ひもてはうす』だが、6月2日にイベントを開催(昼夜2部制)。これまで本作は何回かイベントを行ってきたが、今回の「ひもてはうすイベント みんなで盛り上がりたいの−」は、なんと初めてキャストが勢揃い!
そこで今回の記事は、イベント開催を記念し石ダテ監督に『ひもてはうす』の総括と、イベントや今後の展開についてインタビューを敢行。収録の裏話など、たっぷり語っていただきました!!
目次
- 放送を終えたいま、石ダテ監督が『ひもてはうす』を振り返る
- オリジナルアニメ業界のマネタイズは大変な時代?
- 超重量打線のキャストをまとめる石ダテ監督のテクニック
- 『ひもてはうす』の放送を終えて監督が手に入れたものは?
- 『ひもてはうす』の次なる展開、クラウドファンディング実施中
- 『ひもてはうす』の今後の展開を監督に聞いてみた
- 初めてキャストオールスターが揃うリアルイベントの見どころ
- 作品概要
放送を終えたいま、石ダテ監督が『ひもてはうす』を振り返る
――『ひもてはうす』の放送が2018年12月に終わりました。いまの率直な感想をお聞かせください。
石ダテコー太郎監督(以下、石ダテ監督):意外と大変だったんですよね。『ひもてはうす』というアニメは、内容もキャストさんも……言ってしまったら、いままで僕がやってきたことの「焼き直し」なんですけどね。
――いやいや、そんなことはないですよね?(笑)
石ダテ監督:いや本当です。焼き直しをしようと思って焼き直しましたから、これでいいんです。いままで僕がやってきたことを踏まえて、このスタイルの作品を普遍的にできないものなのかな〜と思って作りました。いまの時代、YouTubeを見ればVTuberのみなさんがそれぞれ個性豊かなキャラクターとして活躍しています。そしてアニメでは『ポプテピピック』のような斬新で尖ったギャグ作品を、大手さんが作っていらっしゃいます。
――『gdgd妖精s』を作っていたころと、時代は変わりましたか?
石ダテ監督:だいぶ変わったと思います。いままで僕はアニメ界の片隅でパンクロックみたいなことをやっていましたけど、いまでは珍しくない時代かもしれません。なので今回、僕はあえてこれまでのスタイルに普遍性を持たせられないかという挑戦をしてみました。
――普遍的なアニメですか?
石ダテ監督:そうなんです。もちろんそのテーマに沿って楽しく作れたと思います。ですが、「普遍性」って1クールでポジションを確立するのは難しいですね。1年くらいやらせてもらわないと定着もしませんし。
――『ひもてはうす』のコンセプトのひとつに、いままでの石ダテ監督作品を知らない人にも見てほしいという想いもあったそうですね。
石ダテ監督:そうです。男性にも女性にも見てほしいと思って作りました。なのでその点に関しては、いままで僕の作品を楽しんでくださった常連のみなさんには、『ひもてはうす』はマイルドだったかもしれません。いままではすごく強い密造酒を出していた店だったのに、「急にチューハイみたいな飲みやすい酒を出し始めたぞ!」みたいな感じ。
一同:(笑)
――評判はいかがでしたか?
石ダテ監督:どうなんでしょうね? チューハイのフリしながらところどころこっそり日本酒やウォッカも注いでいたんで、アレはアレでよかったと思うんです。もちろん、すべて終わったいま考えると、いくつかの反省点はあります。
――具体的にどのような反省点ですか?
石ダテ監督:実はいろんな出来事が重なってしまって、最後の3話くらいがイメージ通りに作れなかったんです。本当はもっとしっかり階段を登っていくようなプランを練っていたんですけどね。僕のアニメはどうしてもナマモノと言いますか、最終的には走りながら作る部分が大きいもので、ワンクール見ていただいた後の読後感を作るには、もうちょっといろんな事態を想定して準備をしておくべきだったと反省しています。
――いろんな事態を想定ですか?
石ダテ監督:いままで作ってきた作品は、途中でどれだけ変なことをやっても、「最後だけまとまっていればどうにかなるだろ」と思って作ってきました。全体的に自由にやるからには「最後だけまとめる」というつじつま合わせがとても重要なんです。
――「最後だけ」は言い過ぎだと思いますが、確かに監督の作品のラストは、ちょっとほっこりするハナシが多いように感じます!
石ダテ監督:ありがとうございます。でも『ひもてはうす』はテーマが「普遍性」だったので、あえてそれを用意しなかったんです。シリーズ構成当初から、綺麗に終わらせない、という選択をしていたんです。その結果、走りながら作っている中でバタバタと事故が重なってしまったとき、その受け皿を作りきれていなかった。つまり、保険がなかったせいでちょっと取りこぼしちゃってもったいなかったなぁと感じる部分があります。ですが、そのおかげでと言いますか、また続編が作れるのでしたら、どんな感じにしたいかというプランが明確にできました。
オリジナルアニメ業界のマネタイズは大変な時代?
――世の中の作品は、やり残したことがあるから続編が作られるのだと思います。
石ダテ監督:そうなんですか? この作品に関していえば、プロデューサーが制作費だけ集めてくれば、いつでも、そしていくらでも作れます(笑) いま、アニメ業界はマネタイズがとても難しい時代だと思うんです。逆に聞きたいんですが、どうしたらいいんでしょうか?
一同:(笑)
石ダテ監督:DVD/BDなどの円盤は売れないし、イベントに興味がある人たちばっかりじゃない。パチンコもダメ、ゲームも下火。中国も日本のアニメに積極的でなくなっちゃった。どうしたらいいんですか? これ、新しい解決作が見い出せなければ、オリジナルアニメは作られなくなってしまうと思うんです。業界全体の問題じゃないでしょうか? アニメを企画するときは、2〜3年後に放送するアニメを作っています。なのでまだそこまで表立って問題になっていませんが、近い将来、大きく問題視されると思います。
――それほど大変な時代なのですね。
石ダテ監督:アニメって毎クール、幕の内弁当みたいに大小さまざまな作品があったからおもしろかったのに、そのうちヒット間違いなしのビッグタイトルアニメしか作られなくなってしまう。あとはネット配信限定の、外国人が喜びそうな海外ドラマのようなテイストの作品。この2種類になっちゃう。
――それではおもしろくないですね。
石ダテ監督:ですよね? 日本がガラパゴスのように育ててきたアニメの文化なのに、途絶えてしまうかもしれない。とか偉そうに語っていますが、僕はあんまりアニメ業界の人と話すことがないんですよね。一応アニメ業界の内側にいるくせにね。ガラパゴスの中のガラパゴスです。
一同:(笑)
――『ひもてはうす』はオリジナルアニメです。制作費を集めるのは苦労されましたか?
石ダテ監督:ウチの江口プロデューサー(バウンスィ代表取締役)が集めてくれました。
江口プロデューサー(以下、江口P):委員会のメンバーを説得するのがたいへんでしたね(笑)。オリジナルアニメは、初めに提出するものがないんです。数十枚の企画書しかない状態で、数千万円出資をお願いしに行って、賛同してもらわないといけないんです。
石ダテ監督:『ひもてはうす』のようなアニメは、収録してみないとおもしろくなるかどうか、わかりませんからね。出たとこ勝負な作品です。
――では、無事に放送が終わったいま、委員会のみなさんは喜んでくれましたか?
江口P:そうですね。おもしろがってはくれました。『ひもてはうす』はオリジナル作品なので、今後もなにかしらの展開ができるかもしれません。原作者がいる作品だと、その都度お伺いをしないといけませんけど。
――オリジナルだと、やりたいことがしやすい利点はありそうですね。
江口P:そうですね。例えば、日清食品さんの「日清麺なしシリーズ」のCMもそうです。CMを『ひもてはうす』本編のように、キャストさんにアドリブで商品を紹介してもらいました。
▲日清麺なしどん兵衛CM第1弾 たえ篇 (CV:洲崎 綾)