アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』木村泰大監督&髙橋秀弥監督 クライマックス直前インタビューゥゥウッ!!!!!|“覚悟”を決めてジョルノたちと共に駆け抜けた怒涛の3クールを振り返るッ!!
「無駄無駄原画」のラッシュはもっと長くするつもりだった(木村監督)
――作画や撮影処理などの映像面で特に工夫・苦労されたところは?
木村:そもそも、キング・クリムゾンがどうなっているのかを理解するところから始まったので、最初の開発コンセプトとして「分かりやすくしよう」というのがありました。第3部までは火が出るとか凄いパワーで殴るとかで分かりやすいんですけけど、第5部になると観念的というか複雑になっていて、原作をサッと読む程度だと理解できないところが多くて。この仕事を受ける前から「一番難解なのはキング・クリムゾンだ」と言われているのは知っていたんですけど、まさか自分が映像化することになるとは(苦笑)。
髙橋:監督3人の中で誰がやるんだとなった時に、木村さんにやっていただいたんでホッとしました(笑)。
木村:しかも、レクイエムになってさらに分かりづらくなるという(苦笑)。
――キング・クリムゾンが発現すると周囲が宇宙のようになりますね。
木村:あの状態だと地面などの動いてないものが全部割れて、その後は宇宙っぽくなって、アニメ用語で「イメ背(イメージ背景)」というのですが、どこか分からないけど空間を歩いている感じになる。それと、キング・クリムゾンの射程距離も全世界が止まっているのか、それともディアボロを中心に半径何メートルと範囲が決まっているのか分からなかった。第21話の教会でブチャラティにサービスで自分の姿を見せるのもよく分からないし。いくつか整理できないところがあったのですが、そこはもう割り切ってやるしかないな、と。映像として見た時に違和感がないようにする組み立てが難しかったです。
――ファンの間で特に話題になったのが、第31話で「無駄無駄原画」とクレジットされたチョコラータを倒す時のラッシュです。
木村:実はカッティングの時は40秒ほど尺を取っていたんですけど、最終的には確か30秒弱になって少し短くなったんです。あれだけのスピードだと(ジョルノ役の)小野賢章さんが相当早口で言わないといけないらしくて。まぁ、それでも長かったですね(笑)。
髙橋:充分気持ち良かったですよ!
木村:そうですか。僕は1分くらいやるのかと思っていたんですけど、完全に原作のセリフの量に合わせてあるので、ああなったんですよね。
第31話の無駄無駄ラッシュ
船上でのマイケル・ジャクソン風ダンスを描くために1ヵ月研究した(木村監督)
――第7話の、船上でズッケェロを拷問する時にラジカセで音楽を聞きながら踊る場面も力が入っていました。原作ではたった数コマですが、とても印象に残る場面です。
木村:何であんなに凝ったことをやったんですかね。覚えてないんですけど。第7話だったからまだ元気があったけど、仮にあのダンスが第35話だったら絶対やってないですよね。そもそも、あれ何で踊ったのかすら分からないし。
笠間:イタリアのロケハン中に、木村さんが「専用楽曲を作ろう」って言って、曲を作っちゃったからですよ。
木村:あれ? 僕が言ったんですか!?
笠間:それで大森啓幸プロデューサーが「よしきた!」って専用楽曲を発注したという。
木村:みんな浮かれていたんですね(笑)。楽曲を最初の段階で発注しちゃっていて、忘れた頃に曲が上がったと連絡がきて、そういえば発注したっけみたいな感じってことか(苦笑)。
髙橋:木村さんが描くということだったので、僕と津田さんは他人事として普通に「おぉ、良い曲だな」っていう感じでした(笑)。
木村:そうそう。完全に僕がやることになっちゃってて「えぇっ、マジすか!?」って(苦笑)。
――曲はどんなイメージで発注したのですか?
木村:「ギャングっぽい曲」みたいな漠然とした感じで発注した気がします。いざ曲を渡されてコンテを描く時に、4コマしかないから原作のポーズだけだと繋がらないし、尺も10秒ももたないと思うんで、何か新しく作らないといけなくなって。それからYouTubeを1か月ぐらい見続けて、あのポーズにはまるダンスの曲を探したんです。結果的に、マイケル・ジャクソンが一番近かったので、ミュージックビデオやライブを全部見て、参考できそうなところをピックアップして、原作に沿うように変えて1分にしました。だから、ものすごく時間がかかっています。描くのは2日でしたけど、調べるのに1か月くらいかかりました(苦笑)。
第7話のダンスシーン
――第6話の船上でムーディー・ブルースが最初に登場した時もこだわりを感じました。
髙橋:あれは僕が担当しました。ムーディー・ブルースの数少ない活躍回なので(笑)、花を添えてあげようと思いました。過去を遡るスタンドなので、過去の集合体みたいな感じで軌道を残して、それが集まったような表現にしました。上手くいって良かったなと思います。
――他に作画面で特に力を入れたところはありますか?
木村:それで言ったら、第34話のシルバー・チャリオッツ・レクイエムの能力で身体と精神が入れ替わって戸惑うところは完全にギャグでした。あれ相当遊んでるんじゃないですか? 原作よりかなり盛られていますよ。
髙橋:ここは表情で遊べるんじゃないかと思って色々攻めた結果、意外と面白くできたので良かったです。
――ボスと直面してめちゃくちゃシリアスな状況なのに、いきなりギャグパートが結構長く入るっていう(笑)。
髙橋:BGMは奇妙さを残しながら本編が始まるんですよね。途中からギャグのパートになったらガラッと変えてもらっている。
木村:オープニングで結構カッコよくしたのに、急に間抜けになってね(笑)。
第34話の身体と精神が入れ替わるシーン
――『ジョジョ』のアニメはこれまでのシリーズでもクライマックスが近付くにつれて、オープニングで違うことやって視聴者を楽しませてきましたが、今作でも見せてくれましたね。
笠間:第34話でキング・クリムゾンの演出が入って、分かりやすくなっていますよね。
木村:そうですね。ノーマルOPがキンクリに飛ばされた状態で、ディアボロOPになるとキンクリに飛ばされたところが見えるっていうのは誰が考えたんですか?
髙橋:それも木村さんですよ(笑)。発注の時にそのアイデアが出て。
木村:僕でしたっけ? 大体忘れちゃうんですよ(苦笑)。そう、そういう感じにしました。
――他にアニメオリジナル描写でこだわったところは?
髙橋:暗殺者チームの登場シーンを追加したり、過去編をナレーションベースではなくキャラクター目線で描いているっていうところとかですかね。それと、フーゴを第35話でナランチャが死亡したあとにチラッと出しました。
――原作では、フーゴは離脱した後に全く描写がないから、生死も不明でした。
笠間:ボスの手下に始末されているかもしれないですからね。
木村:親衛隊に戦力が残ってなさそうですけどね(笑)。
髙橋:ブチャラティたちをやっつけないといけないから(笑)。