アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』木村泰大監督&髙橋秀弥監督 クライマックス直前インタビューゥゥウッ!!!!!|“覚悟”を決めてジョルノたちと共に駆け抜けた怒涛の3クールを振り返るッ!!
いよいよ明日、最終話を迎える『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』。ブチャラティの命を賭した機転により、王の中の王が手に入れるべき矢はジョルノの手に渡った。そして、矢の力でパワーアップしたジョルノのスタンド、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの拳が遂にディアボロに叩き込まれる! 悲願のボス撃破となるのか……!?
ここに至るまでの道のりは長く険しく、失ったものも大きい。仏頂面の裏に正義の心を秘めていたアバッキオ。戦いののちに故郷に帰り、同年代の少年たちと同様の学生生活を夢見たナランチャ。そして、ギャングでありながら誰よりも熱い道義心を持っていたブチャラティ。ギャングという生き方から逃れられなかった彼らは運命に翻弄されるだけだったのだろうか?
ここまで番組を観てきたファンならば、その問いに素直に首を縦に振ることはしないだろう。サン・ジョルジョ・マジョーレ島で、組織を裏切りボスを討つと決断したアバッキオとナランチャ。そして、肉体が朽ちても執念で動き続け、ボスを追い詰めたブチャラティ。安らかながらもゆっくりと死んでゆく人生とは真反対の、苦難に満ちていながらも激しく脈打つ人間賛歌の生き様だった。
そして、アニメスタッフもまた誇りを胸に作品制作に取り組み続けてきた。『ジョジョ』という大作を背負う名誉と引き換えの重圧は相当なものだったに違いない。だが、ブチャラティが最期に口にした「幸福というのはこういうことだ」と同様のことを言えるように3クール戦い続けてきたはずだ。
編集部は最終話を制作中の木村泰大監督と髙橋秀弥監督にインタビューを実施。『ジョジョの奇妙な冒険』のTVアニメーションシリーズ第1作から携わっているdavid productionの笠間寿高プロデューサーにもご同席いただき、制作背景について伺った。ディアボロとのバトルをはじめ、船上でのダンスや対チョコラータ戦での無駄無駄ラッシュといったファン注目のシーン、そして原作者・荒木飛呂彦先生からのアドバイスなど、これまでの3クールを振り返っていただいた。
『黄金の風』では「チーム対チーム」を意識した(高橋監督)
――遂にクライマックスです。3クールを戦ってきたご感想をお聞かせください。
髙橋秀弥(以下、髙橋):よくここまで来たなという感じです(苦笑)。
木村泰大(以下、木村):全くその通りです(苦笑)。今僕らにはそれしか言うことはなくて……どのくらい前からやっていましたっけ?
笠間寿高(以下、笠間):アニメ制作の依頼をいただいたのが2017年の1月で、その年の7月にイタリアにロケハンに行きました。
――2年以上『黄金の風』を作り続けてきたわけですね。では、今作を制作する上で意識したところは?
髙橋: 第5部特有のことでいうと「悲哀のドラマ」ということを意識しました。最終的に生死を賭けて戦う部分もそうですし、キャラクターたちが必ず幸せではない境遇から始まっていて、そこから抜け出そうとしているので。
――『ジョジョ』は敵キャラもポリシーを持っていて個性的で、敵と味方を単なる善悪で線引きできないところも魅力です。ましてや、第5部は主人公たちがギャングです。少年漫画/アニメの主人公として描く上で意識した点は?
髙橋:最終的に「ジョルノたちってジャンプ漫画の主人公だな」って僕の中で落ち着いたんですよね。一応ギャングを職業にしていて、前半では一般人をボコボコにする描写もありましたが(苦笑)、気持ちや覚悟の部分は少年漫画の王道をしっかりと拾っているので、僕らも少年漫画を描くつもりで作っています。暗殺者チームに関してもそことは違った意味で覚悟がある面白いキャラクターだったので、そこを掘り下げてアニメでは「チーム対チーム」を意識しました。
――そういった要素は特にどのシーンで表れていると思われますか?
髙橋:一番意識したのは暗殺者チームが出てきた第9話~第11話のホルマジオ戦です。僕の担当回で、まずきちんとセットアップをしないといけないので、シナリオの時から津田尚克総監督と話して、初めからリゾットチームを見せるというふうにしました。チーム対チームという図式を作って、鉄砲玉のホルマジオが最終的に倒された時に「これから大変になるぞ!」というバトル感を強く出そうと考えました。
木村:チーム対チームにするのは、この作品の開発で最初に決まったことで、第4部までとは違うところだと思います。ジョルノたちは少年漫画の主人公的な原理で行動していますが、そうではない敵キャラのことも理解できる部分がある。アバッキオの先輩警官のセリフで「わたしは『結果』だけを求めてはいない」「大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている」などは良い言葉なんですけど、実際問題、仕事や日常生活で僕らは結果だけを求めてる時も結構あると思うんですよ。だからディアボロを一概に否定できないっていう(苦笑)。そういったところが『ジョジョ』の魅力だし、少年漫画の枠に収まらない、懐の深い作品だと思いますね。
敵キャラクターの行動原理にも共感できるようにしている(木村監督)
――『ジョジョ』は大人が読んでも共感できる部分の多い作品ですよね。
木村:ディアボロについては原作に描いてあることをそのままシナリオに起こして、そのままアフレコしてもらっているんですけど、相当コソコソ・ビクビクしながら戦っているので、アニメだと小物な感じが増していますよね。でも、実際に自分がディアボロの立場になるとこうなるだろうなと分かるし、むしろジョルノたちの方がちょっと怖いなって思っちゃうところもあるし。僕らは全然正義の主人公ではないので(苦笑)。
――確かに彼はギャングとはいえ、組織のトップで多くの部下を管理しなければならない社長・社会人としての立場でもありますよね。
木村:あんな服装ですけどね(笑)。だから、敵キャラの地盤を固めるのは大事なことで、敵の行動原理もちゃんと共感できるようにする。主人公はジョルノたちでもう設定されているので最終的にそちらの筋を選びますけれど、それまではむしろ主人公が悪役みたく見えてもいい話数があってもいいと思っています。
――他のキャラクターで憎めないやつとかはいますか?
髙橋:津田さんはフーゴに共感していて、「俺も裏切る」って言っていました(笑)。
木村:普通はブチャラティたちについて行かないよね(笑)。
髙橋:ブチャラティチームに共感できる人ってなかなかいないんですよね。
木村:ジョルノが一番スーパーマンですからね。やはり共感しづらいところがある。
髙橋:ファンのあいだで暗殺者チームの人気があるのは、共感できる部分が多いからでしょうね。僕も暗殺者チームは演出していてより楽しかったし。主人公たちってやはり正論というか、その正義がデカすぎて超人的なんですよね。スクアーロ&ティッツァーノ戦でナランチャが自ら舌を切って迫っていくのもすごく覚悟が決まっていますけど、あんなの絶対できないなと思いますし。
木村:でも、僕は基本的にスーパーマンなのはジョルノだけだと思いますよ。彼に引っ張られて、みんなああいった行動をしていますが。だから、ジョルノが一番強いんだろうなって思いますね。
――ブチャラティチームの中ではアバッキオの心の揺らぎが特に印象的に描かれていて、『ジョジョ』なりに人間の弱さを表現されていたと思います。
木村:アバッキオはすごく勘が良いと思っていて。最初にジョルノのことを排除しようとするじゃないですか。あれはやはりジョルノが危険な存在だと最初から見抜いていたんだろうなと、ここまでくると思います。ジョルノさえいなければ、ブチャラティたちとそれなりに楽しく過ごせていたのかもしれないのに(苦笑)。新入りが来たせいで大変なことをやらなきゃいけなくなっちゃって、チームが全滅の危機にも陥るし、自分も死んでしまうし。
髙橋:そうですね。まぁ、戦闘向きのスタンド使いではないので、用心深いのでしょうけど。意外とチームのことを良く考えていて、要所要所で全体を見ている動きをしていましたし。ブチャラティと同い年なので、チームのお兄さん的存在なのかなと。社会人経験もありますし。
木村:アバッキオは元警官ですから人一倍正義感が強いのだろうと思います。
――アバッキオがお兄さん的とのことですが、個人的にはブチャラティがチームのお父さんだとしたら、アバッキオはお母さん的な存在かもと思ったのですが、いかがでしょうか? 年下のメンバーのことを細かく見ていて、結構小言を言っているので。
髙橋:そうかもしれないですね。ミスタも意外と明るいお母さんな感じがするかも。
木村:なるほど。ミスタとアバッキオの立ち位置は人によって見方が違うかもしれないですね。僕はブチャラティが母でもあり父でもあると思っていて、その下に他のやつらがいて全員同列、同じ学年っていう感じですね(笑)。