ダンスと舞台演出で魅了――東山奈央 1st TOUR “LIVE Infinity”国内千秋楽 横浜公演二日目レポート
2019年9月8日(日)、東山奈央さんの1stツアー「LIVE Infinity」の横浜公演2日目がパシフィコ横浜で行われた。
本稿では、大阪、名古屋、横浜1日目が開催されたツアーの国内千秋楽(横浜公演2日目)の模様をお伝えします。
晴天のように広がる真っ青な世界
公演が始まると、まずは1曲目の「群青インフィニティ」。ステージセットには、8枚の巨大なスクリーンが設置されている。曲と同時にそこには真っ青な青空が映し出された。
屋外はあいにくの悪天候だが、場内は晴天。東山さんの「とぶよー!」の掛け声に合わせて、青いペンライトを持った観客は一斉にジャンプして盛り上がった。
立て続けに披露した2曲目は「True Destiny」。曲中で東山さんはステージ前方の左右に移動して、挨拶代わりと言わんばかりに観客を煽った。開演から2曲連続のロックナンバーで場内を沸かせたる。
オープニングトークでは、台風で交通機関が乱れている状況の中、会場に駆けつけてくれた大勢の観客に、感謝で胸がいっぱいの表情だった。
かと思えば、「台風もライブに参加したかったのかな?」とジョークで会場を和ませる。それもそのはず、東山奈央さんは“晴れ女”として知られており、過去のライブは晴天が多かったからだ。
トークでは会場のパシフィコ横浜についても言及。この会場は、東山さんが声優を目指していた高校生のころ、初めて声優のライブを見た思い出の場所。
当時から大好きだった堀江由衣さんが率いていたユニット「Aice5」を見て感動したエピソードを紹介した。
オープニングトークも早々に、3曲目の「青空ダイアリー」。キュートな歌とダンスに合わせ、観客は青いペンライトを左右に振って声援を送る。
そして4曲目はステージの2階に上り、夏にぴったりなお祭りソング「ネバギバ音頭」、5曲目は和風ロック「灯火のまにまに」。途中ではバックバンドを務める“レインボードッグス”のメンバー紹介も行われた。
短いMCを挟んで6曲目は「さよならモラトリアム」。東山さんが「問題児……」と紹介した、とてもユニークな楽曲だ。
曲中では歌詞に登場する『大人になるとはどういう事か20文字以内で簡潔に説明せよ』にちなんで“大人チャレンジ”と名付けられた遊び要素たっぷりの演出が行われた。
ここまでの公演では“20秒以内で”バンドメンバーへのツッコミや早口言葉などに挑戦してきたが、国内千秋楽の今日はギター演奏だった。
残念ながら大人チャレンジは失敗に終わったが、真剣にギターを弾く東山さんの姿に大きな声援が上がった。
さらにこの曲は、隣の人と肩を組んで身体を左右に揺らすパートが存在する。初対面でも関係なく、みんなで仲良く肩を組んでライブを楽しめるのは、東山さんのライブの醍醐味。
ただ曲を聴かせるだけのライブもよいが、このような遊び心のある演出は、ライブならではの楽しみだ。
分身や瞬間移動など新たな挑戦で観客を魅了したダンスパート
ステージが暗転したと思ったら、重低音のサウンドと共にステージ上の8つのスクリーンが輝いた。ここからは東山さんのライブの特徴のひとつ“ダンスコーナー”が始まる。
大人っぽいメタリックな衣装に着替えた東山さんは、ダンサーたちを引き連れてステージに登場。過去のライブでもキレキレのダンスで観客を魅了してきたメンバーだが、今回のライブは演出が違う。
なんと、スクリーンとメンバーの動きが完全にシンクロしていた。
東山さんとダンサーズのメンバーは、スクリーンを使って分身や高速移動を披露。いま目の前で踊っている東山さんは、本物なのか映像なのか、まったく区別がつかないパフォーマンスを行った。
一瞬も目を離せないすばらしいステージは、仮想現実テクノロジーを取り入れた最先端の演出だった。
特大の歓声が上がる中、東山さんはトークを始めた。大人っぽい衣装を着ているが、楽しそうに笑顔で話す姿はいつものおちゃめでかわい東山さんだ。
ここで東山さんは、今回のツアーのために新調したダンスシューズを紹介した。
このシューズはツアーの予算ではなく、オフィシャルクラブ「虹のわっか」の会費を使った旨を報告。
その理由は、いつも応援してくれるわっかメイトに、「みんなが私にくれる気持ちを、目に見える形で残したかった。みんなの応援を足に宿して、ツアーを回らせてもらいました」という感謝の思いがあったそうだ。
東山さんはトークの最後で、「このシューズをもっともっとみんなに見てもらえる機会が増えるように、これからも頑張って踊っていきたい」とコメントした。
オフィシャルクラブの会員は、自分たちの会費が有意義に使われ、さらに東山さんのパフォーマンスの一部に関われていることを知り、誇りに思えたはずだ。
いつ、どんなときも応援してくれる皆さんへの感謝を忘れない、東山奈央さんらしいトークに、場内から温かい拍手が送られた。
MCの後のダンスコーナーは、「Action」、「Living Dying Kissin'」、「I Want You To Know Baby」と続いた。東山さんと最大4人登場したダンサーズのフォーメーションは、まるでダンスチームのよう。
とても声優のステージとは思えないほど息がピッタリ。さまざまなコンテンツのライブに出演している東山さんは、もちろんどのステージでも魅力的なパフォーマンスを見せている。
しかし、やはりソロ公演は次元が違う。もしもまだソロ公演を見たことのない方がいたら、ぜひ一度足を運んでほしい。
ダンスコーナー最後の曲、11曲目に披露したのは「オトメイロ」。お馴染みの東山乱舞の楽曲ではステージ1階の前方で東山さんとダンサーズが踊ると、場内の皆さんも一緒に両手を大きく挙げて踊っていた。
東山奈央さん作詞作曲のバラードから終盤のメドレーまで見どころが尽きないセットリスト
ここからは場内の空気を一変させバラードコーナー。12曲目はアダルトな雰囲気の「ゆれる」。スポットライトを浴びた東山さんが熱唱すると、場内の観客も身体をゆっくりゆらしながら聴き入っていた。
そして13曲目「Rainbow」、14曲目「奇跡」。バラード楽曲は、東山さんの歌唱力の高さが際立つ。数分前まで場内の全員で大騒ぎしていた会場とは思えない、優しい時間が流れていた。
MCを挟んでいよいよ終盤。15曲目は「君と僕のシンフォニー」、「イマココ」、「未来YELL!」の名曲メドレーだ。直前までの静かな空気を吹き飛ばす、パワー全開のステージ。
曲の途中でダンサーズが登場し、スピード感抜群のパフォーマンスを行った。「未来YELL!」では会場全体で楽しむコール&レスポンスのコーナーが行われ、今日一番の盛り上がりを見せた。
そして最後の挨拶かと思いきや、「最後にもう一曲だけ……」と東山さん。本編最後は「Rainbow」のアンサーソングで、自身が作詞作曲を手掛けた「はじまりの空」を披露した。
会場全体と大合唱を行った後、東山さんは頭を深く下げて感謝の挨拶。大きな拍手に見送られるようにステージを後にした。
アンコールで初披露した東山さんが大好きな楽曲をカバー
アンコールは先のMCで紹介したAice5の曲、「Love Power」をカバーして会場を驚かせた。歌い終えた東山さんは、「高校生のころに、いつか私も声優になりたいと思いながら何度も聴いていた曲です」と紹介。
さらにこの楽曲を披露した理由を伝えた。
「私が、大好きなAice5さんの楽曲をこうしてカバーさせていただいたのと同じように、いつの日か、私の楽曲も誰かにカバーしたいって思っていただけるような声優歌手になっていきたい。そんな決意を込めて、私の想い出の曲をカバーさせていただきました」
もしかしたら、この会場内に東山さんを目標にがんばっているお客さんがいたかもしれない。この東山さんの一言は、そんな彼・彼女を勇気づけたはずだ。
告知コーナーを挟んで、アンコール2曲目は「君の笑顔に恋してる」。みんなで一緒にダンスをする楽しいお遊戯タイム。
「にぱにぱ」のところは、東山さんにとっても観客にとってもテンションがあがる、恒例の楽しい振り付けだ。出演者も客席もひとつになってダンスで盛り上がった後、ステージ上ではメンバー全員で大きな“インフィニティ(∞)”が作られた。
このような演出が行われると一般的なライブでは終焉なのだが、サプライズ好きの東山さんのステージは違う。最後にもう一度、本日一曲目に披露した「群青インフィニティ」で盛り上がりたいと提案。当然、客席から大歓声が上がる。
一曲目の「群青インフィニティ」は多少の緊張感があったが、アンコール最後のいまは、出演者も客席も十分に温まっている。ダンサーズは各々自由に動き回り、ツアータオルを大きく振り回して客席を煽る。
そして東山さんはと言うと、まるでロックシンガーのようにステージ狭しと駆け回っている。
そんなステージを見せられたら、客席も黙っていない。「ここは野外フェス会場か?」と勘違いしそうなくらい、タオルをブンブン振り回してはしゃいでいた。
すべてが終わり、いよいよ最後のスピーチ。東山さんは会場を隅々まで見渡しながら、「なによりも、みんなが一緒に作ってくれる優しい雰囲気が好きです」と語る。
この一言が、東山さんの心境をすべて現している。会場の観客も同感のようで、タオルを大きく掲げながら、今日一日楽しませてくれた東山奈央さんに感謝の気持ちを送っていた。
この国内千秋楽のライブの様子は、Blu-rayとなって発売されることが決定している。ライブを一緒に盛り上げた皆さんも、当日は参加できなかった皆さんも是非今度は映像でお楽しみ頂きたい。
2020年は東山奈央さんの声優10周年記念イヤーが開幕となる。その幕開けとして、2月にはシングルのリリースも発表された。来年も我々にたくさんの笑顔を届けてくれるのは間違いない。
[ライター:佐藤ポン]
セットリスト
東山奈央 1st TOUR “LIVE Infinity”横浜公演2日目 セットリスト
1.群青インフィニティ
2.True Destiny(アニメ「チェインクロニクル〜ヘクセイタスの閃〜」TVアニメ版EDテーマ)
3.青空ダイアリー
4.ネバギバ音頭
5.灯火のまにまに(TVアニメ『かくりよの宿飯』OPテーマ)
6.さよならモラトリアム
7.Mode Style
8.Action
9.Living Dying Kissin’
10.I Want You To Know Baby
11.オトメイロ
12.ゆれる
13.Rainbow
14.奇跡
15.君と僕のシンフォニー
16.イマココ(TVアニメ「月がきれい」OPテーマ)
17.未来YELL!
18.はじまりの空
●アンコール
En.1 Love Power(Aice5楽曲カバー)
En.2 君の笑顔に恋してる
En.3 群青インフィニティ