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映画『空の青さを知る人よ』長井龍雪&田中将賀インタビュー

映画『空の青さを知る人よ』長井龍雪 監督&田中将賀さんインタビュー|友か仕事仲間か? 超平和バスターズが作品を作り続けられるわけ

キャラクターと一緒に悩むことしかできない

ーー『あの花』『ここさけ』に引き続きお二人はご一緒したわけですが、秩父というテーマ以外にどういったビジョンがありましたか?

長井:最初はとにかく秩父ありきの話だったので、秩父から出る話にしようというアイデアが出ました。

その話を揉んでいく中で、「でも秩父ってそんなに悪いところじゃないよね」という気分が出てきたり、徐々に物語が変化してきて、今の話になっていきました。

でも最初のころはずっと「秩父という地元から出る話」で進んでいたと思います。

田中:地元を否定するのか、肯定するのかみたいな。なにかしら結論めいたものを用意しなきゃいけないんじゃないかとも思ったんです。それが秩父に対してのものだったり。

長井:高校生という主人公に対してだったり。

田中:そういうところですよね。そういう意味では、秩父というのは決まっていたし、主人公を高校生にするというのも、ほぼ決まっていたんですよ。

長井:お題みたいなものですからね。

田中:最初はそこに振り回されていた感じもあったんですよ。自分らしさ、僕ららしさを題材に求めていた時期もあったんですけどね。

そういう部分も今となっては、「題材はなんでもいい。僕らのフィルターを通したら、僕らの作品になるんだ」と至極当たり前のことに気づきました。

その結論にたどり着いたのは、『空青』だから感じたことのような気がします。

ーーみなさんらしさというと、キャラクターが等身大で100%かっこいい人間ではないというところかなとも思いました。抱えている悩みがリアル。

長井:生っぽい感情をアニメとしてやっていこうというのは、超平和バスターズの3人共通で持っていることだと思うので、そういうのがちゃんとやれているんだったら、良かったなと思います。

ーー生っぽい。

田中:僕らってそんなにかしこくもないし、そういう悩みに対して、大上段から「こういう解決策があるよ」とか、その人たちを評論するとか、とてもじゃないですがそんな映画作れないんです。

だから、僕らなりの悩んでいる彼らとそんなに変わらない立ち位置で、描写してあげるくらいなのかな。

長井:一緒に悩むことくらいしかできません、みたいな。

田中:というのが、さっきの「題材はなんでもいい」につながるんです。たぶんそういうことなんじゃないかなと思いますね。

ーーキャラクターと一緒に体当たりしている感じですよね。

長井:そうですね。だから結論めいたことはほとんどなくて、きっとこうなんだろうなって想像して、キャラクターに寄り添っていくことしかできない。

いつもそういった作り方しかできないので、最初にテーマとかは決められないんですよ。

田中:テーマを決めてから作ろうとしたこともあったんですけど、まあ上手くいかないんですよね(笑)。

長井:『空青』ができたから、開き直ることができたと思います。

ーーなるほど。僕らからすると不思議な作り方のようにも見えます。どうやって作っているんだろうと。

田中:作品にもよりますけど、本当にただのディテールからスタートすることもあります。

今回だと「お堂の前にたたずむ、ベースを持った女子高生」というところからスタートしていたりします。

もちろんさっき話した調べたことやいろんな要素が、作品のいろんなところに散りばめられてはいるんですけど、それをどう手繰り寄せて形にしていくかですね。

あとは、僕らはやっぱり、キャラクターありきで作ることが多いんですよ。「このキャラクターが出来上がって、このキャラクターが走ってくれたら、もうドラマになるでしょ」みたいな。

そこから何が結論として導き出されるかは、やってみないとわからない。

長井:この3人で作っていると、企画段階でもキャラクターの話が出ているその場で、田中さんが絵に起こしてくれるんです。

それによって共通イメージが固まって、キャラクターの話が固まってくる。そういったところは、他の作品と違うのかなと思いますね。

通常だとお話がガッチリ決まってから、それに合わせたキャラクターを作っていくことが多いんです。僕らは、結末もなにも決まっていないけど、もうすでにキャラクターの顔があるという状態がわりとあるんです。

田中:そういう意味で言うと、作品の設定だったり世界観があったりして、僕らって、最後に物語を収めるときにどこを重視するかっていったら、やっぱりキャラクターの心情なんですよ。

それでいうと『ここさけ』も最初は、恋愛モノで男女がくっついて終わらせるという結論ありきで、そこにたどり着こうとしたんですけど、結局たどり着けなかったんですよ。「あ、俺らたどり着けねーな!」みたいな(笑)。

でも、それのほうがすっきりしたんですよ。キャラクターの心情的にも、ここで無理やりくっつけても、誰も納得しないことがわかった。

最後はキャラクターに委ねて物語を終わらせる。それくらいのほうが良いのかもねって。無理やり最初の風呂敷に戻らなくても良いみたいな感じがあるのかな。

長井:キャラクターとしては収めるんですけどね。

田中:お話を無理に収めない代わりに、そっちはちゃんとやらなきゃ、みたいなのことは思いますね。

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