映画『空の青さを知る人よ』長井龍雪 監督&田中将賀さんインタビュー|友か仕事仲間か? 超平和バスターズが作品を作り続けられるわけ
超平和バスターズ、みんなの尊敬しているところは?
ーーちょっと気恥ずかしい話かもしれませんが、ご一緒して長いお二人は、お互いに尊敬するところはどんなところでしょうか?
長井:田中さんは、本当に勉強を怠らないのと、現場の環境まで考えて仕事なさっている方ですね。本当は監督がやらなくちゃいけないような仕事も、率先してやっていただけるんです。
例えば、作画マンのフォローであったり、その前段階の作画マンを集めるところだとか。僕は本当におんぶにだっこみたいな感じになってしまっているので、申し訳ないの一言なんですけど……。
一個の作品に対する取り組み方が真摯ですよね。本当に尊敬できるところだと思います。
田中:長井さんは、作品に対して、もちろん本人は妥協している部分もあるんでしょうけど、“わがまま”であるところですかね。
良いものは良い、悪いものは悪いって言ってくれて、そういう決断がすごく早い人なんです。
僕もいろんな現場で、いろんな人を見たりするんですけど、僕の中での良い監督はみんな、旗振り役が上手いんですよね。「こっちに来たら良いことあるぞ!」って、乗っている船がどうなろうとも、ひたすら旗を振っていてほしいんですよ。
そこに迷いはいらなくて、即断即決のほうが、付いていくほうとしては、ありがたい。
その決断によって、何かミスがあっても、それを表に出してほしくないというか。出していい人には出してもいいんですけど、現場で迷った姿って、実はかなり“よどみ”になるんですよね。しかもそれが続けば続くほど。
一瞬は親しみを持てるんですけど、それは一瞬で、後は「この人の言うこと信じて大丈夫なのかな?」っていうことに、つながってしまうときもあるんです。
そういう意味で、長井さんはそういうところを見せないというか、せっかちな人ということもあって、それが良いほうに働いていて、信じられる。
それにやっぱり、絵コンテの熱量が高い人なんですよ。この人の絵コンテは信用できる……!
長井&田中:……(気恥ずかしそうな沈黙)。
長井:お腹痛くなりました(笑)。
一同:(笑)。
ーーせっかくなので、もう一人のキーパーソン、岡田麿里さんについても。
長井:なんといっても発想力ですよね。本当に何を考えているのか分からない人です。長いこと一緒にいるんですけどね。
田中:僕はやっぱり岡田さんの台詞が好きだし、描いたキャラクターも好きで。
そういう意味で僕がこの3人組の好きなところって、岡田さんの脚本だけでもたぶん上手くいかなくって、それを上手く料理してくれる長井さんがいて、その関係性が信用できるんですよ。
長井:俺にしてみれば、コンテで無茶なことを振っても、田中さんが絵力でなんとかしてくれるっていう信頼があるので頼めるんですよ。
田中:それはこの3人での座組を、何本も作らせてもらえるっていう、なかなか業界でもないことをやらせてもらっている良さでもあります。そういう部分は信頼し合えていますね。
「脚本は岡田さん暴れてください。そのあとは何とかします」みたいな感じはあるのかなと思いますね。
ーー3人は友達ですか? 仕事仲間ですか?
長井:友達でありたいと思います!(笑)
田中:友達ですよ。
長井:ああ、よかったそう言っていただけて。
ーーケンカしたりとかもするんですか?
田中:しま……してました。してた時期もありましたね(笑)。
長井:まあ、だいたい俺と岡田さんが衝突する感じですよ。そしてそれを田中さんが取り持ってくれるという。
田中:しょうがないです。脚本家と監督はそういう立ち位置なので。
長井:でも本当にこの3人だから長く続くんだろうなって思います。
田中:そういう意味では、あまりなあなあになりすぎないように、お互いに守っていたりもするんですよね。
だから、毎回仕事するにあたって、緊張感はありますし、「この人たちにがっかりされたくない」というのは常にありますね。
長井:それはありますね。意外とプレッシャーもだんだん大きくなっていったりもするわけですよ。
田中:だから、この先もずっと同じ関係値でいけるかどうかの保証はないんです。それは前提としてあるんですよ。
ーー確かに、それは誰しも同じことですよね。
田中:そこで「俺たちこれからもずっと一緒だよね」って言えるほど、僕たちも若くないんだな、みたいな現実が見えている感じはありますよね。
長井:そこがなあなあでは済まない感じですよね。
田中:でも、それが逆に良いのかもしれませんね。出会ったのは、3人とも30歳を超えている時で、それが20代とかだったらもう少しこじれたかもしれませんし。
仕事的にという意味では、良い時に出会い、良いスタートを切れているからこそ、なんやかんやありつつも、今もやれているのかなと思います。