『あの花』『ここさけ』『空青』秩父三部作出演声優陣登壇の舞台挨拶レポート|「ガンダーラ」の選曲理由や大仏パーカーなど作品の裏話が、長井龍雪監督&田中将賀さんによるトークから明らかに!
2019年10月11日(金)の公開から、およそ1ヶ月が過ぎようとしているアニメ映画『空の青さを知る人よ(空青)』。
本作は『あの日見たの名前を僕たちはまだ知らない。(あの花)』『心が叫びたがってるんだ。(ここさけ)』を手掛けた長井龍雪さん、岡田麿里さん、田中将賀さんによるアニメ制作チーム“超平和バスターズ”による作品で、3作品全てが秩父を舞台としています。
そして11月2日(土)には、長井監督&田中さんに加え『あの花』から本間芽衣子(めんま)役の茅野愛衣さん、『ここさけ』から坂上拓実役の内山昂輝さん、『空青』から相生あおい役の若山詩音さんの声優陣を登壇者した舞台挨拶が、TOHOシネマズ新宿で行われました。
夢を追ってきた大人たちの物語が等身大に感じられる
茅野さんから順番にそれぞれ自身の出演作と演じたキャラクターを交え自己紹介していくと、長井監督が「チーム“超平和バスターズ”からやって参りました」と発言。なんと今まで、“超平和バスターズ”のと人前で言ったことはなかったそう。
田中さんも長井監督を踏襲して自己紹介を行ったところで、茅野さんと内山さんに観客として『空青』を観た感想を聞いていくことに。
それについては全国50万名限定で配布されている入場者特典の“復刻版「あの花」ラジオ特別版”で語っていることや、内山さんが吉沢亮さんや吉岡里帆俳優陣のお仕事に感動していたことや、茅野さんが若山さんのお芝居が大好きになったことが明らかになりました。
茅野さんは長井監督ら“超平和バスターズ”の面々のチームワークが画面にたくさん詰まっているとも話しており、見覚えある秩父の景色を見て「故郷に帰るような、なんともいないノスタルジックな気持ちになった」とコメント。
内山さんは『あの花』『ここさけ』と来てまた若い世代の物語が描かれると思いきや、大人の物語が描かれていることに「そう来たか!」という驚きがあったそう。『ここさけ』から幾年を経て年齢を重ねたことで、高校生たちの物語ではなく「夢を追ってきた大人たちの物語」が等身大に感じられるようになったとも述べていました。
そしてこの感想を聴いた若山さんは、演じている際には「自分で大丈夫なのかな」という不安があったとを明かしました。今おふたりの話を聞くことができたので、一安心できたようです。
声優陣に作品について伺っていったところで、話題の中心は長井監督&田中さんへ。まずは『空青』が、『あの花』『ここさけ』のヒットを経てどういった経緯で生まれることになったのかを掘り下げました。
長井監督によると『ここさけ』のインタビューをやっている頃に「(秩父を舞台とした作品を)二回やったので、三部作になったらいいですね」と話しており、「そう言っておけば既成事実で作らせてもらえないだろうか」という狙いがあったのだとか。
続いて田中さんが、『空青』は制作前から作品の舞台を秩父にすることを決めていたとコメント。『あの花』『ここさけ』は物語を作っている内に秩父がいいとなったそうで、『空青』では物語の作り方の違いに苦心したと判明。
スタート地点が舞台からになっているので、最初はやはり難しかったそう。しかし脚本を務めた岡田麿里さんの出身地でもある“秩父”というお題があったからこそ、発想の仕方が変わり自分たちの経験などを落とし込んだ作品になったとのこと。
また今回で秩父を舞台とした作品を三作も重ねたことで、地理的な知識も相当得られた様子。そんな秩父へのアプローチに関しては田舎と都会といった要素を含めることで、『空青』は今の形になっていったそうです。
加えて長井監督たち“超平和バスターズ”の面々は全員地方から出てきた人間であり、田舎と都会、そして30代の人たちへの思い入れは強くあったことも明かしてくれました。
この話を受け『空青』であおいを演じることになった若山さんは、自身があおいと近い考えをしているとコメント。そのためあおいの姉である相生あかねが、何故あそこまであおいを愛してくれるのか。そして金室慎之介がどうしてあそこまでやさぐれたのか、実は納得できる部分がなかったのだとか。
しかし作品が完成して客観的に観たことでようやく理解できたとのことで、演じている際はあおいのキャラクターに入り込んでいたことを伺わせてくれました。
続いてMCからコメントを求められたのは茅野さん。先ほど若山さんの話にも出てきたあかねと歳が近いということで、「全然境遇は違うけれど、自分を重ねちゃいましたよね」と発言。
やはり感情移入してしまうようで、『空青』終盤で金室慎之介としんのが邂逅を果たしたシーンを引き合いに出しつつ、「もしも10代の時の自分と会ったら、私の姿を見てこうなってよかった」と言ってもらえるのかなと考えてしまうとも。
内山さんもこのシーンは響いたようで、共感していた様子。加えて「(10代の時の自分に)相当けなされると思います」とも述べていました。
『あの花』『ここさけ』と『空青』の共通点とは
『空青』が観る人の世代や共感しているキャラクターによって、様々な捉え方があることが分かったところで、話題は『あの花』や『ここさけ』との共通点が話題の中心に。
中村正嗣のパーカーの“ANH”や冒頭シーンで描かれた旧秩父橋に“ウサミチ”、『空青』作中に登場したシカ肉にあたったドラマーのアロハシャツが『あの花』の久川鉄道(ぽっぽ)と同じものなど、『あの花』『ここさけ』『空青』と追いかけてきたファンには嬉しい話が次々飛び出します。
そしてあおいが着ていた“大仏のパーカー”は、作中でも歌われている楽曲“ガンダーラ”繋がりであることも判明。この話題から“ガンダーラ”の選曲理由についても触れられ、岡田さんや田中さんとカラオケに行く際に、長井監督がよく歌う“持ち曲”であることが判明。
この話になった際に長井監督は恥ずかしそうな様子ではありましたが、歌詞の内容が作品にマッチしているという点も大きかった様子。制作中に偉い人から外すよう言われることもあったそうですが、引くに引けなくなって最後まで押し通したのだとか。
高校生のあおいが仏像のパーカーを選んでいるところがキャラクター性にあっている、そんな話題も飛び出すことに。あおいは世の中に媚びたりしない中二病的なスタイルを見せていますが、彼女を演じる若山さん自身もそういう部分を持っていたことを告白。だからこそかあおいの心情は容易に想像できたそうで、驚くことはなかったそうです。
他にもライブハウスをはじめ、『空青』作中に『あの花』『ここさけ』に登場した学校の制服を着た生徒がいることや、めんまやしんのといった存在が登場することから、秩父が幽霊や生霊がよく現れるスピリチュアルな土地になったみたいな笑い話を挟み、最後に登壇者がひとりずつコメントしていきました。
茅野さんは『あの花』10周年が迫っていることを話すと、3作そろい踏みのイベントにめんま役として登壇できた喜びを語りました。また同じ秩父が舞台ということで、宿海仁太(じんたん)をはじめとする作中の超平和バスターズの面々を、『空青』のなかで探していたことを明かしました。
内山さんが3作品の世界観の繋がりに言及して繰り返し見返したくなるとコメントすると、若山さんは大先輩や素晴らしい方々とこの舞台に立てて嬉しいと話しました。
そして田中さんが『あの花』『ここさけ』を最近見返し、当時思っていたことや見ていたことを客観視できたとして、我ながら面白いと思ったと発言。このまま『空青』を見たらさらに面白いと太鼓判を押しました。
また『空青』は30代と10代のふたつの目線で追いかけられることに触れ、人間関係だけでこれだけの物語を見せられることがこの作品の強みだと自信を露に。最後に長井監督が、自身の作ってきた3作品のキャストが揃って舞台に立っている光景を当時は思っても見なかったと感無量な心境を伺わせ、『あの花』から好きでいてくれたファンのみなさんへ感謝を述べました。
公開からそろそろひと月を数えようとしていますが、今なお広がりを見せている映画『空青』。まだ劇場で観賞するチャンスは残っていますので、様々なキャラクターの目線でこの物語に浸ってみてはいかがでしょうか。
[取材・文・撮影/胃の上心臓]
映画『空の青さを知る人よ』作品情報
STORY
山に囲まれた町に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。将来の進路を決める大事な時期なのに、受験勉強もせず、暇さえあれば大好きなベースを弾いて音楽漬けの毎日。
そんなあおいが心配でしょうがない姉・あかね。二人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、二人きりで暮らしてきたのだ。
あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。姉の人生から自由を奪ってしまったと…。
そんなある日。町で開催される音楽祭のゲストに、大物歌手・新渡戸団吉が決定。そのバックミュージシャンとして金室慎之介の名があがる。
あかねのかつての恋人であり、高校卒業後、東京に出て行ったきり音信不通になっていた慎之介が町に帰ってくる…。
時を同じくして、あおいの前に、突然“彼”が現れた。“彼”は、しんの。まだあかねと別れる前の、高校時代の姿のままで、13年前の過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。思わぬ再会をきっかけに、次第に、しんのに恋心を抱いていくあおい。
一方、13年ぶりに再会を果たすあかねと慎之介。せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。
スタッフ&キャスト
出演:吉沢亮 吉岡里帆 / 若山詩音 落合福嗣 大地葉 種﨑敦美 / 松平健
原作:超平和バスターズ
監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
主題歌:あいみょん(unBORDE/Warner Music Japan)
音楽 横山克
原作:超平和バスターズ
制作:CloverWorks
製作:アニプレックス フジテレビジョン 東宝 STORY
配給:東宝
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