声優・花守ゆみりさん朗読のオーディオブック『かがみの孤城』独占インタビュー|聴いた後の世界観から抜け出せない余韻を楽しんでほしい
どこにでもいる中学生の女の子のように
――こころちゃんを演じてみていかがでしたか?
花守:こころちゃんはほかの子供たちと仲良くなりたいと思いつつ、彼らとどのように接すればいいのか最初は模索している部分がたくさんありました。
セリフの中ではこころちゃんの言葉が少ないので、地の文で心が揺れ動く様子を表現できたらいいな、と思いながら読ませていただきました。
――心がけたことや気をつけたことはありましたか?
花守:どうしてもこころちゃんに寄り添いすぎて自分の気持ちまで沈んでしまうところがあったので、あくまで彼らの感情の中での浮き沈みであることを大事にしようとディレクションしていただきながら、気持ちが沈まないように気をつけました。
中学生の彼らは繊細な年齢で、繊細な時期でもあるので、“声の質はこれで”と括りを決めず、心の変化によって音の質や高低を変えて、どこにでもいる中学生の女の子のように表現してあげることができたらな、と思いながら声をあてさせていただきました。
――お話を聞いていると、実際にオーディオブックで花守さんの朗読を聴くのがさらに楽しみになってきました。
花守:最初は少し気持ちが沈むと思いますが、後半に進むにつれて、“なぜここに集められたのか?”と本人たちが考えるようになって、彼らも自分の問題をようやく心の中で受け入れることができるんです。
そこからまたお互いぶつかったり、相手への干渉の仕方だったり、その部分に自分たちもどこかで経験したことがあるような気がして。
それは学生時代に多くの人が感じることだと思うので、幅広い層の人が共感してもらえるのではないかな、と思っています。そういうところにも注目して聴いていただけると、“自分の学生時代とこの子がすごい重なる!”という部分が見つかるのではないでしょうか。
ほかの役者さんたちの力があったから
――7人のメインキャラクターたちを、花守さんを含め、小林裕介さん(マサムネ役)、伊藤かな恵さん(アキ役)、島﨑信長さん(リオン役)、西山宏太朗さん(スバル役)、大和田仁美さん(フウカ役)、堀江瞬さん(ウレシノ役)と豪華な声優陣がそろっていますね。
花守:そうなんです! 先輩後輩問わず、幅広い方々がキャラクターの声を担当しています。だからこそ人間の生々しさというものが伝わりやすくなっていると思います。
――ほかのキャラクターの声を聴いてみていかがでしたか?
花守:みなさん素敵ですが、個人的に喜多嶋先生役の豊口めぐみさんと、こころちゃんのお母さん役として寄り添ってくださった田澤茉純さんに感謝しています。
おふたりとも違う現場でお会いする機会があって、『かがみの孤城』でご一緒していますね、とお話させていただきました。
田澤さんはお母さんという立場を今の自分の年齢でどう演じればいいのか悩んでくださっていて。葛藤しつつもこころちゃんのお母さんとして寄り添ってくれているのが、田澤さんの声を聞いていて感じました。
演じる私たちはお母さんと娘というほど年齢もそこまで離れていないので、その中でお母さんを演じる葛藤があったと思いますし、私自身も娘として何ができるのかと考えたりして。
お母さんとこころちゃんは寄り添っていても相入れない部分もあったので、激しくぶつかりながらも、田澤さんに「ごめんね」と心の中でつぶやいていました(笑)。
――そうだったのですね(笑)。
花守:また、大先輩の豊口さんはいろいろな作品でお世話になっていて、本作では先生という立場で演じていらっしゃいますが、ご自身も今回の作品で演じるにあたり辛い部分があったとおっしゃっていました。
物語の中でこころちゃんに寄り添える存在でなければならないこともあり、違う現場でお会いしたときもこの作品についてすごく気にかけてくださったんです。
先生の声を聴いたらこころちゃんも救われるな、と思いながら収録していました。
――作品の中だけでなく、声優さんたちの間でも寄り添い合うのは素敵ですね。
花守:私自身、こころちゃんに寄り添いながら演じることができたのは、役者さんたちの力だなとすごく感じています。
寄り添ってくださるおふたりに感謝しつつも、鏡の中で一緒に悩んだ仲間たちも個性派ぞろいの声優の方々ばかりですし、男の子のキャラクターも大好きです。
マサムネ(CV:小林裕介)のとんがり具合も好きですし、あとは、やっぱりアキちゃん(CV:伊藤かな恵)は目が離せない存在です。