アニメ『歌舞伎町シャーロック』山下誠一郎さん、斉藤壮馬さんによる座談会第4弾|ゲストキャスト・鈴木達央さんが作り上げたキャラや探偵たちが紡ぐ物語、細かい要素に「シェルをブレイクしている作品」と2人とも興奮♪
今後は“切り裂きジャック”“京極の恋”と、まだまだ登場する新キャラを要チェック!
――ここからの話数では、どんどん先が気になってくると思うのですが、注目ポイントは?
山下:やはり、テーマの1つとしては“切り裂きジャック”かな。これからの軸になるのかなと思います。
斉藤:今まで散々、面白いところを語ってきましたけど、この作品は巧妙な作りになっていて、ギャグパートの裏やその中に、核心に迫るような伏線がかなり散りばめられていて。
ギャグではないところに目を向けると、実は静かに、着実に物語が進行しているというのは、見ていただければ、だんだん気付いていただけるのかなと思います。
細かいワンカット、ワンカットが、だんだん(解決に向かって)収束していくのは見てほしいです。
山下:点が線になっていくというか。あと、何げない長屋の面々の一言とかが、後の布石になっていたりするので、今だからこそ考察のしがいがあるのかなとも思ったりしますね。
斉藤:あと、個人的に1つ言うとすれば……。
山下:はい。
斉藤:“京極の恋”これですね。作中最大のテーマと言っても過言ではありませんから。……いや、過言なんですけど(笑)。でも、優しく見守っていただきたいですね。
山下:確かに。
斉藤:あとは……新キャラがいっぱい、というか、まだまだこれからも出てくるので。
山下:そうですね、マイクロフトとか。
斉藤:マイクロフトは、ある登場シーンで、机の下に隠れているシャーロックに「久しぶりだな、我が弟よ」と言っているんだけど、(顔を両腕で防御するようなポーズで)腕を曲げていて「あ、この人はやばいぞ」と思って。
山下:ガチガチの“陰”の変態ですもんね。
斉藤:彼は本物ですからね。ぜひ、そんな新キャラを楽しみにしてください(笑)。
――#07にはアイリーンや、ゲストキャストに杉田智和さんが登場して、「この先も出てくるのか!?」という期待もありますし、前回の座談会でも注目ポイントを伺ったら、小西(克幸)さんが「京極」と答えていたので、京極にも何かあるんだろうなと。
山下:間違いなく、「頑張れ!」と温かい目で応援したくなるはずです。
斉藤:ありがとうございます。
とにかく注目ポイントを挙げればキリがないんですけど、僕個人というか、いちコンテンツの受け手としては、楽しいも悲しいも、おかしいも怖いも、全部ごった煮になっているエンターテイメントは、すごく面白いなと思うんです。
この作品はそんな様々な要素をまぜこぜにしたまま、すさまじい勢いでクライマックスへと向かっていくので、とにかく1回#12まで見てください。
本当に1回、1回だけでいいから。
一同:(笑)。
――改めてここまでの放送を振り返って、ご自身のキャラにとってシャーロック&ワトソンとはどんな関係性、存在だと捉えていると思いますか?
斉藤:京極は基本的に、シャーロックやワトソンに対して、何か特別な思いがあるとは、あまり描かれていなくて。
“自分自身がどうか”というのをベースに考えていると思いますが、ここから先、ワトソンと会話するシーンが増えてくる……というか、親密になってくるので。
山下:ジョン呼びでしたっけ?
斉藤:そう、急にだよ。
一同:(笑)。
斉藤:ワトソンと親密になっていくんですけど、なぜそうなるかを少し注目していただきたいなと思いますし、京極が心を開いたり、歩み寄って関係性が変わるというよりは、必然的に彼らの関係性が変わる事柄が起こるので、見ていただければわかると思います。
――当初は、長屋の探偵とシャーロックとはライバルなのかなとも思いましたが、そうでもないような関係ですよね。
斉藤:京極は“自分ができる”と思っているので、わりと他の探偵のことも見下しているだろうし、(シャーロックのことを)好敵手とは思っていないんでしょうね。
#03でもB造しゃべりになっていながらも「そろそろ認めたら、ミステイクを」みたいなことを言っていたので、基本的には自分だけ出し抜ければ良いという感じだと思いますけど、まだ序盤ですから、今後どうなっていくのかは見てほしいですね。
モリアーティとシャーロックの最初の出会いや関係性も肝に!?
山下:モリアーティ的には、大人の探偵もいれば、メアリなど同世代の探偵とか、いろいろな人がいる中で、いち高校生が変人シャーロックと同等に、“ワトソンのように”ではなく同じ価値観や目線で話ができていることが、僕も気になっていたところだったし、皆さんも気になる点だと思うんです。
“天才高校生”だからと括ることもできると思いますが、みんなの人気者・モリアーティくんが、「なぜ(シャーロックと)そうなったのか」というきっかけ、突き詰めれば出会いですよね。
どういった出会いをして、どういう流れで、今のやり取りをするに至ったのかに注目して、楽しみにしていただけたらなと思います。
それに、モリアーティから見ても、シャーロックは特別なんだと思うんです。
例えば、京極は相手を見下していても、やり取りはできるので。シャーロックは長屋の面々から見ても、会話になりにくい、コミュニケーションに難があるという点で、少し異質に感じます。
それでいて、勘と推理の冴えも圧倒的で、ワトソンが来る前から特殊な存在になっていたと思うので、そんなシャーロックと対等に接することができるモリアーティとの関係性が肝にはなってくると思います。
そういう意味では、ワトソンより先に、シャーロックの心に何か一石を投じた人物なのかなとか、ウマが合うというか、なにか同じ波長を持っていたり、モリアーティを惹き付けてやまない何かがあるとか。
きっと、モリアーティからしたら、居心地は良いんだろうなと思いますね。
――ワトソンのことは、#04で今までの“おっさん”呼びから“ワトソン”と呼ぶ距離感にもなっていましたね。
山下:きっとワトソンにも興味を持ったんですね。今後の関係性の変化を楽しみにしていただけたらと思います。
――作品にちなんで、ご自身への質問ですが、歌舞伎町の思い出はありますか?
斉藤:ないですね……いろいろなフィクションの作品で描かれていると思いますし、東京で仕事をしている僕らとしては、現実としても近い場所にあるんですけど、なかなか立ち入らないからこそ、勝手なイメージがどんどん広がっていくような街という印象ですかね。
『歌舞伎町シャーロック』はフィクションの世界ですけど、ああいう混沌としている感じのイメージはやっぱりあって。あまり行かないし、行ったことがないような気もするけど、よく知っている気もするみたいな。
概念上の街のような、どこかフィクションの気配がある街だなという印象です。
山下:思い出としては、仕事を始めたての頃かな。東新宿のお店から徒歩で新宿に帰ろうとした時に、歌舞伎町で迷ったんです。
斉藤:おぉ。
山下:どっちに行ったらいいかがわからなくて、もう全方向ネオン、色欲なんでもござれみたいな看板や人たち……特に僕は出身が田舎だったので、ドラマで見ていたフィクションのような街の中に入ってしまって。
それこそ『歌舞伎町シャーロック』に出てくるチンキルみたいな人たちがいたり、当時はビビりましたね。
壮馬さんがおっしゃったように、身近なのに、どこか非現実的というか、そこに生きている人は確かにいるのに、ドラマチックというか、フィクションめいたところがあって、あの時は不思議な感じでしたね。
高揚感と恐怖、帰れるかなとか、変なところ連れて行かれたらどうしようとか。ワトソンが「足跡追え」と言われた、ディランみたいなキャッチ(客引き)がいたら怖いなとか。
でも、キービジュアルにも描かれているアーチが印象的で、「トンネルを抜けたら、そこは……」的な、そういうロマンがあると思いますね。
――確かに、新宿というエリアなのに、ネオンのゲートの向こうは別世界というイメージはありますね。
山下:独特ですよね。アングラみも感じつつ、かといって下北のような街全体が象徴としているわけでもなく。普通に映画館とかもあって、よそ者を受け入れずではないですけど、なんとなく“なめてかかると火傷する”みたいな空気感もあるんですよね。
斉藤:実際にあまり行っていないから、勝手にイメージが育っていっちゃうというか、イメージがアップデートされていないんでしょうね。
――まだ新宿を見たことのない地方の若い世代は、『歌舞伎町シャーロック』を見て「こんな街なんだ」とイメージを持っちゃいそうですね。
斉藤:それはあると思います。僕も地方出身者ですけど、“東京”という場所に持つ、漠然とした憧れ感を象徴するような場所だと思うので、逆にそれはうれしいというか。
例えば、10年後くらいに『歌舞伎町シャーロック』見て声優になりましたという人と会ったりしたら、「じゃあ、実際の歌舞伎町行ってみようか」となるかもしれないし(笑)。
山下:親が見ていたとか、聖地巡礼とか。どんどん広がっていくのもいいですね。