【連載】TVアニメ『アサシンズプライド』インパクト大のOP&ED、その制作の裏側/インタビュー
天城ケイ氏によるライトノベル『アサシンズプライド』(富士見ファンタジア文庫 刊)がTVアニメ化し、2019年10月から放送中! アニメイトタイムズでは、各話ごとの声優インタビューを続けて掲載しています。第10話「迷宮図書館」の放送後となる今回は、前回から引き続き監督を務める相浦和也さんの登場です。
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インパクト大のOPとED、その制作の裏側は?
――『アサシンズプライド』はOP/ED曲が素晴らしいと思うのですが、監督から何か要望を出されたのですか?
相浦和也さん(以下、相浦):OP曲は、おしゃれに行ってほしいという要望は出しましたね。ED曲はメリダが心の中でお母さんにいろいろ相談するようなニュアンスがあればいいな、と思ってお願いしたんです。
アニメでのメリダって、お母さんやお父さんに認められるために、周りに認められなきゃと思っているところがあるので。そしたら、あんなにしっとりとした曲が上がってきて(笑)。
――監督の言ったままの曲ができてますよね……。絵もまた素晴らしくて。
相浦:OP曲がおしゃれだったので、映像的なところで言うとアニメ畑の映像パターンというより、CMとかPVとか、そういう畑の方の感覚のほうが合うんじゃないかと思ったので、PVなどを主にやられている方々と一緒に作ったんです。
なのでみなさんがおしゃれに感じているところは、普段アニメにないカッティングがあるからなのかなと思ってます。文字がいっぱい入ってるとかはまさにそうですよね。コンテをしっかり描いてくれたんですけど、指示にここはカッコよければ何でもいいですみたいに書いてあったので、セルワーク的なところはこちらに任せていただいて、その素材をどう使うかだったんですけど、映像にはめるのがすごく難しい曲ではありましたね。
エンディングはそういう意味では、作画監督の吉川真帆さんの絵を最大限アピールしたかったんです。なので極力止めると。曲を邪魔しないようにしたかったので。
――4人が座ってる絵が良いですよね。
相浦:あれもそれぞれの立場によって立ち位置が違っているようにしているんですけど、そうすることで、曲を邪魔せず、深い意味を持たせることができるのかなと。
――オープニング映像で言うと、メリダとエリーゼがコツンとするカットが好きです。
相浦:おしゃれな中にかわいさも入れてるというのは大きくて、そこでもキャラクターに深みが出ているのかなと思います。頭コツンのところはすごくウケたんですよ。コンテ上では真っ白で、背中向きで「かわいければいいです」と書いてあったんです。なので、作画さんと一緒に、何をやることが二人の関係性を描けててかわいいのかについて話し合いました(笑)。
新展開に突入した10話、いよいよ物語はクライマックスに
――10話では、セルジュ・シクザール公爵役で細谷佳正さんが登場しましたね。
相浦:細谷さんは、セルジュ役に合うのではないかと思って、こちらから指名したんです。変なことを言いますと、わざとらしいけど自然に、嫌味ったらしいことを嫌味ったらしくなく言える人なんです。そのニュアンスがすごく良くて、余裕のある脱力した感じがちょっと怖いみたいな感じでした。
クーファはもう少し芯の強い、はっきりしたしゃべり方をするけど、それに対して細谷さんはサラッと言っちゃう。下手するとチャラ男っぽく感じるんですよね。それとアドリブでの息遣いも、自分が思っていたものをさらに超えてくるような感覚もあったので、やってもらって良かったなと思いました。
――そういう意味では、ジン役の鈴木達央さんも、クーファと対照的になってて良かったです。
相浦:今回すごく良かったのは、男性声優人の方々の個性がうまくマッチしたところだと思ってます。
――声優のお話でいうと、脇を固めている方々がすごく濃いなと思いました。佐倉綾音さんのネルヴァも絶妙でしたし。
相浦:僕があまり声優さんを知らなかったので、オーディションで全部はめていったらこうなってしまったんです……。ネルヴァに関しては声が割れる人が欲しいと言ってたんです。「わーっ!」と叫んだときにガラッというノイズが入っちゃうような方がいいというオーダーをしていたら、ドンピシャで来てくれて。
どんなに絵が激しくても、きれいな声で叫んでいたら合わないと思ったので、声を枯らしていただける方がいいと思ったんです。それで言うとメリダちゃんの楠木ともりさんも、オーディションのときは、叫んだりするところは文字を読んでいる感じが強かったけど、本編やっていくごとにどんどん感情的になっていって、すごく良かったなと思っています。
――さて、10話についての話になりますが。オセローさんが暗躍していました。ああいうわかりやすくムカムカする役って大事だなぁと思いました。
相浦:10話あたりは、これまで小出しにしていた伏線みたいなものをまとめ始めるところになりますね。そういう意味で、オセローさんが何でずっと出てきていたのか、やっとしっくりし始めるのではないでしょうか。エピソードのわからない部分が補完されていく感じというか。
――そういう意味だと、見終わったあと1話から見てみたくなる作品ですよね。
相浦:前回、どういう構想でシリーズ構成をしたかというお話をしたと思うんですけど、1~12話まで見たあとにもう一度1話に戻りたくなるような構成にしたいとは考えてました。12話を見た上で1話を見たときに、また新しい一面が出てくるようにしたいというのが、芯としてあったので。
――メリダが何でパラディンではなくサムライのマナを宿しているのかというところで、いち視聴者としては、そんなこと別にいいじゃん!って思うんですけど、実はそれこそ本題でもあって。
相浦:仮面の者たちが出てきて、ここからやっと本筋に入ったなというのはありますよね。それにミュールとサラシャを早めに出していたのも、実は刺客として送り込んでいたというところが10話でわかるような感じにできればいいなというのがあったからで。
あとメリダのお父さんだと言ってピエロが出てきましたけど、そこでやっとメリダの生い立ちみたいなところを描かれる感じがしますよね。
――メリダの出生については1話からずっと問題にはなってましたが、いよいよそこがクライマックスになっていくんですね。
相浦:そうですよね。メリダちゃんが活躍すればするほど周りの反応が厳しくなってくるというのが面白いところなんです。
――それにしたって、オセローさんには腹が立ちましたけど……(笑)。
相浦::オセローさんの声もドンピシャだと思ってて(笑)。今回は声優さんたちに芝居臭くやってほしくないという基準で選んでいったんですけど、オセローさんだけは芝居臭くやってほしかったんです。
――だからこそ、そういう周りに対して健気に立ち向かっていくメリダがかわいいなと思います。それとクーファがメリダの父親のフェルグスに会って、メリダが退学させられそうになっていることを知る会話もありました。
相浦:あの会話で、お父さん自体が不器用なだけなんだというふうに見えればいいなと思いました。実際に大衆から叩かれちゃうからメリダちゃんを別棟に追いやってるというバックグラウンドもあったりするので。
――愛がないわけではないんですね。
相浦:不器用なだけの男なんです(笑)。