冬アニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』津田健次郎×細谷佳正×あおきえい 鼎談|「ハードルを上げてしまっていい。すごい作品です」
芝居のために絵を変えるスタッフ陣のこだわり
――津田さんと細谷さんには役作りについても伺いたいと思います。放送前なので、難しいかもしれませんが……。
津田:そうですね……言えることが限られてしまうんですが、酒井戸は絵の印象からしても普通の人物ではないなとすごくよくわかっていたので、「現場だな」と思っていました。
――というと、現場でディレクションを受けたり掛け合ったりして作っていく。
津田:そうですね。自分で作り込んで固めてから行くよりは、現場で監督や音響監督にヒントをいただいたり、ガンマイクを立てた収録環境や絡む人たちのお芝居のトーンを見たりしてから立ち上げようというのがありましたね。
――繊細且つ集中力の要る作業ですね。今ガンマイクで収録という話も出ましたが、一般的なアフレコとは違うやり方なんですね。
細谷:大体の場合アフレコのマイクって、ノイズを防ぐポップガードがあって、その後ろにマイクがある形なんですね。ですが、この作品はガンマイクを使っていました。
人が声を出した時に起こる建物内の反響とか、台詞が空気中に紛れていく感じといった細かい音のニュアンスが撮れるので『生っぽさ』が引き立つのだと思います。
音響効果を担当されている方(勝俣まさとしさん)も、普段実写映画をやられている方で。そんななかでこの脚本で、この座組で、っていうのはすごく久々にテンションがあがったというか。やる前からやり甲斐を感じたと言ったら変な言い方ですけど、そうでした。
――本当にこだわって作られているんですね。津田さんが言っていた役作りの仕方も、そういった環境だからこそ叶うのかもしれませんね。ちゃんと応えてくれるスタッフさんがいるというか。
津田:とても広い意味での自由な現場でした。脚本も、監督の演出も、収録環境もお芝居もとても開放された現場で、なかなかない経験でした。
――なるほど。ちなみに、現場ではどんなディレクションがあったのでしょうか?
津田:簡単に言うと「口パクに縛られないでください」「後で絵の方を直しますから、芝居優先にしてください」です。なので、ある話数に至っては、絵ができあがっているのに完全に口パク全無視して芝居してしまいました(笑)。
――縛られない結果。それって前代未聞ですよね。
津田:まず考えられないですね。演じていく中で“監督が表現したいもの”は見えているので、そこをガイドにしながら、口パクに縛られずに自分の呼吸や空気感でやっていきました。「こんなことが許されるんですか!? 自分の呼吸で芝居できて嬉しいです!ありがとうございます!っていう感じでしたね(笑)。
あおき:作品のヘソになる、重要な会話シーンがいくつかあるんですよ。
――取材にあたり本編を拝見していてそのシーンも観ているんですが、確かに生々しくて心に残るシーンでした。しかも、アフレコの時点で絵ができていたんですよね。
あおき:ある程度はできていましたね。
津田:そうなんですよ。なのに、芝居に合わせて変えるっていう。すごいですよね?
あおき:まずは、そのシーンを津田さんのお芝居で聞いてみたいっていう思いがあったんです。だから全然問題ないです。絵のことはそれからだという気持ちでした。
ゼロからセッションで作り上げていく“自由”な現場
――では、細谷さんにも役作りやアフレコについて伺いたいです。
細谷:「口パクに縛られない」という自由さだけでも、演者にとってとても幸せな事なんですけど、もっと自由度が高いんですよ。
例えば、「ここはこういうシーンだから、こういうテンションで言ってください」と言われると、ひとつ“縛られる”じゃないですか? ネガティブな言い方ですけど、ひとつ“窮屈”になる。でもこの作品はそうではないんですよね。伝え方が難しいんですけど。
――こちらがそこを理解しきれていないかもしれませんね。
細谷:多くの場合、ディレクションでは、ある程度“方向性”を決められるのが普通なんです。わかり易い言い方ですけど「悲しいシーンは、悲しそうに演じてください』みたいな。でも、『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』はそうじゃなくて、一旦、方向性を決めるところからこっち(役者側)に投げてもらえるんです。
そうすると、演者さんはみなさん優秀だからクッと同じ方向に向いていく。それを毎回ぶっつけ本番、『出たとこ勝負』でやっていくんですよ。そういう意味で『凄く自由』なんです。
津田:一回、収録してみて、違ったら「違います」で全然いいんだよね。
細谷:それを、僕らの感覚に任せてくれるんですよね。
津田:そう、おまかせしてくれるんですよ。でも、それはそれで責任が重いんです。だって、口パクを無視させていただくっていうのは、「それなら口パクを守ったほうがよかったじゃん!」っていう芝居をしたら駄目で、監督たちを「うん」と言わせないといけないんですよね。そういう責任とか緊張感とかも含めて、豊かな、面白い時間でしたね。
――「難しい」ではなくて、「面白い」んですね。
津田:はい。難しいじゃなく、面白いです。
細谷:そうですね。
津田:とくに、この2人は「面白い」だと思います(笑)。
細谷:面白かったですよね。楽しくて仕方なかった(笑)。
津田:「何この現場、超面白いんですけど!」って最初から言っていましたから。2人で。
――そういうところを見ても、監督の目は間違っていなかったですね。
細谷:“自由”なんだとわかると、例えば津田さんと僕のあいだで「めちゃくちゃいい空気感」で芝居出来たとするじゃないですか?本来なら二人のシーンを3カット以内に収めなければけならないところを、実際やってみたら7カットまでこぼれてしまったとします。でも、「今めちゃくちゃいい感じじゃなかった?」って監督たちのほうを向いたら「OKです」ってなるんですよ。
――そんなにこぼれたのに! 芝居がよかったからですね。
細谷:でも普通はないですからね、こんな事は。
津田:普通ないよね。絵を作り上げる大変さを知っているから、直す大変さもわかるんです。だけど、それを乗り越えてでもお芝居を優先させていただけるっていうのは……。すごく、すさまじい贅沢をさせていただいています。
あおき:セリフの間尺は演出が決めるんですけど、正直に言うと、演出に芝居経験があるわけじゃないので「このくらいかな」っていうタイミングをつけているんです。
だから、“プロの呼吸”っていうものを細かく反映できるかと言うと難しい。だから、僕の場合は「だいたい合っていればいいです。あとはこっちでなんとかします」と。だからお2人が演じた会話シーンもそうなったんですよね。
――10月に行われた1話上映会を取材したんですが、そのときにキャラクターデザインの碇谷敦さんが「人生で一番楽しいアフレコ現場だった」と言っていたんです。そういうところから来ていたのかもしれないですね。
津田:そんなふうに仰っていましたか。
細谷:それはめちゃくちゃ嬉しいですね。僕もそうでした。
あおき:作業はひとつ増えますけど、「その結果、確実に面白くなるんだ」って言う確信があるので、そこは苦労ではないです。現場もみんなテンションが高いんですよ。
――視聴者としても嬉しい言葉です。もっと聞きたいのですが、実はお時間が迫っています。
津田:放送後にも、ぜひ話をさせてください(アニメイトタイムズ内で放送後のインタビュー記事、配信を予定しています)。
細谷:放送前に情報を出す事が避けられて良かったです(笑)。前情報によって『思い込み』を持たずに、実際に観てもらいながら、理解していって欲しい。
――そうですね。ともあれ、放送前だとありきたりな質問しかできず恐縮なのですが、ぜひみなさんが思う見どころを教えてください。
細谷:見どころは、全部です。
津田:また難しいことを(笑)。
細谷:それしか言えないですよ(笑)。全部見て欲しいので、とにかく観てください(笑)。
津田:なるほどね。
細谷:そうです(笑)!変に「ここが見どころだよ」と言って、こちら側が視線を誘導しても違うなと思うので。
津田:そうだね。と言いつつ僕は、ハードルを上げてしまってもいいと思っています。すごい作品です。すごい作品なので、ぜひ観てください。
細谷:そうです。観ろ!…またコレ何か言われるだろうけど(笑)。
――お2人がそこまで言う作品ですから、十分に読者の期待を煽っていると思います。では、あおき監督はいかがでしょう?
あおき:じゃあお芝居について。普段あまり聞かない感じの“間合い”だと思うんですよ。その違いを楽しんでもらえると良いかなと思います。ひとまずは、ここですね。
津田:絵作りもすごいですよね。トレーラーを観ていただければわかるんですけど、頭っから“バラバラの世界”ですよ? 超テンション上がりますよね。わけがわからなくて! 面白いです。本当に。絶対にずっと観て欲しい。
各パートがフルスイングで仕事をしています。脚本の舞城さんも、監督も、音楽もすごいですし、ほかでは絶対に観られないものが観られると思うので、ぜひお願いします。
〔文・松本まゆげ〕
アニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』作品情報
あらすじ
殺意を感知するシステム「ミヅハノメ」を用いて、犯罪事件を捜査する組織、通称「蔵」。
そして、「ミヅハノメ」のパイロットとして犯人の深層心理「殺意の世界(イド)」に入り、事件を推理する名探偵・酒井戸。
頻発する凶悪かつ謎多き事件と、そこに見え隠れする連続殺人鬼メイカー「ジョン・ウォーカー」の影を追っていく。
放送情報
◆TOKYO MX
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日)24:00~25:00
第3話以降毎週日曜24:30~
◆テレビ愛知
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月7日(火) 25:35~26:35
第3話以降毎週火曜25:35~
◆KBS京都
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日) 24:45~25:45
第3話以降毎週日曜24:45~
◆サンテレビ
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日) 24:30~25:30
第3話以降毎週日曜24:30~
◆BS11
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日)24:00~25:00
第3話以降毎週日曜24:30~
◆AT-X
初回放送(第1話・第2話 連続放送)
2020年1月6日(月) 22:00~23:00
第3話以降 毎週月曜22:00~
リピート放送:毎週(水)14:00/毎週(土)6:00
配信情報
ひかりTVにて地上波先行・独占先行配信
◆ひかりTV
初回:1月5日(日)より毎週日曜 23:30~
※初回以降レギュラー配信 24:00~
◆dTVチャンネル
1月9日(木)より毎週木曜 23:30~
その他サイトも1月12日(日)24:00以降、順次配信予定。
詳細は各サイトでチェック!
▼見放題サイト
niconico(ニコニコ生放送/ニコニコチャンネル)
AbemaTV
dアニメストア
NETFLIX
GYAO!
フジテレビオンデマンド
バンダイチャンネル
Hulu
J:COMオンデマンド
ビデオパス
アニメ放題
U-NEXT
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▼都度課金サイト
Rakuten TV
DMM.com
ビデオマーケット
HAPPY!動画
PlayStation Video
クランクイン!ビデオ
ムービーフルplus
メインスタッフ
監督:あおきえい『Fate/Zero』『空の境界』『アルドノア・ゼロ』
脚本:舞城王太郎『龍の歯医者』
キャラクター原案:小玉有起『ブラッドラッド』
キャラクターデザイン:碇谷敦『Fate/stay night [Heaven's Feel』『Fate/stay night UBW』
美術・世界観設定:曽野由大『PSYCHO-PASS』『甲鉄城のカバネリ』
メインアニメーター:又賀大介『Re:ゼロから始める異世界生活』『ゼロから始める魔法の書』
音楽:U/S
原作:The Detectives United
▼OP/EDテーマ
OPテーマ:Sou「ミスターフィクサー」
EDテーマ:MIYAVI「Other Side」
CAST
名探偵・酒井戸:津田健次郎
百貴:細谷佳正
富久田:竹内良太
本堂町:M・A・O
東郷:ブリドカットセーラ恵美
早瀬浦:村治 学
白岳:近藤 隆
羽二重:岩瀬周平
若鹿:榎木淳弥
国府:加藤 渉
西村:落合福嗣
松岡:西 凜太朗