映画『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』大人なBLファンにオススメ!公開直前にチェックしたい8つの見どころ
劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』が2020年2月15日(土)より、東京・新宿バルト9、大阪・TOHOシネマズなんば他全国の劇場にてついに公開されます。
本作は株式会社フジテレビジョンが立ち上げたボーイズラブアニメの新レーベル「BLUE LYNX(ブルーリンクス)」の劇場作品第一弾です。
原作はシリーズ累計150万部突破の大ヒットボーイズラブコミック『囀る鳥は羽ばたかない』(ihr HertZ連載中)。原作者は国内だけでなく海外にも多くのファンがいらっしゃる漫画家ヨネダコウさんです。
作品の舞台は、男たちが生き残りをかけて、熾烈な抗争を繰り広げている極道の世界です。物語の中心人物は、被虐趣味で好色な一面をもつ、真誠会の若頭・矢代(やしろ)と、彼の付き人兼用心棒の百目鬼 力(どうめき ちから)。
傷を抱え、渇望を秘めて生きているふたりが、葛藤しながらも欠けたピースを埋めるように惹かれあっていきます。傷を抱えて生きる男たちのノワールBLがいよいよ幕を開けます!
本稿では原作ファンの方だけでなく、原作未読の方にも楽しんでいただけるよう、劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』の注目したい8つのポイントをご紹介していきます!
極道の世界がリアルに描かれており、作品に唯一無二の存在感を与えている
ボーイズラブには極道モノというジャンルがあり、まだボーイズラブという言葉がなかった頃から極道やそこに所属する人間を題材にした作品が数多く存在してきました。
既に確立された極道モノの中でも、本作品はとりわけリアルにその世界が描かれていることに定評があり、唯一無二の世界観を築き上げています。
極道と聞くとネガティブなものをイメージしがちですが、コミカルなシーンがバランスよく配置されていて、暗さだけが先行しないさじ加減が絶妙です。
それでもなお、裏社会で男たちが生き残りを賭けて、裏切りと駆け引きで熾烈な闘争を繰り広げている、ならず者たちのリアルな世界は見応えがあり、必見です。
自己矛盾を抱えて生きる若頭・矢代の人物像に惹き込まれる
2つ目の見どころは主人公・矢代(やしろ)の生きざまです。矢代は道心会傘下の真誠会若頭という立ち位置で、真誠会のフロント企業として資金を稼いでいます。
矢代は自己に対しても他者に対しても両価的な感情の間で揺れています。自己矛盾を抱えて生きていますが、本人は飄々としており、それをまるでゲームの様に楽しんでいる気配さえあります。
しかし実を言えば、自己の内部で論理や行動が食い違う矛盾に苦しんでおり、その姿は見ている者を無自覚に惹き込みます。矢代は渇望と寂寥を抱えたまま、孤独に生きていくことになるのでしょうか。
つかみどころの難しい人物像に、思わず彼の心の深淵を覗き込みたくなってしまうのも本作品の魅力であり、注目したいポイントです。
百目鬼と矢代、極道の主従関係に魅せられる
百目鬼 力(どうめき ちから)は矢代の付き人兼用心棒です。彼は元警察官ですが、とあることがきっかけで傷害事件を起こし、服役していました。
出所して真誠会の金融会社で働いていましたが、口下手という理由から用心棒として使えないかと矢代の元へ連れてこられます。矢代は百目鬼の外見が自分の好みであるうえに、性的機能が不能だということに関心を示します。
その後、百目鬼は矢代の付き人へと昇格しますが、百目鬼をそばに置きながらも矢代は「部下には手を出さないと決めている」と言い、心理的な距離をとります。
対して百目鬼は、矢代のことを美しいと表現し、愚直なまでに付き従っており、見る者としては百目鬼の行動の動機に興味を惹かれます。
百目鬼が寡黙なところやその表情から気持ちを読み取ることが難しいぶん、彼の胸の内が気になるところです。
ふたりは主従関係のままか、それとも愛がある関係を築くことができるのか、主従関係と恋愛関係の間で揺れるふたりの行く末に注目してご覧ください。
矢代と何やらワケあり⁉ サブカップルにも注目
矢代には影山莞爾(かげやま かんじ)という同級生がいます。彼は内科医で、火傷痕に興奮と執着を感じるフェティシズムを持っています。
矢代とは高校からの付き合いで、互いに昔からのクサレ縁、友人と言っていますが、どうもそれだけではない様子です。矢代と影山の高校時代に一体何があったのか、気になります。
矢代のお気に入りの久我 瑛心(くが えいしん)は天涯孤独な荒くれ者です。久我は矢代とは正反対の性格で己の欲するものを隠さない、欲望に忠実な男です。
久我と影山はただならぬ仲のようで、矢代はふたりの行く末を面白がりつつも気にかけています。矢代と影山の過去の関係が気になるのはもちろん、影山と久我の関係にも注目です。
原作者ヨネダコウさんの描かれる絵とセリフに心をつかまれる
ボーイズラブの名手であるヨネダコウさんの原作コミックスは、国内だけでなく海外でも人気を呼んでいます。
原作コミックスは、場面転換の仕方やカメラワーク、人物の配置などの画面構成がスタイリッシュで、小物の使い方もクールです。それらが動きのあるアニメーションとして堪能できることに期待です。
そして、ヨネダコウさんが描かれる男性キャラはどの人物も格好良く、特にスーツ姿の男性キャラの匂い立つような雄の色気に目を奪われてしまいます。
また作中のセリフには心をつかまれるフレーズが数多くあります。登場人物のビジュアル、心情の吐露やモノローグを劇場で体感できることも、劇場公開を楽しみにしたいポイントです。
声優界の美しき低音ボイスが勢ぞろいで熱演!
2013年から発売されているドラマCDシリーズに引き続き、原作ファンにも高い人気を誇っている声優陣がメインキャラクターを演じます。
極道で被虐趣味で好色という難しい役どころの矢代を、新垣樽助さんが高過ぎず低すぎず心地良いバリトンで熱演されています。
矢代の付き人兼用心棒の百目鬼を羽多野渉さんが、硬質かつそこはかとなく優しさを含んだ声で百目鬼のキャラクターそのままに演じています。
ドラマCDで長年に渡り培われてきたふたりならではの空気感をアニメで堪能できることも楽しみです。
さらに、矢代の友人・医者の影山を安元洋貴さん、矢代のお気に入りである荒くれ者・久我を小野友樹さんが演じています。
キャストには声優界の低音ボイスがそろい踏みしており、映画館の音響システムで響き渡る低音ボイスに浸ることができるのも本作品の楽しみのひとつです。
年齢制限あり、大人向けの劇場アニメであることに注目
本作品には映画のレイティングシステムによるR18+の年齢制限が設けられています。これは作品の舞台が裏社会であるということや、バイオレンスと性的な描写が作品の骨格を担っているからだと思われます。
しかし、大人向けというのはそういった設定だけに限りません。大人の方にこそ本作品を見てほしい理由があります。
矢代や百目鬼をはじめとして、物語には社会のまっとうな規定路線から外れた孤独な大人が登場します。
人を守ることで知った孤独、人と自分が違うことで知る孤独、人を愛することで知る孤独……大人であるからこそ識ってしまった孤独をドラマで見事に描き出している点に注目です。
ボーイズラブに特化したアニメレーベル「BLUE LYNX」に期待
株式会社フジテレビジョンがボーイズラブに特化したアニメレーベル「BLUE LYNX」を設立しました。その「BLUE LYNX」の第一弾が本作品です。
ボーイズラブ作品は男性同士の性愛を扱ったものがほとんどで、アニメ化するにはハードルの高い作品が多いです。しかし、そこに果敢に挑戦された制作陣の意欲に本作品への期待が高まります。
「BLUE LYNX」というひとつのパッケージになったことで原作にどのような化学反応が起こったかといったところも、注目ポイントのひとつです。
今回公開される劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』は、タイトルの最後に第一章という言葉が入っています。
今後の情報を楽しみに待ちつつ、原作のどの辺りまでがアニメ化されているのか、ぜひ劇場でご覧ください。
[文/宇坂真貴]
作品概要
劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』
2020年2月15日(土)公開
※上映館の最新情報はこちら。
【イントロダクション】
被虐趣味で好色な一面をもつ真誠会若頭、矢代。彼の元にやってきた百目鬼。彼等は次第に惹かれあっていく。自己矛盾を抱えて生きる矢代と、愚直なまでに矢代に従う百目鬼。運命に翻弄され“欠落”を補い合う二人の行き着く先は─。
【STAFF】
原作:ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』(大洋図書「ihr HertZ」連載中)
監督:牧田佳織
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:熊田明子/桑原剛
美術監督:佐藤勝/福島孝喜
色彩設計:鎌田千賀子/末永絢子
撮影監督:佐藤光洋
音楽:H ZETTRIO
音響監督:小泉 紀介
アニメーション制作:GRIZZLY
主題歌:Omoinotake『モラトリアム』
配給:T-JOY
【CAST】
矢代:新垣樽助
百目鬼 力:羽多野 渉
影山莞爾:安元洋貴
久我瑛心:小野友樹
三角隆仁:大川 透
竜崎篤士:三宅健太
平田和明:高瀬右光
七原祐輔:興津和幸
天羽静真:佐藤拓也
杉本隼人:三宅貴大