冬アニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』津田健次郎×あおきえい×碇谷敦が4〜6話を振り返る|「ロジックや理屈を超えた“感覚的”な回」
“感覚”で受け取りたいあのシーン
――5〜6話は井波七星が登場。同じ事件でも物語の色が変わりましたが、こちらはいかがでしょう?
あおき:津田さんに聞いてみたいことがあったんです。6話に泣くシーンがあるじゃないですか。井戸の中で酒井戸が。
津田:ありましたね。僕、粘りましたよね。
あおき:僕、正直あのシーンはうまくいくだろうかと不安だったんです。ふいに酒井戸の思いがぶわっと溢れるじゃないですか? だけど、6話って「カエルちゃんを助けたい」という気持ちをそこまで積んでいるわけじゃないので、伝わるシーンになるかなと。
アフレコでうまくいかなかったら、舞城さんに相談してセリフを書き換えてもらおうかと思っていたくらい。そうしたら、津田さんがテストテイクから芝居がすごくて。これなら全然大丈夫だと。
津田:本当ですか。良かったです。
あおき:津田さんのお芝居で一気に酒井戸と同じくこちらも悲しい気分になりました。助けられないと悲しいよねって。そういう話をしたかったです(笑)。
津田:確かに、あの状況で酒井戸が泣くというのはかなり唐突ですけど、あの回までくると、鳴瓢が家族を失っているという事実も飲み込めているじゃないですか。なので、僕の解釈ではありますが、酒井戸と鳴瓢の回路が繋がる感覚だったんです。感情をほぼ動かしてなかった酒井戸が、あそこで鳴瓢と繋がって「あきらかに椋だ」とボロボロッとくるという。
――そこまで“アバター”として無感情でしたが。
津田:そんな酒井戸が、単なるアバターではなく人間なんだとはじめて感じられるんですよね。泣きの芝居なので助走やアイドリングが必要なんですが、あえてあのシーンではせず。直前だけ揺らしてもらって、唐突にいきたいなと思っていました。ただ、言葉にするのは簡単でも、それを現実にやるのはすごく難しい。
――だから粘ったんですね。
津田:そうですね。テストも本番も、僕としては「もうちょっといける」と思いつつ挑戦していました。そのおかげで、非常に『イド』の醍醐味を味わえるシーンになったと思います。それぞれの悲しみが凝縮されている電車そのものが泣き始めた感じ。
碇谷:このシーンも、色までついていたんですけど直したんです。津田さんの声を聞きながら。
――それは例えばどんなふうに直したのでしょう?
碇谷:感覚的な部分ではあるんですが、大きく言うと涙の流し方や表情ですね。もともとは、ポロポロ泣いてしまったんですけど、しっとり泣いたほうがいいんじゃないかと思って、目のフチに溜まってからスーッと落ちるリアルな涙にしました。
津田:6話って、すごく感覚的な回ですよね。ロジックや理屈を考えちゃいけない。
碇谷:そうなんですよね。だから形骸的にポロッと落ちる涙はすごく嫌でした。
あおき:事件を解決しているのか?という疑問もありますからね。
津田:そう。だけど、とても良い回だなと思います。井波と数田の変な距離感とか色んなものが悲しみに溢れていたけど、全部直接的な感情には出ないんですよ。だから酒井戸が出すのかなと。
――なるほど。
津田:それまでと違う回だと感じましたね。
――だから百貴も「もう少し酒井戸の好きにさせてやろう」「俺自身も、この世界をこのまま眺めていたいってのは、おかしいだろうか」と言ったんでしょうね。
津田:そうでしたね。すごく美しくていい回でした。
この先にあるのは『スタンド・バイ・ミー』?
――そんなシーンもありつつ、6話では名探偵に推薦された本堂町のほか、ミヅハノメの詳細やジョン・ウォーカーの正体といった多くの謎が浮上しました。これにはどんな意図があるのでしょうか?
あおき:TVシリーズに限らず物語には構成上のルールがあります。例えば、2時間3幕構成の映画なら、最初の30分が1幕で次の60分が2幕、最後の30分が3幕というふうに分かれて、その中間をミッドポイントというんですけど、そこで次に展開するべき事件が起こるんです。ハリウッドのシナリオの教則本にも描かれているような黄金ルールみたいなものですね。
それを意識しているわけではないですが、6本目は折返し。ここで何かを入れたくなるのは、常なんですよね。
――ということは、井戸に入るだけではない次の展開が。
あおき:そうですね。
碇谷:ここからもまた色の違う回が出てきますからね。詳しく言えないですけど、会話劇というか。
津田:不思議な回でしたね。『イド』のなかではコメディ回になるのかな? 味わい深いです。うまく表現できないけど、『スタンド・バイ・ミー』みたい。
碇谷:確かに(笑)。あと、個人的は9話でまたコンテ演出をやっています。やりたかったことができて、アニメーター人生のなかで一番楽しかったのでぜひ観てほしいです。自己満かも知れないですが。
あおき:6話までご覧いただけているのなら、ぜひ最後まで観てほしいですね。6話まで見て「楽しい」と思ってもらえていたら、最終回も「楽しい」と思ってもらえるはずなので。
津田:そうですね。最初からトップギアで走っていますけど、この車はとても高性能なのでもっとスピードが出ます。もう一段階踏み込めるぜっていう思いでいるので。ご期待に添えると思いますよ。
[文・松本まゆげ]
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アニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』作品情報
殺意を感知するシステム「ミヅハノメ」を用いて、犯罪事件を捜査する組織、通称「蔵」。
そして、「ミヅハノメ」のパイロットとして犯人の深層心理「殺意の世界(イド)」に入り、事件を推理する名探偵・酒井戸。
頻発する凶悪かつ謎多き事件と、そこに見え隠れする連続殺人鬼メイカー「ジョン・ウォーカー」の影を追っていく。
放送情報
◆TOKYO MX
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日)24:00~25:00
第3話以降毎週日曜24:30~
◆テレビ愛知
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月7日(火) 25:35~26:35
第3話以降毎週火曜25:35~
◆KBS京都
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日) 24:45~25:45
第3話以降毎週日曜24:45~
◆サンテレビ
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日) 24:30~25:30
第3話以降毎週日曜24:30~
◆BS11
初回放送(第1話・第2話連続放送)
2020年1月5日(日)24:00~25:00
第3話以降毎週日曜24:30~
◆AT-X
初回放送(第1話・第2話 連続放送)
2020年1月6日(月) 22:00~23:00
第3話以降 毎週月曜22:00~
リピート放送:毎週(水)14:00/毎週(土)6:00
配信情報
ひかりTVにて地上波先行・独占先行配信
◆ひかりTV
初回:1月5日(日)より毎週日曜 23:30~
※初回以降レギュラー配信 24:00~
◆dTVチャンネル
1月9日(木)より毎週木曜 23:30~
その他サイトも1月12日(日)24:00以降、順次配信予定。
詳細は各サイトでチェック!
▼見放題サイト
niconico(ニコニコ生放送/ニコニコチャンネル)
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dアニメストア
NETFLIX
GYAO!
フジテレビオンデマンド
バンダイチャンネル
Hulu
J:COMオンデマンド
ビデオパス
アニメ放題
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Amazon
▼都度課金サイト
Rakuten TV
DMM.com
ビデオマーケット
HAPPY!動画
PlayStation Video
クランクイン!ビデオ
ムービーフルplus
メインスタッフ
監督:あおきえい『Fate/Zero』『空の境界』『アルドノア・ゼロ』
脚本:舞城王太郎『龍の歯医者』
キャラクター原案:小玉有起『ブラッドラッド』
キャラクターデザイン:碇谷敦『Fate/stay night [Heaven's Feel』『Fate/stay night UBW』
美術・世界観設定:曽野由大『PSYCHO-PASS』『甲鉄城のカバネリ』
メインアニメーター:又賀大介『Re:ゼロから始める異世界生活』『ゼロから始める魔法の書』
音楽:U/S
原作:The Detectives United
▼OP/EDテーマ
OPテーマ:Sou「ミスターフィクサー」
EDテーマ:MIYAVI「Other Side」
CAST
名探偵・酒井戸:津田健次郎
百貴:細谷佳正
富久田:竹内良太
本堂町:M・A・O
東郷:ブリドカットセーラ恵美
早瀬浦:村治 学
白岳:近藤 隆
羽二重:岩瀬周平
若鹿:榎木淳弥
国府:加藤 渉
西村:落合福嗣
松岡:西 凜太朗