音楽
大塚紗英ソロデビューインタビュー

『バンドリ!』花園たえ役でお馴染み、大塚紗英ソロデビューインタビュー|ミニアルバム『アバンタイトル』収録曲の中には『バンドリ!』へのリスペクトも

人気コンテンツである『BanG Dream!(バンドリ!)』(花園たえ役)、『D4DJ Groovy Mix』(月見山渚役)で活躍中の大塚紗英さんがソロデビューをする。

ソロデビュー ミニアルバム『アバンタイトル』(2月26日発売)、新たなスタートに相応しいタイトルが付いた本作は、シンガーソングライターである彼女の個性や感性が強く感じられる作品になっている。今回はこのアルバムについて、彼女にいろいろと話してもらった。

激昂って若いうちにしか書けないと思うんです

――通常盤のジャケットで持っている黒いアコギはご自身のものですか?

大塚紗英さん(以下、大塚):これは撮影用なんです。自前で使っているのはマーティンのHD-28というギターです。

――すごくいいギターですね。

大塚:当時の貯金を全部使って買いました(笑)。温かみがあって良い音が出るんですと店員さんが言っていたので。

▲通常盤ジャケット

▲通常盤ジャケット

――『バンドリ!』のイメージがあったので、ジャケットでもエレキを持っているのかなと思っていたんです。

大塚:ビジュアル的に被ってしまうのが気になったんです。『バンドリ!』に育ててもらったんですけど、それと混同してしまうと乗っかってるみたいな感じになってしまうんじゃないかなって。それだと自分としても不本意だし、コンテンツに対するリスペクトがあるからこそ、そこはよく考えました。

――特に最初の作品ですしね。

大塚:でも追々、私が胸を張ってアーティストと言えるようになったら、恩返しという形で、そういうビジュアルもいいのかなとは思ってますけど、まだまだ私は駆け出しなので。

――アコギのほうがシンガーソングライターという面は強く打ち出ると思います。では、今回のデビューに至る経緯を教えてください。

大塚:めっちゃ急だったんですよ。でもデビューできたのは、TVアニメ『エッグカー』のOP主題歌で「What’s your Identity?」を使って頂いたから、というのが大きいです。大型のコンテンツに関わってるからデビューなんて簡単でしょと思っている方もいるかもしれないですけど、現実はそんなに甘くないですから(笑)。

――デビュー作となると、これまで作ってきた曲の集大成みたいなものをぶつけてくるアーティストも多いですけど、大塚さんはどうですか?

大塚:自分のライブでは現状13~4曲のオリジナル曲を歌っているんです。基本的にはその中から選んでいるんですけど、「フォトンベルト」と「ぬか漬け」は、今回用というわけではないんですが、デビュー作があることも視野に入れて作った曲です。

――曲はたくさん作るほうなんですね?

大塚:曲を作るのが趣味みたいな感じなんです。食事と同じくらいの感覚で、常に曲は作っていたいんですよね。それこそ、すごく感動する映画を見たとか、誰かから嬉しい言葉をもらったとか、そういう些細な出来事でも心の琴線に触れたときに、曲にしたい!って思うんです。

――どんな感じで曲作りをしていくんですか?

大塚:いろいろな作り方はあるんですけど、たとえば「ぬか漬け」なら、“ぬか漬け”というワードを探してきて、そういうタイトルの曲にしよう、というところから始まったんです。

で、サウンド的には私の中にあるJ-POPのロックサウンドと、自分が今まで活動させていただいてきたアニソンの世界観の真ん中を突きたいなと思って、ボーカロイドの曲にありそうな曲調にしたいという意図があったんですね。

あとは『バンドリ!』では楽しくて弾きごたえのある曲をやってきたので、そこから入ってきてくれた人も楽しんでもらえるように、技巧的なフレーズを入れようと考えたり、そういう漠然としたサウンド感が先にあって作っていくんです。

――“ぬか漬け”始まりだったんですか?

大塚:別に“いぶりがっこ”でも良かったんですけど、“ぬか漬け”のほうがキャッチーかなって。

――いや、「“いぶりがっこ”でも良かった」も「“ぬか漬け”のほうがキャッチー」もよくわからないです(笑)。

大塚:選択肢が漬物でしかないですもんね(笑)。最初(タイトルは)食べ物がいいなぁと思って、たぶん、スーパーでいい食べ物を探してたんでしょうね。それで漬物コーナーで立ち止まって、たくあんを見ながら“ぬか漬け”を連想して、キャッチーだな!みたいな。

――そのセンスが最高過ぎます(笑)。

大塚:しかも“ぬか漬け”というワードとボーカロイド風のサウンド感がすぐにイコールしたんですよ。

――面白いです。個人的に、“ぬか漬け”というタイトルにしてはカッコいいサウンドだなと思いましたから。

大塚:“ぬか漬け”のワードからゴリゴリの曲が出てくるとは思わなかったってコメントがすごく多かったのが衝撃で。じゃあみんなどんなサウンドだと思ったの?って思いました。

――和テイストでゆったりとした曲とか?

大塚:そうなんですか! 逆にびっくりですよ(笑)。

――でも大塚さんの“ぬか漬け”ならカッコいいロックサウンドは必然かもしれません。この曲はメッセージも強いですね。

大塚:自分が漠然と普段思ってた憤りみたいなものを、ぬか漬けという言葉にうまく寄っかかって、面白おかしく聴けるようにしたいなと思ったんです。

仕事をするときもそうですけど、思い通りにいかないことは当然あるんです。でも、それをうまく伝えられなかったり、言ってはいけない事だったりするじゃないですか。

そういう言いたいけど言えないことを詰め込んだという感じです。ちょっと概念的な部分ではあるんですけど、私の真意としては、《はやく食べてよ ねえ あたしを》というのが、最終的に《いつか見つけてもらうの》という言葉にアンサーを託しているんですけど、誤解されることって誰にでもあると思うけど、そういう溜まっていたフラストレーションをその言葉に詰めたというか。本当はそうじゃないのに!っていうのが詰まった曲だと思います。

――めちゃエモーショナルですよね。

大塚:激昂っていうのは若いうちにしか書けないと思うんです。この感性は数年経ったら消えていくものだという自覚があって。

それは19才のときに思ったんですけど、そこから23才くらいまでがピークで、徐々に衰退すると思っているから、今のうちに感情の憤りとか高ぶりを曲に残しておかなければいけないという危機感があって作ったんです。書いたときは23才だったので。

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