劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 杉山紀彰さんインタビュー|3部作はTVシリーズ6クール分を演じ終えた時のような感覚!?【連載第1回】
劇場版[HF]は『Fate/stay night』という作品を理解する上で、とても重要なエピソード!
――アニメで初めて[HF]に触れるという方々に楽しんで欲しいポイントはありますか?
杉山:『Fate/stay night』は情報量がすごく多い作品で、劇場版[HF]ではいわゆる共通ルートがダイジェストという形でまとめられていますよね。本当に描きたい要素との尺の問題がありますし、それは仕方ないのかなと。
ゲームをプレイされた人は「あの選択肢のシーンの続きなんだ」ということが分かると思いますし、見ていない方は、「あの冒頭部分で何があったんだろう」と気になりますよね。そこから[Fate]や[UBW]ルートに入ってもらうというのもいいのかなと。
ただいきなり劇場版[HF]だけを見ても、まったく意味が分からない内容かというとそうではないと思っていて。桜という女の子がどういう境遇にあり、彼女がどのように変わっていき、そこから助けるにはどうすればいいのかという軸は、劇場版[HF]の中だけでしっかり理解できるようになっていると思います。
――確かに、劇場版[HF]における士郎と桜の感情というのは、おそらく誰しもが理解できるものだと思います。
杉山:それに加えるなら、劇場版[HF]には、他のルートや『Zero』などの関係性もたくさん盛り込まれていて、視聴者側が「何をどこまで知っているのか」によって、受ける印象が全然違ってくると思っているんです。
[UBW]や『Zero』を見ていると、細かい演出の意図が分かるようになっていたり、2通り3通りどころではない変化があって。
先程も言った通り、劇場版[HF]からでも楽しめるようにはなっているのですが、劇場版[HF]の後に過去のシリーズをご覧になっていただき、その上でもう一度劇場版[HF]を楽しんでいただくと、新しい発見がたくさんあるのではないかと思います。
――本作で3つのメインルートのすべてが映像化されたことになりますが、杉山さん個人としては、今後の『Fate/stay night』の展開に対する希望はありますか?
杉山:僕ごときが意見を出すようなことではないのですが、すごくたくさんの方に応援していただいている作品ですし、『Fate/stay night』の世界観を用いた新しい作品であれスピンオフであれ、どんな形でも機会があれば喜んで演じさせていただきたいとは思っています。
……とはいえ、やっぱりキャスト陣の間では、「『hollow ataraxia』をやりたい」という声もありました。あちらはあちらで、同じ日を繰り返したり構造が複雑な作品なので、映像化するには結構な工夫やアイディアが必要になるとは思うのですが、『hollow ataraxia』も皆さんに深く愛されている作品だと思いますから、そういったハードルを乗り越えて映像化していただけるなら嬉しいですよね。
あとは『衛宮さんちの今日のごはん』については、『Fate/stay night』のメインのお話とは別に、それはそれで今後もライフワーク的に続けられたら嬉しいなと。いつか、『衛宮さんちの今日のごはん』の方しか知らない若いファンが出てきて、後から『Fate/stay night』の存在を知ってビックリする……みたいな現象が起こったら面白いですよね。
――劇場版[HF]でのご自身の演技を振り返って、反省や手応えを感じた部分はありましたか?
杉山:僕は一度収録が終わると、完成した作品を見る時も視聴者目線で楽しめるタイプなのですが、たまに自分で入れた細かいアドリブとかが気になったりすることもあって。
劇場版[HF]だと、第二章のセイバーオルタとバーサーカーの戦いの時、瓦礫に吹き飛ばされそうになる士郎の声をアドリブで入れたのですが、「音楽と効果音が入ったら聞こえなくなっちゃうかな」とちょっと気になっていたんです。けど、後で完成した映像を見た時、「これは聞こえないのが正解だったな」と(笑)。
――確かに、あのシーンはもうそういう次元の戦いではなかったですね(笑)。
士郎:そう、あの凄まじい戦いの最中に、小さな士郎の息とか悲鳴が聞こえるはずがないんですよね(笑)。もしあのシーンで、自分が大きな声でアドリブを入れていたらちぐはぐになっていたと思いますし、やっぱり1人の演者視点だとアドリブが正しいのか判断できないこともあるので、そこはディレクターさんを信じてお任せしています。
ただ、あのシーンはよくよく聞いていただけると、うっすらと士郎の声が入っているのが分かると思います(笑)。
――第三章の見どころとなるポイントを教えてください。
杉山:第二章では、桜がついに慎二を手にかけてしまったり、士郎も桜の味方になることを決断するなど、物語が大きく動きました。もちろん第三章でも士郎と桜の物語が主軸としては描かれるのですが、そこだけではなく、聖杯戦争の真相や、臓硯や綺礼、イリヤといったキャラクター達が何を考えていたのかなど、いろいろな謎が明かされていきます。
見れば見るほど、士郎と桜の物語と同時に、他のキャラクターの在り方というのも分かるようになってくるので、『Fate/stay night』という作品を理解する上で、とても重要なエピソードになっています。
――最後に、劇場版[HF]の物語を終えた士郎に、一言メッセージを伝えられるなら、どんな言葉をかけてあげますか?
杉山:そうですね……。第三章の凛のあるセリフと、同じ言葉をかけてあげたいです。
――ありがとうございました。それがどんな言葉なのかは、実際に劇場で確認していただきましょう。
[取材・文/米澤崇史]
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第三章インタビューアーカイブはこちら!
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劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song 作品情報
2020年8月15日(土)公開
イントロダクション
手にした者の願いを叶えるという万能の願望機「聖杯」をめぐる物語を描いた、ヴィジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』。劇場版アニメ三部作として紡がれる最終ルート[Heaven’s Feel](通称・桜ルート)が、ついに完結する。
アニメーション制作を担当するのは、2014年にTVアニメ版[Unlimited Blade Works]を手掛けたufotable。キャラクターデザイン・作画監督として数々のTYPE-MOON作品のアニメ化を手掛けてきた須藤友徳が第一章、第二章に続いて監督を務める。
2019年に公開された第二章[lost butterfly]は109万人を動員、興行収入は16.7億円を記録。2017年に公開された第一章[presage flower]を上回る成績を収めた。
第三章は「聖杯戦争」の真実と、少年と少女の物語の結末が語られるエピソード。全三章で贈る[Heaven's feel]がたどり着く場所とは──第三章[spring song]は咲き誇り、奏でられる。
ストーリー
「俺は、桜にとっての正義の味方になるって決めたから」
少年は、真実からもう目を逸らさない。少女を救うために。自分の選んだ正義を貫くために。
魔術師〈マスター〉と英霊〈サーヴァント〉が万能の願望機「聖杯」をめぐり戦う――「聖杯戦争」。その戦いは歪んでいた。
ひとりの少女――間桐 桜は犯した罪と共に、昏い闇に溺れてしまった。桜を守ると誓った少年・衛宮士郎は遠坂 凛と共闘し、「聖杯戦争」を終わらせるため、過酷な戦いに身を投じる。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは闘争の真実を知る者として、その運命と向き合い、間桐臓硯は桜を利用して己が悲願を叶えようとする。
「だから──歯をくいしばれ、桜」
激しい風に抗い、運命に挑む少年の願いは、少女に届くのか。終局を迎える「聖杯戦争」──。最後の戦いが、遂に幕を上げる。
メインスタッフ
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷敦・田畑壽之
脚本:桧山彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野学
音楽:梶浦由記
制作プロデューサー:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス
メインキャスト
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐 桜:下屋則子
セイバーオルタ:川澄綾子
遠坂 凛:植田佳奈
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
ライダー:浅川悠
真アサシン:稲田徹