自分が『ハイスコアガール』だけではない、そして頑張れば楽しいことがあると伝えたい――春アニメ『ざしきわらしのタタミちゃん』押切蓮介監督×主題歌アーティスト・ORESAMA座談会
『ハイスコアガール』や『ミスミソウ』などの人気作を生み出してきた押切蓮介さんが原作・脚本・キャラクター原案・監督を手掛けるアニメ『ざしきわらしのタタミちゃん』が4月10日(金)20:00からdTV・dアニメストほかにて配信スタート!
本作は、田舎暮らしだった妖怪 座敷童のタタミちゃんが東京にやってきて、様々な妖怪 仲間たちと共に、現代人をシニカルに斬って、斬って、斬りまくる! 痛快ホラーギャグコメディ!
配信スタートを祝して、押切監督と、主題歌「CATCH YOUR SWEET MIND」を手掛けたORESAMAのボーカルのぽんさん、ギター&サウンドクリエイターの小島英也さんの座談会が実現! 押切監督の作品&ORESAMA愛をご堪能あれ!
最初のアイデアは訳あり有名人とのインタビューアニメだった!?
――まず『ざしきわらしのタタミちゃん』のプロジェクトが始まった経緯のご説明をお願いします。
押切蓮介監督(以下、押切):まずZERO-Gの鈴木(良兵)さんと、エイベックスの日野(亮)さんを含めた4人くらいのチームで何かしたいよねというところから始まり、紆余曲折してここまで来た感じです。
マンガではやりたいことをやり尽くしてしまった感があって、マンガ以外の違うことをやりたいとずっと思っていました。
元々、自主映画を撮影したり、アニメや音楽を作っていたので、パイロット版の映像を1人で作ったのが『ざしきわらしのタタミちゃん』のベースです。
絵を描いたり、編集するだけではなく、声も自分で入れて。とても楽しかったので、「商業作品としてやってみたらどうなるだろう?」と思ったのがこのプロジェクトのスタートです。
――『ざしきわらしのタタミちゃん』のアイデアはどのように着想されたのでしょうか?
押切:妖怪ものになったのは、昔から僕がやっていた得意分野を始めただけで。あと珍しいことをしたいなと思って、最初にイメージしたのがインタビュー形式のアニメでした。
世間を騒がしたり、やらかした人に突っ込んだ話をする作品で、STAP細胞で話題になったあの人や、アメフトで危険タックルを指示した監督とか。そういう人たちをアニメにしてしゃべらせると心象が変わるんじゃないかと。
ORESAMA サウンドクリエイター・小島英也さん(以下、小島):なるほど。
押切:実写で本人が出てくるとこちらも構えてしまったり、ネガティブなイメージで見てしまうけど、アニメになったら心象が良くなったり、見え方が変わるんじゃないかなと。
実際、パイロット版でもタタミちゃんから「『ハイスコアガール』事件どうだった?」と突っ込まれて、僕が気まずそうに「あれはね……」と話をするという。そんな感じでタタミちゃんが世間をバッサバサ斬っていくスタイルでした。
でもインタビュー形式は現実的ではないからタタミちゃんが田舎から上京してきて、都会の荒波にのまれながらも、東京のあるあるネタがどのように見えるのか、コミカルに描くお話にしようとやわらかい作品になっていきました。
ORESAMA ボーカル・ぽんさん(以下、ぽん):パイロット版のお話もおもしろかったです。
押切:自分で台本を書いて、タタミちゃんに自分へツッコミを入れさせて。
ぽん:想像するとシュールな制作現場ですよね(笑)。
押切:今回の形になったけど、インタビュー形式のアニメもいつかできたらいいなと思ってます。
ぽん:リスクが大きそうですね(笑)。
押切:別にやらかした人じゃなくても、例えばORESAMAのお二人など著名人と、気持ち悪いキャラが話すだけでもおもしろいと思うんですよね。
監督が初めて並んだサイン会はORESAMA!? あの人気作もORESAMAの曲を聴きながら執筆
――ちなみに監督とORESAMAのお二人の出会いは?
ぽん:私たちのサイン会に並んでくださって。
押切:僕が生まれて初めて行ったサイン会です。僕のほうがすごいファンで。知り合いが出るライブイベントに行ったらORESAMAも出演されていて。他にも5~6組出演者がいたんだけど、ORESAMAだけ明らかに違うんです。
YouTubeで調べたらすぐにハマりました。当時はまだ2枚のシングルしかリリースしてなくて、配信限定だった2ndシングル「ドラマチック」を延々と聴いていたし、今でも聴いているんです。
ぽん・小島:ありがとうございます!
押切:あと初めて見たライブの後ろで流れていた映像にも見覚えがあって。実は(ジャケットやMVのアートワークを手掛けている)うとまるさんともお会いしたことがあったんです。
小島:そうだったんですか?
押切:スーパーログさんというデザイナーさんと麻雀友達なんですけど、ある日、呼ばれて行った喫茶店で一緒にいた、うとまるさんを紹介されたんです。
その時に絵を見せていただいて、「いい絵を描く人だな」と思ったのを覚えています。ちなみに呼び出された理由が「これから富士の樹海に行くから一緒に来ない?」というお誘いで。
ぽん:恐ろしい……。(笑)
押切:もちろん断りましたけど(笑)。ORESAMAにすっかりハマった僕はサイン会があることを知って、自分をアピールしようと『ハイスコアガール』のコミックを、サイン会の会場であるヴィレッジヴァンガードで購入して、お渡しして。
ぽん:私たちが喜ぶ間もなく、先生はお店の事務所でサインをお願いされていたそうです(笑)。サイン会の後、コミックを読ませていただいたらとてもおもしろくて、もちろんアニメも見ました。
――先生の作品の印象はいかがでしたか?
小島:僕も『ハイスコアガール』が好きなんですけど、あの始まりからまさか泣かされることになるとは、という意外な展開と、ヒロインの大野さんは無口だけど、ちょっとした仕草や表情の線1つひとつから気持ちが伝わってくる瞬間が好きで。先生はきっと人間を細やかに観察している方なんだろうなと想像しながら読むのも楽しくて。
ぽん:そんな作品をまさか「ドラマチック」を聴きながら描いてくださっていたとは。
押切:リスペクトしてるんです。あと衝撃を受けた初ライブの時、自分の出番が終わったぽんちゃんが他の出演者のステージを見ていたのも印象的で。それが人を見ているという部分にもつながるかもしれません。でもあの時から一緒に仕事ができる日が来るとは。
――先生はORESAMAの音楽性やパフォーマンスなど、どんなところにひかれたのでしょうか?
押切:言葉にするのが難しいですね。初遭遇したライブは知り合いを見に行ったけど、知り合いの曲がどうでもよくなるくらい洗練されていて。
ぽん:元々、私たちの音楽はお好きなジャンルだったそうで。
押切:エレクトロやハウスミュージックは昔から好きだったけど、すごく刺さるし、メッセージ性のある歌詞もいいし、音もよくて。自分では音楽の趣味は結構いいほうだと思っている僕がハマるくらいですから(笑)。
ぽん:ありがとうございます。『タタミちゃん』の主題歌も「ORESAMAの好きにやってください」と言っていただいて。
押切:それくらい絶大なる信頼があります。
――アニメのテーマ曲は、制作サイドからオーダーがあるケースが多いのに。
小島:普通はそうですけど、今回は主題歌であることは勿論年頭に置きながらORESAMAの新曲としてどういう作品にするかも追及させていただきました。
ぽん:あと30秒尺というのも初めてだったよね?
小島:TVアニメのOPやEDの89秒尺にとらわれないことで挑戦できた面もありました。
ぽん:今回は劇伴にも挑戦させていただいたもんね。
小島:うん。今回は初挑戦づくめの制作でした。