喜びも悲しみも、すべてを肯定し続ける工藤晴香さんの“強さ”が詰まった一枚に――声優・工藤晴香ソロデビューミニアルバム「KDHR」インタビュー
ネガティブな経験も自らの一部に変えて、誰かの力に
――「それぞれのPLANET」から一転して、4曲目の「Thunder Beats」は変わり種的な内容ですね。
工藤:この曲は歌詞先行で制作した楽曲です。アルバムの中に面白い曲がほしいなって思ったことがきっかけで。わりと真剣なテーマの曲が多い中、ここで替え玉のような意外性のある曲を入れたいことから生まれました。
メロディ的にも歌詞的にも、遊びの要素だったりライブ映えするような内容を目指して制作した楽曲です。
――5曲目の「アナタがいるから」は、<アナタ>に向けたバラードになっています。
工藤:この曲は、今まで出会った人達への「ありがとう」の気持ちを込めた曲です。感謝をテーマにした曲は、どうしてもほしいと思っていたので、その点を意識して書いています。
歌詞には「アナタ」という言い回しになっていますが、どちらかと言えば「アナタ達」に向けていて。曲を聞いている方には、そこから色々な人を思い浮かべてほしかったので、特定の人に向けてというよりは、今までの人生で出会ってきた全ての人達に捧げる曲です。
このレコーディング中は色々なことを考えていて。今まで出会ったファンのみなさんや、ライブでステージに立ったときに見える景色だったり。そういったことをずっと考えながら温かい気持ちでずっと歌っていました。
――そして、アルバムを締めくくる6曲目の「Memory Suddenly」です。
工藤:この曲は「アナタがいるから」と通ずるところがありますが、特定の人に向けてというより「思い出」がテーマになっています。楽しかった思い出も大事ではありますが、忘れたい過去や悲しかった出来事など、嫌だったこともやっぱり自分の一部なので、それを受け入れて、抱きしめて前に進んでいく想いを込めた曲になっています。
今作の歌詞を書いてきた中で、ずっと一緒に作業をしてきたディレクターさんに「風景が浮かぶ曲を書いてほしい」と言われたときに、「あ、確かに。そういう曲も世の中にはいっぱいあるな」と思い、意識しながら書きました。
――こちらの楽曲は『KDHR』においてどのような位置づけの曲になっているのでしょうか。
工藤:「MY VOICE」や「それぞれのPLANET」では、傷ついた経験を糧に前に進んでいく、輝いていくことがテーマにありますが、「Memory Suddenly」ではそれらを改めて受け入れて生きていく、忘れちゃいけないんだよというメッセージを込めています。
悲しかったことって忘れていても、ある日、突然思い出すんですよね。同じような経験をしてる人を見ても、「あ~、私もそういうことあったな」と思い出すきっかけになって。そこで改めて「あの辛かった経験も、私の中の一部になっているんだ」と思うようになったんです。
そこで同じように迷っている人を導いてあげたいと思うようになったんだなって、歳を重ねてきて感じることがあるんです。それも私の中で宝物になったんだなって。私も今はマイナスな思い出や経験もポジティブに受け止めているので、アルバムの最後にその気持ちを打ち出す意味合いも込めてこの曲は最後にしました。