春アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』諸星すみれさん&細谷佳正さんインタビュー|アフレコ現場は天才どうしのぶつかり合い!「大ヒットアニメを作ろう!」
役者とクリエイター、役者と役者のぶつかり合い
ーーそういう会話劇の面白さがある?
細谷:2人で実際に現場で掛けあってみて、初めて生まれる雰囲気があって、それを映像に収めたい思っています。個人的にそれが一番面白いと思っています。
シーンの長さは、基本的には監督や演出が決めていて、それに合わせていくんですけど、この作品では、それに合わせると、掛け合いで生まれた良い雰囲気が死んでしまうと思ったので、諸星さんには「台詞が溢れても気にせず、自由にやろう」とよく話しかけています。
自分がそうしたいだけなんですけど、諸星さんを巻き込んで、それを通そうとしてるんですね(笑)。
でもダメな時はダメになるので、それでいいと思っています(笑)。
諸星:私のお芝居を全部受けてくれるとおっしゃってくれたことがすごく嬉しくて。そんなこと言ってくださる方、今までいなかったので……。
細谷:コレは自分がなんでも出来ると勘違いしてる訳ではないですからね?(笑)
そのほうが楽しいし、楽しいほうが絶対にいいんですよ。演者ってうまく行ってるときは芝居をしながらわかるものだし。それなのにタイミングを合わせなきゃ!って意識するとどこか不自由になっていくから。
二人の芝居が素晴らしかったら、それを採用するはずだと思ってやっています。今のところ、僕らが勝ち続けてるよね?(笑)
諸星:そうですね(笑)。毎回やったるぜ! って気合いを入れてからやってるし、いい意味でぶつかり合っている感じです。
ーー諸星さんから見た細谷さんって、どんなお芝居をする方なんですか?
諸星:細谷さんは、私が小学生くらいの頃から現場に行くといつもお世話をしてくれるお兄さんという感じだったので、今回一緒にできるとなって、すぐに安心だなと思ったんです。
実際にマイク前で隣に立ってみると、声がすごくよく聞こえるんです。私はお芝居をしていると入り込んでしまって、たまに横に人がいることを感じないときがあるんですけど、細谷さんはずっと存在感があって、引っ張られそうになるときがあるんです。だから引っ張られないように、ひたすらぶつかっていこうと思っています。
私のお芝居を受けるから自由にやっていいと言ってくれたので、じゃあ遠慮なくいこうって、自信を持って好き放題やってます(笑)。
ーーでは、士郎とみちるのぶつかり合いでもあるんですね。
諸星:そうですね。マイク前の感じも士郎とみちるに似てると思います。
ーー諸星さんのお芝居を受け止めるのも大変そうです。
細谷:大変さは全くありません。一緒にやっていてとても楽しいです。諸星さんのお芝居は『そこに生きている』という感じがします。
極端な言い方ですけど、アフレコの台詞のやり取りって、画面の中で成立していれば、それで観ることが出来てしまう。
個人的な感覚だから、説明しても多分わかってはもらえないと思うんですど、諸星さんの台詞はマイクの前でアフレコしているというよりも、実際にそこに立って生きている雰囲気があります。
なので是非一緒に仕事をして、僕も何か影響を受けたい、学びたいと思っていました。
色々なタイプの演者がいるし、やり方は各々違っていて当たり前なんですけど。相手の気配だったり息遣いだったり、『台詞のニュアンス以外の何か』を出来るだけ多く感じ取りながら、マイクの前に居るように、個人的にしています。
なので諸星さんの『存在感を感じる』という言葉は、とても嬉しいです。
アニメの決まり事とかはもちろんあるんですけど、それを決まりきった事としてやってしまうと、それ以上の発想は生まれないし、想定外の事も起こらない。
仕事をしてきた中で身についた『暗黙の了解』のような物を、これからも少しずつ捨てて行きたいと思ってやっています。
[取材・文/塚越淳一]