春アニメ『イエスタデイをうたって』見どころ紹介|「愛とはなんぞや?」恋に、人生に悩む若者に贈る。4つの片想いが紡ぐ、もどかしくも優しい青春群像劇
テレビ朝日の深夜アニメ枠として新たに誕生した「NUMAnimation」にて、2020年4月から放送開始のアニメ『イエスタデイをうたって』。
原作は冬目景により集英社「ビジネスジャンプ」「グランドジャンプ」にて1998年から連載され、2015年に完結したコミックです。
ここでは恋の四角関係を構成するメインキャラクターたちを中心に、名作のアニメ化として注目される本作品の見どころをご紹介します。
じれったくて、煮え切らなくて……だからこそリアル。20歳前後の若者の恋が繊細に描かれる
主人公は10代後半〜20代前半の若者4人。それぞれが過去の出来事を引きずっており、なかなか新たな一歩を踏み出せず、同じところを堂々巡りしているという思いを抱えています。
本作の大きな特徴は、その“じれったさ”。主人公たちは、思ったことをいつもストレートに言葉や行動で表現するわけではないので、普段わかりやすい恋愛作品に親しんでいる人だと、男女4人の恋愛感情も交えた煮え切らない関係にやきもきすることも少なからずあるかもしれません。
しかし、彼らが日々悩み、もがきながら生きていく姿にリアリティを感じ、自らの姿を重ね合わせ応援したくなる、あるいは励まされるという人は多いはずです。
本作はステレオタイプなラブコメとは対極の、もどかしさや曖昧さといった人間の機微を、繊細かつ丁寧に描いている作品です。
アニメ公式サイトに掲載されているメインキャスト4名の座談会記事では、リクオ役の小林親弘さんは本作について「“行動のできなさ”というリアル」や「アニメでは省略されがちな、体温や呼吸の生々しさを引き出せるのではないか」という点に惹かれたとのこと。
浪役の花江夏樹さんは「無言の時間でさえ、作品の一部になっている」と評し、人の心の動きが繊細に描かれていると語っています。
登場人物の微妙な心の動きや、時には視聴者がもどかしさを感じる言動を描写したシナリオに、実写ドラマのようなリアリティのある映像と、キャストの抑えた演技が加わることで、それこそ普段アニメを見ない視聴者でも、違和感を持つことなく物語に入り込めるのではないかと思います。
将来の目標もなく、長年の片想いも行き止まり……見通しの立たない人生に悩む青年・魚住陸生(CV:小林親弘)
自分の将来を思い描けず、大学卒業後はコンビニでアルバイトをしている魚住陸生(通称リクオ)。大学で知り合った森ノ目榀子に憧れと好意を抱いているものの、想いを打ち明けられずにいます。
そんな彼の前にある日、カラスを連れた謎の少女・ハルが現れます。彼女との出会いをきっかけに、彼を取り巻く人間関係にも変化の兆しが見え始めます。
大学卒業以来、久々に榀子と再会し、それまで抱いていた好意を告白するも、友人関係のままでいたいと告げられてしまうリクオ。それでも「下心ありだから」と伝え、その上で今まで通りの関係を続けようとするのですが……。
会社員や教師となって働いている周囲の人々と違い、夢ややりたいことを明確に持てず、漠然と将来に不安を抱えながら日々を過ごす彼は、いわば「モラトリアム」を体現する存在。
お世辞にもかっこいいとは言えないかもしれませんが、だからこそその姿に自分を重ねる人は多いはず。
今リクオと同じような立場の人も、かつてそうだった人も、彼の姿を見て焦燥や不安を感じながらも、生きることに対する前向きな想いが込み上げてくるのではないでしょうか。
リクオに好意を寄せる謎の少女、野中晴(CV:宮本侑芽)
ハルと名乗るミステリアスな少女。いつもカラスを連れており、住まいも職業も不詳。
どういうわけかリクオに好意を抱いており、「恋愛なんて錯覚」と言いつつ、何らかの結果が見えるまで止まらないからと、リクオをめぐり榀子に「宣戦布告」します。
彼女の登場によりリクオを取り巻く恋は進展の気配を見せることに。
実は、とある出来事がきっかけで高校を中退しているのですが、過去に縛られずに今を生きる彼女。
リクオに一途に好意をアピールするも、なかなか振り向いてもらえない様は不憫ですが、それでもめげない彼女の姿は見る者を元気づけます。
ただ、快活な姿とは裏腹に、どうやら家庭に事情がある様子で……。エピソードが進むにつれて明らかになるであろうハルの謎にも注目です!
心の中に忘れられない過去を持つ美女、森ノ目榀子(CV:花澤香菜)
リクオの大学の同級生で、非常勤講師として東京の高校に勤務。大学卒業後の冬、リクオに改めて思いを告白されるも、「友達としていたい」と恋人としての付き合いを断ります。
告白してきたリクオに対して煮え切らない関係を続けることを求める榀子に、もどかしい気持ちになる視聴者も多いはず。しかし、榀子には踏ん切りをつけられない過去があったのです。
榀子は高校までを過ごした金沢での幼馴染・早川湧に憧れと好意を抱いていました。生まれつき病弱だった湧は、榀子が高校3年生の時に夭折。湧亡き後も、自らの想いに区切りを付けられないまま東京の大学に進学し、リクオと出会います。
バイト生活を続けるリクオからは榀子は前に進んでいると言われるけれど、彼女の心の中には湧がずっと居続けており、自分は前に進めていないと悩んでいます。
湧に抱いていたような気持ちは、リクオに対してはない……。自分の気持ちに整理がついていないのに付き合うのは不誠実だということでしょうか。
榀子もリクオやハル同様、相手を思いやりすぎるがゆえに、一歩が踏み出せないとも言えるかもしれません。
榀子に想いを寄せ続け、困難な恋の道を突き進む少年・早川浪(CV:花江夏樹)
榀子が金沢で暮らしていた頃の幼馴染であり、湧の弟。父親の仕事の関係で、榀子が勤める東京の高校に転校してきます。
榀子にずっと好意を抱いており、榀子に想いを寄せるリクオをライバル視し、牽制をしてきます。しかし、本当の恋敵は自分の兄である、今は亡き湧だと考えています。
榀子からはあくまで“湧の弟”としてしか見られておらず、「オレのままって何? そもそもオレって何よ?」と自身のアイデンティティーに悩む浪。
また、美大を目指して東京の予備校で絵画を学んでいる彼ですが、それは成績優秀だった湧に対して唯一勝てた特技。それこそが榀子に自分が誇れるものでもあったと考えます。彼もまた榀子と同じく、亡き自分の兄・湧の存在が心の多くを占めているのです。
しかし、いざ東京の予備校に通うと、美術の実力を自分よりずっと上回る人間がひしめき合っている現実に直面します。自分にとって絵とは……芸術とは?
美術でも恋でも行く先に圧倒的な壁が立ちはだかる浪。傷つきながらも茨の道を突き進む姿は、無謀なのか勇敢なのか……。
以上、リアルで、どこにでもいそうで、その葛藤が自分のことのように思えてしまう『イエスタデイをうたって』の主要登場人物とその関係性を見てきました。
登場人物の葛藤や悩み抜いて心の内から発される言葉が、20年以上を経てもなお古びることなくファンの心に響くからこそ、今なお『イエスタデイをうたって』は支持されているのだと思います。
本作で描かれる10~20代の男女が自らの将来と生きる目標を模索し続ける姿は普遍的です。
登場人物がそれぞれに抱える過去を、どのように精算し、現在を歩むのか。視聴者は4人の誰か、あるいは全員と気持ちをシンクロさせながら見守っていくことになるでしょう。
TVアニメ『イエスタデイをうたって』作品情報
INTRODUCTION
1998年よりビジネスジャンプ〜グランドジャンプで連載、2015年に完結した、冬目景先生の漫画作品。コミックスはシリーズ累計140万部を突破。現在もたくさんのファンに愛されている。
放送情報
放送局情報:テレビ朝日「NUMAnimation」、BS朝日
放送時間:2020年4月4日(土)毎週土曜日深夜1時30分〜
BS朝日:2020年4月10日(金)毎週金曜日夜11時30分〜
配信:AbemaTVにて2020年4月4日(土)毎週土曜日深夜1時30分〜
<地上波同時・独占先行配信>
本編:全12話
配信限定エピソード:全6話(AbemaTV本編終了後に独占先行配信開始)
二次配信:dアニメストア4月7日(火)正午12時〜(配信限定エピソードも配信予定)
STORY
大学卒業後、定職には就かずにコンビニでアルバイトをしている”リクオ”。
特に目標もないまま、将来に対する焦燥感を抱えながら生きるリクオの前に、ある日、カラスを連れたミステリアスな少女―“ハル”が現れる。
彼女の破天荒な振る舞いに戸惑う中、リクオはかつて憧れていた同級生“榀子”が東京に戻ってきたことを知る。榀子を昔から知る少年“浪”により、榀子の過去が明らかになり..。
緩やかに紡ぎ出される青春群像劇。
STAFF
原作:冬目 景(集英社 ヤングジャンプ コミックス GJ 刊)
監督・シリーズ構成・脚本:藤原 佳幸
副監督: 伊藤 良太
脚本:田中 仁
キャラクターデザイン・総作画監督:谷口 淳一郎
総作画監督:吉川 真帆
音響監督:土屋 雅紀
音響効果:白石唯果
美術監督:宇佐美 哲也
色彩設計:石黒 けい
撮影監督:桒野 貴文
編集:平木 大輔
背景:スタジオイースター
音響制作:デルファイサウンド
アニメーション制作:動画工房
制作:DMM.futureworks
音楽制作:agehasprings
主題歌:ユアネス(HIP LAND MUSIC)
CAST
魚住陸生:小林親弘
野中晴:宮本侑芽
森ノ目榀子:花澤香菜
早川浪:花江夏樹
木ノ下:鈴木達央
狭山杏子: 坂本真綾
福田タカノリ:寺島拓篤
福田梢:洲崎綾
杜田:名塚佳織
滝下克美:堀江瞬
湊:小野友樹
柚原チカ: 喜多村英梨
カンスケ:前川涼子
(以下50音順)
天海由梨奈、遠藤大智、大塚明夫、小形満、川島得愛、小林千晃、田中宏樹、西山宏太朗、藤原夏海、本田貴子、村井美里、諸星すみれ、 ほか