音楽
ナナヲアカリ新作のテーマはなぜ“変”愛に?|マンガみたいな恋人がほしい:インタビュー

ナナヲアカリ新作のテーマはなぜ“変”愛に? 2020年冬クールで最もバズったアニソン「チューリングラブ feat.Sou」、実体験に基づいた曲など6曲をパッケージ 「自信を持ってお届けできる作品に」

シンガーソングライターのナナヲアカリさんがミニアルバム『マンガみたいな恋人がほしい』をリリースした。

ナナヲさんといえば、“社会不適合系ダメポップ”という新たな世界観でSNSシーンのど真ん中に切り込んだ新世代ポップ・アイコン。今年2月には動画投稿サイトにアップした作品の累計再生回数が1億回を記録(!)。なかでも冬アニメ『理系が恋に落ちたので証明してみた。』のエンディングを飾った「チューリングラブ feat.Sou」はSNS上で大きな話題に。

YouTube/TikTok界隈からの「踊ってみた」「歌ってみた」「弾いてみた」動画が拡散中で、本家MVは現在1400万回以上再生され、まさに2020冬クール“最もバズったアニソン”となった。

最新作のテーマは“変”愛。前述の「チューリングラブ feat.Sou」や、MVが早くも160万再生を突破した「逆走少女」など、共感度の高い6つの物語が収録されている。

話を聞くと、今まででいちばん充実した制作になった様子だ。心の変化からミニアルバムに込めた思いまで、ひとつひとつ丁寧に教えてくれた。

「今まで不安定だったものに自信がついた」

──メジャー移籍からもうすぐ2年が経ちますが、振り返ってみるとナナヲさんにとってどういう時間でしたか?

ナナヲアカリさん(以下ナナヲ):いま2年と聞いて「あ、確かに2年だ」とちょっとビックリしました(笑)。自分の体感的には1年くらいで。今振り返ると……最初の1年目は自分のなかで悩んでいた時期でした。

メジャー移籍シングルの『ワンルームシュガーライフ / なんとかなるくない? / 愛の歌なんて』(2018年8月リリース)、『フライングベスト~知らないの?巷で噂のダメ天使~』(同年10月リリース)を出したけど、自分のやりたいこと、やるべきこと、未来像に靄が掛かっていて。

ちょうど1年前の2019年4月に『しあわせシンドローム』を作って、やっと「ナナヲアカリが自分らしく作品を作れたな」と。その後の『DAMELEON』(2019年10月リリース)で、自分が本当に作りたいと思ったものができた感覚があって。

今まで不安定だったものに自信がついたような感覚がありました。

──そもそも不安の根本ってなんだったんです?

ナナヲ:メジャーデビューして有名な作品の主題歌を歌えて、シングルも出せて、インディーズのベストも出せて……そういった状況に自分の実力と自信が伴っていないなと常々感じていて。

しかも自分としては右も左も分からない状態で。今振り返れば、それが不安定な理由だったのかな、と思います。

──周囲から見ると一見順風満帆だけど、ご本人としては気持ちが追い付いてないというか……。

ナナヲ:そうなんですよね。周りからは「良い感じじゃん」って言われるんですよ。でも自分としてはそういう実感がなくて、自分と周りのイメージの乖離がつらかった時期がありました。

──そんな葛藤を経てナナヲさんが掴んだ自分らしさって言葉にするとどんなものでしょうか。

ナナヲ:原点に戻って考えられるようになりました。マイナスな考え方や自信がなかったりダメだなと思うことをポップな音楽とナナヲの声に載せると前向きな曲に聴こえてくる。それが自分の強みなんだなと気づけたのは、ここ最近です(笑)。

──不思議な魔法のようですよね。その強みって、逆にファンのかたのほうが先に気づいていたかもしれないですね(笑)。

ナナヲ:そうなんですよね!(笑) だからみんなすごいなって。

──ところでナナヲさんの一連の気持ちの変化ってまわりのかたも気づかれていたんでしょうか?

ナナヲ:どうなんだろう……。(隣にいるスタッフに対して)気づいてました? あんまり表に出すタイプじゃないんです。だから「最近元気だなー」くらいかもしれません(笑)。

スタッフ:成長は感じてました。あと社交的になったなと思っていましたね。

ナナヲ:確かに! 人と話せるようになりました!(笑) 明るくなった気がする。

──そういった変化って表現する音楽にも影響が出てくるものだと思うんですが、ナナヲさんの場合はどうでしたか。

ナナヲ:制作するなかで……今までは救いのないまま終わっていた曲たちにも、救いがあったら良いなって思えるようになりました。

ただ、今回はテーマが“変”愛なので、ひねくれた感じの曲もあるんですが(笑)。でもすごくいいメンタルで制作ができました。

 

偏愛ではなく“変”愛にしたワケ

──いまラブソングというテーマに挑戦した理由ってなんだったんでしょう?

ナナヲ:漠然となんですが……ナナヲアカリってまっすぐに愛を歌った曲が少ないなと思っていたので、ラブソングを集めたアルバムをいつか出したいなとずっと前から思っていたんです。ひとりで、勝手に(笑)。でもそれを発信するいい機会だなって。

「チューリングラブ feat.Sou / ピヨ」のシングルから同時に動き出していたんです。「チューリングラブ」はまっすぐなラブソングだし、「ピヨ」も形は違えど一種の愛の歌ではあるので……今この2曲をシングルで出すなら、次はナナヲアカリらしいラブソングを集めた作品にしたいなと。そうなったら面白いかもと思ってました。

──以前からラブソングを出したいと思われていたんですね。その理由はどういうものだったんでしょうか。

ナナヲ:世の中には昔からラブソングがたくさんあるじゃないですか。ラブソングが廃れないのって、どんな時代もみんな愛を求めているからだと思っていて。ナナヲアカリとして、ラブソングという希望を発信したいなと。

──いわゆるラブソングというよりも、今作にはナナヲアカリ流のラブソングにはリアルな愛が綴られていて。偏愛とは言いますが、“変”愛にした理由ってなんだったんでしょうか。

ナナヲ:いろいろな愛のカタチについて考えたとき、“偏愛”も変わった愛に含まれるなと思ったんです。

世の中にあるいろいろな人たちの愛のカタチって……真っ当で順当なものって案外少なくて、みんなどこか歪んでいて、強すぎる気持ちが相まって、大体の場合変わった愛のカタチになってるなって気づいて。

そんな多様な愛の在り方の一部をナナヲなりに歌えると良いのかなと。

 

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