背中を押さない、手も引かない──代弁者としてひたすら絶望に向き合ってきたアニソンシンガーReoNaの “寄り添う”の根本に在る誠実さ|インタビュー前編
共に届けられることが「これ以上ない喜び」
──「ANIMA」にどんなアニメーションが付くかというも、いちファンとしてすごく楽しみにしています。
ReoNa:最終クールの幕開け。どんな形ではじまるのか、私自身もドキドキしています。実はオープニングの映像が出来上がる前の絵コンテをいただいたんです。見た瞬間にボロボロに泣いてしまいました。『ガンゲイル・オンライン』のときにも感じたことなんですが……まだ世に出ていない、コンテやダビングの時点から関わらせてもらえるって本当に幸せなことで。「ANIMA」がもとになって、オープニングのシーンができあがっていくんだなと。……ああ、ダメですね。こうやって話してるだけで、思い出し涙してしまうんです。ごめんなさい。
──大丈夫です。ゆっくり話していきましょう。
ReoNa:……ありがとうございます。
──それだけ大きな思いが詰まってるのは承知の上なんですが……今思わず思いが溢れてうるっときてしまった理由ってどんなところにあると思いますか。
ReoNa:どこなんですかね……? 以前ラジオ(#ReoNaのハチパレこえにっき)の企画で、『SAO』の丹羽(将己)プロデューサーさんにインタビューさせていただく機会があって。さらに、ゲームの特番として、ゲームのプロデューサーである二見(鷹介)さん、丹羽さんと一緒に配信させていただいたんですが、その方たちと一緒に「発売を楽しみにしててください」って言わせていただける立場にいられること、情報を一緒に発信できていること……“作る側”にいることを改めて感じることが最近増えてきて、自分もその一員であるんだなと考えると、胸がいっぱいになってしまうんです。
──個人的にReoNaさんは、SAOファミリーの一員といった印象があります。
ReoNa:そう言っていただけるのも凄く嬉しいです。ありがとうございます。
──制作陣から「ANIMA」を聴いた感想などはあったのでしょうか?
ReoNa:丹羽さんにインタビューをさせていただいたときに、「ANIMA」について「いかがでした?」って質問したんです。そしたら丹羽さんが……「これだと思った」と言ってくださって。私にとってこの上ない誉め言葉でした。また、アニメの制作チームの方々は、最終クールに向けて「劇場版以上のものを作る熱量で挑んでいる」とも教えてくれました。「劇場版以上のものを作る熱量」ってなかなか言えることじゃないじゃないですか。そんな作品のオープニングを歌えることを改めて光栄に思いました。たまらないです、本当に。
尽きる瞬間により強く命を感じる
──ゲーム版OPの「Scar/let」(期間生産限定盤のみ収録)は、作詞がハヤシケイ(LIVE LAB.)さんと作曲が毛蟹さん。さらに編曲に荒幡亮平さんのお名前がありますね。
ReoNa:デビュー前からずっとお世話になっているケイさんと、ライブでお世話になっている荒幡さん。荒幡さんには今回初めてアレンジをしていただきました。
──「Scar/let」を聴いた時の印象はいかがでしたか?
ReoNa:サビの<振り絞れ Scarlet>の一言が、私の中にすごく響いてきて。普段はあまり耳にしない言葉だけど、とても切実で、何を表したいかが伝わってくるなと思いました。ゲームタイトルの『リコリス』=彼岸花の花言葉の1つに情熱があるんですけど、まさしくそれを感じるお歌だな、と。線香花火は消え際が1番鮮やかで美しいように、尽きる瞬間により強く命を感じることってありますよね。特に椿などの首から落ちるようなお花は枯れ際がいちばん輝いて、花が開く。花という言葉が出てくるからこそ、より命について考えてしまいます。アニメイトタイムズさんではいつもお花の話をしているので、きっと今日も花言葉の話になるかなって思っていたんです(笑)。
──ありがとうございます(笑)。調べてはいたんですけど、彼岸花の花言葉って「情熱」から「あきらめ」「独立」まで、想像以上に幅広くて。いまお話を聞きながら勝手に答え合わせしていました(笑)。
ReoNa:そう、すごく幅広いんですよね。彼岸花って葉っぱと花が同時期に日の目を見ることがないんです。だから、転生にまつわる言葉や、悲しい思い出などの花言葉が多くて。赤の場合は「情熱」になるけど、白、黄色でまた違った花言葉があって。
今回の「赤」という色は『SAO』全体を通しても大切な色になっているなと思ってます。それと同時に、血や、炎、焼けつくようなイメージもあるような鮮明な色でもある。今回の赤は、命を燃やしているような色に感じています。
――そのスカーレット(あざやかな黄みの赤)の意味も含んだ、このタイトルはハヤシさんが命名されたんでしょうか。「/」が入って、さらに違う意味にも捉えることもできるという。
ReoNa:そうです。“傷”を表すscarと“~させる”などを意味するlet、この2つでscarlet=赤になるって不思議ですよね。
──個人的に、ReoNaさんらしい言葉だなって思いました。
ReoNa:本当ですか。嬉しい。“私らしい”と言ってもらえると、またひとつ「Scar/let」という言葉に意味を感じます。
──また素晴らしいお花にまつわる曲ができて。これからも新しい花の歌が咲いていくんだろうなと思うと、ワクワクします。
ReoNa:勿忘草から彼岸花になって、青い淡いお花から真っ赤に燃え盛るようなお花になって、次はどんなお花が咲くんだろう。自分でも楽しみなんです。たくさん花開けたら、その季節ごとに思い出してもらいたいです。
──ゲーム主題歌は初ですが、ReoNaさん自身すごくゲーム好きじゃないですか。だからこそ喜びもひとしおだったと思います。
ReoNa:大好きです。『ソードアート・オンライン フェイタル・バレット』のオープニングの「Thrill, Risk, Heartless」(LiSA)は何回見たか分からないくらい、自分のマイルームから観ています。今度はReoNaとしてゲームのほうにもお歌を重ねさせていただける。また違ったドキドキと喜びがあります。映像を先に拝見させてもらったんですが、グラフィックが凄いです。フィールドがオープンワールドなので少し操作させていただいたんです。すっごく楽しかった……。
──詳しく教えていただいてもいいですか?
ReoNa:まず、このゲームではユージオが生きているシナリオになるんです。オープニングの途中でユージオがうつむいているのに、キリオが上を向いているカットが出てくるんですが、そこで邪推してしまったり……。ゲームオリジナルのメディナちゃんというキャラクターが出てくるんですが、彼女も重たいストーリーを抱えています。ゲーム内でどんな活躍をするかも楽しみにしていてほしいです。
──私自身『SAO』のゲームはまだやったことがないんですが……今作をキッカケにやってみたいなと思っているんです。初心者でも楽しめますか?
ReoNa:(目を輝かせて)ぜひ! 初心者のかたにもオススメです。今作にはAIが戦いかたを学習してサポートしてくれる機能がついているんです。しかもそのパターンをネットで共有できるので、上手な人が作ったものを借りてプレイできます。だから初心者でも戦いやすい内容になっていると思います。アニメとも原作とも違うルートが待っているので、シナリオも楽しんでほしいです。ゲームクリア後に改めてこのOPテーマを聴いていただけると、また違う味わいや、解釈が生まれるかもしれません。